コラム
メイド・カフェの営業プロセス
(2010年11月18日メルマガより)
■私もついに行ってしまいました。
初デビューというか、初訪問というか。
先日のことです。東京の秋葉原にパソコンの部品を購入に出かけました。
世界のアキバに来るのは初めてではありませんが、久方ぶりでした。
特にオタクの聖地となってからは、足を踏み入れていません。
もの珍しさもあって、界隈を歩いてみたんですね。
すると、どこかで見たようなコスチュームの女の子たちがビラを配っている
ではありませんか。
そう。かの有名なメイドさんです^^
何のビラを配っているのだろうと思いきや、カフェの宣伝ビラでした。
おーーー。これがかの有名なメイド・カフェか!
しかも、本場アキバのメイド・カフェです。
これは行かないわけにはいかんだろーーと、そのメイドさんに案内を頼んで、
メイド・カフェなるものに行ってまいりました。
メイド・カフェ初デビューです^^
■しかし、まあ。結論から言うと、私はダメでした^^;
あの店の何が面白いんでしょうね。
というか、極めてしょうもない。
えらいオッサンがやってきたので、メイドさんも対応に困ってしまったのか
も知れませんが、接客が、中途半端でしたね。
そこは、何とかの国、とかいう設定の店でした。
メイドは皆、その国の住人です。
言葉遣いも独特で、何を言っているのか分かりません。
メイドの一人はボイスチェンジャーをつけてアニメ声で話していました。
ただ、私が乗り切れないので、彼女たちも時折、地を見せるんですね。
メイドも醒めると、ただのコギャルでした^^;
■私が、メイドの一人に、ここのオーナーはどんな人だとか、組織はどうな
っているのだとか、変なことを聞くので、よくなかったのかも知れません^^
でも、そのメイドさんは素になって、いろいろ教えてくれました。
時折、冷めた目で、こちらを見ながらですが。
■その店は秋葉原に数店舗を展開するチェーンでした。
チェーン展開するだけあって、その仕組みはよく考えられていると感じました。
今回は、そこで感じたことなどをお話したいと思います。
■ビジネスで利益を出すためには、売上高-経費がプラスになっている必要
があります。
小売店の場合、売上高は、客数×客単価で考えるのが分かりやすい。
すなわち、小売店では、客数、客単価それぞれをどのように上げるのかが、
利益を出す第一の鍵となります。
■客数を上げるためにはどうすればいいのか。
秋葉原のような人の集まるところだから、集客には困らないだろうと思われ
る方がいるかも知れませんが、そう甘い世界ではないようです。
何しろ、幹線道路沿いの路面店ではありません。メイド・カフェの多くは、
裏通りの雑居ビルのようなところにあります。
なぜなら利益を出す第二の鍵が、コストを下げること。メイド・カフェの場
合、人件費と家賃です。
客単価が2000円程度の店では、集客に有利な店を借りることは難しい。
どうやって集客するかに頭を悩ませなければなりません。
■だからそのメイド・カフェは、メイドさんが秋葉原のあちこちへ出て、呼
び込みをしているわけです。
中にいるよりも、外で呼び込みをしているメイドの方が、はるかに多いよう
です。
外から戻ってきたメイドさんの一人は、思わず「外の世界は厳しい寒さです、
ご主人様」と言っておりました^^
■そのメイド・カフェは、テレビや雑誌にたびたび取り上げられているよう
なことを言っていましたが、それだけでリアルな客を店にまで連れてくるこ
とはできない。
やはり、客の手を引いて、店にまで案内してこなければならない。
スナックやラウンジのような厳しさですよ^^
■ただし、メイド・カフェは、給仕係がメイドの格好をしているというだけ
で、メイドとマンツーマンで話せるわけではありません。
普通の喫茶店よりは、なんだかんだと話しかけてきますが、それでもたまに
という間隔です。
それはそうでしょう。メイドより客の方が多くなければ経費倒れになってし
まいますから。
ここに来る客は、メイドが給仕してくれるのを見て、それで満足しているの
でしょうか。
■巧妙なのは、メイドとコミュニケートするための様々なオプションが用意
されていることです。
コーヒーを頼めば、200円で何かを追加しろと言ってきます。何だろうと思
うと、アイスクリームでした。何のことはないコーヒーフロートになってし
まいました。
しかも、アイスクリームを入れる時に変な儀式みたいなものをやるんですよ。
もう勘弁してほしいですな。
■この他にも、メイドがご主人様の名前を連呼しながら作ってくれるカクテ
ルとか、メイドがケチャップで絵を描いてくれるオムライスだとか、メイド
がかき混ぜてくれる丼だとか、変なものがいっぱいありました。
あるいは、メイドがご主人様のためだけに踊ってくれるオプションとか、写
真を一緒にとってくれるオプションとか、何だかんだとありました。
要するに、オプションを頼めば頼むほど、メイドが相手にしてくれるわけです。
ファンにはたまらないんでしょうかね。
ただ、その一つ一つが、店にとっては客単価を上げることにつながります。
考えられているでしょう^^
■ただし、この方法を他の飲食店が真似することはできません。
例えば、ラウンジなどで、女性がやたらにオプションをせがめば、客はドン
引きしてしまいます。
客にとって、女性と話をすることが目的となっているのだから、オプション
は余計なものです。
その場ではニコニコして応じていても、心の中では、二度と来るかと思って
いるでしょう。
すなわち、オプションは、目的に近づくものでなければなりません。
かといって、あまり露骨な目的を持ったオプションは、店の格を下げてしま
いますから、やってはいけません。
やはり、メイド・ファンというニッチな顧客層を相手にしているビジネスだ
から成り立つ方法なのです。
話のネタに、ぐらいにしか考えていないオッサンには、何の魅力もありませ
んでしたね。
むしろあら捜しばかりしてしまいました。嫌な客ですな^^;
■私はよく出張に行きます。
そこで、飲食店にもお世話になることがあります。
知り合いも多くなりました。セミナーに来られる場合もありますし。
たまに、飲食店を流行らせる要因は何だろうと聞かれますが、正直に言って、
よく分かりません。その分野は専門ではないので、アドバイスすることを避
けています。
ただ、今回、メイド・カフェに行って、つらつら考えてみるに、営業プロセ
スの「集客、営業、アフターフォロー」に分類して考えてみると理解しやす
いことに気づきました。
結構、このフレームワークは万能です。
横軸に「集客、営業、アフターフォロー」と書いて、縦軸に「客数、客単価、
コスト」と書いて、9マスのマトリクスを作ってみると、施策が整理できます。
今度、やってみましょうか^^
■ところで、メイド・カフェに、アフターフォローの施策はあるのでしょうか。
メンバーカードみたいなものは渡されましたが、それにしては脆弱です。
ニッチな需要なので、アフターフォローは必要ないと思っていたら、早晩、
消えてなくなってしまうでしょうな。
まあでも、私のような物見遊山な人はいるので、まだもっています。
これに比べると、地元の一般客を相手にしている店は、リピーターが命です
から、アフターフォローの仕組みが必要不可欠です。
忘れないようにしてください。
■メイド・カフェの最も困難な点は、メイドの教育です。
この仕事、とにかく入れ替わりが激しいそうですよ。
採用には困らないらしい。メイドをやってみたいという女の子は多いという
ことです。
ただし、やってみると大変です。シナリオやマニュアルは多いし、規定通り
に動かなければならない。
何より、外に出て、客引きすることを強いられます。
甘い考えで来た人には勤まりませんね。
■だから軍隊式の組織が必要になってくるのでしょうね。
リーダー、教育係、バイトと綺麗に分かれているようです。
階層を作ってしまえば、上に行けば行くほど、権威が手に入りますから、辞
めにくくなります。
メイドをやってみたいという動機から、店を繁栄させたいという目的の人が
増加すれば、強い組織になります。
この方法は、昔ながらのやり方ながら、効き目があるんですね。
■というわけで、せっかく行ったメイド・カフェ体験からいろいろ考えてみ
ました。
考えてみると、ビジネスとして参考になることがいろいろあることがよく分
かりました。
経験が無駄にならなかったでしょうか^^