コラム
見えない敵と戦うには
(2005年9月15日メルマガより)
■前回は、本当に怖いのは「見えない敵」だということをお話しました。
コンサルタントが課題に取り組むときも「本質的な問題」を発見しないこと
には対応策を出すことができません。
敵がどういう考えを持ち、どういう特徴があるのかを知らなければ、対処の
しようがありません。
■では「見えない敵」と戦うためにはどのようにすればいいのでしょうか。
■ひとつは予測して、対応策を用意しておくことです。
「既存のライバル」「仕入先・販売先の寝返り(?)」こういったものは、
見えない敵ではありません。
十分、動きが予測できる敵です。
しかたがって、ある程度、備えをすることができます。
■「新規参入業者」は、ある程度、見えない敵です。
スケルトン程度ですかな(笑)
市場が儲かれば参入業者が現れることは予想できますから、これも、準備は
しておかなければいけません。
ただし、こちらの土俵にわざわざ出向いて戦ってくれるわけですから、不利
な戦いではありません。
むしろ「強者の戦略」で、対処することができます。決して恐れることはあ
りません。
■「代替品」は、やっかいです。これは見えない敵といってもいいでしょう。
自社の商品(ビジネス)がある日、全く違うビジネスに置き換えられるので
す。
ポケットベルは、携帯電話の出現で、消滅しました。
カメラという商品は、デジカメに置き換わりました。
CDも、ネットワーク配信に置き換えられ、風前の灯火です。
いずれも、消費者の目から見れば「なくなっても困らないものリスト」に入
ってしまったわけです。
■メーカーの方は「いや、うちの商品には、それなりの良さがある」と言わ
れるでしょうが、残念ながら、それは作り手側のエゴでしかありません。
それが良いかどうかを決めるのは、メーカーではなく、消費者です。
消費者の「なくなっても困らないものリスト」に入ったら、もう手遅れです。
「それなりの良さ」をうまく活かして、骨董や工芸品のように生きのびます
か?
■そうならないためには…
私は、やはり、消費者の視点に立つクセをつけることだと思います。
マーケティング理論の大家、フィリップ・コトラーは「製品の本質」のこと
を「顧客にとっての便益の束」であると言いました。
難しい言い回しですね。。(^^;
「便益」とは、消費者にとっての「問題解決」のことです。
さらに難しい。。(^^;
■要するに、我々が商品やサービスを購入するとき、その商品そのものの所
有を目的としているわけではありません。
何らかの不便や期待などを感じて「問題解決」することを目的として購入す
るわけです。
例えば、資生堂の福原義春名誉会長は「お客さまは商品を買うのではなく”
きれいになること”を買うのだ」という発言をしています。
チャールズ・レブロンも「我々は口紅を売るのではない。”希望”を売るの
だ」と言っています。
セオドア・レビットは「顧客は、1/4インチのドリルを買ったのではなく、
1/4インチの穴を買ったのだ」と言いました。
お分かりですね。
化粧品がなくても”きれいになること”が簡単にできるならば、化粧品は、
その顧客の「なくても困らないものリスト」に入ってしまうわけです。
1/4インチの穴を開ける必要がなくなれば、ドリルは不要です。
■作り手側が意図して製品にこめた”本質”のことを「製品コンセプト」と言います。
この製品を「希望を求めて使用してほしい」「穴を開けるために使用してほ
しい」という意図です。
「製品コンセプト」と、顧客が感じる「問題解決」がぴったりとはまってい
る時は、製品は生きています。
「製品コンセプト」が、顧客にとって、最良の「問題解決」でなくなれば、
製品は置き換えられます。
■稀に、メーカーが意図しない売れ方をする場合があります。たまたま、消
費者の問題解決に役立ったという場合です。
しかし、これは、喜ぶべきことではありません。
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」(by野村克也)とい
うわけです。
ラッキーは継続しません。むしろ、ラッキーは手痛い失敗の前兆です。
ですから、メーカーは「製品コンセプト」が、ずれないように全神経を集中
させるべきです。
■もちろんメーカーだけではありません。
あらゆるビジネスは、社会に何らかの「問題解決」を提供しています。
ですから「事業コンセプト」が、最良の「問題解決」かどうかを常に検証す
る必要があります。
それが最良の「問題解決」でなくなった時、ビジネスは一瞬にして置き換え
られてしまいます。
■お分かりでしょうか。
見えない敵といっても、勝ち負けを判断するのは、顧客です。だから、やは
り顧客に選ばれることしか、生きる道はないというわけです。
■クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』によると、
どんな優れた企業でも、革新的な新興企業に敗れる日がやってくるというこ
とです。
その敵は、常識外れのことをやる無数のベンチャーの中から、意図しない成
功を伴って、突然現れます。
つまり、敵はまともな相手ではなく、自然淘汰を勝ち抜いた突然変異のよう
な企業だということです。
これではダーウィンの進化論ではないですか。
ただ、それでも生き残っている”エクセレント・カンパニー”は多数存在し
ます。
”希望”を持っていきましょう!
追記:
■衆議院総選挙が終わりました。すさまじい勢いで自民党が勝利しましたね。
「わかりやすい論点提示が受けた」「首相のリーダーシップが期待された」
などと、巷で論評されていますが、ここで今さら繰り返しをしても仕方あり
ませんので、今後の行方に注目しましょうと言うに止めます。