コラム
コンビニ・オーナーというビジネス
(2010年9月9日メルマガより)
■前回(9月3日)のランチェスター戦略勉強会でネタとして採り上げたの
ですが、こちらのブログが面白い。
作者は、コンビニのオーナー経営者であるようです。もしかしたら有名な人
なのですかね。私は残念ながら存じません。こちらのブログを読んだのも初
めてです。
しかし、これがすこぶる面白い。
自分が経営するコンビニで、夏におでんを売る、その顛末を書かれています。
語り口調が、ちょっとふざけた感じを出しているものの、展開が論理的で、
かつ具体例が適切なので、スムーズに理解することができます。
しかも内容が深い。これはぜひとも読むことをおススメいたします。
■コンビニは、決して楽な商売ではありません。
既に成長期は過ぎてしまい日本国内は飽和状態になっていると言われていま
す。
それに応じて、コンビニ単店の売上も減少傾向にあります。
コンビニ本部は、成長を命題としているので、店舗数を増やすことで成長を
維持しようとしますから、個別店舗の売上はますます下がることになってい
きます。
げに哀れなるは、脱サラ組の単店オーナーよ。
もともとコンビニは青天井に儲かる仕組みにはなっていません。商圏が限ら
れているので、いくら成功しても、売上には限界があります。
逆に、売上が下がれば、途端に損益分岐点を下回ってしまい儲からなくなり
ます。
つまり、コンビニのフランチャイジー(加盟店)とは、儲かる範囲が非常に
狭いビジネスなのです。
■なぜコンビニが儲けにくいのか、このあたりの事情は今週号の「週刊ダイ
ヤモンド(2010.9.11)」に詳しいので参照ください。
特に会計システムのところに注目ください。ひどいもんですから。(P35)
■もちろん、コンビニのフランチャイジーのメリットもあります。
既にビジネスモデルが出来上がっているので、資金さえ用意すれば、すぐに
業務にとりかかることができます。
商圏が決まっており、集客のノウハウも一応教えてくれて、陳列から店内販
促から、レジ打ちから、その他管理業務も形が出来上がっています。
経営者とすれば、戦略を立てる必要も、ビジネスモデルを一から構築する必
要もないわけです。
もっとも、フランチャイザー(本部)によっては、いい加減なところもあっ
て、ロイヤリティだけとって何のノウハウもないということがあるかも知れ
ませんので、注意しなければなりませんが。
それはともかく、脱サラして独立しようとする人にとって、一番難しい戦略
と管理の仕組みを準備してくれるというのは、確かに魅力です。
「戦略、管理」はすっ飛ばして、「実践」から入ればいいわけです。
私の見るところ、殆どの起業者は「戦略、管理」が完成できずに、苦労して
います。
「実践」だけはガムシャラにやるが、働いても働いても思うようにキャッシ
ュが残らない、そんな状況に陥る人々を散々見てきています。
それを思えば、頑張れば儲かる、という状況が出来上がっていることは有難
いことです。
■まあ、しかし。ぶっちゃけた話。。。
わざわざ独立して、経営の醍醐味である「戦略、管理」作りを他人に任せる
ことって、意味があるのだろうか。と思うわけです。
しかも、儲けには上限が歴然としてあります。
本部の言う通りガムシャラに働いて、一定レベルの儲けを得ることって、サ
ラリーマンと何が変わるのでしょうか。
失敗した時の保証がないだけ、損な立場ですよ。
■だから私の考えは、コンビニ・オーナーは、脱サラ組が、なけなしの資金
をつぎ込んでする仕事ではない、というものです。
オーナーが本部に「儲からないじゃないか」と文句を言ったら、「1店舗じ
ゃ無理ですよ。2店舗、3店舗と持たないと儲かりませんよ」と言われたと
いう話も聞いたことがあります。
これがフランチャイジーの真実でしょうね。
1個の儲けが薄いので、横展開するしかないわけです。
それなら、最初から多店舗展開できるような資産家や企業が取り組むべきで
す。
資金的余裕のない者が、最初の1店目でつまづいたら、どうするんですか。
脱サラ組は、まずは1店舗だけでも十分余裕を持った生活ができるようなビ
ジネスをするべきです。
■それはともかく、オーナーになってしまったらどうするか。
最初の「真夏におでんを売る」話には、その経営のエッセンスが詰め込まれ
ています。
私は、コンビニ・オーナーは、「戦略、管理」が自由にできない「実践」だ
けのビジネスだと言いましたが、このブログを読むと、現実はそう浅くない
ことが分かります。
同じコンビニ・オーナーでも、儲けている人、そうではない人がいるわけで
すから、そこには工夫の余地があるわけです。
■それにしても、この方は、ただ者ではない。
このブログで私が最も感心するのは、経営者としての姿勢、考え方です。
この方は、最初の方でこう言っています。
「バイトをがんばらせるからには、絶対に成果を出さなきゃいけない」
がんばって成果を出そう、などとは言っていません。
がんばらせるからには、成果を出さないといけない。と言っているのです。
つまり、バイトは「実践」だけをしてくれればいい。実践を成果に結びつけ
る仕組み作りはオーナーが責任を負う、と言うことです。
これぞ経営者というものです。
あらゆるマネージャーには、この考え方を持っていただきたい。
■このオーナーの仕組み作りは明快です。
やるべき「実践」を
☆店内および店頭での声掛け。
☆および、販売時点の工夫。
に絞っています。
そのための準備が
1.おでんの品質確保
2.オーナーとバイトの役割分担
3.バイトに販売ノウハウを教え込むこと
です。
■最も重要なのが、オーナーがひたすら客を呼び込んで、それを店内のバイ
トがキャッチするという販売のパターンを作ったことです。
私の言葉では、これを営業プロセスの作成といいます。
この事例では「集客」と「販売」を明確にしています。
これがなければ、こまごまとした販売のテクニックは、十分に威力を発揮す
ることができません。どころか意味を為さないでしょう。
営業プロセスの自体は、ものすごくシンプルです。しかし、これが出来る出
来ないが、営業の成果を決めてしまいます。
後のことは付随だといってもいいぐらいです。
特に、このブログには、リアルな販売ノウハウがいくつか載せられています
が、これらに目を奪われないようにしてください。
本当に大切なのは、その前段階のことなのです。
■フランチャイジーは、「戦略・管理」を考えないでいいビジネスだと申し
上げましたが、最近はその前提も危うくなっています。
コンビニという業態がまだ成長期で、出店余地がいっぱいある状態では、フ
ランチャイジーとフランチャイザーが利益を分け合うということが、可能で
した。
フランチャイザーの建てた戦略は明確です。コンビニをもっともっと増やし
て、規模の利益を追求するというもの。
規模が大きくなれば、様々なコストが下がって、コンビニ業界全体が潤いま
す。
これはWIN-WINです。
ところが、飽和状態になってみれば、冒頭に書いたように、フランチャイジ
ーとフランチャイザーの思惑が相違してしまう事態を招いてしまいました。
これがもっと淘汰が進めば、フランチャイザーも、加盟店のことを大事にし
ないとえらい事になるぜよーという姿勢になるんでしょうが、今はそこまで
逼迫しておりません。
コンビニ各社の考えを聞くと、サービスを増やして集客を強化するとか、他
の業態のシェアを奪うとか、看板を架け替えて売上を伸ばすとか、そんなこ
としか言っていません。言えないんですね。
本音は、国内ではもっと淘汰を進めないとあかんな。あとは海外進出で稼ぐ
ぞーーというところでしょうか。
このように「戦略」もはっきりしない本部に、生殺与奪権を握られてしまう
のは避けた方がいいでしょうな。
私なら遠慮させていただきます。
■フランチャイズビジネスは、本部である限り、一定規模を超えてしまうと、
損をしない仕組みとなっています。
まあ「戦略・管理」は面倒を見るんだから、儲けて当たり前です。逆に「実
践」だけで、そんなに稼ごうとする方が甘い考えでしょう。
ビジネスは、一番頑張った者が儲けを得るルールにはなっていません。
物理的に頑張る、ではなく、うまく考えた者が、より儲けるルールです。
フランチャイジーは、それに乗っていかなければなりません。
実際に、フランチャイジーをいくつも展開して成功している資産家を私も何
人か知っています。
彼らは、資金的な余裕を前提に、複数のフランチャイズシステムを比較して、
運営することができます。
一店あたりの上がりは少なくても、複数の店舗を運営することで、カバーす
ることができます。
何より、自分が業務に入ることがないので、戦略を練る時間があります。
考えが及ばないなら、代わりに考える人を雇えばいい。
これが強い。
そう考えると、実は、ビジネスとは、一番資金のある者が、一番儲けるルー
ルになっていることが分かります。
まったくもって当たり前の結論なんですが、そうなんですよ。
■要するに、資金のない者は、うまく考えなければ勝つことができません。
特に「戦略・管理」これを構築しないと、生き残ることができません。
ガムシャラな「実践」で何とかしようという考えは、うまく考える人たちの
いいカモになってしまうので、気をつけてくださいね。