日本のモノづくりを復活させるには

2013.11.28

(2013年11月28日メルマガより)



■「日本型モノづくりの敗北」という本が出ています。

http://amazon.co.jp/o/ASIN/4166609424/lanchesterkan-22/ref=nosim

大げさに不安を煽る本かと思えばさにあらず。

具体的な事実を積み重ねた実直な内容の本です。

これを読んでいると、日本の技術は世界一だ、という漠然とした主張が実に根拠の薄いものだということが分かります。

■たとえば、半導体産業。

1990年代、半導体産業の主役は日本企業群でした。

その頃の日本企業が作る半導体は、品質水準が異常に高く、他国の追随を許さないものでした。

ところが、現在の半導体トップメーカーはサムソン電子です。

品質面でこそ日本企業の作る半導体技術に劣るものの、圧倒的なコスト差があるために、市場シェア1位の座を占めています。

ここで日本側は「技術では勝っているのに、コストで負けた」と言いがちです。

しかし、この本で著者が主張するのは、「低コスト化技術で負けた」ことを認めずに、いつまでも技術力は世界一だと言い訳していたら、負けっぱなしになる、ということです。

全くその通り。と共感する方は多いのではないですか。

低コスト化も技術の一つに外なりません。それも、圧倒的に重要な技術です。

日本の製造業のあちこちで思い当たる事例があるはずです。

■ランチェスター戦略に「市場シェア理論」というものがあります。

参考:http://www.lanchester-kansai.jp/new/knowledge/knowledge01.html

実際のコンサルティングにおいては、非常によく使う理論です。

ランチェスター戦略においては、市場シェアというものを重視しています。それを拡大することが企業の目標となります。

では、企業は、市場シェアをどこまで伸ばせばいいのか。それを示すのが、市場シェア目標値といわれるものです。

詳しい話は省きますが、最も重要な目標値は、41.7%。1位企業が、それを超えると、圧倒的に強くなり、逆転は困難になるといわれています。

だから企業は、どんな分野でさえ、40%以上のシェアをとろうと目指し、様々な方策を練るのです。

1990年前後の半導体の国籍別市場シェアをみると、日本は50%以上のシェアを持っていました。

ということは理論上は、逆転は非常に困難なはずです。

それなのに、逆転されたのはどういうわけなのか?

■ランチェスター戦略においては、強者(1位)の優位は揺るぎません。

ランチェスター戦略は弱者でも勝てる戦略だ、と思われている方が多いかも知れませんが、実際には、強者が絶対に有利だと教えています。

ところが、しばしば、強者と弱者の逆転が起きるのはどういうわけか。

強者が慢心して気を抜いていた、とかいうなら別ですが、実にしっかりと強者の戦略を実践していた企業が、逆転を許す典型的なパターンは、市場に大きな変化が起きた時です。

例えば、半導体において、日本企業が絶対的な優位性を持っていたのは、大型コンピュータの時代です。

品質の信頼性が最も重視された時代に、対応できるのは日本企業だけしかなかったからです。

ところが、パソコンの時代になると、品質とコストのバランスが求められるようになります。

そこそこの品質を持ち、汎用品にふさわしいコストの製品です。

高品質の追求に慣れ、コスト対応できなかった日本企業は凋落し、代わってインテルがトップ企業となりました。

パソコンの時代は、ウィンドウズの時代でもあり、インテルの時代でもありました。

インテル王国は永遠に続くのかと思えたほど、強かった時代があったものでした。

ところが、時代はスマートフォンに移り、さらに低価格の半導体が求められるようになると、インテルも対応できませんでした。(というか、対応しようとしなかった)

ここに対応したのが、サムスンだったというわけです。

このような大きなパラダイムシフトが起きるごとにトップ企業が入れ替わる状況を、クレイトン・クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」という著作で表しました。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4798100234/lanchesterkan-22/ref=nosim

強者、それも圧倒的な強者は、その圧倒的な現状適応状況ゆえに、市場の急激な変化に耐えられないのです。

実際には、日本企業も、インテルも、潜在的には、低価格製品の開発力がなかったわけではないでしょう。

それができないのは、「100%の品質がなければダメだ」「半導体性能が製品の売りになる」という思い込みが企業文化のように染みついていたためだと思われます。

■「日本型モノづくりの敗北」には、家電産業の事例もあげられています。

あれほど強かった日本の家電産業が、軒並み業績低迷してしまったのはなぜか?

例えば、テレビでいうと、ブラウン管テレビの時代のような品質重視の姿勢がいつまでも抜けきれなかったと指摘されています。

ブラウン管テレビの場合、製造過程での摺合せ技術が重要で、製造業としての技術力が製品力に直結しますが、薄型テレビのようなユニット組み立て製品の場合、製造技術は製品力に直結しません。

日本のメーカーは、薄型テレビをより薄く、より画質よく、という方向の開発にこだわりますが、今や技術の進化は人間の認識力を超えるところまで進んでいます。

一部のマニア以外は、それほどの性能は求めていません。それよりも、安い方がいいはずです。

そこに「量産化」の実現を開発の最重要テーマとするサムスンの姿勢がうまくはまったわけです。

■だからといって、サムスンの強さが永遠であるはずがありません。

歴史の教訓からいって、サムスンが凋落する日も来るでしょうし、日本企業がイノベーションを起こして、復活する日も来るに違いありません。

そのために、我々はどう考え、どう動けばいいのか。

それについても、この著作には言及されています。

■イノベーションというと日本では技術革新と誤訳されています。

そもそも、この言葉を定義したヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションのことを物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」と定義しています。

イノベーションは、世の中に新しい価値を生み出すことで、それは、今ある技術や概念を組み合わせたり、違う角度から見たりすることでなされます。

必ずしも革新的な技術が必要なわけではありません。

アップル(スティーブ・ジョブズ)は、iPhoneをありものの技術を組み合わせることで作りました。

つまりスマートフォンは、既にある技術をスティーブ・ジョブズなりの視点で捉えなおしたものということができます。

その意味ではサムスンは、地域ごとにマーケティング部隊を張りつかせて、地域ニーズに細かく対応することで、新しい切り口や活用法を見出そうとしています。

模倣と量産化技術に強みを持つサムスンならではのイノベーションの方法であるといえます。

■では、日本企業はどうすればいいのか。

まずは市場をよく見ること。

強者(1位)の優位性は揺るぎませんが、どの市場で1位であるかが重要です。なぜなら、市場は常に移り変わるからです。

携帯電話は、フューチャーフォンからスマートフォンに姿を変え、1位企業は、ノキアからサムスンに移りました。(ノキアは携帯電話端末から撤退)

我々のインターネットへの窓口も、パソコンからスマートフォンに移りつつあるため、あれほど強かったウィンドウズも、過去の巨象のようになりつつあります。

インターネット上の検索窓口は、グーグルが未だに強いですが、これもフェイスブックなどの勢力が浸食しようとしています。

市場が拡大から縮小に変わる潮目を見逃さないこと。それがまず必要です。

■次に、イノベーション=技術革新だ、などという誤訳を改めなければなりません。

新しい市場で1位をとるのに、革新的な技術は必要ありません。

ありきたりの技術を組み合わせてしまえばいいのです。

そこに自社の得意技術を埋め込めれば、他社はマネできません。

つまり、自社の得意技術、分野をさらに先鋭化しようとするだけではなく、自社の得意技術を、全く違う分野の技術と組み合わせて、新しい価値を創ってしまうのです。

なにも難しいことではありません。もともと日本企業は、自社の技術をコツコツ高度化していくことに長けています。

そこにポジショニングの考え方を組み入れいること。

すなわち、ランチェスター戦略に組み込まれた「市場選択」と「差別化」を忠実に行うことです。

日本企業が、ランチェスター戦略を取り入れることで、必ずや強い企業になるだろうと私が考える所以です。

私の研修やセミナーを受講された方には、きっとわかっていただけるでしょう。

と、うちわ話風にまとめておきます^^

■「日本型モノづくりの敗北」という著作には、今回、書いた内容の他にも示唆に富んだ部分がいくつかありました。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4166609424/lanchesterkan-22/ref=nosim

新書ですので、すぐに読めます。おススメいたします。

(2013年11月28日メルマガより)



■「日本型モノづくりの敗北」という本が出ています。

http://amazon.co.jp/o/ASIN/4166609424/lanchesterkan-22/ref=nosim

大げさに不安を煽る本かと思えばさにあらず。

具体的な事実を積み重ねた実直な内容の本です。

これを読んでいると、日本の技術は世界一だ、という漠然とした主張が実に根拠の薄いものだということが分かります。

■たとえば、半導体産業。

1990年代、半導体産業の主役は日本企業群でした。

その頃の日本企業が作る半導体は、品質水準が異常に高く、他国の追随を許さないものでした。

ところが、現在の半導体トップメーカーはサムソン電子です。

品質面でこそ日本企業の作る半導体技術に劣るものの、圧倒的なコスト差があるために、市場シェア1位の座を占めています。

ここで日本側は「技術では勝っているのに、コストで負けた」と言いがちです。

しかし、この本で著者が主張するのは、「低コスト化技術で負けた」ことを認めずに、いつまでも技術力は世界一だと言い訳していたら、負けっぱなしになる、ということです。

全くその通り。と共感する方は多いのではないですか。

低コスト化も技術の一つに外なりません。それも、圧倒的に重要な技術です。

日本の製造業のあちこちで思い当たる事例があるはずです。

■ランチェスター戦略に「市場シェア理論」というものがあります。

参考:http://www.lanchester-kansai.jp/new/knowledge/knowledge01.html

実際のコンサルティングにおいては、非常によく使う理論です。

ランチェスター戦略においては、市場シェアというものを重視しています。それを拡大することが企業の目標となります。

では、企業は、市場シェアをどこまで伸ばせばいいのか。それを示すのが、市場シェア目標値といわれるものです。

詳しい話は省きますが、最も重要な目標値は、41.7%。1位企業が、それを超えると、圧倒的に強くなり、逆転は困難になるといわれています。

だから企業は、どんな分野でさえ、40%以上のシェアをとろうと目指し、様々な方策を練るのです。

1990年前後の半導体の国籍別市場シェアをみると、日本は50%以上のシェアを持っていました。

ということは理論上は、逆転は非常に困難なはずです。

それなのに、逆転されたのはどういうわけなのか?

■ランチェスター戦略においては、強者(1位)の優位は揺るぎません。

ランチェスター戦略は弱者でも勝てる戦略だ、と思われている方が多いかも知れませんが、実際には、強者が絶対に有利だと教えています。

ところが、しばしば、強者と弱者の逆転が起きるのはどういうわけか。

強者が慢心して気を抜いていた、とかいうなら別ですが、実にしっかりと強者の戦略を実践していた企業が、逆転を許す典型的なパターンは、市場に大きな変化が起きた時です。

例えば、半導体において、日本企業が絶対的な優位性を持っていたのは、大型コンピュータの時代です。

品質の信頼性が最も重視された時代に、対応できるのは日本企業だけしかなかったからです。

ところが、パソコンの時代になると、品質とコストのバランスが求められるようになります。

そこそこの品質を持ち、汎用品にふさわしいコストの製品です。

高品質の追求に慣れ、コスト対応できなかった日本企業は凋落し、代わってインテルがトップ企業となりました。

パソコンの時代は、ウィンドウズの時代でもあり、インテルの時代でもありました。

インテル王国は永遠に続くのかと思えたほど、強かった時代があったものでした。

ところが、時代はスマートフォンに移り、さらに低価格の半導体が求められるようになると、インテルも対応できませんでした。(というか、対応しようとしなかった)

ここに対応したのが、サムスンだったというわけです。

このような大きなパラダイムシフトが起きるごとにトップ企業が入れ替わる状況を、クレイトン・クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」という著作で表しました。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4798100234/lanchesterkan-22/ref=nosim

強者、それも圧倒的な強者は、その圧倒的な現状適応状況ゆえに、市場の急激な変化に耐えられないのです。

実際には、日本企業も、インテルも、潜在的には、低価格製品の開発力がなかったわけではないでしょう。

それができないのは、「100%の品質がなければダメだ」「半導体性能が製品の売りになる」という思い込みが企業文化のように染みついていたためだと思われます。

■「日本型モノづくりの敗北」には、家電産業の事例もあげられています。

あれほど強かった日本の家電産業が、軒並み業績低迷してしまったのはなぜか?

例えば、テレビでいうと、ブラウン管テレビの時代のような品質重視の姿勢がいつまでも抜けきれなかったと指摘されています。

ブラウン管テレビの場合、製造過程での摺合せ技術が重要で、製造業としての技術力が製品力に直結しますが、薄型テレビのようなユニット組み立て製品の場合、製造技術は製品力に直結しません。

日本のメーカーは、薄型テレビをより薄く、より画質よく、という方向の開発にこだわりますが、今や技術の進化は人間の認識力を超えるところまで進んでいます。

一部のマニア以外は、それほどの性能は求めていません。それよりも、安い方がいいはずです。

そこに「量産化」の実現を開発の最重要テーマとするサムスンの姿勢がうまくはまったわけです。

■だからといって、サムスンの強さが永遠であるはずがありません。

歴史の教訓からいって、サムスンが凋落する日も来るでしょうし、日本企業がイノベーションを起こして、復活する日も来るに違いありません。

そのために、我々はどう考え、どう動けばいいのか。

それについても、この著作には言及されています。

■イノベーションというと日本では技術革新と誤訳されています。

そもそも、この言葉を定義したヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションのことを物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」と定義しています。

イノベーションは、世の中に新しい価値を生み出すことで、それは、今ある技術や概念を組み合わせたり、違う角度から見たりすることでなされます。

必ずしも革新的な技術が必要なわけではありません。

アップル(スティーブ・ジョブズ)は、iPhoneをありものの技術を組み合わせることで作りました。

つまりスマートフォンは、既にある技術をスティーブ・ジョブズなりの視点で捉えなおしたものということができます。

その意味ではサムスンは、地域ごとにマーケティング部隊を張りつかせて、地域ニーズに細かく対応することで、新しい切り口や活用法を見出そうとしています。

模倣と量産化技術に強みを持つサムスンならではのイノベーションの方法であるといえます。

■では、日本企業はどうすればいいのか。

まずは市場をよく見ること。

強者(1位)の優位性は揺るぎませんが、どの市場で1位であるかが重要です。なぜなら、市場は常に移り変わるからです。

携帯電話は、フューチャーフォンからスマートフォンに姿を変え、1位企業は、ノキアからサムスンに移りました。(ノキアは携帯電話端末から撤退)

我々のインターネットへの窓口も、パソコンからスマートフォンに移りつつあるため、あれほど強かったウィンドウズも、過去の巨象のようになりつつあります。

インターネット上の検索窓口は、グーグルが未だに強いですが、これもフェイスブックなどの勢力が浸食しようとしています。

市場が拡大から縮小に変わる潮目を見逃さないこと。それがまず必要です。

■次に、イノベーション=技術革新だ、などという誤訳を改めなければなりません。

新しい市場で1位をとるのに、革新的な技術は必要ありません。

ありきたりの技術を組み合わせてしまえばいいのです。

そこに自社の得意技術を埋め込めれば、他社はマネできません。

つまり、自社の得意技術、分野をさらに先鋭化しようとするだけではなく、自社の得意技術を、全く違う分野の技術と組み合わせて、新しい価値を創ってしまうのです。

なにも難しいことではありません。もともと日本企業は、自社の技術をコツコツ高度化していくことに長けています。

そこにポジショニングの考え方を組み入れいること。

すなわち、ランチェスター戦略に組み込まれた「市場選択」と「差別化」を忠実に行うことです。

日本企業が、ランチェスター戦略を取り入れることで、必ずや強い企業になるだろうと私が考える所以です。

私の研修やセミナーを受講された方には、きっとわかっていただけるでしょう。

と、うちわ話風にまとめておきます^^

■「日本型モノづくりの敗北」という著作には、今回、書いた内容の他にも示唆に富んだ部分がいくつかありました。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4166609424/lanchesterkan-22/ref=nosim

新書ですので、すぐに読めます。おススメいたします。

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