アマゾンはどこから来てどこへ行くのか

2017.01.26

(2017年1月26日メルマガより)


■ここ最近、アマゾンの話題を聞くことが多いような気がしませんか。

アマゾンというのは南米の巨大河川のことではありませんよ。

世界最大のインターネット小売りであり、webサービス会社のAmazon.comのことです。

・自動決済の無人コンビニ「アマゾン・ゴー」をアメリカで開店。

・棚が作業員のもとに移動する自動倉庫「アマゾン・ロボティクス」の稼働。

・ボタン一つで商品を補充できるサービス「アマゾン・ダッシュ」の開始。

・話しかけるだけで商品注文や音楽を流したりできる機器「アマゾン・エコー」の発売。

無人コンビニ「Amazon Go」は日本の流通業界を席巻するか(ダイヤモンドオンライン)
http://diamond.jp/articles/-/114392

アマゾン倉庫、商品を運ぶロボットを国内初導入(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030800018/121600235/?rt=nocnt

家庭の日用品征服を目指すアマゾンの秘密兵器(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/120500058/

そのほか、ドローンで配達を試みたり、一般個人に手数料を払って配達してもらう仕組みを考えたり、あるいは本の定額読み放題サービスを中途で放り出そうとしたり...よきにつけ悪きにつけ、話題に事欠きません。

なんでもありのようなこの会社、どこへ行こうとしているのでしょうか。

■アマゾン.コムは、1994年、キューバ移民の養父に育てられたジェフ・ベゾスが30歳の時立ち上げたインターネット書店を前身としています。(創業時の名前はカタブラ.コム)

創業時のことを詳しく書いた本を読むと、アマゾンが創業者ジェフ・ベゾスの個人的資質に大きく影響を受けた会社であることがよくわかります。

参考:「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4822249816/lanchesterkan-22/ref=nosim

ベゾスが最初に思いついたのは、インターネットなら物理的な店舗や倉庫に制約されずに、あらゆるものを無限に売れるのではないか、という単純な発想でした。

彼はこれを「エブリシング・ストア」と呼んでいます。

もっとも最初からすべての商品を扱うわけにはいきません。慎重に商品選びをした結果、書籍を扱うことにしました。本はどこで買っても品質に差がなく、品数がやたらに多いからです。

■目論見通り、書籍のインターネット販売は当たります。

インターネットが出始めた頃にいち早く事業化しようとしたベゾスの先見の明は確かに素晴らしいですが、ここまでは多くの人が思いついてもおかしくないことです。彼が非凡なのは、この後からでしょう。

ベゾスは、ここでインターネット販売の重要な概念を見出します。

商品を無数に並べた場合、売れ筋商品というものが出てきます。通常、上位20%の売れ筋商品が、全体売上の80%を占めるようになります。(パレートの法則)

だから店舗などでは、売れ筋商品に品揃えを絞ることで生産性が向上します。コンビニが販売データを解析して、売れ筋商品を把握しようとするのはそのためです。

ところが、残り20%の売上は、売れ筋以外の80%が稼いでいるわけです。

これが「ロングテール」という概念です。

参考:とるに足りない80%(2006年のメルマガです)
http://www.createvalue.biz/column2/post-115.html

しかもアマゾンの場合、たまにしか売れない商品の販売額が全体の30%以上になっていたといいます。

物理的制約のある実店舗なら売れ筋に絞るのは正しいかも知れないが、店舗コストの小さいネット販売なら、残りの30%を捨てるのはもったいない。

むしろ実店舗が捨ててしまっている残り30%に焦点を絞るべきではないか。

ベゾスはそう考えました。

■それまでアマゾンは、商品販売だけを担い、配送はメーカーに任せるという楽天のようなスタイルを志向していました。

売れ筋商品だけを扱っているならばそれでよかったかも知れません

しかし、月に1個、年に1個しか売れないようなロングテールの商品をメーカーに個別配送してもらうのは無理があります。つまり物流機能はアマゾンが持たなければならないのです。

そこでアマゾンは、物流機能に莫大な投資をし始めます。

そのため、何年にもわたり、赤字状態から脱却できないようになったわけですが、ベゾスは意に介しませんでした。

■ジェフ・ベゾスの強烈な信念の中に「顧客ファースト」というものがあります。

何よりも顧客を第一に考える。

マーケティングの基本には違いないのですが、この基本にこれほど忠実な経営者はいないのではないかと思えます

なにしろベゾスおよびアマゾンは、得意先に評判が悪い。値切るし、無茶を言うし、こき使う。

交渉事は、一方的に勝つためにある、というのが彼の信条だそうです。だから得意先を出し抜くのも平気です。ましてやライバル会社をつぶすまで追い込むのは当たり前。

そこまでしてどうするのかと言えば、顧客に還元するのです。

最初に扱った「書籍」でも、販売力が増すにつれて横暴になり、出版社や取次の立場など無視した安値販売を行いました。

とことんまで安値で提供するのが顧客ファーストだと考えているからです。

■もちろんアマゾンが儲けるわけではありません。

赤字は平気な会社です。アナリストや投資家の短期利益志向を軽蔑しているふしがありますし。利益を出すぐらいなら顧客に還元する。

実際、アマゾンは創業から今に至るまで、黒字だった年は数えるほどしかありません。

利益を追求しない会社に、ライバル会社はどうやって戦えばいいというのでしょうか。

■本当のところ、ベゾスが利益を上げたくないわけではないでしょう。

が、短期的な利益はいらないと考えていることは確かです。

彼の競争に関する考え方も独特です。

「利益が高ければ、ライバル会社が参入してくる。だから利益が出ないような商売をする」のだそうです。

きわめて低利益でビジネスを成立させてしまえば、そんな旨みのない市場に、誰も後から参入しようとは思わないでしょう。

まるで焦土作戦のような参入障壁の作り方です。

■ロングテールという概念を知り、物流機能に投資をしたことがアマゾンの強みとなりました。

基本的に、アマゾンのビジネスは、積み上げ式であり装置産業といえるものです。

本から始まった扱い商品は、今や消費財から家電、食品、あらゆるものに及び、それらをストックし、配送する倉庫が全世界に作られています。

当初、1週間もかかっていた配送日数が、今では注文から1時間で届くサービスを開始しています。

顧客ファーストの信条のもと、顧客が買い物に抱くストレスをとことんなくそうという試みです。

そのため宅配便業者にしわ寄せがいっているわけですが、それでも宅配業者はついていくしかありません。

早晩、アマゾン自身が宅配業を始めるだろうからです。そうなった時、競争力を保持するためには、アマゾンの要求に応えられる体制を持っておかなければならないのです。

■さらにアマゾンは「プライム」というサービスを開始しました。年会費を払えば、配送料無料、短期配送、ビデオ見放題、音楽聞き放題というサービスを受けられるようになります。

これなど顧客を囲い込むストックビジネスそのものです。(ジェフ・ベゾスは「コストコ」の創業者からプライムのヒントを得たと言われています)

あるいはアマゾン・ウェブ・サービスという定額制のクラウドコンピューティングの提供も行っています。

低価格で高機能のクラウドコンピューティングを使えるため、小さな会社にとってはなくてはならないサービスとなり、今や世界トップのポジションにあります。

こうしたストックビジネスを意識した事業展開をしているため、アマゾンは販売手数料を0にしても利益が上がる体制を作りつつあると考えられます。

■今や、世界トップ10に入る大富豪になったジェフ・ベゾスとはどういう人物なのでしょうか。

上記の書籍「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」によると、ベゾスとは子供のころから、「ずばぬけて頭がよく」「とんでもなく勝気」な人物だったらしい。

目標達成にひたむきで、自分にも他人にも厳しく、徹底することを強います。

行き過ぎるほど創造力があり、突拍子もないアイデアを披露して、しばしば社内を混乱させたりもしているようです。

また非常な倹約家(ありていにいうとケチ)で、社員に贅沢をさせないことも有名です。(本人もスーパーで割引クーポンを利用しているらしい)

頭のいい人物を好み、社員採用には常に優秀な人材を求めます。社員が期待外れだと凄まじい罵詈雑言を浴びせることもあるそうです。

かといって陰気な偏屈男だというわけではなく、けたたましく笑う陽気な人物です。

アマゾンの道のりは一筋ではなく、様々な要素が影響しあって、現在の姿になったといえます。ベゾス自身、後付けで適当なストーリーにされることを嫌がっています。

が、一ついえるのは、ベゾスの信念の強さと類稀なリーダーシップがなければ、今のアマゾンはなかっただろうということです。

■まとめてみます。

私が考えるアマゾンの強みとは

(1)アマゾンのビジネスモデルがストックを重視しており、実際は利益を上げやすいものであること。定額サービスの提供に執念を持っており、そのための投資は惜しみません。

(2)きわめて長期的視野で運営されており、目先の儲けよりも、市場シェアを重視していること。短期的利益を求める投資家を無視して、顧客のための投資を止める気配はありません。

(3)「顧客ファースト」「ストックビジネス」「長期的視野」というジェフ・ベゾスの信条が全くブレないこと。この一貫性はベゾスの中でも最も優れた資質であり、優秀な社員が多いアマゾンをまとめる原動力になっています。

この3つの強みが機能する限り、アマゾンの優位性は続くでしょう。

つまり、ベゾスが生きている限り、アマゾンの進撃は止まりませんよ。

■最初に戻りますが、無人コンビニや注文ボタンは、顧客の購買行動を容易にするためです。

配送センターのロボットは、配送機能を高めるためです。

つまりこれまで取り組んできたアマゾンの事業の延長線上にあるものです。

今後、アマゾンはどうなっていくのか。

これまでの方向性をさらに進めるとすると...家を丸ごと扱うかも知れません。

アマゾンホームとかいって、定額で家、家具、水道、電気、ガスを提供。基本的な食材も提供。あとは個別注文。つまり生活のすべてをアマゾンで賄うのです。低価格で。

あるいはアマゾンカーかも知れません。定額のリースで車を提供。ガソリンや保険、点検、その他備品を提供。低価格で。

アマゾン起業かも知れませんね。資金調達からノウハウ、人材募集、仕入れ、製造、販売、事務所、コンピュータ、すべてをアマゾンで賄う小さなビジネスオーナーです。低価格で。

要するになんでもありです。

■懸念されるのは、ベゾスが死んだ後です。アマゾンが独占的な地位を利用して利益確保に走り出すと、それは害悪以外の何物でもありません。

そんな事態を招かないためにも、楽天やヨドバシカメラには頑張っていただきたい。ヤマト運輸や出版社や今後も含めてアマゾンにかかわるすべての企業にはアマゾンに対抗できるスキルと体力を維持しておかなければなりません。

なぜならアマゾンは、自社でやった方が生産性が高いと思えば、必ずやってくる会社だからです。アマゾンに対抗できる会社でないと対等のパートナーになれません

いやそんなギスギスしたことを考えていても仕方がないですね。

それよりもむしろ、アマゾンを自らの成長のために利用していきましょう。

アマゾンのサービスを活用して、自社の経営を効率化・高度化していくのもよし。

あるいは、アマゾンとつきあうことで(あるいは競合することで)、自社をバージョンアップさせていくのもよし。

アマゾンはある意味、マーケティングの理念を究極まで突き詰めた企業ですから、それに触れて自らを進化させることができるモノリスのようなものと考えたらいいのではないでしょうか。


(2017年1月26日メルマガより)


■ここ最近、アマゾンの話題を聞くことが多いような気がしませんか。

アマゾンというのは南米の巨大河川のことではありませんよ。

世界最大のインターネット小売りであり、webサービス会社のAmazon.comのことです。

・自動決済の無人コンビニ「アマゾン・ゴー」をアメリカで開店。

・棚が作業員のもとに移動する自動倉庫「アマゾン・ロボティクス」の稼働。

・ボタン一つで商品を補充できるサービス「アマゾン・ダッシュ」の開始。

・話しかけるだけで商品注文や音楽を流したりできる機器「アマゾン・エコー」の発売。

無人コンビニ「Amazon Go」は日本の流通業界を席巻するか(ダイヤモンドオンライン)
http://diamond.jp/articles/-/114392

アマゾン倉庫、商品を運ぶロボットを国内初導入(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030800018/121600235/?rt=nocnt

家庭の日用品征服を目指すアマゾンの秘密兵器(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/120500058/

そのほか、ドローンで配達を試みたり、一般個人に手数料を払って配達してもらう仕組みを考えたり、あるいは本の定額読み放題サービスを中途で放り出そうとしたり...よきにつけ悪きにつけ、話題に事欠きません。

なんでもありのようなこの会社、どこへ行こうとしているのでしょうか。

■アマゾン.コムは、1994年、キューバ移民の養父に育てられたジェフ・ベゾスが30歳の時立ち上げたインターネット書店を前身としています。(創業時の名前はカタブラ.コム)

創業時のことを詳しく書いた本を読むと、アマゾンが創業者ジェフ・ベゾスの個人的資質に大きく影響を受けた会社であることがよくわかります。

参考:「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4822249816/lanchesterkan-22/ref=nosim

ベゾスが最初に思いついたのは、インターネットなら物理的な店舗や倉庫に制約されずに、あらゆるものを無限に売れるのではないか、という単純な発想でした。

彼はこれを「エブリシング・ストア」と呼んでいます。

もっとも最初からすべての商品を扱うわけにはいきません。慎重に商品選びをした結果、書籍を扱うことにしました。本はどこで買っても品質に差がなく、品数がやたらに多いからです。

■目論見通り、書籍のインターネット販売は当たります。

インターネットが出始めた頃にいち早く事業化しようとしたベゾスの先見の明は確かに素晴らしいですが、ここまでは多くの人が思いついてもおかしくないことです。彼が非凡なのは、この後からでしょう。

ベゾスは、ここでインターネット販売の重要な概念を見出します。

商品を無数に並べた場合、売れ筋商品というものが出てきます。通常、上位20%の売れ筋商品が、全体売上の80%を占めるようになります。(パレートの法則)

だから店舗などでは、売れ筋商品に品揃えを絞ることで生産性が向上します。コンビニが販売データを解析して、売れ筋商品を把握しようとするのはそのためです。

ところが、残り20%の売上は、売れ筋以外の80%が稼いでいるわけです。

これが「ロングテール」という概念です。

参考:とるに足りない80%(2006年のメルマガです)
http://www.createvalue.biz/column2/post-115.html

しかもアマゾンの場合、たまにしか売れない商品の販売額が全体の30%以上になっていたといいます。

物理的制約のある実店舗なら売れ筋に絞るのは正しいかも知れないが、店舗コストの小さいネット販売なら、残りの30%を捨てるのはもったいない。

むしろ実店舗が捨ててしまっている残り30%に焦点を絞るべきではないか。

ベゾスはそう考えました。

■それまでアマゾンは、商品販売だけを担い、配送はメーカーに任せるという楽天のようなスタイルを志向していました。

売れ筋商品だけを扱っているならばそれでよかったかも知れません

しかし、月に1個、年に1個しか売れないようなロングテールの商品をメーカーに個別配送してもらうのは無理があります。つまり物流機能はアマゾンが持たなければならないのです。

そこでアマゾンは、物流機能に莫大な投資をし始めます。

そのため、何年にもわたり、赤字状態から脱却できないようになったわけですが、ベゾスは意に介しませんでした。

■ジェフ・ベゾスの強烈な信念の中に「顧客ファースト」というものがあります。

何よりも顧客を第一に考える。

マーケティングの基本には違いないのですが、この基本にこれほど忠実な経営者はいないのではないかと思えます

なにしろベゾスおよびアマゾンは、得意先に評判が悪い。値切るし、無茶を言うし、こき使う。

交渉事は、一方的に勝つためにある、というのが彼の信条だそうです。だから得意先を出し抜くのも平気です。ましてやライバル会社をつぶすまで追い込むのは当たり前。

そこまでしてどうするのかと言えば、顧客に還元するのです。

最初に扱った「書籍」でも、販売力が増すにつれて横暴になり、出版社や取次の立場など無視した安値販売を行いました。

とことんまで安値で提供するのが顧客ファーストだと考えているからです。

■もちろんアマゾンが儲けるわけではありません。

赤字は平気な会社です。アナリストや投資家の短期利益志向を軽蔑しているふしがありますし。利益を出すぐらいなら顧客に還元する。

実際、アマゾンは創業から今に至るまで、黒字だった年は数えるほどしかありません。

利益を追求しない会社に、ライバル会社はどうやって戦えばいいというのでしょうか。

■本当のところ、ベゾスが利益を上げたくないわけではないでしょう。

が、短期的な利益はいらないと考えていることは確かです。

彼の競争に関する考え方も独特です。

「利益が高ければ、ライバル会社が参入してくる。だから利益が出ないような商売をする」のだそうです。

きわめて低利益でビジネスを成立させてしまえば、そんな旨みのない市場に、誰も後から参入しようとは思わないでしょう。

まるで焦土作戦のような参入障壁の作り方です。

■ロングテールという概念を知り、物流機能に投資をしたことがアマゾンの強みとなりました。

基本的に、アマゾンのビジネスは、積み上げ式であり装置産業といえるものです。

本から始まった扱い商品は、今や消費財から家電、食品、あらゆるものに及び、それらをストックし、配送する倉庫が全世界に作られています。

当初、1週間もかかっていた配送日数が、今では注文から1時間で届くサービスを開始しています。

顧客ファーストの信条のもと、顧客が買い物に抱くストレスをとことんなくそうという試みです。

そのため宅配便業者にしわ寄せがいっているわけですが、それでも宅配業者はついていくしかありません。

早晩、アマゾン自身が宅配業を始めるだろうからです。そうなった時、競争力を保持するためには、アマゾンの要求に応えられる体制を持っておかなければならないのです。

■さらにアマゾンは「プライム」というサービスを開始しました。年会費を払えば、配送料無料、短期配送、ビデオ見放題、音楽聞き放題というサービスを受けられるようになります。

これなど顧客を囲い込むストックビジネスそのものです。(ジェフ・ベゾスは「コストコ」の創業者からプライムのヒントを得たと言われています)

あるいはアマゾン・ウェブ・サービスという定額制のクラウドコンピューティングの提供も行っています。

低価格で高機能のクラウドコンピューティングを使えるため、小さな会社にとってはなくてはならないサービスとなり、今や世界トップのポジションにあります。

こうしたストックビジネスを意識した事業展開をしているため、アマゾンは販売手数料を0にしても利益が上がる体制を作りつつあると考えられます。

■今や、世界トップ10に入る大富豪になったジェフ・ベゾスとはどういう人物なのでしょうか。

上記の書籍「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」によると、ベゾスとは子供のころから、「ずばぬけて頭がよく」「とんでもなく勝気」な人物だったらしい。

目標達成にひたむきで、自分にも他人にも厳しく、徹底することを強います。

行き過ぎるほど創造力があり、突拍子もないアイデアを披露して、しばしば社内を混乱させたりもしているようです。

また非常な倹約家(ありていにいうとケチ)で、社員に贅沢をさせないことも有名です。(本人もスーパーで割引クーポンを利用しているらしい)

頭のいい人物を好み、社員採用には常に優秀な人材を求めます。社員が期待外れだと凄まじい罵詈雑言を浴びせることもあるそうです。

かといって陰気な偏屈男だというわけではなく、けたたましく笑う陽気な人物です。

アマゾンの道のりは一筋ではなく、様々な要素が影響しあって、現在の姿になったといえます。ベゾス自身、後付けで適当なストーリーにされることを嫌がっています。

が、一ついえるのは、ベゾスの信念の強さと類稀なリーダーシップがなければ、今のアマゾンはなかっただろうということです。

■まとめてみます。

私が考えるアマゾンの強みとは

(1)アマゾンのビジネスモデルがストックを重視しており、実際は利益を上げやすいものであること。定額サービスの提供に執念を持っており、そのための投資は惜しみません。

(2)きわめて長期的視野で運営されており、目先の儲けよりも、市場シェアを重視していること。短期的利益を求める投資家を無視して、顧客のための投資を止める気配はありません。

(3)「顧客ファースト」「ストックビジネス」「長期的視野」というジェフ・ベゾスの信条が全くブレないこと。この一貫性はベゾスの中でも最も優れた資質であり、優秀な社員が多いアマゾンをまとめる原動力になっています。

この3つの強みが機能する限り、アマゾンの優位性は続くでしょう。

つまり、ベゾスが生きている限り、アマゾンの進撃は止まりませんよ。

■最初に戻りますが、無人コンビニや注文ボタンは、顧客の購買行動を容易にするためです。

配送センターのロボットは、配送機能を高めるためです。

つまりこれまで取り組んできたアマゾンの事業の延長線上にあるものです。

今後、アマゾンはどうなっていくのか。

これまでの方向性をさらに進めるとすると...家を丸ごと扱うかも知れません。

アマゾンホームとかいって、定額で家、家具、水道、電気、ガスを提供。基本的な食材も提供。あとは個別注文。つまり生活のすべてをアマゾンで賄うのです。低価格で。

あるいはアマゾンカーかも知れません。定額のリースで車を提供。ガソリンや保険、点検、その他備品を提供。低価格で。

アマゾン起業かも知れませんね。資金調達からノウハウ、人材募集、仕入れ、製造、販売、事務所、コンピュータ、すべてをアマゾンで賄う小さなビジネスオーナーです。低価格で。

要するになんでもありです。

■懸念されるのは、ベゾスが死んだ後です。アマゾンが独占的な地位を利用して利益確保に走り出すと、それは害悪以外の何物でもありません。

そんな事態を招かないためにも、楽天やヨドバシカメラには頑張っていただきたい。ヤマト運輸や出版社や今後も含めてアマゾンにかかわるすべての企業にはアマゾンに対抗できるスキルと体力を維持しておかなければなりません。

なぜならアマゾンは、自社でやった方が生産性が高いと思えば、必ずやってくる会社だからです。アマゾンに対抗できる会社でないと対等のパートナーになれません

いやそんなギスギスしたことを考えていても仕方がないですね。

それよりもむしろ、アマゾンを自らの成長のために利用していきましょう。

アマゾンのサービスを活用して、自社の経営を効率化・高度化していくのもよし。

あるいは、アマゾンとつきあうことで(あるいは競合することで)、自社をバージョンアップさせていくのもよし。

アマゾンはある意味、マーケティングの理念を究極まで突き詰めた企業ですから、それに触れて自らを進化させることができるモノリスのようなものと考えたらいいのではないでしょうか。


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