コラム
残念な人には戦略がない
(2010年12月16日メルマガより)
■ビジネスコンサルタント山崎将志氏の「残念な人の思考法」を読みました。
面白い本ですよ。売れているだけありますね。
身近にある「残念な人」のエピソードが満載で、「あーー、それ、あるある」
と思わず言ってしまうこと必至です^^
多くは自分自身にあてはまることでしたけど。
■たまーにこういう切り口の本を見ます。
前は「困った人」という括りで、いろいろな人の行動や思考が提示されている
ものを見たことがあります。
そちらは心理学系の本だったような気がします。
それはそれで面白いのですが、今回は、ビジネスに関する話となります。
■私がコンサルタントをしていて「困ったなーー」という人は、主に下記のパ
ターンに分かれます。
1.そもそも成果を出そうという気がない。気持ちが保身に向いており、その
ために成果を出そうとする者を妨害することまでする。
2.成果を出そうとする気はあるが、能力やスキルが足りず、満足のいく成果
をあげられていない。
3.やる気も、能力もあるが、方向性が間違っているために、期待する成果に
たどり着かない。
■ちなみに2はまだ対応がしやすい。
能力アップのための教育や研修を行うこととなります。
やる気があって、素直な人が多いので、こちらが驚くほど伸びることがあります。
コンサルタントとしてもやりがいのある仕事です。
■1については、論外と思われるかもしれませんね。
でも、最も多いのがこの人たちです。
基本的には無気力です。そもそも、仕事上、組織に貢献しようという意識が薄い。
若いうちは、目立たないように、努力しないように心がけている人たちです。
ある程度、歳をとれば、既得権があるので、保身にエネルギーを使います。
あるいは、他人を陥れることに喜びを見出しているとしか思えない歪んだ性格
の人もいます。
私もできれば相手にしたくない人たちですが、仕事上、そうも言っていられない。
人生における目的と、組織の目的をリンクさせるべく、様々なストーリーを組み
立てる作業を行います。
若い方は、目標を得て、モチベーションアップしていく場合もあります。そうなれば、
2に移行です。目標を達成するためのスキルや戦略を学んでいただきます。
どうしても、エネルギーを前向きにできない方については、放置していても組織
に迷惑がかからないようにするか、あるいは、排除するようにしなければなり
ません。
■このうち、山崎氏のいう「残念な人」とは、3の、「やる気も能力もあるの
に、方向性が間違っている人」を指しているようです。
もうちょっと変われば、成果を出すことができるのに残念だなーーという人
です。
■方向性とは何か。
山崎氏は「前提」という言い方をしています。そもそも前提が間違っている。
組織あるいは個人にとっての「プライオリティ(優先順位)」を決めていない
から、思いつき中心の行き当たりばったりな行動になってしまうのだと。
これは私のいう「戦略」です。
行動する前段階の話です。
■プライオリティが間違っていたら、いくら行動を工夫しても無駄になります。
差別化された商品を作らなければならない時に、いくら営業トークを工夫しても、
大した成果は生みません。
逆に営業力を高めなければならない時に、製品づくりにばかり力を入れていて
も無駄になります。
こうしたことを避けるために戦略を立てなければなりません。
戦略立案の終盤では、行動のための優先順位を作ります。それがなければ、行動
できないからです。
■ところが、戦略的思考ができない人は、やる気と行動を直結させようとします。
思いついたら吉日。とにかく体を動かそうという発想を持っています。
基本は、とにかくお客さんに向き合って、答を見つけよう。
(それ自体は間違ったことではないので厄介です)
だから、アイデアには敏感です。
営業トークや、クロージングテクニック、様々なツール類など。
そういう便利なノウハウやツールを探し回っています。
私も営業マン時代は、催眠術は営業に使えないだろうかと本気で思ったりもしま
したっけ^^;
要するに、途中がごっそり抜けているんですな。
やる気もあるし、行動力もある。だけど、間の組み立てができていないから、
現場で魔法のように逆転できるツールに頼ろうとしてしまう。
あるいは、ノウハウを持っているという触れ込みの人物に依存してしまう。
実に安直に考えてしまっている。
■誤解を恐れずに言えば、1日2時間働いて億万長者になれるというツールに
飛びつく人も、地球環境を守るためのビジネスに無条件に参加する人も、自分
で戦略を組み立てていないという意味では、本質は同じです。
金持ちになりたい。あるいは、社会の役に立ちたい。という自分の欲求を叶える
ための戦略を考え切れていないわけです。
■極端な例だなーーと思われるかも知れませんが、私は、自分の仕事の中で、
毎日のようにこういう「残念な人」と出会っています。
やる気もあり、能力も高いのに、どうしても成果が出せない。
あるいは、自分の業績だけ上げたらそれでOKという時代が過ぎてしまって
いることに気付かないので評価されない。
戦略的思考は、決して難解なものではないのに、本当に残念なことです。
■先日、某会社でドラッカーファンの人にお会いしました。
ドラッカーファンは多いので、個人名は特定できないので、例として挙げます^^
その方は、ドラッカーに心酔しており、ドラッカーの著作はすべて精読した
と仰っておられました。
大したものだと思いました。
もちろん、ドラッカーをそれだけ読み込むぐらいだから、他の経営論などに
関する知識も豊富で、よく研究されているようでした。
ただ、その方としばらく話していた気付いたのですが、その豊富な知識を
ビジネスに活かしているとは言えないようです。
要するに、知識レベルに止まっています。まあ、でも、それはいいでしょう。
いくら知識として獲得したからと言って、それを実践に結びつけるのは難しい
ことです。時間がかかることでしょう。
しかし、気になったのは、その人の中に、妙なプライオリティがあったことです。
1つは、知識に対する偏重。つまり、その人は、自分の知らない知識を得ること
に重点を置いており、知っていることには何ら興味を示しません。極端に言うと、
自分の知らないことを知っている人は偉くて、自分よりも知識のない人はダメだ
という価値観です。
1つは、知識に権威を持ち込んでいたこと。つまり、ドラッカーは素晴らしいが、
ポーターは二流だ。コトラーは聞いてやるが、ランチェスターなんて最下層だ、
などという権威づけです。
要するに、その人は、「知識の豊富な人」という自分のイメージを強固にして、
自分のプライドを保つことに方向性を向けており、自分のイメージと周囲の評価
にずれがあることを理解しようとしていませんでした。
意識してそういう隠遁者のようになろうとしているなら別ですが、本人はそうい
うつもりはなく、自分は組織内のエリートだと思っているようでした。
これもプライオリティを間違えている残念な人の事例です。
■「残念な人の思考法」では、組織、組織内個人、個人キャリア、という
3つの観点から、「プライオリティ思考」の重要さを説いています。
エッセイ風読み物ですので簡単に読めますし、書き方が自由なので示唆に
富んでいます。
一読をおすすめいたします。