コラム
緊急性にフォーカスせよ!
(2008年9月11日メルマガより)
■成功する起業者と失敗する起業者には、行動特性に明確な違いがある。。。
と言えば、興味ありますか?
ちょっと扇情的に過ぎますかね^^;
ただこれは、特にこの1年、多くの起業者と接してきた私の実感です。
確かに、成功する起業者を見ていると、ある特有の考え方をして、それに従
った行動をとります。
(もちろん、たまたま成功したとしか言いようのない人もいますけど^^;)
起業者に限りません。ビジネスに携わる者に特有の傾向だと私は考えていま
す。
■ただし、この場合、起業の成功とは、スタート時点での成功という程度に
捉えてください。
厳密に言えば、どこまでいけば成功と言えるのかが分からない。ビジネスに
終点なんてありませんので。
■はよ、言え!
ってつっこまれそうですが。
。。。(^^)
私が言うのは、今回の題名でもある「緊急性」のことです。
成功する起業者は、自分のビジネスの緊急性をよく考えています。
■起業者のビジネスアイデアを評価する時、私はしばしば「重要性」と「緊
急性」という項目で検証します。
「重要性」とは、顧客の目的にとって重要かどうかを表します。
例えば、健康で豊かな人生を送りたいと考えている人にとって、“病気にな
らないこと”は、非常に重要です。
企業経営者にとっては“従業員が満足し幸せを感じること”が、とても重要
です。
大学受験を控える者にとっては、“志望校に受かる学力をつけること”が言
うまでもなく重要です。
■ビジネスにおいては、顧客のベネフィット(便益)を把握することが必要
不可欠であるとどのビジネス書にも書いてあります。
それも表層的なベネフィットではなく、真のベネフィット。。。つまり、最
も本来的で重要なベネフィットに応えることが成功の鍵となります。
多くの起業者は、自分のよく知っている業界分野で起業するので、そのあた
りを外す人はあまりいません。
逆に言えば、あまり馴染みのない業界分野で起業する人は、ベネフィットを
掴み損ねることがあるので、成功率が低くなると言ってもいいでしょう。
■起業者の多くは一生を賭けているのですから、非常によく考えておられま
す。
考えに考え抜いて、「これしかない!」というビジネスを掲げて起業するわ
けです。
だから「重要性」という要素にかけては、文句のつけようがない。
ただし、それだけではスタートダッシュができるとは限らないのが、ビジネ
スの難しさです。
■消費者の立場からすれば、我々は「それが重要かどうか」だけで消費を判
断しているわけではありません。
例えば、“病気になりたくない”と思いながらも、いつも健康に気をつけて
いるわけではありません。不健康なことを散々しておいて、病気になった時
にしか、人生の意味を問い直しません。
“事業の目的は従業員の幸せだ”と本気で思っている経営者も、従業員の幸
せってなんだろうという哲学的な問いをいつもしているわけではありません。
受験生に至っては、漠然と“学力をつける”と言っていられる場合ではあり
ませんね。
■最近の傾向として“環境ビジネス”で起業(あるいは新事業進出)しよう
とする人が増加しています。
環境問題は、人類にとっての重要事です。
我々のうち誰一人も、環境問題から目を背けることはできないはずです。
ただ、環境ビジネスで大成功したという人をあまり聞きません。大成功どこ
ろか、そこそこ食えているよ。という人も少ないのが現状です。
それはなぜか。
もうお気づきだと思いますが、それらには「緊急性」がないからです。
■環境問題に緊急性がないと言ったら、意識の高い人に「想像力が足りない!」
と怒られそうですが^^;でも、そうなんだから仕方ありません。
私の知り合いに、中小企業に特化した環境ビジネスのコンサルティングをし
ている人がいますが、漠然と「環境に配慮しよう」と言っているうちは、仕
事になりませんでした。
「環境に配慮することで、コストダウンが図れる」「罰則規定から逃れられ
る」「補助金を得ることができる」と、より緊急性の高いベネフィットに翻
訳することで、ようやく話を聞いてもらうことができるようです。
■「重要性」と「緊急性」がともに高いならば、ビジネスを始める上で、問
題はありません。
しかし、多くの起業者は「重要性」にフォーカスするあまり、「緊急性」と
いう視点を見落としています。
実に多くの起業者が「こんな大事な商品(サービス)が売れないのはおかし
い」という独りよがりな考えに陥っています。
実際には、消費者は「大切だ」というよりも「いますぐ欲しい」というもの
により強く反応するものです。
先ほどの例で言うなら「病気にならない」だけではサービスとして弱いわけ
です。
「癌を予防する」でも弱い。
「癌になった時に回復を助ける」ならば、重要性は低くなるけれども、極め
て緊急性の高いサービスとなります。
■このように緊急性とは、顧客に応じて、具体的に提示することで見えてき
ます。
だから、緊急性を示すためには、まず「誰を顧客にするか」を明確にしなけ
ればなりません。
誰が顧客かが漠然としたままなら、緊急性の高い切り口など提示しようがあ
りません。その意味でも「顧客を絞る」ことは大切です。
■私は、緊急性には「物理的緊急性」と「情緒的緊急性」があると整理して
います。
「物理的緊急性」とは“それがなければ成り立たない”あるいは“制度的に
それを欠くことはできない”というものです。
例えば、ある病気を患っている人にとっての特定のワクチン。
インターネットに接続したい人にとってのオペレーションシステム。
北京五輪前の水泳選手にとってのスピード社の水着。
企業経営者にとっての税理士。
これらは皆、それがなくてはならない「物理的緊急性」であると私は整理し
ています。
物理的緊急性の高いビジネスを実現できるならば、それがとりあえずは成功
確率が高いビジネスになるということを理解できるでしょう。
■では、物理的な緊急性を提示することができないならばどうすればいいの
か。
その時に有効なのが「情緒的緊急性」と私が呼ぶものです。
これは、それがなくてはならないという合理的理由はないものの、なくては
ならないと心理的に思えるものを指します。
例えば、山の頂上で飲み物を販売することは、喉が渇いている人にとっては、
物理的緊急性が高いビジネスです。
これに対して、山の頂上で記念撮影をしてくれるサービスは、別になくても
困らないが、なんとなく希少性があるように思える情緒的緊急性をついたビ
ジネスです。
■実はあらゆる商品やサービスは、切り口を変えることによって情緒的緊急
性を高めることができます。
例えば、ある歯医者さんは「虫歯を予防するシステム」を商品として販売し
ていましたが、お察しの通り緊急性が低いので、あまり売れているとは言え
ませんでした。
そこで、そのシステムの一部である「口臭予防」を前面に押し出したところ、
問い合わせが倍増したということです。
これは明らかに“口臭に悩む人”にとって緊急性の高いサービスになったか
らです。
■私は現在、緊急性という切り口を研究しています。
まだ体系的に整理できていないのが現状なので、申し訳ありません。
ただ、近いうちに、緊急性という切り口の作り方を発表させていただきたい
と考えています。
特に情緒的緊急性は、起業者のみならず、あらゆる事業者にとって役に立つ
考え方であると信じています。
現在の私のテーマのひとつです。
頑張ります^^