コラム
勝ちパターンの作り方
(2010年10月21日メルマガより)
■今年のプロ野球も終わりました。
私は何も思い残すことなく、仕事に集中しております。
だいたい、贔屓のチームがクライマックスシリーズで第2ステージにいった
り、日本シリーズに進んだり、なんて、ろくなことがありません。ぞっとし
ますね。そんなことで仕事ができるのでしょうか。
私はこの結果は予想しておりました。想定内ですよ。阪神タイガースがクラ
イマックスシリーズを勝ち抜くなど誰が考えますか。そんな期待をするやつ
はアホですな。
私は先週の土日も観なければよかったと思っております。あれは完全なアホ
ですよ。第1戦は、自慢のダイナマイト打線が全く打つ気配なく敗戦。第2
戦は、相手の投手起用のミスに助けられて先制するも、いつものようにリリ
ーフ陣が打たれて敗戦。ここ一番で負け続けるのは毎年のこと。ここまで来
ると、わざとやってるのではないかと思えます。アホ芸ですよ。
真弓監督は「来年に向けていい課題ができた」と楽天的に言っております。
あんたこそ楽天の監督になればいいんじゃないの?
もう私は「六甲おろし」も封印します。もう歌いませんので、リクエストし
ないでください。
もう野球の話は止めましょう。終わりです。
■今回は営業の本を紹介いたします。
高城幸司氏の「トップ営業のフレームワーク」
高城氏は、元リクルートのトップ営業マンです。
トップ営業の書く本というと、怪しい本が多いと私は個人的には思っており
ます^^;
もちろん、全く参考にならない本はありませんが、営業姿勢とか、修羅場で
の気合とか、幸運事例とか、飲み屋で上司の自慢話を聞かされているようで
うんざりしてしまい、とてもお勧めできない本は多い。
でも、高城氏はそういう自慢系の人とは違って「考える営業」をしてきた方
ですから、冷静かつ正確に解説することができます。
そうなんですね。仕事を自分なりに「考え」てきた人は、他人の前でそれを
再現することができるのです。
それが勢いや偶然に頼ってきた人との違いです。
高城氏とは面識はありませんが、私が信頼するブレーンの一人だと勝手に考
えています。
■高城氏の営業に対する考え方は、僭越ながら私のそれとよく似ています。
私は営業は、階段を一段一段積み上げるような仕事だと思っています。
営業を知らない人は「営業はショートカットして、なるべく汗をかかないよ
うにするのが本当だ」という意見に安易に飛びつくようですが、これは大き
な誤解を招く危険な発言です。
「効率的な営業」とは、決して魔法のようなノウハウで一気に成し遂げるも
のではありません。
「秘密の鍵」というと便利な言葉ですが、これを追い求めると、遠ざかって
しまうような類のものです。
■私にとって「効率的な営業」とは、勝ちパターンを持った営業のことです。
どんな営業にも「パターン」があります。
それを意識するしないに関わらず、成績が優秀な人は、自分なりの勝ちパタ
ーンを持っているはずです。
新人営業は、そのパターンを持っていないから、毎回が試行錯誤で効率が悪
いわけです。
■私は、コンサルタントとして会社に入ると、その会社の営業のパターンを
把握しようとします。
パターンをしっかり意識している会社はいいのですが、業績が悪い会社はそ
のパターンを把握どころか、知ろうともしていません。
しかも優秀な営業は、自分のやり方を隠していたりするものですから、パタ
ーンの把握すら一筋縄ではいきません。
まず、この時点で一波乱あるはずですよ。
■パターンを把握するためには、その会社の営業をプロセスに分解します。
これが「考える営業」の第一歩となります。
通常、営業は、
1.顧客選択・集客
2.営業活動(アプローチ、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージング)
3.アフターフォロー
というプロセスに分解されます。もちろん事業内容によって微妙に違ってい
たりするものですが、大抵は当てはめることができるでしょう。
まずは、自分たちの営業が、どのパターンで行われているか。どのパターン
にはまればうまくいって、うまくいかないのはどういう時か。それを知ると
ころから始めなければなりません。
■野球も同じです。強いチームは勝ちパターンを持っています。
野球も創成期には、試行錯誤で様々な勝ち試合があったはずですが、歴史を
経て成熟すると、パターンに当てはまるようになってきました。
日本の場合、V9時代の巨人川上監督や、南海・ヤクルトの野村監督が「野
球とは何か」を考えに考えて、その勝ちパターンをつくっていきました。
昔の野球は、個人と個人の勝負がクローズアップされましたが、ある時期か
らは、組織戦略・戦術の戦いになってきたのはそのためです。
野球の勝ちパターンとは、オフェンスで言えば、四番打者がいて、その周辺
にどのようなタイプの打者を並べるのかで決まります。
全部ホームランバッターでは勝てるものも勝てない。足が速い1番打者。送
りバンドなどの小回りが利く2番打者。確実性の高い3番打者。と役割が決
まっています。
各人の個性をどのように生かして打順を作っていくかが、勝ちパターンを作
ります。
私は星野監督時代の、1番今岡、2番赤星、3番金本。というオーダーが好
きでしたね…
ディフェンスでいえば、先発ピッチャーがいて、中継ぎがいて、抑えがいる
という役割分担です。
特に近代野球は、ピッチャーの分業制とともに発展してきたといっても過言
ではないでしょう。
これは野村監督が江夏に言った「野球に革命を起こそうや」という言葉から
始まったリリーフ投手の役割の確立が大きい。
それまでは先発投手が最後まで投げられなければ、空いている他の先発要員
がリリーフに向かうというのは普通の状況でした。
つまりリリーフとは、先発より劣る役割だと見られていたわけです。
それを変えたのが、考える野球の権化である野村監督の戦略観と、阪神を放
出された不出世の大エース江夏の実践能力でした。
■その後、野村監督の考え方は、野球界の常識となっていきます。
1985年に阪神タイガースが優勝した時も、最後に中西を投げさせた吉田
監督は「これがうちの勝ちパターンです」と発言していました。
(余談ですが、阪神にはあの時、山本というもう一人のリリーフ投手がいま
した。一時期は中西と併用していましたが、残念ながら怪我で戦列を離れま
した。もし山本が健在ならば、ダブルストッパーという制度が常識として確
立したかも知れませんね)
多くのチームで優秀なストッパーが輩出されるようになったのは、周知の通
りです。パイオニアである野村監督は、ヤクルトで高津という名ストッパー
を育てました。
その野村監督が「近代野球の理想形」と舌を巻いたのが、岡田監督時代の阪
神タイガースのJFKというトリプルストッパー制度でした。
ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の3名が好調時は、どの球団
も全く歯が立ちませんでした。
特に、ウィリアムスと藤川の存在は他球団に脅威をもたらしました。久保田
は、何とか攻略する可能性もあると考えられていましたが、ウィリアムズ、
藤川だけはお手上げでした。(敢えて言えば特にウィリアムズです)
他球団にすれば、反撃しようとする7回、8回をウィリアムス、藤川にぴし
ゃりと抑えられて、可能性がある久保田が出てきた時には、もう1回しか残
っていないという状況です。これはきつい。
つまり、他球団とすれば、打者が二回りする6回までにリードしていないと
勝てないのですから、最初から勝ち目が薄いわけです。
逆に阪神は、7、8回にリードを拡げるパターンもあるので、磐石です。
■私が考える阪神タイガースの「秘密の鍵」は、7回、8回をぴしゃりと抑
えるウィリアムスと藤川の存在でした。必殺のダブルストッパーを9回待たず
に投入するのですからえげつない戦術です。
6回までにリードしていれば、相当高い確率で勝てる。これほどすごい勝ち
パターンはもう出現しないかも知れませんね。
■営業の「秘密の鍵」とは、これに持ちこめば、高い確率で受注に至るとい
う行動要因のことです。
例えば、ある会社では、製品の「無料点検」を利用した顧客は、その後、高
い確率で購入することが分かりました。
それがその会社の営業の「秘密の鍵」です。当然、無料点検を利用してもら
うには、どうすればよいかを考えることになります。
ある自動車ディーラーは「試乗」が鍵でした。
あるリフォーム会社は「無料冊子」の注文。
ある消費財製造業は「工場見学に来てもらうこと」でした。
要するに営業の勝ちパターンとは、営業プロセスの中に「秘密の鍵」を持っ
ていることです。
これが見つからなければ、いつまで経っても試行錯誤をしなければなりません。
試行錯誤の段階では、新人営業をどのように指導するのかも分からず、効率
的な営業など望むべくもありません。
■ここまでが営業マネジメントの基本です。
しかし、基本が出来ているところは驚くほど少ないので、まずは基本を極め
るようにしてください。
たまに「そんな当たり前の話はいいから、実践的なことを言ってくれ」と言
う人がいますが、99%は基本を理解していない人なので要注意です^^;
恐らくその人は「自分にぴったり合う鍵を見つけてきてくれ」と言っている
んでしょうけど、それは手順を踏んで戦略を作ってからの話です。
というか、そういう方に戦略を作っても無駄になってしまうので、まずは考
え方を理解してもらわなければなりません。
■ただし、基本形が出来たからといって上手くいくとは限らないから難しい
ところです。
現場で実践する段になると、必ず齟齬は生じます。必ずです。
それをどう適用するかが、現場を預かる者の使命となります。
例えば「無料点検」してもらったにも関わらず、受注が伸びない。という場
面があります。
その時にどう考えるのか。
1.無料点検は秘密の鍵ではなかったのか?
2.無料点検のやり方に問題があるのか?
3.無料点検に入る前に何か問題があるのか?
こうした反省と検証に入らなければなりません。
決して「やっぱりパターンなんて無いということだったんだ」と諦めないよ
うにしてください。
あるいは「無料点検」が有効なのは分かるが、そこに行くまでが大変だ。と
いうこともよくあります。
その場合も、
1.アプローチの方法が悪いのではないか?信頼関係を作る工夫はできてい
るか?
2.そもそも顧客設定が間違っているのではないか?
という検証点があります。
■お分かりでしょうが、パターンを何も意識していなければ、検証点も行き
当たりばったりになってしまいます。
パターンを意識しているので、どこを検証すべきかが見えてくるわけです。
営業マネジメントとは、こうしたパターンづくりと検証、再構築の連続です。
決して「ここは藤川に任せた。後は何とかしてくれるだろう」と言っていて
は、マネージャー失格です。
■星野監督以来、阪神タイガースは、もう昔のダメ虎ではなくなりました。
ふんだんな資金力を背景に、編成の力で、常に優勝争いができるチームを作
り上げてきました。
その意味では、チームづくりの戦略は間違っていないといえます。
今年も、マートン、ブラゼルという両外国人が活躍し、編成の目が確かだっ
たということが証明されています。
■では、なぜ、短期決戦では勝てないのか?
これは異常です。
クライマックスシリーズのどのステージも勝ち抜いたことがないじゃないか!
落合監督は高く評価されていますが、彼の凄いところは、シーズン中はパタ
ーン通りの戦いに徹して、短期決戦になるとそれを破った戦いを仕掛けてく
るところです。
野村監督もそういうところがありますね。
ただ、気をつけてみていると、奇襲と言われるものはほんの少しです。幻惑
するのに使っているだけです。
実は、パターンを忠実に守って戦っています。それが最も勝つ確率が高いと
いう戦い方で戦っています。
ところが、真弓監督や原監督は、シーズン中から、短期決戦のような戦い方
で、リリーフ陣に無理を強い、いざという時の踏ん張りが効かないように準
備してしまっているかのようです。
それなのに、シーズン中と同じ戦い方を守ろうとするので、思うように力を
発揮できないわけです。
■真弓監督は「来期の課題が見つかった」と言っていますが、そんなもの誰
の目にも明らかです。
何よりも、リリーフ陣の再編に手をつけなければならない。
先発は、能見、久保、スタンリッジ、秋山、岩田と5枚揃っています。
しかし、長年酷使してきたリリーフ陣はガタガタの状態。JFKの中で、最
も敵に脅威を与えた“J”がいない中で、今まで通りのパターンでいいものか。
私は、藤川球児は既に伝説の投手だと思っていますが、その彼が酷使され劣
化していく様を見るのは忍びない。
落合監督が岩瀬を大切に扱うように、藤川を守らなければならない。そのた
めには、勝ちパターンをもう一度、作り直すことが必要です。
このオフはトレードでも何でもして中継ぎを集めるだけ集めるべきです。特
にフォッサムとメッセンジャーはもういらないので、外国人の中継ぎを連れ
てきて下さい。
いや、今日はこういう話をするところじゃないですな。
■今日のまとめです。
効率的な営業とは、勝ちパターンに則した営業である。
そのためには、営業をプロセスに分解し「秘密の鍵」がどこにあるのかを知
ること。それに向けた営業プロセスを組み立てる。
そして現場で齟齬が生じたら、検証、再構築を繰り返すこと。先達が作った
のだからそのままにしておこうというのは、衰退への道ですから。
それが効率的な営業活動をマネジメントするということです。
皆さん、まずは基本に忠実になってください。
そういった内容が、高城幸司氏の「トップ営業のフレームワーク」に書かれ
ています。
■そう。岩田が復活したんですね。
岩田さえ元気だったら、このような結果にはならなかったはず。今頃、甲子
園で中日か巨人を迎え撃っていたはずです。
頼むぞ、岩田!
来年こそは、日本シリーズへ!
獣王の意地高らかに、無敵の我らぞ阪神タイガース!
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■阪神タイガースの黄金時代を支えたJFKの“J”であるジェフ・ウィリ
アムスが、タイガースへの復帰を熱望しています。
ところが、阪神側は、選手としてではなく、駐米スカウトとしての契約を打
診しています。
http://plaza.rakuten.co.jp/createvalue/diary/201010190001/
切なくなる話ですね。。。
■ジーン・バッキーといい、ランディ・バースといい、外国人選手の最後は、
それが宿命であるとはいえ、寂しいものです。
ジェフよ、おれは忘れんぞ、君の勇姿を!