コラム
小さな企業は逆転の発想で戦え!
(2004年12月24日メルマガより)
■製品ライフサイクルって、ご存知ですか?
製品にも人間と同じような一生があるっていう考え方です。
一生ですから、生まれて、成長して、大人になって、最後には死んでしまい
ます。
なんか、悲しい気もしますが、製品も最後には死んでしまうんですね。
これって、マーケティング戦略をたてる上で、けっこう使う考え方なんです。
■マーケティング戦略の大家、P・コトラーも「マーケティング原理」の中
で、大々的に取り上げています。
もちろん、ランチェスター販売戦略の創始者、田岡信夫先生もその著書の中
で、製品ライフサイクルについて言及しています。
一般に、製品の一生は
1.導入期
2.成長期
3.成熟期
4.衰退期
に分けられます。
1.導入期には、製品が知られていないわけですから、いきなり売れるわけ
ではありません。知ってもらうために広告宣伝費などを使うので、コスト割
れとなります。
2.成長期になると、売上は右肩上がりに増大します。したがって、利益も
上がります。ただ、競争業者が多く現れるので、厳しい戦いになります。
3.成熟期には、売上の成長は鈍化し、利益もピークを過ぎます。
4.衰退期になると、売上、利益ともに急速に低下します。
■田岡先生は、有名な「グー・パー・チョキ理論」を提唱しました。
導入期には、1点集中でいく。(グー)
成長期には、販売・生産ともに手を広げる。(パー)
成熟期に入る前には、無駄な部分をカットする。(チョキ)
■少し考えてみると、いろんな製品にあてはまりますよね。
ファッションなどの流行品は、わりにすぐに盛り上がって、サッと消えてい
きます。
日用品などは、息が長いですが、一つ一つの製品は、やはり、売上のピーク
というものを経験して、しだいに廃番になっていきます。
たまに10年以上も売れ続けるお化け製品がありますが、これは例外です。
ほとんどの製品は、一生というものを経験します。
■実は、この製品ライフサイクルという考え方、一つ一つの製品だけではな
く、ある製品群や、業界にもあてはまります。
例えば、IT業界、鉄鋼業界、繊維業界などといった大きな枠にも使えます。
IT業界というのは、今、導入期か成長期ですね。
石炭業界というのは、どうでしょうか。衰退産業ですね。
この場合、一生の期間が長いですが、やはり、死ぬことがあるんですね。
■成長期のことを「上がりエスカレーター」と呼んだ人がいます。
まさにその通り。これから、売上と利益がどんどん上がっていくのですから、
勝ち馬に乗るような状況です。
だから、多くの企業は、成長期の製品や業界に着目します。
■ただ、安易に参入するのは禁物です。
確かに、頑張れば、売上も利益も上がるかも知れませんが、成長期にあるお
いしい市場には、競争相手が多く参入します。
びっくりするような大手企業が相手になるかも知れません。
確かに、頑張りと工夫次第では、大きな利益になるんですが、「なんとなく
儲かりそう」という参入では、やけどを負うのが落ちです。
■2004.12.22の日経新聞(関西版)に、関西機械各社が、米国で販売攻勢をかけているという記事が載っています。
一般的に考えれば、機械需要が旺盛な成長市場は、中国です。
ただ、それは誰もが目に付けるところ。価格競争力の強いメーカーが多く参入しています。
米国のような成熟市場においては、もう儲からないので、普通は売り込みにいこうなどとは考えません。
そこにあえて目をつけたのが、関西の企業です。
(クボタ、ヤンマー、森精機、ダイキン工業の例が掲載されています)
■成熟市場の特徴は、平均的に売上が下がること。
この「平均的」というのがクセモノです。
平均的には売上が下がっていても、あるお客さんの層には、逆に売れていた
りします。
クボタは、家庭用小型トラクターを米国で、年間9万台近く販売しています。
ヤンマーは、つり用ボートのエンジンを年間70億円販売しています。
いずれも、ターゲット顧客は、一部の富裕層です。
彼らの求める製品を投入し続けているわけです。
こんな細かなところに目をつけるのは、むしろ中小企業の得意技ではないで
しょうか。
■成熟市場の戦略は「チョキ」でした。
つまり、無駄な部分をカットして、利益を出そうとするわけです。
大きな企業が、手を狭めたら、その市場には、スキマができます。
大企業が、儲からないからと撤退した市場は、中小企業の出番を待っている
ようなものです。
■もちろん、そこにも、競争が存在します。
中小企業だけではありません。
実は、最近、大手企業も経営効率を上げて、そんなスキマ市場を積み重ねて、
業績を上げようとする動きが見られます。
皆、あの手この手で必死なんですね。うかうかできません。
ただ、スキマで向き合えば、大手も中小も条件は同じ。
いわゆる「一騎打ち」です。決して勝てないわけでありませんので、勇気を
持ちましょう!
ただ、決して、勝てない戦いではないことでしょう。
■小さな企業は、逆転の発想で戦え!
小さな企業は、裏道にこそ、実があることを忘れずに。