サーモス(THERMOS)の奇跡はなぜ起きたのか?

2018.05.03



(2018年5月3日メルマガより)

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私の初めての著作「『廃業寸前』が世界トップ企業になった奇跡の物語」が発売されたのが、2015年の11月頃のことでした。


あれから3年半が過ぎ、本の売上は落ち着いたようですね。本屋さんで見かけることもなくなりましたし、3刷はなさそうです(T_T)

しかし有難いことに、本を読んだ、という方から時折ご連絡をいただきます。

講演のテーマに指名していただけることも多く、今年も何度かお話しさせていただきました。


いま、私の講演は「ランチェスター戦略」「孫子の兵法」「営業セミナー」と並んで「サーモスの奇跡」が4大テーマとなっています。

有難い限りです。


「サーモスの奇跡」は有数のⅤ字回復事例


講演そのものは、60分~90分ぐらいですから、サーモスのV字回復事例の細かなところまですべてをお話しすることはできません。

しかし、せっかく講演を聞きにきていただいているのだから、概要を話して終わりというわけにはいきません。概要を聞くだけなら、本を読んでいただければいいわけです。

そこで、当事者にしか知りえない話を盛り込みます。実際、本には書けないような生々しい逸話がありますからね。そういう記録に残せないような話をさせていただきます。

ここだけの話ができるのが、リアルな講演の価値の一つですからね。

もともと「サーモスの奇跡」は、廃業寸前だった小さな事業部が、経営改革を成し遂げ、わずかな期間で世界トップ企業に変貌したという出来過ぎた話です。それがリアルなものだと実感していただければ、多くの方に驚きと感動をもたらすものだと信じています。

講演のあと、懇親会に参加させていただくこともあるのですが、その際にも、感動した、わが社もあやかりたい、といった言葉をいただきます。

本当に有難い言葉です。講師冥利に尽きるというものです。



「サーモスの奇跡」を再現するにはどうすればいいのか?


しかし、そうは簡単にあやかることができないというのも理解しています。

講演を聞いた方からよく聞かれるのは、「自社で再現するにはどうすればいいのか?」という一点です。

それはそうでしょうね。せっかく話を聞いて、前向きになったのだから、自社でも試してみたいと思うでしょう。

思い立ったが、その時です。

そういう気持ちになったなら、迷わず、私に相談ください。

弊社の営業コンサルティングは、まさにサーモスの奇跡を再現しようというものです。


そんなことを言ったら、ただの宣伝やないか、と叱られそうですが、お許しください。

なにしろ、経営環境も、人材も、時代も違う会社が、同じようにしてうまくいく保証などどこにもありません。

それこそ、個々の会社の状況に応じて、チューニングする必要があるわけです。

「同じようにすれば成功できます」なんて言うことはできませんから、できるだけのお手伝いをさせていただきたいと考えています。


とは言うもののやり様を教えてほしいという声をよく聞きます。

そこで今回は、私が考える「サーモスの奇跡が起きた理由」を書かせていただきます。

同時に、これはそのまま、私がコンサルティングで大事にしていることでもあります。

事例を聞いて応用できる方には蛇足の情報かも知れませんが、今回はお付き合いいただけますようにお願いいたします。


勝てる局面で戦う


まず、サーモスがV字回復するうえで、最初に行ったのが「勝てる局面を見つける」ということでした。

「勝てる局面で戦う」ことは、会社が生き残る上で、非常に大切なことです。

そんなこと当たり前やないか。と言われそうですが、実際のところ、多くの会社が、勝つのが難しい局面で戦っています。

それだとせっかくの努力が、徒労に終わってしまいます。


この場合の「勝てる局面」とは、勝てる地域、勝てる市場、勝てる相手、勝てるタイミングという概念を含みます。

逆にいうと、勝てそうもない局面で努力すると苦労します。

土瓶を割って損をして苦労する、ドビンソン・クルーソーになってしまいます。

常に会社は、努力すれば報われるような市場なのか、地域なのか、相手なのか、今がタイミングなのかを測る必要があります。


サーモスの場合、象印魔法瓶やタイガー魔法瓶に埋もれて、特徴のない商品、特徴のないビジネスを展開していました。

3番手企業が、上位2社と似たようなことをやっていたら、それは勝ち目はありません。

まずはそこから脱却するために「勝てる局面」を見つけようとしました。

その際に使ったのがポジショニングマップという手法です。詳しくは著書を読んでください。

もちろん私も、コンサルティングにおいて最初にすることは「勝てる局面で戦っているか」をみることです。

もしその会社が勝てる局面で戦っていないならば、ますはそこから修正しなければなりません。


弱者の戦略で戦う


戦い方にはセオリーがあります。

「孫子の兵法」や「ランチェスター戦略」には、そのセオリーが示されています。

セオリーを無視した戦いは、勝率が低くなり、苦労します。

土瓶を割って損をして苦労する、ドビンソン・クルーソーになってしまいます。


サーモスは当時、弱者の立場でしたから、弱者の戦略を志向しました。

特に、競合他社と違う商品を作る「差別化」と、競合他社よりもユーザーに接近する「接近戦」の徹底が、威力を発揮しました。

こうしたセオリーは、知っている者には当たり前ですが、知らないと思いつかないものです。

「売れている会社の真似をすれば当社も売れるはず」という発想は、弱者企業にとって、地獄への一本道です。

事実、それまでのサーモスは、弱者なのに、強者企業のやるようなことをずっと続けており、低迷していたのですから。

なんとも間抜けな話ですが、よくある話なのです。

私がコンサルティングで関わる会社にも、そのようなことがよくあります。そんな場合、ほんの少し考え方を変えるだけでやり様が劇的に変わります。

セオリーを守る。当たり前のことをするだけで、業績は格段に向上します。


現場主義を貫く


会社にとって最も大切な存在は、顧客です。

顧客こそが、会社に収益をもたらす唯一の存在だからです。

だから会社内で最も重要なのが、顧客と接する現場です。

現場感覚のない方針や戦略などトイレットペーパーの芯ほどにも役立ちません。


サーモスの場合、幸いにも、現場に近い者たちが多く参加して、戦略を作っていきました。現場担当者にある程度の権限が与えられ、発言を遮られることは基本的にありませんでした。

それが会社の方針や施策に生命を吹き込んだ要因です。


会社組織とは、人の集まりです。その人たちが一丸となった組織は、途方もないパワーを発揮します。

孫子にいう「水の疾くして石を漂わすに至る者は勢なり」です。

戦略も戦術も、現場の人間が参加して作ることで、全員参加の機運が生まれます。

それが、組織を一丸にしていきます。

だから私はコンサルティングにおいても、現場の人間が参加し、納得のもとで方針を決めることにこだわります。

それが遠回りであるようにみえて、実は、会社の強みになるからです。


強さの裏側にある「仕組み」


「サーモスの奇跡」において、最も驚くべきは、サーモスがトップになってから10年以上経った今も、世界トップ企業として業績を拡大させ続けているという事実です。

その勢いは一時的なものではありませんでした。

つまり、サーモスがV字回復する過程で取り組んだ「勝てる局面」「戦略セオリー」「現場主義」は、20年近く機能し続けているということです。

いわばサーモスが築き上げた強い商品、高い市場シェア、ブランド力、営業力は、こうした考え方や姿勢によって支えられてきました。

それが20年以上も続いているということは、その考え方や姿勢が「仕組み」として会社の中に定着しているということです。


あらゆる会社にとって「強み」は構造的なものでなければなりません。

商品が素晴らしい会社には、その素晴らしい商品を生み出す「仕組み」があります。

営業が強いといわれる会社には、そういう営業を育成し、持続し、引き継ぐ「仕組み」があります。

戦略が的確な会社にも、的確な戦略を作り続ける「仕組み」があります。

その強みを裏側から支える仕組みが機能してこそ強みは、陳腐化せずに続いていきます。


経営改革に取り組む会社、あるいはそれほど大げさではなくても、業績を向上させたいと考える会社は、この裏側にある仕組みを意識しなければなりません。

私がコンサルティングで注力するのもこのことです。

はっきり言って、戦略を作るのはそれほど難しいことではありません。難しいのは、それを浸透させ、永続させることです。

そのためには仕組みを作り、機能させなければならない。そうじゃないと、一時的にうまくいっても、何年か後には元に戻ったってことになってしまいますのでね。


もっとも「仕組み」とて、永遠に機能し続けるものではありません。

定期的にオーバーホールしないと、どんな素晴らしい仕組みも、機能低下してしまいます。

サーモスも決して永遠に強いわけではありません。

いまのメンバーがトップ企業の地位に安心しているとすれば、それは危ない兆候です。




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私の初めての著作「『廃業寸前』が世界トップ企業になった奇跡の物語」が発売されたのが、2015年の11月頃のことでした。


あれから3年半が過ぎ、本の売上は落ち着いたようですね。本屋さんで見かけることもなくなりましたし、3刷はなさそうです(T_T)

しかし有難いことに、本を読んだ、という方から時折ご連絡をいただきます。

講演のテーマに指名していただけることも多く、今年も何度かお話しさせていただきました。


いま、私の講演は「ランチェスター戦略」「孫子の兵法」「営業セミナー」と並んで「サーモスの奇跡」が4大テーマとなっています。

有難い限りです。


「サーモスの奇跡」は有数のⅤ字回復事例


講演そのものは、60分~90分ぐらいですから、サーモスのV字回復事例の細かなところまですべてをお話しすることはできません。

しかし、せっかく講演を聞きにきていただいているのだから、概要を話して終わりというわけにはいきません。概要を聞くだけなら、本を読んでいただければいいわけです。

そこで、当事者にしか知りえない話を盛り込みます。実際、本には書けないような生々しい逸話がありますからね。そういう記録に残せないような話をさせていただきます。

ここだけの話ができるのが、リアルな講演の価値の一つですからね。

もともと「サーモスの奇跡」は、廃業寸前だった小さな事業部が、経営改革を成し遂げ、わずかな期間で世界トップ企業に変貌したという出来過ぎた話です。それがリアルなものだと実感していただければ、多くの方に驚きと感動をもたらすものだと信じています。

講演のあと、懇親会に参加させていただくこともあるのですが、その際にも、感動した、わが社もあやかりたい、といった言葉をいただきます。

本当に有難い言葉です。講師冥利に尽きるというものです。



「サーモスの奇跡」を再現するにはどうすればいいのか?


しかし、そうは簡単にあやかることができないというのも理解しています。

講演を聞いた方からよく聞かれるのは、「自社で再現するにはどうすればいいのか?」という一点です。

それはそうでしょうね。せっかく話を聞いて、前向きになったのだから、自社でも試してみたいと思うでしょう。

思い立ったが、その時です。

そういう気持ちになったなら、迷わず、私に相談ください。

弊社の営業コンサルティングは、まさにサーモスの奇跡を再現しようというものです。


そんなことを言ったら、ただの宣伝やないか、と叱られそうですが、お許しください。

なにしろ、経営環境も、人材も、時代も違う会社が、同じようにしてうまくいく保証などどこにもありません。

それこそ、個々の会社の状況に応じて、チューニングする必要があるわけです。

「同じようにすれば成功できます」なんて言うことはできませんから、できるだけのお手伝いをさせていただきたいと考えています。


とは言うもののやり様を教えてほしいという声をよく聞きます。

そこで今回は、私が考える「サーモスの奇跡が起きた理由」を書かせていただきます。

同時に、これはそのまま、私がコンサルティングで大事にしていることでもあります。

事例を聞いて応用できる方には蛇足の情報かも知れませんが、今回はお付き合いいただけますようにお願いいたします。


勝てる局面で戦う


まず、サーモスがV字回復するうえで、最初に行ったのが「勝てる局面を見つける」ということでした。

「勝てる局面で戦う」ことは、会社が生き残る上で、非常に大切なことです。

そんなこと当たり前やないか。と言われそうですが、実際のところ、多くの会社が、勝つのが難しい局面で戦っています。

それだとせっかくの努力が、徒労に終わってしまいます。


この場合の「勝てる局面」とは、勝てる地域、勝てる市場、勝てる相手、勝てるタイミングという概念を含みます。

逆にいうと、勝てそうもない局面で努力すると苦労します。

土瓶を割って損をして苦労する、ドビンソン・クルーソーになってしまいます。

常に会社は、努力すれば報われるような市場なのか、地域なのか、相手なのか、今がタイミングなのかを測る必要があります。


サーモスの場合、象印魔法瓶やタイガー魔法瓶に埋もれて、特徴のない商品、特徴のないビジネスを展開していました。

3番手企業が、上位2社と似たようなことをやっていたら、それは勝ち目はありません。

まずはそこから脱却するために「勝てる局面」を見つけようとしました。

その際に使ったのがポジショニングマップという手法です。詳しくは著書を読んでください。

もちろん私も、コンサルティングにおいて最初にすることは「勝てる局面で戦っているか」をみることです。

もしその会社が勝てる局面で戦っていないならば、ますはそこから修正しなければなりません。


弱者の戦略で戦う


戦い方にはセオリーがあります。

「孫子の兵法」や「ランチェスター戦略」には、そのセオリーが示されています。

セオリーを無視した戦いは、勝率が低くなり、苦労します。

土瓶を割って損をして苦労する、ドビンソン・クルーソーになってしまいます。


サーモスは当時、弱者の立場でしたから、弱者の戦略を志向しました。

特に、競合他社と違う商品を作る「差別化」と、競合他社よりもユーザーに接近する「接近戦」の徹底が、威力を発揮しました。

こうしたセオリーは、知っている者には当たり前ですが、知らないと思いつかないものです。

「売れている会社の真似をすれば当社も売れるはず」という発想は、弱者企業にとって、地獄への一本道です。

事実、それまでのサーモスは、弱者なのに、強者企業のやるようなことをずっと続けており、低迷していたのですから。

なんとも間抜けな話ですが、よくある話なのです。

私がコンサルティングで関わる会社にも、そのようなことがよくあります。そんな場合、ほんの少し考え方を変えるだけでやり様が劇的に変わります。

セオリーを守る。当たり前のことをするだけで、業績は格段に向上します。


現場主義を貫く


会社にとって最も大切な存在は、顧客です。

顧客こそが、会社に収益をもたらす唯一の存在だからです。

だから会社内で最も重要なのが、顧客と接する現場です。

現場感覚のない方針や戦略などトイレットペーパーの芯ほどにも役立ちません。


サーモスの場合、幸いにも、現場に近い者たちが多く参加して、戦略を作っていきました。現場担当者にある程度の権限が与えられ、発言を遮られることは基本的にありませんでした。

それが会社の方針や施策に生命を吹き込んだ要因です。


会社組織とは、人の集まりです。その人たちが一丸となった組織は、途方もないパワーを発揮します。

孫子にいう「水の疾くして石を漂わすに至る者は勢なり」です。

戦略も戦術も、現場の人間が参加して作ることで、全員参加の機運が生まれます。

それが、組織を一丸にしていきます。

だから私はコンサルティングにおいても、現場の人間が参加し、納得のもとで方針を決めることにこだわります。

それが遠回りであるようにみえて、実は、会社の強みになるからです。


強さの裏側にある「仕組み」


「サーモスの奇跡」において、最も驚くべきは、サーモスがトップになってから10年以上経った今も、世界トップ企業として業績を拡大させ続けているという事実です。

その勢いは一時的なものではありませんでした。

つまり、サーモスがV字回復する過程で取り組んだ「勝てる局面」「戦略セオリー」「現場主義」は、20年近く機能し続けているということです。

いわばサーモスが築き上げた強い商品、高い市場シェア、ブランド力、営業力は、こうした考え方や姿勢によって支えられてきました。

それが20年以上も続いているということは、その考え方や姿勢が「仕組み」として会社の中に定着しているということです。


あらゆる会社にとって「強み」は構造的なものでなければなりません。

商品が素晴らしい会社には、その素晴らしい商品を生み出す「仕組み」があります。

営業が強いといわれる会社には、そういう営業を育成し、持続し、引き継ぐ「仕組み」があります。

戦略が的確な会社にも、的確な戦略を作り続ける「仕組み」があります。

その強みを裏側から支える仕組みが機能してこそ強みは、陳腐化せずに続いていきます。


経営改革に取り組む会社、あるいはそれほど大げさではなくても、業績を向上させたいと考える会社は、この裏側にある仕組みを意識しなければなりません。

私がコンサルティングで注力するのもこのことです。

はっきり言って、戦略を作るのはそれほど難しいことではありません。難しいのは、それを浸透させ、永続させることです。

そのためには仕組みを作り、機能させなければならない。そうじゃないと、一時的にうまくいっても、何年か後には元に戻ったってことになってしまいますのでね。


もっとも「仕組み」とて、永遠に機能し続けるものではありません。

定期的にオーバーホールしないと、どんな素晴らしい仕組みも、機能低下してしまいます。

サーモスも決して永遠に強いわけではありません。

いまのメンバーがトップ企業の地位に安心しているとすれば、それは危ない兆候です。


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