日本の消費者は世界レベルに近づいている

2006.03.02


(2006年3月2日メルマガより)

■世界の携帯電話機の出荷台数は、2005年が前年比約2割増の8億台程度。
2006年には9億台に達する模様です。

日本市場は、2003年をピークに低迷し、完全な成熟市場になっていますが、
世界全体ではまだ成長余地があるようです。

その世界市場での日本メーカーのシェアは約10%。世界レベルで見れば、
存在感が薄いというのが現状です。(日経新聞2006年2月15日より)


■世界シェアで上位を占めるのは、ノキア(フィンランド)、モトローラ
(米)、サムスン電子、LG電子(韓国)など。

モトローラはともかく、フィンランドや韓国のメーカーが世界的な競争力を
発揮しているのはなぜでしょうか。


■その一因として、北欧や韓国の企業は、国内のマーケットが小さいため、
世界市場に出て行かざるを得ない状況があるからのようです。

早くから世界を相手にしているために、その中で飛び抜けた企業は、世界的
に強くなるわけです。


■しかし、日本は一応、世界第二位のマーケット規模がありますから、国内
で食べていける事情にあります。

わざわざコミュニケーションの難しい海外を相手にしなくても、十分に成長
と安定を手に入れられるわけですから、当然、楽に儲かる道を選びます。

さらに日本市場は、携帯先進国だけあって、高機能ニーズが高く、高度な技
術が要求されますから、海外勢が容易に入ってこれません。

以前、モトローラが日本進出を狙った時に、日本メーカーのあまりの製造能
力の高さに手も足もでず、撤退したというのは有名な話です。

(もっともその後、モトローラは、日本メーカーの技術力を徹底分析し、
「シックスシグマ」という生産管理手法に昇華させました。その手法はGE
に採用されて一世を風靡、今や日本にも輸入されています)


■デジタル革命後の現在、世界の市場のボーダーレス化は恐ろしい勢いで進
んでいます。

ノキアやサムスン電子が急速に業績を拡大したのは、世界の市場のローカル
性がある部分でなくなりつつあるということに起因しています。

実はこれは携帯電話だけではなく、デジタル家電や自動車の業界などでも顕
著です。

今後、多くの業界で、世界的な巨大企業が登場すると思われます。


■この世界市場において、日本メーカーは取り残された感があります。

携帯電話でいえば、高機能を求められるがゆえに、日本のメーカーでしか対
応できず、市場価格は高水準のままです。

日本のメーカーは、高機能機種の開発にしのぎを削り、世界に通用する価格
帯の商品(いわゆる戦略商品)開発に遅れました。

したがって、生産規模が小さいために、価格競争力の格差がさらに広がり、
世界レベルでの競争力を低下させていくという図式です。

日本で強いゆえに国際競争力を失うという矛盾に陥っているのです。

(もっとも早くから世界で戦っていた自動車メーカーは、国際競争力を発揮
しています)


■気がつけば、恐ろしい状況です。

ランチェスター第2法則では、技術やノウハウの優位性は、数量の前に無力
であることを示唆しています。

さらには、圧倒的な市場シェアを持つ海外勢が、旺盛な資金を研究開発につ
ぎ込み、日本の技術的優位性を凌駕してしまう日は近いのではないかと思わ
れます。


■実は、その頼みの綱だった日本市場の特殊性も変質しつつあります。

大前研一の「ロウアーミドルの衝撃」は、日本市場の変質について書いてい
ます。

年収1000万円以上の消費者をアッパークラス、年収300万円未満の消費者を
ロウアークラスとしたとき、従来の日本には、圧倒的なミドルクラスの消費
者が存在することが言われてきました。

1億総中流社会というやつです。

高度成長期を支えたのが、このミドルクラスの消費者でした。すべての企業
がこのミドルクラスをターゲットにしていれば、戦略に誤りはなかったわけ
です。

一般の日本企業の年功序列賃金体系では、年収300万円からスタートしても、
定年頃には1000万円近くまで上がっていくのが通例です。

ミドルクラスの下段から上段まで、会社生活を通じて駆け抜けていくわけで
すな。

だから、「いつかはクラウン」などというコピーが、共感をもって受け取ら
れたのです。


■ところが、低成長社会がようやく認識され、年功序列賃金が廃止されつつ
ある現在、「いつかはクラウン」などとのん気なことを言ってられなくなり
ました。

年収300万円の人は、一生300万円である可能性が高いのです。

巨大なミドルクラス層は、600万円~1000万円のアッパーミドル層と300万円
~600万円のロウアーミドル層に分断され、このうち、ロウアーミドル層は
42%を占め、ロウアー層とロウアーミドル層を足せば、実に78%を占め
るというのが、「ロウアーミドルの衝撃」の主張です。

つまり、日本市場のマジョリティは、300万円~600万円の年収の世帯なので
す。(日本世帯の平均年収は580万円)


■ロウアーミドルクラスの増加は、日本の賃金が世界レベルに近づいている
ということでもあります。

とすると、物価水準も当然、世界レベルに近づいていかなければ合いません。

近年のデフレ傾向は、実は異常なことでも何でもなく、日本の物価が正常化
する過程にあると言えるでしょう。


■もうお分かりですね。

ロウアークラスをターゲットとする製品開発は、海外の企業の方が長けてい
るのです。

海外企業が、日本のロウアーミドルクラスを狙ってくることは火を見るより
明らかでしょう。

その時「日本市場は特殊だからいいや」と安穏としていたドメスティックな
企業は、大打撃を受けることは間違いありません。


■最近の日経新聞には、企業が少子高齢化社会やロウアーミドル社会に対応
するために躍起になっている姿が毎日のように掲載されています。

そうしないと生き残れないからです。

企業より先んじて、消費者は世界に近づいているのです。

「うちはローカルな会社だから関係ないや」というのは通用しませんよ。

編集後記

■大前研一氏の「ロウアーミドルの衝撃」は、相変わらず示唆に富んだ面白
い本です。

日本の消費市場の変質をとらえ、ここ何年かの先進的企業の動きを整理して
います。

■思い立って、大前氏の過去の著作を読み返してみたのですが、ほとんど主
張が変わっていないのに驚きます。ブレていないわけです。

そもそも、30年ほど前の「企業参謀」など、私はいまだに参考にしています。

戦略本の多くはこの本の焼き直しじゃないかと思っています。

たいていのブックオフで105円で買えますから、一読をお勧めします^^





(2006年3月2日メルマガより)

■世界の携帯電話機の出荷台数は、2005年が前年比約2割増の8億台程度。
2006年には9億台に達する模様です。

日本市場は、2003年をピークに低迷し、完全な成熟市場になっていますが、
世界全体ではまだ成長余地があるようです。

その世界市場での日本メーカーのシェアは約10%。世界レベルで見れば、
存在感が薄いというのが現状です。(日経新聞2006年2月15日より)


■世界シェアで上位を占めるのは、ノキア(フィンランド)、モトローラ
(米)、サムスン電子、LG電子(韓国)など。

モトローラはともかく、フィンランドや韓国のメーカーが世界的な競争力を
発揮しているのはなぜでしょうか。


■その一因として、北欧や韓国の企業は、国内のマーケットが小さいため、
世界市場に出て行かざるを得ない状況があるからのようです。

早くから世界を相手にしているために、その中で飛び抜けた企業は、世界的
に強くなるわけです。


■しかし、日本は一応、世界第二位のマーケット規模がありますから、国内
で食べていける事情にあります。

わざわざコミュニケーションの難しい海外を相手にしなくても、十分に成長
と安定を手に入れられるわけですから、当然、楽に儲かる道を選びます。

さらに日本市場は、携帯先進国だけあって、高機能ニーズが高く、高度な技
術が要求されますから、海外勢が容易に入ってこれません。

以前、モトローラが日本進出を狙った時に、日本メーカーのあまりの製造能
力の高さに手も足もでず、撤退したというのは有名な話です。

(もっともその後、モトローラは、日本メーカーの技術力を徹底分析し、
「シックスシグマ」という生産管理手法に昇華させました。その手法はGE
に採用されて一世を風靡、今や日本にも輸入されています)


■デジタル革命後の現在、世界の市場のボーダーレス化は恐ろしい勢いで進
んでいます。

ノキアやサムスン電子が急速に業績を拡大したのは、世界の市場のローカル
性がある部分でなくなりつつあるということに起因しています。

実はこれは携帯電話だけではなく、デジタル家電や自動車の業界などでも顕
著です。

今後、多くの業界で、世界的な巨大企業が登場すると思われます。


■この世界市場において、日本メーカーは取り残された感があります。

携帯電話でいえば、高機能を求められるがゆえに、日本のメーカーでしか対
応できず、市場価格は高水準のままです。

日本のメーカーは、高機能機種の開発にしのぎを削り、世界に通用する価格
帯の商品(いわゆる戦略商品)開発に遅れました。

したがって、生産規模が小さいために、価格競争力の格差がさらに広がり、
世界レベルでの競争力を低下させていくという図式です。

日本で強いゆえに国際競争力を失うという矛盾に陥っているのです。

(もっとも早くから世界で戦っていた自動車メーカーは、国際競争力を発揮
しています)


■気がつけば、恐ろしい状況です。

ランチェスター第2法則では、技術やノウハウの優位性は、数量の前に無力
であることを示唆しています。

さらには、圧倒的な市場シェアを持つ海外勢が、旺盛な資金を研究開発につ
ぎ込み、日本の技術的優位性を凌駕してしまう日は近いのではないかと思わ
れます。


■実は、その頼みの綱だった日本市場の特殊性も変質しつつあります。

大前研一の「ロウアーミドルの衝撃」は、日本市場の変質について書いてい
ます。

年収1000万円以上の消費者をアッパークラス、年収300万円未満の消費者を
ロウアークラスとしたとき、従来の日本には、圧倒的なミドルクラスの消費
者が存在することが言われてきました。

1億総中流社会というやつです。

高度成長期を支えたのが、このミドルクラスの消費者でした。すべての企業
がこのミドルクラスをターゲットにしていれば、戦略に誤りはなかったわけ
です。

一般の日本企業の年功序列賃金体系では、年収300万円からスタートしても、
定年頃には1000万円近くまで上がっていくのが通例です。

ミドルクラスの下段から上段まで、会社生活を通じて駆け抜けていくわけで
すな。

だから、「いつかはクラウン」などというコピーが、共感をもって受け取ら
れたのです。


■ところが、低成長社会がようやく認識され、年功序列賃金が廃止されつつ
ある現在、「いつかはクラウン」などとのん気なことを言ってられなくなり
ました。

年収300万円の人は、一生300万円である可能性が高いのです。

巨大なミドルクラス層は、600万円~1000万円のアッパーミドル層と300万円
~600万円のロウアーミドル層に分断され、このうち、ロウアーミドル層は
42%を占め、ロウアー層とロウアーミドル層を足せば、実に78%を占め
るというのが、「ロウアーミドルの衝撃」の主張です。

つまり、日本市場のマジョリティは、300万円~600万円の年収の世帯なので
す。(日本世帯の平均年収は580万円)


■ロウアーミドルクラスの増加は、日本の賃金が世界レベルに近づいている
ということでもあります。

とすると、物価水準も当然、世界レベルに近づいていかなければ合いません。

近年のデフレ傾向は、実は異常なことでも何でもなく、日本の物価が正常化
する過程にあると言えるでしょう。


■もうお分かりですね。

ロウアークラスをターゲットとする製品開発は、海外の企業の方が長けてい
るのです。

海外企業が、日本のロウアーミドルクラスを狙ってくることは火を見るより
明らかでしょう。

その時「日本市場は特殊だからいいや」と安穏としていたドメスティックな
企業は、大打撃を受けることは間違いありません。


■最近の日経新聞には、企業が少子高齢化社会やロウアーミドル社会に対応
するために躍起になっている姿が毎日のように掲載されています。

そうしないと生き残れないからです。

企業より先んじて、消費者は世界に近づいているのです。

「うちはローカルな会社だから関係ないや」というのは通用しませんよ。

編集後記

■大前研一氏の「ロウアーミドルの衝撃」は、相変わらず示唆に富んだ面白
い本です。

日本の消費市場の変質をとらえ、ここ何年かの先進的企業の動きを整理して
います。

■思い立って、大前氏の過去の著作を読み返してみたのですが、ほとんど主
張が変わっていないのに驚きます。ブレていないわけです。

そもそも、30年ほど前の「企業参謀」など、私はいまだに参考にしています。

戦略本の多くはこの本の焼き直しじゃないかと思っています。

たいていのブックオフで105円で買えますから、一読をお勧めします^^




コラム

blog

代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
世の中の事象を営業戦略コンサルタントの視点から斬っていきます。(無料)

記事一覧

blog

記事一覧

講演・セミナー実績

Customer Voice

記事一覧

このページのTOPへ