楽天グループ迷走す

2008.08.28

(2008/8/28メルマガより)

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■今週の日経ビジネス(2008.8.25)に楽天の記事が載っています。

それによると、楽天の主要事業である仮想商店街の業績は好調のようですね。

楽天市場に出店する小売店は24000件以上。総売り上げは、6400億円になり
ます。

これは、大手百貨店に肩を並べる規模。もうIT企業というよりも、堂々た
る大手流通企業と言っていいでしょう。

いつの間にか、楽天は、そこまで力をつけてきたんですね。

■既存の大手流通業と違うのは、楽天があくまで「商店街」であること。中
小小売業の集積が、楽天市場です。

つまり、個々の中小小売店が業績を伸ばすことで、楽天も成長を維持してい
ます。

創世記は、インターネットで販売できるというだけで、小売店を集めること
ができましたが、今はそれでは競争力を持ちえません。

だから現在の楽天のビジネスの競争力は、中小小売店の業績を上げるための
コンサルティング能力です。

■日経ビジネスの記事では、泉佐野のタオル屋さんや、瀬戸のネイルショッ
プが、楽天のECコンサルタントの指導で、起死回生の売上増を達成したと
いう事例が載っています。

いささか宣伝っぽくもありますが^^;

でも、本当のことなんでしょう。

既存のPLACE(マーケティングに言う販売の場のこと)が力を失い、変
革が必要とされる現代に、Eコマースという消費者に直接届ける販売方法を
提供する楽天のビジネスは、確かに有難いものです。

淘汰され、力を失いつつあった中小事業者に販売機会を提供するという極め
て社会的意義のあるビジネスと言えるでしょう。

出店料も、リアルの店舗を持つことに比較すれば格段に安い。しかも、専属
のコンサルタントが指導してくれるとなれば、至れり尽くせりのサービスに
思えます。

他のネット商店街は、運営指導まではなかなか手が回らないそうなので、楽
天が一歩抜きん出ている所以です。

■もっとも実際には、すべての指導がピタリとはまるわけでもないらしい。
当たり前ですが。

また、指導を実践に移すためには、それなりの投資がかかります。

指導を受けるのはタダでも、タダで売上を伸ばせるわけではありません。サ
イトの変更や、広告、キャンペーンの実施。相当の費用はかけなければなり
ません。(それらの施策が楽天の収益になるわけです)

出店だけしていれば売れるようになったという甘い話ではありませんので、
ご注意ください。。。

そういえば、楽天グループの三木谷代表は、以前、楽天の強みは「血みどろ
営業」だと発言していましたっけ。

■さて、同じ日経ビジネスに三木谷代表のインタビュー記事が載っています。

三木谷代表は、冒頭から楽天のことを「何の会社なのかって?俺が教えてほ
しいぐらい」と発言しています。

これが、ランチェスター戦略を学ぶ者から見れば、いささか問題です^^;

要するに、ビジネスが絞りきれていないということになります。

■三木谷代表は、ECという新しいビジネスを始めるのに「何の会社なんて
言えるわけがない」ともっともらしいことを言っていますが、こういう発言
は自分のビジネスを絞ることができない事業者の常套句であるように私には
聞こえます。

また三木谷代表は「会員に付加価値の高いサービスを提供する」ことが楽天
のコアだとも発言しています。

「会員に様々なサービスを尽くす→会員を楽天に囲い込む」ということなん
でしょうかね。

私は三木谷代表の言葉から「顧客を囲い込む→顧客から自由を奪う」と連想
してしまうので、少し滅入ってしまいます。

■それにもうひとつ。会員というのは、消費者のことを指すのか、それとも
中小事業者のことを指すのか。

このあたりも曖昧に思えます。

中小事業者を囲い込むという意味では、非常に成功したビジネスであると言
えますが、消費者に対して本当に至れり尽くせりのサービスを提供できてい
るのかは疑問です。

私には、楽天の顧客囲い込み姿勢がいささか不自由に感じられるんですねー

自分で楽天ブログを利用しているのでそう思うのですが^^;

■楽天のホームページを見ると、同グループは、「EC事業」の他に、「旅
行事業」「証券事業」「通信事業」「ポータルメディア事業」「球団事業」
「クレジット事業」などを展開しています。

さらにイーバンク銀行に出資して「金融事業」に進出しようとしています。

このうち、業績が好調なのは「EC事業」と「旅行事業」のみだそうです。

私には脈絡のない事業展開に思えてしまうのですが、いかがでしょうか?

「EC事業」と「クレジット事業」「金融事業」は、シナジーが築けそうな
のですが、その他はどう関連づけるのか...

■さらに言うと、TBSに投資して塩漬けになっている1000億円のキャッシ
ュをどう考えるのか?(現在は660億円程度に目減りしています)

TBSを買収して、どういう未来図を描こうとするのかが、さっぱり見えま
せん。

三木谷代表は「TBSのイシューはゆっくりやる」「TBSだけとやる気は
ない」と発言しています。

まったく訳が分かりませんな。。。

■これでは、ITバブルに踊って、時価総額を引き上げる施策を引きずって
いると言われても仕方ありません。

楽天は「スピード」を企業理念に標榜していますが、スピードに走るあまり、
内部体制が追いついていないという指摘があります。

実際には、内部体制だけではなく、事業コンセプトそのものが曖昧になって
います。

このあたりで今一度、事業全体の再構築をする必要があるのは、論を待ちま
せんね。

■成長期の企業が大きく手を広げるのは戦略の常套です。

しかし、成熟期に入る前には、もう一度、事業を整理しなければなりません。

これがランチェスター戦略に言う「グー、パー、チョキ」戦略です。
(なんどか説明している戦略なので、繰り返しませんが)

■楽天の場合、無理をして手を広げすぎた感があります。

特にTBSの件は無理に無理を重ねています。

(ABCマートの会長がせっかく売る機会を作ったのに、どういう事情か機
会を逸しましたね...)

ここで方針転換するのは、勇気のいる決断ですが、5年後、10年後を見据え
た時、その600億円を何に使うべきなのかを冷静に判断してほしいと思いま
す。

■日本のIT企業の雄である楽天の迷走が残念でなりません。

日本市場でトップだからといって、多角化に走るのは、早すぎます。

本当に世界に伍する企業になるためにも、もう一度原点を見直して、EC事
業を中心とした極めて尖った企業になってほしいと思います。

■それにしても、楽天ほどの企業でも、単純な戦略のミスを犯すんですね。

我々中小零細企業は、ミスをしたら致命傷になりますので気をつけないと。

弱者は、一点集中を貫きましょう!


(2008/8/28メルマガより)

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■今週の日経ビジネス(2008.8.25)に楽天の記事が載っています。

それによると、楽天の主要事業である仮想商店街の業績は好調のようですね。

楽天市場に出店する小売店は24000件以上。総売り上げは、6400億円になり
ます。

これは、大手百貨店に肩を並べる規模。もうIT企業というよりも、堂々た
る大手流通企業と言っていいでしょう。

いつの間にか、楽天は、そこまで力をつけてきたんですね。

■既存の大手流通業と違うのは、楽天があくまで「商店街」であること。中
小小売業の集積が、楽天市場です。

つまり、個々の中小小売店が業績を伸ばすことで、楽天も成長を維持してい
ます。

創世記は、インターネットで販売できるというだけで、小売店を集めること
ができましたが、今はそれでは競争力を持ちえません。

だから現在の楽天のビジネスの競争力は、中小小売店の業績を上げるための
コンサルティング能力です。

■日経ビジネスの記事では、泉佐野のタオル屋さんや、瀬戸のネイルショッ
プが、楽天のECコンサルタントの指導で、起死回生の売上増を達成したと
いう事例が載っています。

いささか宣伝っぽくもありますが^^;

でも、本当のことなんでしょう。

既存のPLACE(マーケティングに言う販売の場のこと)が力を失い、変
革が必要とされる現代に、Eコマースという消費者に直接届ける販売方法を
提供する楽天のビジネスは、確かに有難いものです。

淘汰され、力を失いつつあった中小事業者に販売機会を提供するという極め
て社会的意義のあるビジネスと言えるでしょう。

出店料も、リアルの店舗を持つことに比較すれば格段に安い。しかも、専属
のコンサルタントが指導してくれるとなれば、至れり尽くせりのサービスに
思えます。

他のネット商店街は、運営指導まではなかなか手が回らないそうなので、楽
天が一歩抜きん出ている所以です。

■もっとも実際には、すべての指導がピタリとはまるわけでもないらしい。
当たり前ですが。

また、指導を実践に移すためには、それなりの投資がかかります。

指導を受けるのはタダでも、タダで売上を伸ばせるわけではありません。サ
イトの変更や、広告、キャンペーンの実施。相当の費用はかけなければなり
ません。(それらの施策が楽天の収益になるわけです)

出店だけしていれば売れるようになったという甘い話ではありませんので、
ご注意ください。。。

そういえば、楽天グループの三木谷代表は、以前、楽天の強みは「血みどろ
営業」だと発言していましたっけ。

■さて、同じ日経ビジネスに三木谷代表のインタビュー記事が載っています。

三木谷代表は、冒頭から楽天のことを「何の会社なのかって?俺が教えてほ
しいぐらい」と発言しています。

これが、ランチェスター戦略を学ぶ者から見れば、いささか問題です^^;

要するに、ビジネスが絞りきれていないということになります。

■三木谷代表は、ECという新しいビジネスを始めるのに「何の会社なんて
言えるわけがない」ともっともらしいことを言っていますが、こういう発言
は自分のビジネスを絞ることができない事業者の常套句であるように私には
聞こえます。

また三木谷代表は「会員に付加価値の高いサービスを提供する」ことが楽天
のコアだとも発言しています。

「会員に様々なサービスを尽くす→会員を楽天に囲い込む」ということなん
でしょうかね。

私は三木谷代表の言葉から「顧客を囲い込む→顧客から自由を奪う」と連想
してしまうので、少し滅入ってしまいます。

■それにもうひとつ。会員というのは、消費者のことを指すのか、それとも
中小事業者のことを指すのか。

このあたりも曖昧に思えます。

中小事業者を囲い込むという意味では、非常に成功したビジネスであると言
えますが、消費者に対して本当に至れり尽くせりのサービスを提供できてい
るのかは疑問です。

私には、楽天の顧客囲い込み姿勢がいささか不自由に感じられるんですねー

自分で楽天ブログを利用しているのでそう思うのですが^^;

■楽天のホームページを見ると、同グループは、「EC事業」の他に、「旅
行事業」「証券事業」「通信事業」「ポータルメディア事業」「球団事業」
「クレジット事業」などを展開しています。

さらにイーバンク銀行に出資して「金融事業」に進出しようとしています。

このうち、業績が好調なのは「EC事業」と「旅行事業」のみだそうです。

私には脈絡のない事業展開に思えてしまうのですが、いかがでしょうか?

「EC事業」と「クレジット事業」「金融事業」は、シナジーが築けそうな
のですが、その他はどう関連づけるのか...

■さらに言うと、TBSに投資して塩漬けになっている1000億円のキャッシ
ュをどう考えるのか?(現在は660億円程度に目減りしています)

TBSを買収して、どういう未来図を描こうとするのかが、さっぱり見えま
せん。

三木谷代表は「TBSのイシューはゆっくりやる」「TBSだけとやる気は
ない」と発言しています。

まったく訳が分かりませんな。。。

■これでは、ITバブルに踊って、時価総額を引き上げる施策を引きずって
いると言われても仕方ありません。

楽天は「スピード」を企業理念に標榜していますが、スピードに走るあまり、
内部体制が追いついていないという指摘があります。

実際には、内部体制だけではなく、事業コンセプトそのものが曖昧になって
います。

このあたりで今一度、事業全体の再構築をする必要があるのは、論を待ちま
せんね。

■成長期の企業が大きく手を広げるのは戦略の常套です。

しかし、成熟期に入る前には、もう一度、事業を整理しなければなりません。

これがランチェスター戦略に言う「グー、パー、チョキ」戦略です。
(なんどか説明している戦略なので、繰り返しませんが)

■楽天の場合、無理をして手を広げすぎた感があります。

特にTBSの件は無理に無理を重ねています。

(ABCマートの会長がせっかく売る機会を作ったのに、どういう事情か機
会を逸しましたね...)

ここで方針転換するのは、勇気のいる決断ですが、5年後、10年後を見据え
た時、その600億円を何に使うべきなのかを冷静に判断してほしいと思いま
す。

■日本のIT企業の雄である楽天の迷走が残念でなりません。

日本市場でトップだからといって、多角化に走るのは、早すぎます。

本当に世界に伍する企業になるためにも、もう一度原点を見直して、EC事
業を中心とした極めて尖った企業になってほしいと思います。

■それにしても、楽天ほどの企業でも、単純な戦略のミスを犯すんですね。

我々中小零細企業は、ミスをしたら致命傷になりますので気をつけないと。

弱者は、一点集中を貫きましょう!


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