コラム
ローカルヒーロー花盛り
(2008年11月6日メルマガより)
■唐突ですが、日曜日の午前7時~8時台は何をしておられますか?
寝ている、という方が多いでしょうか。
気持ちは分かります^^
ちなみに、我が家は、この時間帯は必ずテレビを観ています。
午後7時30分~8時までは「炎神戦隊ゴーオンジャー」
午後8時~8時30分までは「仮面ライダーキバ」
雨の日も風の日も雪の日も嵐の日も、この番組だけは外しません。
小さい子供がいない家には分からないでしょうね。。。
■我々の世代(40代)から見れば、「ゴーオンジャー」は、「ゴレンジャ
ー」の流れを汲む戦隊ヒーローもの。
勧善懲悪の単純なストーリーで分かりやすく作られています。
敵役は、世界に公害を撒き散らそうとする怪人です。環境保護も裏のテーマ
になっているんですかね。
基本的に1話完結で、怪人を一人ずつ倒して終わります。
■これに対して「仮面ライダーキバ」はもちろん「仮面ライダー」の流れで
す。
こちらは、ストーリーが複雑です。現代と過去を交互に見せていくという意
欲的な展開を見せています。
仮面ライダーも怪人も同じ「吸血鬼」という設定で、何が悪で何が善か分か
らないように描かれています。
一人の怪人を3~4話平気で引っ張りますし、正直に言って、ストーリーが
さっぱり分からん。
真剣に見ないと理解できません。
■どちらの番組も、ある程度、大人を意識して作られています。
出てくる俳優はイケメン揃い。3枚目の役柄の者もイケてます。お母さん対
策というわけです。
ちなみに「ゴーオンジャー」の敵役(ケガレシア)は及川奈央という元人気
AV女優が演じています。
密かにお父さんを喜ばそうとしているんですかね^^
■「仮面ライダーキバ」に関しては、さらにストーリーの複雑さで大人の鑑
賞に堪えうるように作られています。
たぶん、一度見たら、次も見たくなるように作られているんでしょうな。ま
るで「24」か「ロスト」のようです。
そうなれば困るから私は真剣に見ないわけです^^;
■「炎神戦隊ゴーオンジャー」は「スーパー戦隊シリーズ」の32作目に当
たります。
「仮面ライダーキバ」は「平成仮面ライダーシリーズ」の9作目に当たりま
す。
いずれも東映とバンダイがタッグを組んだコンテンツビジネスのドル箱キャ
ラクターになっているようで、止められないシリーズなんですな。
■大和総研によると、日本のキャラクタービジネスの市場規模は、2006
年で1兆6千億円。
コンテンツビジネス(映画、音楽、演芸、文芸など)全体では約11兆円と
なります。
ちなみにアメリカのコンテンツビジネスの規模は、約42兆円。世界は巨大
です。
キャラクターを含めたコンテンツビジネスの美味しさは、様々なものに応用
が利くということ。(キャラクター商品。出版物。広告キャラクターなど)
および、複数のメディアに展開できるということ。(テレビ、雑誌、映画、
DVDなど)
この2つの発展性にあります。
逆にいうと、一つのコンテンツを、様々に使いまわして、多くのメディアに
展開することが成功の要因です。
なるべく多様な展開をするために、しっかりとした世界観と物語を作り、消
費されても疲弊しにくいものとする必要があります。
アメリカのハリウッド映画が、シナリオやキャラクター設定に多大な労力と
費用をかけるのも、コンテンツという根幹をしっかりとするためにあります。
そういう意味では、日本の特撮ヒーローは、しっかりとした世界観とキャラ
クターを既に確立しています。(ワンパターンなのは、シリーズの完成度が
高いということの裏返しでもありますね)
ちなみに土曜日8時からは、東映とトミカがタッグを組んだ戦隊もの「レス
キューフォース」なる番組もありますので。
■こうしてみると、特撮ヒーローは日本が世界に誇る有望コンテンツである
と同時に、日本の文化であると言いたくなります。
秋田県に面白い事例があります。
「超神ネイガー」という極めてローカルな特撮ヒーローの存在です。
ネイガーとは秋田の伝統文化であるなまはげの「悪い子はいねいがー」とい
う言葉からとったものだとか。
普段は農業を営む青年アキタ・ケンが、秋田県の危機に際して、超神ネイガ
ーに変身して悪を倒すというシンプルなストーリーです。
■このヒーローの仕掛け人は、元プロレスラーの青年だそうです。
東京でレスラーとしての道半ばで挫折して秋田県にUターンした青年が、地
元の活性化策として立ち上げたのが、特撮ヒーロープロジェクトです。
仮面ライダーに憧れていた青年は、自分で演じるために、ヒーローものを研
究し、子供に受けるキャラクターやストーリーを作り上げました。
ここで重要だったのは、極めてローカルなヒーローとして設定したことです。
全国展開する必要はない。秋田だけで通用するヒーローを目指しました。
ストーリーもキャラクターも小道具も徹底して秋田の伝統に関連したものと
設定しています。
地元の人からすれば「あー、あるある!」というものばかりだとか。最初は
マニアックな面白さが受けていたのかも知れませんが、次第に地元の伝統や
誇りを考えるきっかけになっていったようです。
まさにランチェスター戦略にいう「接近戦」です。
このことからも、仕掛け人の青年グループに、冷静な戦略眼とマネジメント
能力が備わっていたことが分かります。
■青年グループは、地元のイベントなどで質の高い「超神ネイガー」ショー
を展開します。
子供たちを中心に盛り上がった人気は、地元メディアにとりあげられ、次第
に、キャラクタービジネスとして展開していくことになります。
テレビやラジオでの番組展開。キャラクターのフィギア、主題歌CD、DV
D。様々な提携商品。
地元に貢献したいと考える県内企業を巻き込んで、一大プロジェクトに育っ
ているそうです。
■地域密着の方針。確かな戦略。冷静なマネジメント。
様々な要素がありますが、私はやはり、特撮ヒーローという誰でも理解でき
るキャラクターや世界観が、プロジェクトの中心にあったことが大きかった
と思います。
企業の担当者も「あー、それ面白い」「分かる分かる」というものに取り組
みたいですからね。
東映の特撮ヒーローを模倣した上で“ローカル”という差別化を明確にした
ことが、成功の要因です。
ちなみにこのヒーロー。ローカルさが受けて、逆に全国の注目を集めている
そうです。
■ちなみに、意外というか、当然というか。。。秋田県だけではなく、各地
にはローカルヒーローが存在しています。流行と言っていいかも知れません。
日本人に、特撮ヒーローの類型が刷り込まれているから、作りやすいわけで
す。
東京には「環境戦隊ステレンジャー」。群馬には「超速戦士G-FIVE」。
新潟には「離島戦隊サドガシマン」。三重には「観光戦隊イセシマン」。和
歌山には「紀ノ國戦隊紀州レンジャー」。沖縄には「琉神マブヤー」。
いずれも、エンターテイメントとしての完成度を地元イベントなどで地道に
構築し、地元メディアとのタイアップを得て、地域密着のビジネスを展開し
ています。
これに比べたら、奈良の「せんとくん」などのゆるキャラは、今はブームか
も知れませんが、物語としての世界観がないだけに足腰が弱いでしょうね。
■ただし、これからは、単なるローカルヒーローではインパクトがありませ
ん。超神ネイガーの2番煎じとなってしまいます。
今後は、ローカルヒーローの中でも、ダーティなやつとか、ゆるいやつなど
いろいろ変り種が出てくるのかも知れませんね。
あるいは、ローカルヒーロー同士がタイアップして、新たな物語を作ったり
とか、そういった動きが出てくるかも知れません。
■沖縄の「琉神マブヤー」は、毎週土曜日の朝6時45分から放映されてい
るそうです。
「沖縄ベンチャースタジオ」という情報誌の記事によると、こちらもやはり
超ローカルで、沖縄の伝統文化や古い言葉を知らない者には分からない内容
となっているそうです。
分からない言葉が出てくれば、親に聞けばいい。そうすれば沖縄文化のこと
を知るようになる。。。という思惑だそうですね。
「接近戦」という戦略も、これだけ郷土愛にあふれたものならば、やりがい
があるでしょうね。
戦略には愛が必要だ!なんて、セミナーで言ってみましょうか^^
そんなベタなこと、絶対に言いませんがね。。。(^^;
参考