コラム
「日本一の村」改革に挑戦!
(2008年1月17日メルマガより)
■私は「儲かる仕組み」なるものを会社に導入することを勧めています。
「儲かる仕組み」とは、普段の仕事を着実にやっていれば、特段意識しない
でも儲けに結びつくという仕組みのことです。
日々「どうやったら儲かるんだろ~」と思い悩んでいるようでは経営になら
ないですから、どんな企業も「儲かる仕組み」を持っているはず。
それを意識しているかいないかだけです。
■意識していない企業については、自社の「仕組み」は何かを再確認するこ
とをお勧めします。
というのも、どんな優秀な企業であっても「仕組み」は錆び付いてきます。
無意識に儲かる仕組みを動かしているという優秀な企業であっても、知らず
知らずのうちに無駄や非効率がはびこり、ずれてきてしまうものです。
「仕組み」は、事あるごとにメンテナンスしなければなりません。だからこ
そ、それを意識することは必要なのです。
■20世紀に最も機能した「仕組み」の1つが、日本の行政機構です。
政府と官僚機構が主導して経済を引っ張っていく仕組みは、世界最高の経済
成長を実現するために十分に機能しました。
しかし明治以来続いた中央集権国家の仕組みは機能不全を起こしています。
次々に露呈する地方自治体の財政破綻がそれを端的に示しています。夕張市
に続き、大阪府も大阪市も似たような状況であると言われています。
これは単にその自治体が怠慢であったとか、能力に劣っていたとかいう単純
な問題ではありません。日本の行政機構の仕組みが役割を果たせなくなった
という構造的な問題です。
■岩手県に、そんな状況にいち早く気づき、構造改革を成し遂げた自治体が
あります。
「人口日本一の村」と言われる滝沢村です。テレビにも取り上げられた話で
すからご存知の方も多いと思います。
参考:「『日本一の村』を超優良会社に変えた男」
■滝沢村は、人口5万3千人。盛岡のベッドタウンとなっているため、人口
は多いのですが、市になるための要件を満たしていないので村のままです。
目立った産業や特産品があるわけではありません。
しかしこの村の借金はたった185億円。57%が自主財源だという優良自
治体です。
この村の行政は変わっています。
「農道を作ってほしい」と陳情に来たある地域に対して「そんなに欲しけり
ゃ自分たちでつくればいいべ。材料費は出してやる」と村長が言ったそうで
す。言われた方は言われた方で、2年かけて農道を作ったとか。通常なら2
4億円かかる工事を700万円の材料費支出だけで済ましたらしい。
あるいは、滝沢村役場の課長職は「投票制」です。自分たちで相応しいと思
える課長を選ぶ仕組みです。民間企業ならちらほら話も聞きますが、年功序
列が当たり前の役所に、こういう人事制度をとっているというのです。
■滝沢村が最初から変わった地域だったわけではないようです。実は、この
村の改革は、1994年に柳村純一氏が村長になってから始まりました。
村長の初挨拶が「社員のみなさま!」だったそうです。冗談でも言い間違い
でもなく、職員は民間企業の社員と同じ気持ちになれという意思を示したの
です。
つまり、役場にとって住民は「お客様」である。民間企業のようにお客様主
体の事業運営しなければならないという意思表示です。
■柳村村長の目から見た時、当初の滝沢村役場は完全に機能不全を起こして
いるように見えたらしい。
滝沢村役場の職員は約300人。暗いどんよりとした職場で、職員に覇気がな
い。余計な仕事が増えるのを嫌がり、チャレンジ精神なし、そのわりに残業
はやり放題。職員の情報感度が低く、ニュースさえ見ているかどうか分から
ない。セクショナリズムがはびこり、自分たちの利益を守るために力を注ぐ。
周りがこんな状況では呆れて投げ出してしまってもおかしくはないのですが、
柳村村長は「何とかしないとダメだ」とファイトを燃やしたようです。
そんな柳村村長が何から始めたか。分かります?
実は、村長がまずしたことが「職員の飲み会に参加する」ことだったと言っ
たら驚きますか?
しかし、柳村氏は組織改革のポイントの1つとして「対話」をあげています。
これは性格だったのかも知れませんが、1年かけて各職員との「飲みニケー
ション」に勤しみ、300人の職員の性格や考え方を把握していったそうです。
我々コンサルタントの中には、正しい理論を提出さえすれば、実行するのは
企業の問題だと突き放してしまう傾向がなきにしもあらずですが、現実の組
織を動かす側はそれでは終われません。
実行されない100点満点の解答よりも、実行できた40点の解答の方がずーー
と役に立ちます。柳村村長のこの粘り強い姿勢には、見習うべきことが多いと
感じる私です^^;
■柳村氏は、組織にはキーとなる人物がいると言います。その人物を育て、
動かすことができれば、組織は変わり出す。
柳村村長は、その人物が誰か、誰が候補かをずっと見ていたんでしょうね。
2年目から、本格的に改革に着手します。
まず取り組んだのが「情報公開」です。自治体の活動として今では珍しくな
い動きですが、この頃にはまだ珍しかったことです。
情報公開するためには部署を超えた連携が必要になります。1つの情報が各
部署に関連していることが多々あるので、協働してルール作りをしなければ
情報を整理することも公開することもできません。この部署を超えた連携が、
村長の意図するところだったようです。
情報公開の準備をするうちに、部署を超えた職員の間に自然と連携する気持
ちが芽生えていったのです。
最初は、どの情報がどこにあるかも分からない大変な状態で、職員の反発も
相当のものだったそうですが、若い職員が中心になって情報を整理する仕組
みを作りました。このシステムが、自治大臣賞を受賞しています。
■組織改革の達人として思い出すのが、GE(ゼネラル・エレクトリック社)
のジャック・ウェルチです。彼は、巨大な官僚的組織であった老舗企業のG
Eを世界有数の戦う集団に変えたことで「20世紀最高の経営者」と呼ばれ
た人物です。
ジャック・ウェルチは様々な経営手法をコンサルティング会社と一緒に開発
し、疲弊した組織を活力のある柔軟性に富んだ集団に変えていきました。
「ワークアウト」や「シックスシグマ」などの手法は、GEによってその効
果が認知されることになりました。
ただ、彼がやった改革の本質は、人を変えることです。彼は「人が第一、戦
略は二の次」という発言をしています。様々な経営手法は、人が変わるきっ
かけとして機能させるためのものだったのです。
■滝沢村の改革も、情報公開をきっかけとして、職員の意識が変わっていく
ことで進んでいきます。
柳村村長は、休む間もなく「ISO9000と14000のダブル認証取得」
「経営品質賞へのチャレンジ」という役所としては異例中の異例の活動に取
り組んでいきます。
これが滝沢村改革のポイントの1つ。外部の認証を得て、形のあるものを残
すという方法をとったことです。
組織改革というものは目に見えない形で進んでいきます。知らず知らずのう
ちに進んで、気が付いたら変わっていたという具合です。
だから、進行中は、本当に改革はうまく行くのだろうかという不安が残りま
す。職員のモチベーションを維持するために、外部の認証を利用することは
効果的な手法です。
それにしても「経営品質賞」は、普通、先進的な民間企業が得るものです。
村役場がその賞にチャレンジして、受賞したというのは前代未聞のことでし
た。
チャレンジしている間は「村長のスタンドプレーに付き合わされて迷惑だ」
という不満も聞こえたようですが、受賞してみると、職員の士気は非常に上
がったようです。
■そうなるとしめたもの。あちこちに前向きな姿勢を持つリーダーが現れて、
組織を引っ張っていくようになります。
柳村氏はもともと専制的なリーダーシップではないので、組織の自主性も育
ちやすかったと思われます。
柳村村長は「最後の2年は職員が勝手に仕事をするから、村長はすることが
なくて暇だった」と述べています^^
■柳村氏の改革のポイントをまとめておきます。
1.まずは対話をすること。意思疎通を図る。
2.外部の認証などをうまく活用し意識変化を促す。
3.改革の火を絶やさず畳み掛けるように施策を打つ。
そして、組織とは、結局は人。だから、
4.教育に時間と金を使う。
ということです。
■そういえばジャック・ウェルチも、世界最高峰の社員教育機関を作ったこ
とで有名です。
GEは全米最大の人材輩出企業となり、自身も人材の宝庫と言われるように
なりました。
組織改革の秘訣がこのあたりにあると思いませんか?
参考:「経済レポート専門ニュース」
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■今回参考にしたのが、上記の「経済レポート専門ニュース」です。
これは、実は大阪の若い起業家が運営するサイトです。
このサイト、すごいでしょう。
■私は以前からこのサイトについては知っていたのですが、大阪産業創造館
の関係で、偶然、この代表者にお会いしました。
誠実そうで、シャイな好青年です。話をしていて、該当のサイトの運営者だ
と知った時は本当にびっくりしました。
世間で狭いなーーーと思いましたよ。
■このメルマガを書いたり、あるいはコンサル時の調査をする時など、この
サイトを参考にさせてもらっています。
ちなみに、この運営者は社会貢献意欲の非常に高い方です。儲けようとする
よりも、サイトを多くの人に利用してもらうことに意義を感じておられるようです。
怪しげなところが微塵もない人だったので、私も好もしく思いました。
皆さんもぜひご利用ください。