サーモス(THERMOS)V字回復の鍵は「接近戦」にあり

2018.12.27

(2018年12月27日メルマガより)



業績が伸びない、売上や利益が落ちてきた、という会社の話を聞いてみると、その原因は、(1)努力が不足しているか、(2)努力はしているが空回りしているか、に集約されます。

たいていはその両方です。

と言えば怒る会社もあるでしょうね。もちろんコンサルタントに相談に来るのだから、自分たちなりに努力していると自負されています。が、努力が足りていないことが多いのが実感です。

ですから(1)については、一人一人が努力できるような環境を整えていきます。簡単にいうと、売るための仕組みを作って、それを回すためのマネジメント体制を整えます。


生き残るためには「勝てる局面」を見つける


(2)については、そもそも努力が成果に結びつくような流れができていないということです。

これは悲惨です。どんなに頑張っても、努力しても、成果に結びつかない。空回りだから徒労感はあるわ、成果が出ないので報酬にも結び付かない。いわゆるブラック企業になってしまいます。

社員を努力させるからには、成果が上がるような態勢を作らなければなりません。それが会社の役割です。

成果が上がるような態勢を作ることこそが、戦略を立てることであり、私の言い方では「勝てる局面で戦う」ことです。


私が入社した頃のサーモスも同じでした。

自分たちなりに努力していると思い込んでいましたが、努力の仕方もまだまだ未熟でしたし、何より努力の方向性が間違っていました。

働けど働けど我が暮らし楽にならざり。

こういう場合、愚痴言ってないでさっさと働き方や内容を見直さなければなりません。

特に、自分たちが「勝てる局面」を捉えているのか、が重要です。

まずは「勝てる局面」を見つけること。そうじゃないと、生き残る道筋さえ見つけることができません。


「弱者の戦略」「差別化」「5大戦略」


ランチェスター戦略には「弱者の戦略」という概念があります。

数が多い側、よく売れている側のことを「強者」といい、逆に数が少ない側、売れていない側のことを「弱者」といいます。

強者と弱者が同じ戦い方をしていたら、もともと数が多い側である強者が、必ず有利です。

だから、弱者は、強者とは違う戦い方を選びます。

これを「弱者の戦略」と呼びます。


弱者の戦略の基本となるのが「差別化」です。

商品、チャネル、価格、プロモーション、営業、すべてにおいて強者とは違うやり方を選び、土俵を変えて戦います。



さらに弱者の戦略には「5大戦略」と呼ばれるものがあります。

こちらも以前、簡単にですが、メルマガに書いたことがありました。



今回は、その中のひとつである「接近戦」をとりあげてみます。


業績低迷時には「接近戦」ができていなかった


「接近戦」とは、対象に接近して戦うことを示したものです。

たとえば敵の顔前に接近して戦えば、1対1の戦いに持ち込むことができて、数的劣勢を無効化できます。

戦いにおいての対象は敵ですが、ビジネスにおいてはおよそ(1)最終顧客、(2)流通業者、(3)ライバル会社で考えることができます。


サーモス時代、ランチェスター戦略に触れた我々が、まず気づいたのが「差別化」と「接近戦」ができていない。ということでした。

商品も売り方もチャネルも、強者であるライバル会社の受け売りばかり。

営業は、代理店(問屋さん)の機嫌取りに走っていました。

あまりにもセオリーに反したやり方だったので、逆に「まともにやれば売れるかも」と光が見えた気がしたぐらいです。


そこで我々が取り組んだのが、徹底した接近戦の展開です。

これが、結果的には「勝てる局面で戦う」ことにつながっていきました。


(1)最終顧客に接近する


強者は売れる商品を持っているので、仲介業者を活用することで販売機会を増やすことができます。

しかし、弱者は知名度もブランド力も販売チャネル支配力にも劣るため、販売機会は作れないし、作ったとしても売り負けてしまいます。そこを突破するためには、最終顧客に直接売るか、なるべく近いところでビジネスする必要があります。

そもそも、最終顧客に近づかなければ、最終顧客の情報が得られません。それでは、商品開発のヒントさえ得ることができません。

サーモスの場合、営業人員が少ないという事情があったので、代理店に頼り切りになっていました。

しかしそれではいつまで経っても、強いライバル企業の支配力に風穴を開けることなできないでしょう。

メーカーは、代理店に任せきりになるのではなく、自分で最終顧客のことを理解しなければならなかったのです。

そこでサーモスは、消費者調査を徹底する施策をとりました。

調査会社を使った消費者アンケート。

賞品つきキャンペーンを利用した利用状況調査。

消費者からのアイデア募集。

商品の箱に消費者あてのハガキを入れて回収。

社員が町に出て使用者にインタビュー(これはどちらかというと社員の士気高揚のため)

当時としては、相当のことをやっていたと思います。

最初は「予算をいっぱい使って有益なことがわかるのか?」と批判もありましたが、そんな調査のおかげで、今まで盲点になっていたあっと驚く事実に気づくことになりました。

(それが何かは、著書をお読みください^^)

消費者をよく理解することで、弱者であるサーモスでも「勝てる局面」を見つけることにつながったのです。


(2)小売店に接近する


それまでサーモスは、仲介業者である代理店にばかり営業をかけていました。

いや、営業とは名ばかりで、単に代理店の機嫌をとっていただけです。

代理店の倉庫を掃除して、ご褒美に魔法瓶を納品させてもらったりしていました。ほんとあほですね。

弱者は、最終顧客に近いところでビジネスしなければなりません。できれば最終顧客に直接販売するのが望ましい。

今ならネット販売も発達しているので、それもアリですね。ただ当時も今も、魔法瓶の販売チャネルの主要売り場は、量販店です。

つまり量販店チャネルを攻略しなければ、大きな販売需要を取り込むことはできないのです。

人数が少ないからとかへったくれだとか言っていられません。

サーモスの営業部は、代理店営業の方針を転換して、小売店への直接営業に切り替えました。

それまで行かなかった店やバイヤーに営業することは、それはそれはハードルが高い作業でした。

しかし、そんなハードルなど何物でもなかったぐらいの恩恵を得ることとなりました。

小売店のバイヤーには厳しい人が多かったですが、いくら叱られようとドヤされようと、企画が決定する場面に自ら立ち会えることは、営業としてやる気の出ることでした。

それ以上に驚いたのが、直接小売店に行くことによって得られる情報の質と量でした。

やはり代理店を通じて、得られる情報は、量も少なく、バイアスがかかっていました。

小売店の意思決定の場に立ち会うことで、営業としての必要な情報が何かということを否応なしに知ることになったのです。


収集した情報を基に、どの小売店なら勝ち目があるのかを見極め、営業力を集中させていきました。

ここでも「勝てる局面」を見つけていったのです。

その時、大いに参考にしたのが、ランチェスター「流通戦略」です。

市場シェアを緻密に、段階的に上げていく方法論は、サーモスの市場シェアを確実に向上させていきました。

理論を学びながら実践に落とし込む作業は大変でしたが、その甲斐あって、サーモスは、営業の方法論を実践的知識として獲得し、会社としての営業スタイルを作り上げていきました。

なお、その頃、実践を繰り返しながら覚えた方法論が、私の今の仕事の基盤にもなっています。


(3)ライバル会社に接近する


ライバル会社がたくさんいる市場では、差別化が効きにくくなります。差別化しても、どこかと被ることが多くなってしまうからです。

それぞれが差別化して何がなんだかわからなくなると、消費者は単純に「いちばん売れているもの」を選ぶようになります。

これを確率戦の市場といって、強者に有利な市場です。

弱者は、そうなっては勝ち目がありません。そこで、どこか一社に絞って接近し、1対1の状況を作ることになります。

1対1なら、差別化が有効に働くからです。


サーモスは、上位2社と同時に戦うことは得策ではないと考えて、一社だけに照準を絞りました。

あえて1位企業とは考えを合わせて、2位企業と対立するようにしました。

1位企業と協同して、2位企業を追い落とす行為です。

汚いやないか、と言われそうですが、それが戦いの世界です。我々はなんとしても「勝てる局面」を見出さなければならなかったのです。

もし1位企業がそのことに気付いていたら、我々と歩調を合わせることはしなかったでしょうが、その当時は有効でした。

こういうところにも、戦略を理解している、していない会社の差が出たのだと思います。


接近戦の徹底が、勝てる局面を見つけ出す


こうしてサーモスは、接近戦を徹底することにより「勝てる局面」を見つけていきました。

どんな強者にも、気づいていない局面、とるに足りないからと見逃している局面があります。

そういう死角や盲点こそが、弱者にとって「勝てる局面」です。

全体を俯瞰していても見えない、そんな隙間を見つけるためには、顧客や流通や競合他社に接近すればいい。

接近することでしか見えない局面は必ずあります。

それを見つけられるかどうかが、まさに会社生き残りの鍵となります。


(2018年12月27日メルマガより)



業績が伸びない、売上や利益が落ちてきた、という会社の話を聞いてみると、その原因は、(1)努力が不足しているか、(2)努力はしているが空回りしているか、に集約されます。

たいていはその両方です。

と言えば怒る会社もあるでしょうね。もちろんコンサルタントに相談に来るのだから、自分たちなりに努力していると自負されています。が、努力が足りていないことが多いのが実感です。

ですから(1)については、一人一人が努力できるような環境を整えていきます。簡単にいうと、売るための仕組みを作って、それを回すためのマネジメント体制を整えます。


生き残るためには「勝てる局面」を見つける


(2)については、そもそも努力が成果に結びつくような流れができていないということです。

これは悲惨です。どんなに頑張っても、努力しても、成果に結びつかない。空回りだから徒労感はあるわ、成果が出ないので報酬にも結び付かない。いわゆるブラック企業になってしまいます。

社員を努力させるからには、成果が上がるような態勢を作らなければなりません。それが会社の役割です。

成果が上がるような態勢を作ることこそが、戦略を立てることであり、私の言い方では「勝てる局面で戦う」ことです。


私が入社した頃のサーモスも同じでした。

自分たちなりに努力していると思い込んでいましたが、努力の仕方もまだまだ未熟でしたし、何より努力の方向性が間違っていました。

働けど働けど我が暮らし楽にならざり。

こういう場合、愚痴言ってないでさっさと働き方や内容を見直さなければなりません。

特に、自分たちが「勝てる局面」を捉えているのか、が重要です。

まずは「勝てる局面」を見つけること。そうじゃないと、生き残る道筋さえ見つけることができません。


「弱者の戦略」「差別化」「5大戦略」


ランチェスター戦略には「弱者の戦略」という概念があります。

数が多い側、よく売れている側のことを「強者」といい、逆に数が少ない側、売れていない側のことを「弱者」といいます。

強者と弱者が同じ戦い方をしていたら、もともと数が多い側である強者が、必ず有利です。

だから、弱者は、強者とは違う戦い方を選びます。

これを「弱者の戦略」と呼びます。


弱者の戦略の基本となるのが「差別化」です。

商品、チャネル、価格、プロモーション、営業、すべてにおいて強者とは違うやり方を選び、土俵を変えて戦います。



さらに弱者の戦略には「5大戦略」と呼ばれるものがあります。

こちらも以前、簡単にですが、メルマガに書いたことがありました。



今回は、その中のひとつである「接近戦」をとりあげてみます。


業績低迷時には「接近戦」ができていなかった


「接近戦」とは、対象に接近して戦うことを示したものです。

たとえば敵の顔前に接近して戦えば、1対1の戦いに持ち込むことができて、数的劣勢を無効化できます。

戦いにおいての対象は敵ですが、ビジネスにおいてはおよそ(1)最終顧客、(2)流通業者、(3)ライバル会社で考えることができます。


サーモス時代、ランチェスター戦略に触れた我々が、まず気づいたのが「差別化」と「接近戦」ができていない。ということでした。

商品も売り方もチャネルも、強者であるライバル会社の受け売りばかり。

営業は、代理店(問屋さん)の機嫌取りに走っていました。

あまりにもセオリーに反したやり方だったので、逆に「まともにやれば売れるかも」と光が見えた気がしたぐらいです。


そこで我々が取り組んだのが、徹底した接近戦の展開です。

これが、結果的には「勝てる局面で戦う」ことにつながっていきました。


(1)最終顧客に接近する


強者は売れる商品を持っているので、仲介業者を活用することで販売機会を増やすことができます。

しかし、弱者は知名度もブランド力も販売チャネル支配力にも劣るため、販売機会は作れないし、作ったとしても売り負けてしまいます。そこを突破するためには、最終顧客に直接売るか、なるべく近いところでビジネスする必要があります。

そもそも、最終顧客に近づかなければ、最終顧客の情報が得られません。それでは、商品開発のヒントさえ得ることができません。

サーモスの場合、営業人員が少ないという事情があったので、代理店に頼り切りになっていました。

しかしそれではいつまで経っても、強いライバル企業の支配力に風穴を開けることなできないでしょう。

メーカーは、代理店に任せきりになるのではなく、自分で最終顧客のことを理解しなければならなかったのです。

そこでサーモスは、消費者調査を徹底する施策をとりました。

調査会社を使った消費者アンケート。

賞品つきキャンペーンを利用した利用状況調査。

消費者からのアイデア募集。

商品の箱に消費者あてのハガキを入れて回収。

社員が町に出て使用者にインタビュー(これはどちらかというと社員の士気高揚のため)

当時としては、相当のことをやっていたと思います。

最初は「予算をいっぱい使って有益なことがわかるのか?」と批判もありましたが、そんな調査のおかげで、今まで盲点になっていたあっと驚く事実に気づくことになりました。

(それが何かは、著書をお読みください^^)

消費者をよく理解することで、弱者であるサーモスでも「勝てる局面」を見つけることにつながったのです。


(2)小売店に接近する


それまでサーモスは、仲介業者である代理店にばかり営業をかけていました。

いや、営業とは名ばかりで、単に代理店の機嫌をとっていただけです。

代理店の倉庫を掃除して、ご褒美に魔法瓶を納品させてもらったりしていました。ほんとあほですね。

弱者は、最終顧客に近いところでビジネスしなければなりません。できれば最終顧客に直接販売するのが望ましい。

今ならネット販売も発達しているので、それもアリですね。ただ当時も今も、魔法瓶の販売チャネルの主要売り場は、量販店です。

つまり量販店チャネルを攻略しなければ、大きな販売需要を取り込むことはできないのです。

人数が少ないからとかへったくれだとか言っていられません。

サーモスの営業部は、代理店営業の方針を転換して、小売店への直接営業に切り替えました。

それまで行かなかった店やバイヤーに営業することは、それはそれはハードルが高い作業でした。

しかし、そんなハードルなど何物でもなかったぐらいの恩恵を得ることとなりました。

小売店のバイヤーには厳しい人が多かったですが、いくら叱られようとドヤされようと、企画が決定する場面に自ら立ち会えることは、営業としてやる気の出ることでした。

それ以上に驚いたのが、直接小売店に行くことによって得られる情報の質と量でした。

やはり代理店を通じて、得られる情報は、量も少なく、バイアスがかかっていました。

小売店の意思決定の場に立ち会うことで、営業としての必要な情報が何かということを否応なしに知ることになったのです。


収集した情報を基に、どの小売店なら勝ち目があるのかを見極め、営業力を集中させていきました。

ここでも「勝てる局面」を見つけていったのです。

その時、大いに参考にしたのが、ランチェスター「流通戦略」です。

市場シェアを緻密に、段階的に上げていく方法論は、サーモスの市場シェアを確実に向上させていきました。

理論を学びながら実践に落とし込む作業は大変でしたが、その甲斐あって、サーモスは、営業の方法論を実践的知識として獲得し、会社としての営業スタイルを作り上げていきました。

なお、その頃、実践を繰り返しながら覚えた方法論が、私の今の仕事の基盤にもなっています。


(3)ライバル会社に接近する


ライバル会社がたくさんいる市場では、差別化が効きにくくなります。差別化しても、どこかと被ることが多くなってしまうからです。

それぞれが差別化して何がなんだかわからなくなると、消費者は単純に「いちばん売れているもの」を選ぶようになります。

これを確率戦の市場といって、強者に有利な市場です。

弱者は、そうなっては勝ち目がありません。そこで、どこか一社に絞って接近し、1対1の状況を作ることになります。

1対1なら、差別化が有効に働くからです。


サーモスは、上位2社と同時に戦うことは得策ではないと考えて、一社だけに照準を絞りました。

あえて1位企業とは考えを合わせて、2位企業と対立するようにしました。

1位企業と協同して、2位企業を追い落とす行為です。

汚いやないか、と言われそうですが、それが戦いの世界です。我々はなんとしても「勝てる局面」を見出さなければならなかったのです。

もし1位企業がそのことに気付いていたら、我々と歩調を合わせることはしなかったでしょうが、その当時は有効でした。

こういうところにも、戦略を理解している、していない会社の差が出たのだと思います。


接近戦の徹底が、勝てる局面を見つけ出す


こうしてサーモスは、接近戦を徹底することにより「勝てる局面」を見つけていきました。

どんな強者にも、気づいていない局面、とるに足りないからと見逃している局面があります。

そういう死角や盲点こそが、弱者にとって「勝てる局面」です。

全体を俯瞰していても見えない、そんな隙間を見つけるためには、顧客や流通や競合他社に接近すればいい。

接近することでしか見えない局面は必ずあります。

それを見つけられるかどうかが、まさに会社生き残りの鍵となります。


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