コラム
駄菓子屋さんの成功要因
(2007年12月20日メルマガより)
■子供が地域のクリスマス会などでお菓子の袋を持ち帰ってくることがあり
ます。その中に何が入っているか、気をつけて見たことがありますか?
多分ないでしょうね。私も気に留めたことはありません。
でも、今回、このメルマガを書くにあたってちらっと見てみました。
すると、あるわあるわ^^
錠剤型ラムネ。。これはサイダーの形をした小さなプラスチックの容器に入
っています。
ソース焼きそばスナック。。かっぱえびえんのソース味みたいなやつです。
千歳飴のような長い形のチューインガム。
練どら。。これは小さなどら焼きの中にあんこの代わりに練乳を入れたもの。
よくわからないグミ。。
そして定番「うまか棒」
いっぱい入っているようで実はあまり高くない^^まさに駄菓子の真骨頂で
すな。
■安い価格帯で手を変え品を変え、よくもまあ子供に響くお菓子を考えて作
るとは、大したもんだと思います。
おそらく私が子供の頃から、価格帯はあまり変わっていないはずです。
失礼ながら、こういうメーカーはどうやって存続しているんだろう。。。と
思いませんか?
でもそんな心配は大きなお世話のようです。実は、駄菓子メーカーは結構儲
けているらしいですよ。
■世間的には、今、ちょっとした駄菓子ブームが起きているようです。
ショッピングセンターや繁華街などで駄菓子専門店があるのを見かけません
か?それも結構いい場所に。
ショッピングセンターなどでは、最も目立つ場所に出店しているところもあ
ります。つまり、集客の目玉としての位置づけです。繁盛しているんですな。
■こうした駄菓子専門店にはフランチャイズ展開をしているところがありま
す。それぐらい集客できているわけです。
駄菓子専門店の強みは、子供から高齢者までをターゲットにできること。
子供は純粋な興味から。大人は懐かしいレトロ店として。高齢者は孫を連れ
て。
私なんぞは“ビリーバンバン”が流れる「いいちこ」のCMみたいな非日常
空間を感じます。小さなテーマパークですね。
子供を連れていっても単価は安いもんですから、いくらでも買ってやれます。
なにしろ百円ショップより安い。実に健全なレジャーですね。
要するに、駄菓子屋さんは、全世代をターゲットにできて、消費そのものを
楽しむことができる優秀な小売店なのです。
■もっとも、今は、珍しいから集客できているわけで、あまり増え過ぎると、
非日常的な驚きも薄れてしまうでしょう。
ケチをつけて申し訳ございませんが、われわれ(ランチェスター関西戦略勉
強会)はそう考えました。
この駄菓子屋の盛況が「ブームを超えて定着した」と見るのは早計だと思い
ます。
■しかし、駄菓子屋メーカーの興隆には、企業戦略ウォッチャーとしての興
味が尽きません。
例えば「チロルチョコ」といえば10円~30円の商品ですが、製造する松尾製
菓は95億円の売上高です。
どんだけ~ 売っているんでしょうか^^;
「ベビースターラーメン」のおやつカンパニーは150億円の売上高。「うま
い棒」のリスカも100億円程度の売上高だそうです。
■チロルチョコは、どこでこんなに売っているのか?
実は、これ、コンビニの隠れたヒット商品だそうです。
日経ビジネスによると、200円の菓子が1日に1個売れたらいいというコン
ビニ1店で、チロルチョコは30円の商品を30個以上売ることもあるらしい。
しかも小さくコンパクトな商品だから、売り場効率が格段にいいときていま
す。まさに優等生商品です。
コンビニというチャネルに対応したからこそ興隆した。コンビニの申し子と
いったメーカーです。このあたりの事情は、おやつカンパニーも似ています。
■コンビニの需要に対応するために、松尾製菓は1分間に1000~1500個のチ
ロルチョコ生産を可能とするラインを設備しています。
単価の極端に低い商品で収益を上げるためには、大量生産が不可欠です。こ
の生産ラインが同社の収益の源泉となっています。
松尾製菓に限らず、駄菓子メーカーは、単価の低い商品を扱っているため、
製造コストには敏感です。
10円の商品で利益を出そうと思えば、1円のコストダウンに過敏にならざる
を得ませんよね。
■ただし、利益を出せる体制を整えると、収益をある程度計算しやすくなり
ます。
というのも、10円や20円の商品を値引きして販売しようとする小売店はさす
がにありません。上代も下代もおそらく一定であると思われます。
実は、駄菓子は利益を読みやすい商品なんですね。
■駄菓子メーカーにとって重要なもう1つの変数が販売量です。1円2円の
利益を積み上げる世界ですから売らないと仕様がない。
もちろん基本は「弱者の戦略」です。
したたかなメーカーがしのぎを削る業界ですからさぞかし最先端のマーケテ
ィングを繰り広げているのでしょうね。。と言っておきますが、ちょっと見
る限りは、ニッチ狙いをやりすぎて訳の分からない状態になっているように
も感じます^^;
なにしろ、一定の価格帯さえ守れば、商品企画はなんでもあり。アイデア一
発勝負の新商品を次から次に作っては、廃番を繰り返すというやり方です。
チロルチョコなど年中新製品を作っており「うなぎの蒲焼チョコ」なんて企
画が試行されているぐらい何でもありです。
この状況では市場分析も何もあったもんじゃないでしょうね、きっと。
ちなみにチロルチョコは量販店向けに「セット袋」も用意しており、型落ち
商品の行き先もある程度は見込んでいます。
ヒットした商品に関しては、定番化して収益のベースとすることは他の事業
と同じですね。
■販売チャネルに関しては、コンビニという黄金チャネルを確保し対応した
メーカーが大きく飛躍しています。
小さな企業にとって、成長するチャネルとパートナーシップを組めるかどう
かは、企業生命に関わる問題です。
前出のメーカーは、生産体制、パッケージ、味のバリエーションなどで見事
に対応したわけですね。
もっとも、コンビニは成長の踊場にあります。駄菓子専門店もいつまでも調
子がよいとは限らないでしょう。
販売量が命綱のメーカーにとってチャネル確保は最重要課題ですから、神経
を研ぎ澄まして次の販売ルートを探していることでしょう。
■まとめます。
駄菓子メーカーの成功要因は、超低価格に対応する製造体制の実現。一度、
実現すれば、利益は読みやすい商品です。
次に、販売量を得るための販売ルートの確保。特にコンビニのような成長チ
ャネルと組むと有利です。
そして消費者を飽きさせないニッチなあるいはエッジの効いた製品投入と定
番商品を作ること。。。です。
■駄菓子という業界にも多くの知恵と努力が結集していることを知りました。
ビジネスは深いですね~
(日経ビジネス2007年11月5日を参照しました)