コラム

農業にチャンスあり

(2009年2月26日メルマガより)

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■週刊ダイヤモンド2009年2月28日号で、農業の特集をやっておりますが、
読まれましたか?

なかなか面白いですよ。

ここにきて、農業が、にわかに脚光を浴びています。

一つは雇用対策です。

みぞゆうの金融危機による失業者の増加が社会問題となっていますので、雇
用の受け皿として、慢性人手不足が伝えられる農業に注目が集まっています。

もう一つは、国産農作物に対する意識の高まり。

海外産に偽装が相次ぎましたので、信用が置けなくなってしまいました。そ
こで、少々割高でも、国内の安心な食べ物がほしいという国民が増えてきて
いるようです。

さらに、もう一つが、純粋なビジネスの対象として。

農業は長らくビジネスの舞台として、採り上げられることが少なかったと思
われますが、ここにきて、どういうわけか、ビジネスの視点から語られるこ
とが多くなってきています。

■農業がビジネスとして注目を集めるのはなぜか?

それは、日本の農業政策が転換期を迎えているからに他なりません。

市場の構造が大きく変わるとき、必ず、巨大なビジネスチャンスが生まれて
きます。

特に日本の農業行政は、これ以上ないというほど硬直化してどうしようもな
い状況のようですから、改革の機運も高く、チャンスも巨大です。

■日本の農業行政のいびつさは、40年も続いている「減反」政策に表れてい
ます。

これは、各米作農家が自由に米を作れば、供給過多になって米価が暴落する
ので、生産量を調整し、価格を維持しようとする政策です。

その代わり、減反に応じた農家には、その分を補助金で補填するというもの。

価格維持で消費者が高い米を食べ、しかも税金で負担させられるという二重
に国民が損をする仕組みです。

そうしなければ、日本の農業が壊滅してしまうから、長期的に見れば、国民
の利益になるのだ、という理屈のようですが。

しかし市場原理を無視した政策には、農業関連の政官民癒着の構造であると
の批判が絶えません。

日本の農業が弱くなったのは、こうした保護行政の弊害であるという意見も
根強いものです。

ですが、私はあまり詳しい方でもないので、これ以上言及は避けます。

私の関心はビジネスにありますので。

■農業は「スケールメリット」が効くビジネスです。

週刊ダイヤモンドにありますが、水田の場合、20ヘクタール以上になると、
飛躍的に農業所得が向上します。(1ヘクタールは1万平米)

それ以下だとほとんど儲からない。

非常に分かりやすいビジネスの仕組みを持っています。

だとすれば、大規模化すればいいんじゃないか。ということになりますが、
そうはいかないのが、日本の農業の難しさです。

■実は、日本の水田の9割が2ヘクタール未満です。この原因は、農地解放の
時代に遡る必要があります。その後、相続などを繰り返して、小さな農家が
乱立することになってしまったようです。

もっとも、こうした状況は他の国でもあります。

例えば、旧共産圏の国などでは、民主化する際に、国有の農地を農業者に分
割譲渡したようですから日本と変わりません。

■旧ソ連時代に「穀倉地帯」として名高かったウクライナもその一つです。

この一帯には黒土と呼ばれる肥沃な土壌が広がっているので、今でも世界有
数の農業適地です。

ところが、農地を分割譲渡してしまったために、ウクライナの農業生産性は
著しく低下することになってしまったようです。

近代的な農機具を使って効率的に生産すれば必ず儲かるのに、規模の小さな
土地では、経費倒れしてしまうために、細々としか運営できない状況になっ
てしまったわけです。

■そこに目をつかたのが、イギリス人のリチャード・スピンクスです。

彼は、世界中を放浪して、ビジネスチャンスを捕まえるのが得意な生まれな
がらのアントレプレナーといった男です。

彼はウクライナでランドコム社を立ち上げ、小さな農場を運営している農家
から農場を借り上げ、しかも農家にはそのまま働いてもらい賃金と賃貸料を
払い、大規模化した上で、最新の農業機械を導入することで、生産性を高め
巨大な利益を得るというビジネスを考えました。

農家とすれば、収入は増えるわ、仕事はそのまま確保されるわ、至れり尽く
せりの政策です。うまいビジネスモデルを考えたものだと思います。

事実、彼はその方法で、巨大農場を経営し、ウクライナの外貨獲得に一役を
買っています。

彼によると「ウクライナがEUに入ってしまったら、うまみがない。入る前
に儲けるのがコツ」と豪語しています。

もっとも、今、ウクライナは金融危機で通貨が80%も下落したということ
だから、大変でしょうが。

■ランドコム社のビジネスは「スケールメリット」に焦点を絞った分かりや
すいものです。理に適っていますね。

日本で同じ方法ができないものか。

実は日本では、そうはいかない事情があるようです。

一つは、日本の多くの農家は高齢化しており、新しいことに与しようという
機運に欠けるきらいがある。

また、一つは、地価高騰により辺鄙な土地が急騰するという「成功体験」を
持った農家が多くあることです。

日本の土地は右肩上がりに高騰を続けていましたし、近くに大型スーパーが
できるといった幸運があれば、さらにおいしい。どうせ農地にかかる税金は
小さいのだから、人に貸して借地権を主張されるぐらいなら、遊ばせておけ
ばいいという考えです。

今では、土地の値上がりは一服しましたが、人は成功体験からはなかなか抜
け出せないものです。

■しかし、週刊ダイヤモンドでは、実はそうでもないよ、と言っています。

企業家が本気で農業をしたいというなら、貸してもいいという農家は多くい
るらしい。

ただ生半可な考えでかき回されたらたまらないので、様子を見ている農家が
多い。

要は、これから始めようという人のやる気のようです。

そういう意味では、この分野にはチャンスが確かにあるわけです。

ある程度の資本を集められる方は、スケールメリットを狙っていくのが、効
率的です。

■ところで、スケールメリットが効くというのは、市場が確かにあるという
ことを前提としています。

米作など主要作物は、需要がはっきりしているので、分かりやすい。

需給バランスによって価格が決まるので、利益は少ないが、ある規模を超え
ると、計算が立ちます。

端的にいうと、販売と流通、回収は農協に任せていれば、自動的に儲かりま
す。

■小さな農家がその方法をとっていたのでは、何年経っても儲かりませんね。

だから、新しく参入する方々は、付加価値のついた農作物を作って、自分独
自の市場を探して、販売することとなります。

例えば、イタリア料理に使うある特殊な野菜を有機農法で作って、独自にイ
タリア料理店を開拓し、供給するといったやり方です。

これは、小さな市場に狙いを定め、製品差別化し、ルート開拓するというラ
ンチェスター「弱者の戦略」が機能します。

だから、最近、私にも、農業関係者からの相談が目立つようになってきてい
ます。これは偶然ではなく、農業にチャンスが訪れているということを象徴
しているのかも知れません。

■私の実感ですが、この分野には、ランチェスター戦略がそのまま適用でき
ます。

農業をされている方は、作物の品質にかけては絶対の自信を持っている方が
多いようです。

だから主要課題は、どこを市場と定め、どのように攻略していくかとなりま
す。

ランチェスター戦略の最大のノウハウは、目標設定とその攻略の管理ですか
ら、まさにお家芸といった分野ですね。

■またこれも私の実感ですが、一方で、作り手の自信が困難を呼ぶことも実
は多い。

ベタな話で恐縮ですが「よいものは必ず売れる」と信じている人が多い分野
でもあります。

ある意味、純粋培養されているのですね^^;

商品の価値は、顧客がそれを認めて代金を払う時点で発生するのに、最初か
ら価値のあるものを生産しているという気持ちを持っています。

だから、自分の思い込みに市場を合わせようとしてしまう。

自分の商品を認めてくれる市場を求めて、さまようことになるわけです。

私は、そういう思い込みを廃して、論理的に市場に向き合うことをコンサル
ティングするのですが、実際のところ、思い込みを変えられずに、迷宮に入
ってしまうこともあります。

私の至らなさと言ってしまえば、それまでですが。

■週刊ダイヤモンドに掲載されている事例は、まさに付加価値のある商品を
独自ルートで販売することに成功した(しつつある)例のようです。

私の関係するところも、そのような方法で、展開を目指しています。(もち
ろん、詳しくは言えませんが)

これって、小さな製造業が市場で生き残るための方法と何ら変わりません。

決して特殊な分野ではないのですね。

小さな農業事業者も、ランチェスター戦略を活用してください。

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