コラム

中国・ロシアに行け!

(2008年5月22日メルマガより)

■前回のメルマガで、今の起業者には、典型的な起業家(アントレプレナー
タイプ)が少なくなっていることを書きました。

典型的な起業家とは、大きな夢を持ち、アイデアフルで、活動的なエネルギ
ーにあふれ、少々の困難にはへこたれないクレイジーな突破力を持つ起業家
のことだと私は考えています。

しかし、現実には、そういう方はあまり見かけません。

たまーに、いい人がいるなーと思っていたら、単なるいい加減なやつだった
り、ただの礼儀知らずだったり。最悪の場合は、詐欺師だったり^^;

もっとも典型的な起業家は詐欺師と紙一重なのかも知れません。

こういうタイプは貴重なんでとりあえずキープしておきましょう。
面白いですからね^^;

■それはともかく。。。

成熟市場である日本において、万事おおざっぱな起業家タイプは、活躍の場
を失っているのかも知れません。

緻密さよりも強引に周囲を巻き込むことが身上の起業家は、成長市場におい
て力を発揮します。

市場を切り開けば儲けは後からついてくる、というスタイルですから、細か
な差別化が必要な市場には向いていません。

だから私はそういう人を見ると「中国かロシアに行けばどうですか?」とお
勧めしています。(もちろん冗談ですよ!)

■その中国ですが、相変わらず、凄まじい勢いですねーー

確かに、日本にやってくる中国観光客の買い物の勢いは、語り草になってい
ます。

秋葉原や日本橋で大量に買い込んでいる人を見れば大抵は中国の方だという
状況です。

昔から日本橋などの家電街には、中国人をターゲットにした店が存在しまし
たが、今や町全体が、アジアの観光客をメインターゲットにシフトしつつあ
るようです。

■石川県の小松空港は、いわゆるローカル空港ですが、上海からの直行便が
あるために、中国からの玄関口の様相を呈しているそうです。

加賀屋などの温泉宿も、中国の観光客には人気です。

昨年、石川県でセミナーを行いましたが、その際、地元の小売店などは、中
国の方のバイイングパワーに着目したビジネス展開をしている旨を仰ってい
ました。

具体的には言えませんが。。。しかし、日本の観光立国は、ローカルなとこ
ろで着実に始まっているんだなあと感心したのを覚えています。

■2007年の中国富豪番付を見ると、1位は26歳の女性で資産は1兆8000億
円!

1億円を超えると中国では相当の生活ができるでしょうに、とうとう1兆円
を超える富豪が出てきたんですなー。

ランキングを見ていると、不動産業が上位に多いのは当然として、鉄鋼、機
械、鉱業などの重厚長大産業から、ネット検索、ポータルサイト、オンライ
ンゲームなどのITビジネスまでランクインしています。

石炭と太陽エネルギーが同時にランクインしているのも象徴的です。

要するに、昔の日本のように、第2次産業から第3次産業にゆるやかに移行
していったという流れではなく、あらゆる産業が同時に立ち上がっている状
態です。

これは勢いがあるはずです。チャンスがゴロゴロしていますよ。

■世界企業の時価総額を見てみると、1位はエクソンモービル。2位はなん
と、中国石油。3位にゼネラルエレクトリック、4位に携帯電話のチャイナ
モバイルが入り、5位はロシアのガスプロムです。(マイクロソフトは7位)
*2008年4月集計

日本企業は、10位以内にランクインしておりません。ちなみにNTTドコ
モの時価総額は、チャイナモバイルの1/5です。

つまり、世界の株式市場は、中国やロシアの企業の将来性を評価し、日本を
評価していないということ。日本企業優位を示すデータはありません。

日本の置かれた状況を冷静に見なければなりませんね。

■一方のロシアも凄まじい。

ロシアの場合、10年前までは、国家財政が破綻の危機に見舞われていまし
た。

それが、今や、かつての帝国復活かと言われる勢いです。

その最大の要因が、世界的な資源の高騰。

なにしろ原油の価格が10年前の10倍以上に上がっています。

この状況が、世界一の資源埋蔵国であるロシアに恩恵をもたらさないはずは
ありません。

ただし、それだけでロシアが復活したわけではありません。

■10年前、エリツィン政権の末期、ロシアはまさに瀕死の状態でした。

ソ連が崩壊し、体制変化の混乱に乗じて台頭した経済マフィアと言われる連
中がロシアの経済を牛耳っていました。

なにしろ大物政商がロシアの富の50%を支配していると言われていました
から、まさに国家の私物化です。

彼らはエリツィン政権に深く食い込み、政財界を支配する存在でした。

■エリツィンの引退に際して、大物政商たちは、自分たちの言いなりになる
大統領を慎重に選びました。

それが現首相のウラジーミル・プーチンです。

KGB出身のプーチンは、マフィアと手を組むのにうってつけの存在である
と考えたのかどうか。

ただし、プーチン自身は、経済マフィアが期待したような人物ではありませ
んでした。

■プーチンは、自身の私利私欲よりも国益を優先させる人物でした。

大統領に就任早々、自分の後ろ盾となっていた大物政商たちを横領・脱税で
追及。抵抗する者は容赦なくシベリア送りにしました。

彼らは、KGBを掌握している男の実力を見誤っていたのです。

政治権力に深く食い込んでいた大物政商たちも、プーチンの底知れぬ実力の
前では歯が立ちませんでした。

かつての政商たちは力を失い、一部は国外に逃亡。プーチンに忠誠を誓い納
税の義務を果たす者だけが生き残っています。

この一事によって、プーチンはロシア国民にとって最大の英雄と崇められる
存在となりました。

■かつて政商たちが所有していた大企業は国家に吸収され、実質プーチンが
支配しています。

特に石油・ガスを国家が管理する体制を整えたことが、その後のロシアの躍
進につながりました。

三井物産、三菱商事らが開発してきた石油ガスプロジェクト「サハリン2」
が、ロシア政府から難癖をつけられて権益を奪われた事件は記憶に新しいと
思いますが、これもロシアの国益のためなら手段は選ばないというプーチン
の方針を端的に表したものです。(その他批判的なジャーナリストを粛清し
たりと黒い噂は絶えませんが…)

ただし、一方で、一般の法人税を大幅に下げることで、チャンスが国民全体
に行き渡る仕組みをとっています。

要するに、現在のロシアの繁栄と活力は、単なる資源高騰という幸運による
ものではなく、一連のプーチン改革の賜物であるわけです。

まさに地獄から天国へのV字回復。ロシアのリバイバルは、日産の比じゃあ
りませんね。

大統領を辞めた今も首相に止まり権力を掌握し続けるプーチンは、実際には、
絶大な国民の支持で辞めることができない政治家でもあるのです。

■いずれにしろ、ルールがあってないような中国やロシアの状況を見ている
と、典型的なアントレプレナーの活躍する市場であると感じます。

その市場はまさにハイリスク・ハイリターン。ちょっとした読み違いが命取
りになると同時に、考えられないような富を得ることができる市場です。

そこでは、緻密な事業計画や、市場細分化や差別化はいりません。多分に情
緒的な勢いや情勢に対応する柔軟さが勝負を決する世界だと考えていいでし
ょう。

■たまーに、こういう相談があります。

「今、儲かる事業は何ですか?教えてくださいよーー」

冗談ではなく、本当にこういう人はいるんですよ。

私の答えは決まっています。

「中国かロシアで探されたらどうですか」

参考:「週刊ダイヤモンド2008/5/3・5/10合併号」

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