コラム

10年後に照準を合わせる

(2008年5月8日メルマガより)

■私事ですが、5月は創業関連の研修・セミナーを2回実施する予定です。

1つは、創業前のアイデア出しに関するセミナー。

もう1つは、そのアイデアを活かして創業するためのコンセプト作りのセミ
ナーです。

■前にも書いたと思いますが、私は、創業者を3つのタイプに分けています。

1つは、起業に最も近い位置にいるが、忙しい割りに儲からない専門家(ス
ペシャリスト)タイプ。

1つは、そもそも起業することが珍しいので貴重な管理者(マネージャー)
タイプ。

1つは、活力にあふれ最も起業家らしいが、一歩間違えば山師になりかねな
い起業家(アントレプレナー)タイプ。

実際のセミナー(事業コンセプトセミナー)では簡単なテストをして、自分
がどのタイプであるかを確認していただきます。

厳密なテストではありませんので、そこまで深刻に捉えられても困るのです
が、自分がどのタイプであるかを知ることは、今後の活動の参考になると思
います。

■一般に創業者といえば、行動力がありやる気にあふれた起業家(アントレ
プレナー)タイプを思い浮かべるかも知れません。

しかし、多数の創業者とお付き合いしてきた私の印象では、典型的な起業家
タイプは多くありません。

山師のような人材はある意味貴重になったのかも知れませんな^^;

実際には、堅実さを身上とする専門家タイプが多いのが現状です。

創業するのに堅実さを特徴とするというのも妙な気がするかも知れませんが、
これも成熟市場である日本社会の状況を反映したものなんでしょう。

■私は、コンサルタントとして、堅実さをフォームとする創業者を肯定して
います。

一か八かの勝負は、自分のことなら兎も角、人にはお勧めしません。

固定費を切り詰めて、無理な勝負はせずに、着実に拾える利益を追求するの
が、企業家のすべきことです。

夢は「世界平和」や「天下布武」でも、私が関わる限り、現実には足元のし
っかりとしたビジネスをやってもらわなければなりません。

■という、私の基本的な考え方を踏まえて、以降をお読みください^^

■1999年、不動産バブル崩壊真っ只中の頃、世間とは全く逆のことを考
えていた人がいます。

その人は、不況下にあって、考えられないような消費を行う金持ちが日本に
は存在することに気づきます。

いわゆる富裕層と言われる人たちです。

どこの国にも、景気動向に左右されない富裕層は存在します。

特に日本は世界第2位の金持ちの国。実は富裕層の数も世界で2番目に多い
国なのです。

その人は、自分も富裕層になる!と思ったのかどうか。。。

まずは、そうした富裕層をターゲットとするビジネスを思いつきます。

■そこで立ち上げたのが、富裕層マーケティングの草分けである株式会社イ
ー・マーケティングです。

富裕層を対象とした雑誌やwebサイトの運営、セミナーやイベントの開催、
高級品の販売代行、サービス=コンシェルジュ事業などを行っています。

創業社長の臼井宥文氏は「富裕層+マーケティング+IT」をコンセプトに
同社を創設しました。

臼井社長によると、富裕層を対象にビジネスすることは、収益効率がいいだ
けではなく、会社のブランド力を高めることにもなり、さらに時代を先取り
することにもなるとのことです。

というのも、富裕層の行動や消費動向は、数年後の一般的なトレンドになる
ことが多いからだそうです。

■1999年当時には、一部のお金持ち相手に商売をしようという会社はな
かった(あるいは表に出ていなかった)ようです。百貨店の外商部ぐらいで
すかね。

特に、富裕層ビジネスのマーケティング(リサーチ)会社という存在はなか
った。

だから、始めた途端にオンリーワンです。

いい市場を見つけましたね^^

■もっとも、私の知る限り、創業者の多くはオンリーワンの市場を見つけて
います。

たまに「儲かる商売を教えてください」と聞いてくる創業予定者もおられま
すが^^;

多くはご自身で、独自のニッチ市場を見つけて、アイデアを持ってこられます。

ただし、オンリーワンの市場=儲からない市場でもあります。

万が一、見つけた途端にザクザク儲かる金鉱脈のような市場があるのかも知
れませんが、殆どは、市場が未成熟すぎて儲からない。

考えれば、儲かる市場なら、ライバル企業が参入してきますな。それがオン
リーワンに止まれるというのは、儲からないからです。

すばらしいアイデアだと思っても、ほとんどが儲からなくて辛酸をなめるの
が現実です。

■イー・マーケティングも、最初の10年は儲からなくて四苦八苦したそう
です。

1999年当時、一部の富裕層相手のマーケティング会社など成功するはず
がないと笑われたそうです。

笑う側の方がまともな感覚です。

これをビジネスにしようという臼井社長は、単純な思考回路とクレイジーな
行動原理を持つまさに典型的なアントレプレナータイプに他なりません。

皮肉な話ですが、富裕層相手の会社が、貧乏で事務所もなく、友達となんで
儲からないんだーーと悩む日々です。

簡単に書きましたが、10年でっせ!

どうやって生活したんでしょうか。

■臼井社長は「10年頑張ればモノになる!」と耐えたそうです。

その間、富裕層と言われる人たちの生態?やニーズを研究していきます。

気づいたのが、金持ちといっても様々な方々がいること。

不動産バブルの崩壊後だから、旧タイプの土地長者は鳴りを潜めていました。

その代わりに、事業や投資によって一代で財を成した人々が出現していました。

この人たちを「ニュー・リッチ」と名づけたのも、臼井社長だと言われてい
ます。

ニュー・リッチの人たちがどのような消費行動をとるのかを研究していきま
した。

これが評価されたわけですな。

興味を持った企業や行政から問い合わせが入るようになり、いつしか「ニュ
ー・リッチのことならイー・マーケティングに聞け」という流れになったそ
うです。

■臼井社長の「3年で富裕層になる!」という本には、そんなニュー・リッチ
数人の履歴が紹介されています。

私自身はこの本(の題名と論理展開)は全然信用していませんが^^;

それでも心躍る内容で楽しめました。

■昔、天才バカボンという漫画の中で、クレイジーな作曲家の話がありました。

彼は、自分の才能を疑わずに様々なレコード会社に売り込みをかけます。

レコード会社は揃って「10年後に来てくれ」と言います^^;

彼は「10年後は予定がいっぱいだけど、それまで暇だなあ」と考えて、1
0年分の睡眠薬を一気呑みする。。。という話です。

ブラックな話ですね。

■私はコンサルタントですから「10年間頑張れば何とかなる」なんて結果
論をお話するわけにはいきません。

確かに、創業する場合、将来のビジョンを持つことは非常に重要です。

ビジョンが明確でなければ行き当たりばったりになってしまい迷走します。

しかし、その次に重要なのが、10年後のビジョンを達成するために、今、
何をしなければならないかという行動計画です。

特にお金の問題は深刻です。

事業の存続と創業者の生活を維持するための資金の確保がなければ「子供の
使いが画に描いた餅を持っている」ようなもんです^^;

ここを疎かにした計画は成り立ちません。

■私がこれまで見てきた創業準備者も、最初に掲げていた壮大な夢のような
計画から、地に足の着いた実現可能な計画に修正することで、創業を達成し
ていかれました。

当初の夢からは、スケールの小さなこじんまりした計画になるかも知れませ
んが、そこで卑下していたら成功できません。

当初の夢は胸に抱きつつも、今、キャッシュを稼げることを確実にやるとい
うのが成功者になる道です。

■大きな夢を実現するための区切りとなる計画をこまめに立てていく。

要するに、ここで必要なのは、目標達成の技術のことです。

気持ちだけあって創業がうまくいかない人と、何らかの形を作って創業して
いく人との違いは、ひとえにこの目標達成の技術を身につけるかつけないか
だと私は思います。

■イー・マーケティングの臼井社長は本当に夢だけを見てガムシャラに突っ
走ってきたのでしょうか。

そのあたりは明らかにされてないので分かりませんが、私は、そうではなく
細かな目標達成への道があったのだと考えています。

ただ偉いのは、10年間、当初の「富裕層に対するマーケティングを行う」
というコンセプトを失わなかったことです。

この市場が儲かるとなれば、多くの競合が参入してきます。

その中には名だたる大企業も存在しています。

それでも、イー・マーケティングがこの分野でトップ企業であり続けられる
のは、10年間のノウハウとブランドの蓄積があったからです。

「○○のことなら、あいつに聞け」

そう言ってもらえるようになるためには、フロントランナーとして10年の
艱難辛苦があったわけですね。

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■「3年で富裕層になる!」という本は危険ですな^^

ここには、様々なニューリッチの肖像が描かれています。

不動産投資や先物投資、IPOで富裕層の仲間入りした人だけではなく、地
味な事業をある時点でレバレッジをかけることにより、富裕層入りを達成し
た人の話も掲載されています。

これを読んでいると、自分も簡単にできるような錯覚に陥ります^^;

気をつけましょうね。

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