大塚家具の父と娘はどちらが正しいのか?

2015.03.05

(2015年3月5日メルマガより)


■久しぶりに、ビジネスの話題がマスコミを賑わせています。


日本を代表する家具販売会社である大塚家具。

その創業家が二手に分かれてプロシキーファイト(委任状争奪戦)を展開するというなんともわかりやすい「お家騒動」が起きている件です。

私のようにビジネスニュースばかりを追いかけている身とすれば、テレビのワイドショーで華々しくとりあげられる話題があるとワクワクしますね。

他人事なので勝手なことを言っておりますが。

参考:東洋経済オンラインの「大塚家具」の記事
http://goo.gl/I2g0vW

■いったい大塚家具で何が起こっているのか?

今回の騒動の発端は2009年。創業者の大塚勝久氏から、娘である大塚久美子氏に社長を交代したところにあるようです。

大塚家具といえば、会員制という販売スタイルで知られています。これは、顧客一人一人に専属の店員が広い店内を説明しながらついてまわり、まとめ買いを促すという販売方法です。

一世を風靡した販売手法ですが「今はまとめ買いの時代ではないだろー」と考えた久美子新社長は、会員制をとりやめる動きに出ます。

そのおかげで、来店客数が増加するなど一定の効果を上げたわけですが、勝久氏とすれば自分の経営方針の否定だと写ったのでしょうか、2014年7月、業績不振を理由に久美子氏を解任。自らが社長に返り咲きます。

ところが業績はさらに悪化します。そこで、2015年1月28日、再度、久美子氏が社長に復帰。勝久氏は会長に専念することに。

しかし勝久氏は納得せず、ふたたび久美子氏の解任を提案。久美子氏も勝久氏の取締役解任を提案するという泥仕合の様相を呈しています。

■これって、はたから見れば、ストレートな親子喧嘩に見えますね。

でもそれが、上場企業の取締役同士というのだからスケールが大きくなります。

筆頭株主は創業者の勝久氏ですが、過半数を握っているわけではないので、一筋縄ではいきません。

はたして、創業家一族が二手に分かれて争うというなんとも野次馬の興味をひく事態になっているわけです。

■親子喧嘩に、どちらが正しくて、どちらが間違っていると言ってもしゃあないことなんですが、外野としては白黒つけたくなりますな^^;

会員制という販売方法にこだわる創業者の勝久氏と、入り口を広くしようとする2代目社長の久美子氏。

どうでしょう。マスコミのとりあげ方をみていると、どうやら、久美子氏の肩を持つ人が多いのかな。

今の時代にあわせた経営方針をとるべきなのに、過去の成功体験を捨てきれない先代のわがままに振り回されている。という論調が多いのでしょうか。

ただ、創業者勝久氏に同情的な意見もあります。

なにより、大塚家具を一代でここまで大きくしてきた立志伝中の人物です。その経営手腕は確かなはずです。

参考:大塚家具、「お家騒動」で見落とされた本質 家具業界への2つの革命と3つの減速要因
http://toyokeizai.net/articles/-/61988

■大塚家具の創業は、1969年。箪笥職人の家に生まれた大塚勝久氏が春日部駅前に作った販売店が始まりでした。

上の記事によると、大塚勝久氏が家具業界にもたらした革命は2つ。

1つは、メーカー直仕入れの実施。(業界の慣習を破って、問屋を中抜き)

1つは、実売価格の提示。(メーカー希望小売価格を無視)

要するに、中間マージンを排して、安く価格設定し、それをそのまま顧客に提示したわけです。(安売りされたらメーカーが怒るので「会員制だから、皆に安売りしてるわけではないですよ」という体裁にした)

実に、消費者目線に立った販売方法です。

■ということはですね。

大塚家具は「いいものが安く買えますよ」という価値を提供する店だったのです。

この場合の「安く」とは、定価販売に比べてという意味です。

ああ、これぞ、家を買うこと+家具を買い揃えることが、人生の一大イベントだった頃の古き良き時代の商売ですな。

かつて、男は家の一つも建てて一人前と言われたものです。だから、そこに入れる家具も一生ものです。

男が家を建てると、女は嫁入り時に家具を揃えるのが一般的でした。

女の子の親とすれば安物を持たせるわけにはいきません。だけどあまりにも高くつくのも困る。

そこに、確かな品がまとめ買いできて、定価より安く買えるという店があれば有難いですよ、それは。

かくして、大塚家具の狙いは当たり、さらにまとめ買い需要をとりこむために、店を広く、大きくしていき、巨大店舗を増やしていきました。

■そう思えば、大塚家具が低迷している理由もわかります。

新築販売戸数は大幅に減少していますから、まとめ買い需要も減ります。

さらに家具が一生ものだという概念も一般的ではなくなりつつあります。

価値観は多様化し、家具もライフスタイルに応じて、買い替えるのが普通です。

一生ものではないので、こだわりのない「安くていいや」という顧客をとりこんだのが、ニトリであり、IKEAです。

逆にこだわりのある人たちは、人生の節々で必要買いをします。カッシーナなどの高級品が調子のいいのはそのためでしょう。

つまり、会員制、まとめ買いという販売スタイルは今の時代に合わないのです。この点、あくまで会員制にこだわる勝久氏の意図が分かりません。

この状況ではせっかくの大店舗が負担になってしまいます。まるで末期のダイエーのようです。

■その大塚久美子社長が、大塚家具復活のための中期経営計画を発表しました。

参考:株式会社大塚家具 中期経営計画(PDF)
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-2-25.pdf

株式市場では好感をもって受け止められたらしい計画書ですが、本当にそうなのか?と私は思っています。

この計画では、大塚家具は「中間層」を狙うとしています。

今、高級品と廉価品に二極化しているのは、しかるべき中間層にマッチする商品がないからだ。そこを提供すれば、中間層が戻ってくるのだ。という仮説です。

本当でしょうか?

■ニトリやIKEAの登場により、家具はコモディティ化していっています。

これはあらゆる業界と同じ図式です。例えば家電品。家電量販店の登場により、専門店は駆逐されてしまいました。

生き残るのは、地域密着店か、よほどエッジの効いた個性的なお店です。

かつて家電品が買回品(顧客が複数の店舗を買い回るような品)だと断言できた頃は、それなりのこだわりと覚悟をもって購入しなければなりませんでした。

ところが、今や家電品は最寄品(時間をかけずに買う品)です。最寄品は、こだわりよりも、世間の評判と売れ筋かどうかで購入するものです。

その状況において、ヤマダ電機より高いですが、いい商品ですよ、という店がボリュームゾーンを捉えることができるのでしょうか?

無理ですよ。

ボリュームゾーンはそこにはありません。やるならば、ヤマダ電機よりも安いゾーンです。アマゾンや価格コムをフル活用するような一連のお店がそこを担っています。

つまり、家具においても、あえてボリュームを狙うならば、ニトリやIKEAよりも安い価格帯を提供して、こだわりのない層を取り込まなければなりません。

もっともそれだと大塚家具の強みが活きません。どこか他のプレーヤーがやるべきことでしょうね。

■では、カッシーナとニトリの間に需要がないかといえば、そうではありません。

実際に、大塚家具はそこで成立しています。

ただ残念ながら、そこにはかつてのような大量消費層はいません。だから大塚家具は低迷しているのです。

いるのは、それぞれに違うこだわりを持った無数の顧客群です。

今までのようなまとめ買い対応では、価値観の多様な顧客群はカバーできない。という久美子氏の問題意識は的を得ていると思います。

今の大塚家具は、いわば、品揃えが豊富で、高級品から中級品まで揃っている百貨店のようなものです。

「なんでもあるけど欲しいものはない」というのが末期のダイエーにいわれた言葉ですが、大塚家具もそういうイメージで捉えられていなければいいのですが

■久美子氏が中間計画書の中で個別「専門店」を展開するといっているのは、多様化した中間層に対応しようということで、私はここに活路があると思えます。

つまり大塚家具本体は背後に隠れて、それぞれ個性のある専門店の集合体になる。という方向性です。

アパレル専門店やメーカーは、そうして生き残っているはずです。皆がユニクロになれるわけではありませんから。

もっとも、ダウンサイジングをしなければならないわけですから、それに移行する過程で、相当の痛みは避けられません。うまくいったとしても、今の規模は維持できないかも知れません。

上場企業としては、規模を縮小して生き残ります。とは口が裂けれも言えないですから、景気のいい計画書を出すことは仕方のないことなんでしょうが。

■いずれにしろ、勝久氏の作った大塚家具のコンセプトを否定しなければ生き残れない。久美子氏の計画書にも現実感がない。というのが私の考えです。

現実的には、現状の大規模店舗をできるだけひっぱりながら、複数の専門店ブランドを育てていく。というところに落ち着くのでしょうかね。

それにしても、揉め事が公になる前に、親子で話をつけられなかったのでしょうか。

コミュニケーションの問題か。あるいは立志伝中の創業家というのは、こんなに苛烈な人たちなのか。

そこはさすがに想像の範囲を超えております。

(2015年3月5日メルマガより)


■久しぶりに、ビジネスの話題がマスコミを賑わせています。


日本を代表する家具販売会社である大塚家具。

その創業家が二手に分かれてプロシキーファイト(委任状争奪戦)を展開するというなんともわかりやすい「お家騒動」が起きている件です。

私のようにビジネスニュースばかりを追いかけている身とすれば、テレビのワイドショーで華々しくとりあげられる話題があるとワクワクしますね。

他人事なので勝手なことを言っておりますが。

参考:東洋経済オンラインの「大塚家具」の記事
http://goo.gl/I2g0vW

■いったい大塚家具で何が起こっているのか?

今回の騒動の発端は2009年。創業者の大塚勝久氏から、娘である大塚久美子氏に社長を交代したところにあるようです。

大塚家具といえば、会員制という販売スタイルで知られています。これは、顧客一人一人に専属の店員が広い店内を説明しながらついてまわり、まとめ買いを促すという販売方法です。

一世を風靡した販売手法ですが「今はまとめ買いの時代ではないだろー」と考えた久美子新社長は、会員制をとりやめる動きに出ます。

そのおかげで、来店客数が増加するなど一定の効果を上げたわけですが、勝久氏とすれば自分の経営方針の否定だと写ったのでしょうか、2014年7月、業績不振を理由に久美子氏を解任。自らが社長に返り咲きます。

ところが業績はさらに悪化します。そこで、2015年1月28日、再度、久美子氏が社長に復帰。勝久氏は会長に専念することに。

しかし勝久氏は納得せず、ふたたび久美子氏の解任を提案。久美子氏も勝久氏の取締役解任を提案するという泥仕合の様相を呈しています。

■これって、はたから見れば、ストレートな親子喧嘩に見えますね。

でもそれが、上場企業の取締役同士というのだからスケールが大きくなります。

筆頭株主は創業者の勝久氏ですが、過半数を握っているわけではないので、一筋縄ではいきません。

はたして、創業家一族が二手に分かれて争うというなんとも野次馬の興味をひく事態になっているわけです。

■親子喧嘩に、どちらが正しくて、どちらが間違っていると言ってもしゃあないことなんですが、外野としては白黒つけたくなりますな^^;

会員制という販売方法にこだわる創業者の勝久氏と、入り口を広くしようとする2代目社長の久美子氏。

どうでしょう。マスコミのとりあげ方をみていると、どうやら、久美子氏の肩を持つ人が多いのかな。

今の時代にあわせた経営方針をとるべきなのに、過去の成功体験を捨てきれない先代のわがままに振り回されている。という論調が多いのでしょうか。

ただ、創業者勝久氏に同情的な意見もあります。

なにより、大塚家具を一代でここまで大きくしてきた立志伝中の人物です。その経営手腕は確かなはずです。

参考:大塚家具、「お家騒動」で見落とされた本質 家具業界への2つの革命と3つの減速要因
http://toyokeizai.net/articles/-/61988

■大塚家具の創業は、1969年。箪笥職人の家に生まれた大塚勝久氏が春日部駅前に作った販売店が始まりでした。

上の記事によると、大塚勝久氏が家具業界にもたらした革命は2つ。

1つは、メーカー直仕入れの実施。(業界の慣習を破って、問屋を中抜き)

1つは、実売価格の提示。(メーカー希望小売価格を無視)

要するに、中間マージンを排して、安く価格設定し、それをそのまま顧客に提示したわけです。(安売りされたらメーカーが怒るので「会員制だから、皆に安売りしてるわけではないですよ」という体裁にした)

実に、消費者目線に立った販売方法です。

■ということはですね。

大塚家具は「いいものが安く買えますよ」という価値を提供する店だったのです。

この場合の「安く」とは、定価販売に比べてという意味です。

ああ、これぞ、家を買うこと+家具を買い揃えることが、人生の一大イベントだった頃の古き良き時代の商売ですな。

かつて、男は家の一つも建てて一人前と言われたものです。だから、そこに入れる家具も一生ものです。

男が家を建てると、女は嫁入り時に家具を揃えるのが一般的でした。

女の子の親とすれば安物を持たせるわけにはいきません。だけどあまりにも高くつくのも困る。

そこに、確かな品がまとめ買いできて、定価より安く買えるという店があれば有難いですよ、それは。

かくして、大塚家具の狙いは当たり、さらにまとめ買い需要をとりこむために、店を広く、大きくしていき、巨大店舗を増やしていきました。

■そう思えば、大塚家具が低迷している理由もわかります。

新築販売戸数は大幅に減少していますから、まとめ買い需要も減ります。

さらに家具が一生ものだという概念も一般的ではなくなりつつあります。

価値観は多様化し、家具もライフスタイルに応じて、買い替えるのが普通です。

一生ものではないので、こだわりのない「安くていいや」という顧客をとりこんだのが、ニトリであり、IKEAです。

逆にこだわりのある人たちは、人生の節々で必要買いをします。カッシーナなどの高級品が調子のいいのはそのためでしょう。

つまり、会員制、まとめ買いという販売スタイルは今の時代に合わないのです。この点、あくまで会員制にこだわる勝久氏の意図が分かりません。

この状況ではせっかくの大店舗が負担になってしまいます。まるで末期のダイエーのようです。

■その大塚久美子社長が、大塚家具復活のための中期経営計画を発表しました。

参考:株式会社大塚家具 中期経営計画(PDF)
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-2-25.pdf

株式市場では好感をもって受け止められたらしい計画書ですが、本当にそうなのか?と私は思っています。

この計画では、大塚家具は「中間層」を狙うとしています。

今、高級品と廉価品に二極化しているのは、しかるべき中間層にマッチする商品がないからだ。そこを提供すれば、中間層が戻ってくるのだ。という仮説です。

本当でしょうか?

■ニトリやIKEAの登場により、家具はコモディティ化していっています。

これはあらゆる業界と同じ図式です。例えば家電品。家電量販店の登場により、専門店は駆逐されてしまいました。

生き残るのは、地域密着店か、よほどエッジの効いた個性的なお店です。

かつて家電品が買回品(顧客が複数の店舗を買い回るような品)だと断言できた頃は、それなりのこだわりと覚悟をもって購入しなければなりませんでした。

ところが、今や家電品は最寄品(時間をかけずに買う品)です。最寄品は、こだわりよりも、世間の評判と売れ筋かどうかで購入するものです。

その状況において、ヤマダ電機より高いですが、いい商品ですよ、という店がボリュームゾーンを捉えることができるのでしょうか?

無理ですよ。

ボリュームゾーンはそこにはありません。やるならば、ヤマダ電機よりも安いゾーンです。アマゾンや価格コムをフル活用するような一連のお店がそこを担っています。

つまり、家具においても、あえてボリュームを狙うならば、ニトリやIKEAよりも安い価格帯を提供して、こだわりのない層を取り込まなければなりません。

もっともそれだと大塚家具の強みが活きません。どこか他のプレーヤーがやるべきことでしょうね。

■では、カッシーナとニトリの間に需要がないかといえば、そうではありません。

実際に、大塚家具はそこで成立しています。

ただ残念ながら、そこにはかつてのような大量消費層はいません。だから大塚家具は低迷しているのです。

いるのは、それぞれに違うこだわりを持った無数の顧客群です。

今までのようなまとめ買い対応では、価値観の多様な顧客群はカバーできない。という久美子氏の問題意識は的を得ていると思います。

今の大塚家具は、いわば、品揃えが豊富で、高級品から中級品まで揃っている百貨店のようなものです。

「なんでもあるけど欲しいものはない」というのが末期のダイエーにいわれた言葉ですが、大塚家具もそういうイメージで捉えられていなければいいのですが

■久美子氏が中間計画書の中で個別「専門店」を展開するといっているのは、多様化した中間層に対応しようということで、私はここに活路があると思えます。

つまり大塚家具本体は背後に隠れて、それぞれ個性のある専門店の集合体になる。という方向性です。

アパレル専門店やメーカーは、そうして生き残っているはずです。皆がユニクロになれるわけではありませんから。

もっとも、ダウンサイジングをしなければならないわけですから、それに移行する過程で、相当の痛みは避けられません。うまくいったとしても、今の規模は維持できないかも知れません。

上場企業としては、規模を縮小して生き残ります。とは口が裂けれも言えないですから、景気のいい計画書を出すことは仕方のないことなんでしょうが。

■いずれにしろ、勝久氏の作った大塚家具のコンセプトを否定しなければ生き残れない。久美子氏の計画書にも現実感がない。というのが私の考えです。

現実的には、現状の大規模店舗をできるだけひっぱりながら、複数の専門店ブランドを育てていく。というところに落ち着くのでしょうかね。

それにしても、揉め事が公になる前に、親子で話をつけられなかったのでしょうか。

コミュニケーションの問題か。あるいは立志伝中の創業家というのは、こんなに苛烈な人たちなのか。

そこはさすがに想像の範囲を超えております。

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