コラム
エコカー開発競争
(2008年8月14日メルマガより)
■日産自動車が、世界初の電気自動車量産メーカーを目指すそうです。
最新技術を展示するためではなく、ビジネスのコアとして位置づけ、日産=
電気自動車と思われるまでになりたいということです。
さすがカルロス・ゴーンCEOですね。インタビューも派手です^^
■環境対策で言えば、ハイブリッド車は日本の独壇場となっています。やは
りトヨタの永年の技術の積み上げが大きいようです。
これに、ホンダが相変わらず独自の方式で挑んでいます。
置いてけぼりを食らった日産とすれば、今更、ハイブリッド車で追随するわ
けにはいきません。
そこで、ハイブリッドの先の技術に賭ける戦略です。
■これは理に適った戦略です。
ハイブリッド車が隆盛だといえ、これはあくまで過渡期の技術です。
同じ土俵に留まって同質化競争を仕掛けても未来はありません。
近い将来、化石燃料に頼らない車が主流になることは明らかですから、今の
うちに先行して技術の蓄積を目指すわけです。
■もっとも脱化石燃料を目指すのは、すべての自動車メーカーに共通のミッ
ションであり、日産の専売特許ではありません。
三菱自動車や富士重工業も2009年の実用化を目指して電気自動車を開発して
います。
(電気自動車が本当に脱化石燃料なのかは議論が分かれるところですが…)
トヨタやホンダは、その先の燃料電池自動車の研究開発を進めているようで
す。
■そもそも一口にエコカーと言っても、種類は豊富です。
最も実用的なハイブリッド車は日本勢が優勢です。
欧州勢はクリーンディーゼル車に先行していると言われています。
そして日産が狙う電気自動車。
真のゼロエミッションである燃料電池車。
今のところ、何がスタンダードになるのかは分かっていません。
もしかするとソーラーカーが主流になるかも知れない。
そんな中でことさら電気自動車に特化する日産の戦略は、ハイリスク・ハイ
リターンであると思えます。
もしかすると、プラズマテレビに特化した松下電器のような目に合うかも知
れませんからね^^;
■ちなみに、エコカーの開発競争では、アメリカ勢が遅延というか不参加な
ので、日本車の独壇場です。
アメリカの場合、政治がらみで複雑な事情があるようですな。
噂レベルでしか知りませんが、石油を使わない車を開発などしようものなら、
恐ろしい仕打ちが待っているらしい。
民主党政権になると変わるかも知れませんが…
■そんな中、ハイブリッド車は、石油メジャーも(しぶしぶ)容認する車の
ようです。
またハイブリッド車は、現状のインフラをそのまま使えるので、極めて現実
的です。
GMが2010年にハイブリッド車を上梓すると発表しているのは、周回遅れの
参入という感がありますが、それでも無いよりはマシでしょうね。
■それにしても、なぜトヨタとホンダだけがハイブリッド車に強いのか?
実はハイブリッド車は、ガソリン車と電気自動車を無理やり組み合わせたよ
うな車ですから、ムチャクチャ複雑な構造になっているそうです。
この複雑な車を作るためには、組み立てメーカーと部品メーカーが相当深い
連携をとらなければなりません。
車は、パソコンのように部品を集めてきて組み立ててOKというわけにはい
きません。微妙な調整があります。
文字通り、三日三晩徹夜で泥まみれになりながらすり合わせを行うような世
界なんでしょうな。
こういうものづくりは、系列の部品メーカーを多く抱える日本のメーカーに
しかできない芸当のようです。
■逆に言うと、部品メーカーを整理した日産は、ハイブリッド車を苦手とし
ているわけです。
だから、部品点数の少ない電気自動車の開発に特化するというのは理に叶っ
た戦略であるという所以です。
■それにしても、アメリカの自動車メーカーは苦しんでいますね。
戦略論で言うと、アメリカの3大メジャーが一斉に、電気自動車の規格を統
一して研究開発とインフラ整備を行うと、一気に日本勢を逆転できるチャン
スがあるかも知れません。
もっとも、そういう長期投資を許す株主はいないでしょうが。
民主党政権になって、補助金をいっぱいつぎこまないと、現実化できないで
しょうね。
しばらくは日本車の優位は続きそうですよ。