レスターに学ぶ「奇跡のチーム」を作る3つの秘訣

2016.05.05

(2016年5月5日メルマガより)


■イングランドのサッカー・プレミアリーグのレスター・
シティFCの優勝が話題になっています。

なにしろ「奇跡の優勝」です。

岡崎慎司選手が在籍していることで日本でも馴染み深いチームですが、なにやらどえらいことを起こしたようです。

■プレミアリーグとは、イングランドにおけるプロサッカーリーグの最高峰です。

日本でいうとJ1ですね。

イングランドはサッカー発祥の地でもあり、世界中から注目を浴びています。

なにせ10億人以上の人が視聴しているといいますから、世界で最もテレビ視聴されているスポーツにほかなりません。

だから、資金も集まりますし、実力のある選手が集まります。(外国人枠なんてものはありませんから、実力のある選手が世界中から集まります)

人気、実力とも世界最高峰のプロサッカーリーグです。

■現在プレミアリーグのチャンピオンシップは、20のチームで争われています。

総当たりのリーグ戦形式でホームアウェー方式で2回ずつ(つまり38回)競技し優勝を決めます。

リーグ戦形式は、勝ち抜き戦と違って、番狂わせの起きにくい方式です。

だから、チームの実力差が、如実に表れます。

これまで24回のリーグ戦で、優勝チームはたった6つ。

マンチェスターユナイテッド(13回)、チェルシー(4回)、アーセナル(3回)、マンチェスターシティ(2回)、ブラックバーンローヴァーズ(1回)、そして今回のレスターです。

上位チームには、多額の放映権料などの配当金が入ります。その上、欧州サッカーリーグのチャンピオンシップなどへの出場権が与えられます。

要するに儲かるので、さらに実力のある選手を獲得することができるようになり、チーム力が強化されます。

上位チームと下位チームとの格差が広がる所以です。

■ちなみに、20チームのうち下位3チームは、下部リーグに降格となります。

昨年、レスターは14位。降格の危機もあるチームでした。

だから、英国ブックメーカーの優勝オッズは"不可能認定"の5001倍です。

単純に考えて、2000円賭ければ、1000万円の勝ち金です。

まさに奇跡が起こらなければ達成することができないレベルだということがわかります。

悲惨なのはブックメーカーですよね。レスターの優勝によって39億円の支払い義務を負ったといいますから大変な事態です。

■それにしても、なぜレスターは圧倒的不利の予想を覆して、奇跡の優勝を遂げたのでしょうか。

戦略・戦術的にいうと、カウンターサッカーという「弱者の戦術」を徹底したということが指摘されています。

相手が攻めてきたところ、一瞬の隙をついて、奪ったボールを一気にゴールまで持っていく。。これがカウンターです。

いかんせん実力がないチームなので、ボールを支配することができません。

ボールを持たずに勝つには、守って守って守るうち、相手がミスしたところを突くことぐらいしかできないというのが実情でしょう。

戦術を一点集中することでチーム体制も約束事も単純化されるという弱いチームの常套手段です。

これが見事にはまりました。

■ただし戦術面だけで「奇跡の優勝」を語ることはできません。

やはりチームのメンバーが有機的に一体化し、一人一人が実力以上の力を発揮したはずです。

チームというのは面白いもので、足し算にも引き算にも掛け算にもなります。

11人で11人分の力を発揮するチームもあれば、8人分の力しか発揮できないチームもあれば、20人分の力を発揮するチームもあります。

レスターの場合も、有望チームには呼ばれなかった選手が集まって構成されているチームです。普通ならば、上位チームには敵いません。それが上位チームを上回ったというのは、何らかの掛け算があったということです。

■奇跡のチームはどのようにつくられたのか。

その秘訣は、クラウディオ・ラニエニ監督の言葉にうかがい知ることができます。

参考:"ラニエリ語録"に見るミラクル・レスターの作り方...優勝に導いた名言とは
http://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20160504/437957.html

この語録からラニエリ監督の巧みなチーム運営がみえてきます。

わたしなりにまとめると

(1)戦術の単純化と現実的な修正

ラニエリ監督が、カウンターサッカーという「弱者の戦術」をやりきるという割り切りでチーム作りをしていることがわかります。

ボールを保持する、ドリブルする、ということが上位チームの選手に比べて不得手ならば、やらなくていい、という決断です。

その代り、カウンターサッカーに必要な選手を位置につけて、必要な行動を徹底させています。

かといって固定化した単純な戦術がいつまでも通用するほど甘い世界ではありません。

ラニエリ監督は、敵チームの対応をみながら、徐々に戦術の修正を試みています。

この柔軟な姿勢が、レスターの活躍を一過性に終わらせなかった秘訣でしょう。

(3)巧みなコミュニケーション

「相手を0点に抑えたらピザをおごる」

プロのサッカー選手に対して何とも子供じみた報酬ですが、それを敢えてやっています。

ピザ店を貸し切り、選手全員でピザ作りに取り組むというイベントは、サッカーに何の関係もないのですが、チームの一体化に資するものだったことでしょう。

これは象徴的な出来事ですが、要するに、普段からラニエリ監督とチームの風通しはよかったということがうかがえます。

采配にもそれが出ており、主力を固定しながらも、控え選手をうまく使ってチームを分裂させないようにしています。

(3)着実に今日を勝ちきる目標設定

「ファンは夢を見ていいが、我々は現実を見なければいけない」

ラニエリ監督はそう言って、選手たちには現実的な目標を提示し続けています。

まずは残留ライン。次にトップ10。次に4位以内。

レスターが失速せず、階段を上がるように勝利を積み重ねていったのは、こうした目の前の試合に集中させるための工夫があったということです。

■スポーツの世界では、まれにこうした「奇跡」が起きます。

もちろんビジネスの世界でも奇跡といえるような出来事は起こります。

唐突かもしれませんが、HISの澤田秀雄氏が、開業以来18年間も赤字だったハウステンボスをわずか1年で黒字化し、いまやドル箱といわれるまでに復活させた事例は、奇跡だといってもいいのではないでしょうか。

ハウステンボスの奇跡も、机上の計算やちょっとした工夫だけで為されたものではありません

その中心になったのは、一枚岩となったチームの存在です。

そしてそんなチームを作りあげた澤田秀雄氏の手腕は称賛されてしかるべきものです。

■ハウステンボスは、長崎県佐世保市にあるテーマパークです。

開業は1992年。オランダの街をつくるというコンセプトに基づきつくられました。

だから園内にはオランダの街並みや田園風景が再現され、実際に住める家もヨットハーバーも造成されました。単独のテーマパークとしては日本最大の面積を持っています。

ところが思うように客数が伸びず、赤字続きでした。

創業した会社は2003年、会社更生法の適用を受け、受け継いだ会社も再生を諦めた状態です。

そこで再生を託されたのが、旅行会社HISを運営する澤田秀雄氏でした。

2010年の時です。

■その時、ハウステンボスが抱えていた累積債務は60億円。会社更生法の適用を受けて再出発した後に、また積みあがった借金です。

澤田氏は、銀行や地元企業と交渉し、債権放棄や出資を受けることで無借金の状態にします。

が、借金がなくなったからといって、急に営業状態がよくなるわけではありません。

赤字体質の企業はそのままでは、また借金を積み重ねてしまいます。

その会社が、HISの屋台骨を支えるほどの黒字企業になっていったのはどうしてなのでしょうか。

■戦略面でいうと、まずはコストの削減。

日本一の広大な面積が重荷になっているとみるや、3分の1をフリーゾーンにしてしまいます。

投資を3分の2に集中する戦略です。

次に集客。

オランダの街並みを再現するというコンセプトではファミリー客は呼べないとみるや、「オランダ」という最大の特徴を捨ててしまいます。

漫画ワンピースのイベントを開催したり、AKBのライブを開催したり。

あるいはイルミネーションを大量投入し、光の王国なるイベントを行ったり。

初期投資の比較的少ないイベント開催を行うことで、集客を成功させていきます。

■ただこうした戦略・戦術が実現したのは、澤田氏のアイデアが優れていたというだけではありません。

澤田氏がやったことで最も効果を発揮したのは、やはり従業員をやる気にさせ、一体化させる工夫でした。

参考:「負け癖社員」を6カ月で変える方法  澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長に聞く(日経新聞・有料記事)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99042240Q6A330C1000000/

わたしなりにまとめてみます。

(1)戦略は単純に

ランチェスター戦略の信奉者として知られる澤田氏が『「ランチェスター戦略」とか「孫子の兵法」などと難しい話をしても、簡単には伝わりません。』と語っています。

そこで打ち出したスローガンが「売上を20%を上げ、経費を20%下げる」

単純なようですが、もし100億円の売り上げ、90億円の経費が掛かっている企業が、上記を成し遂げれば、利益は4.8倍増となります。

ものすごく難しくインパクトの大きい施策を、むちゃくちゃ単純に言っているわけです。

そのための方針として

○出勤後15分の掃除→環境整備

○嘘でもいいから明るく振る舞う→プラス思考および顧客満足度向上

○早く歩く→経費削減

というように、抽象的な言葉ではなく、具体的な行動指針を示しています。

分かりやすさは、チームを動かすための必須の条件であることがわかります。

(2)コミュニケーション

上記記事には載っていませんが、澤田氏がハウステンボス社長に就任当初は、園内を自転車で走り回り、現場スタッフとのふれあいを大事にしたといいます。

お金のないハウステンボスでは、アイデアで勝負です。

お金がかからなくて集客できるようなアイデアを全員で考えひねり出す作業が必要でした。

当初は、スタッフ一人一人が得意なことを持ち寄って、イベントを企画していたそうです。

失敗した企画も多かったといいますが、その中から、光の王国やチューリップ園などのヒット企画が生まれていきました

この柔軟なトライアンドエラーは、スタッフの自律的な協力なくしてはできなかったことに違いありません。

その一連のプロセスが、スタッフを一枚岩にしていったのでしょう。

(3)小さな勝利の積み重ね

そもそもランチェスター戦略は一気に逆転して大儲けするようないかがわしい戦略ではありません。

その本質は、市場シェア(=顧客の支持)を細かな範囲ごとに積み上げて、顧客基盤を確かにしていくことです。

澤田氏はそのことをよく理解しています。

一気の逆転など狙ってはダメです。戦略は常に積み上げを志向しなければなりません。

ハウステンボスでは、お客様の声を数値化して、修正を重ねることで、徐々に支持を集めていきました。

やってみて、修正し、さらにやってみてを繰り返し、小さな勝利を積み上げてきたことが、スタッフの負け癖を払拭していくことになります。

■こうしてみると、レスターのラニエリ監督も、ハウステンボスの澤田秀雄社長も、類似した手法でチームを一丸化したようです。

実をいうと私の場合も、コンサルティングにおいては、チームをまとめるために類似したことをやろうとしています。

企業が業績を上げるためには、適切な戦略も必要ですが、それだけでは足りません。やはりチームがやる気にならなければ、持続した実行も、困難への柔軟な対応も望むことができません。

そのために経営者やマネージャーは何をすればいいのか。

今日のメルマガが、そのヒントになれば幸いです。

■そうそう。

奇跡といえば、「廃業寸前」の小さな事業部が、わずかな期間で世界トップ企業になったというサーモスの事例も、外せませんよ。

参考:『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4827209693/lanchesterkan-22/ref=nosim

こちらもぜひお読みください(^^)



(2016年5月5日メルマガより)


■イングランドのサッカー・プレミアリーグのレスター・
シティFCの優勝が話題になっています。

なにしろ「奇跡の優勝」です。

岡崎慎司選手が在籍していることで日本でも馴染み深いチームですが、なにやらどえらいことを起こしたようです。

■プレミアリーグとは、イングランドにおけるプロサッカーリーグの最高峰です。

日本でいうとJ1ですね。

イングランドはサッカー発祥の地でもあり、世界中から注目を浴びています。

なにせ10億人以上の人が視聴しているといいますから、世界で最もテレビ視聴されているスポーツにほかなりません。

だから、資金も集まりますし、実力のある選手が集まります。(外国人枠なんてものはありませんから、実力のある選手が世界中から集まります)

人気、実力とも世界最高峰のプロサッカーリーグです。

■現在プレミアリーグのチャンピオンシップは、20のチームで争われています。

総当たりのリーグ戦形式でホームアウェー方式で2回ずつ(つまり38回)競技し優勝を決めます。

リーグ戦形式は、勝ち抜き戦と違って、番狂わせの起きにくい方式です。

だから、チームの実力差が、如実に表れます。

これまで24回のリーグ戦で、優勝チームはたった6つ。

マンチェスターユナイテッド(13回)、チェルシー(4回)、アーセナル(3回)、マンチェスターシティ(2回)、ブラックバーンローヴァーズ(1回)、そして今回のレスターです。

上位チームには、多額の放映権料などの配当金が入ります。その上、欧州サッカーリーグのチャンピオンシップなどへの出場権が与えられます。

要するに儲かるので、さらに実力のある選手を獲得することができるようになり、チーム力が強化されます。

上位チームと下位チームとの格差が広がる所以です。

■ちなみに、20チームのうち下位3チームは、下部リーグに降格となります。

昨年、レスターは14位。降格の危機もあるチームでした。

だから、英国ブックメーカーの優勝オッズは"不可能認定"の5001倍です。

単純に考えて、2000円賭ければ、1000万円の勝ち金です。

まさに奇跡が起こらなければ達成することができないレベルだということがわかります。

悲惨なのはブックメーカーですよね。レスターの優勝によって39億円の支払い義務を負ったといいますから大変な事態です。

■それにしても、なぜレスターは圧倒的不利の予想を覆して、奇跡の優勝を遂げたのでしょうか。

戦略・戦術的にいうと、カウンターサッカーという「弱者の戦術」を徹底したということが指摘されています。

相手が攻めてきたところ、一瞬の隙をついて、奪ったボールを一気にゴールまで持っていく。。これがカウンターです。

いかんせん実力がないチームなので、ボールを支配することができません。

ボールを持たずに勝つには、守って守って守るうち、相手がミスしたところを突くことぐらいしかできないというのが実情でしょう。

戦術を一点集中することでチーム体制も約束事も単純化されるという弱いチームの常套手段です。

これが見事にはまりました。

■ただし戦術面だけで「奇跡の優勝」を語ることはできません。

やはりチームのメンバーが有機的に一体化し、一人一人が実力以上の力を発揮したはずです。

チームというのは面白いもので、足し算にも引き算にも掛け算にもなります。

11人で11人分の力を発揮するチームもあれば、8人分の力しか発揮できないチームもあれば、20人分の力を発揮するチームもあります。

レスターの場合も、有望チームには呼ばれなかった選手が集まって構成されているチームです。普通ならば、上位チームには敵いません。それが上位チームを上回ったというのは、何らかの掛け算があったということです。

■奇跡のチームはどのようにつくられたのか。

その秘訣は、クラウディオ・ラニエニ監督の言葉にうかがい知ることができます。

参考:"ラニエリ語録"に見るミラクル・レスターの作り方...優勝に導いた名言とは
http://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20160504/437957.html

この語録からラニエリ監督の巧みなチーム運営がみえてきます。

わたしなりにまとめると

(1)戦術の単純化と現実的な修正

ラニエリ監督が、カウンターサッカーという「弱者の戦術」をやりきるという割り切りでチーム作りをしていることがわかります。

ボールを保持する、ドリブルする、ということが上位チームの選手に比べて不得手ならば、やらなくていい、という決断です。

その代り、カウンターサッカーに必要な選手を位置につけて、必要な行動を徹底させています。

かといって固定化した単純な戦術がいつまでも通用するほど甘い世界ではありません。

ラニエリ監督は、敵チームの対応をみながら、徐々に戦術の修正を試みています。

この柔軟な姿勢が、レスターの活躍を一過性に終わらせなかった秘訣でしょう。

(3)巧みなコミュニケーション

「相手を0点に抑えたらピザをおごる」

プロのサッカー選手に対して何とも子供じみた報酬ですが、それを敢えてやっています。

ピザ店を貸し切り、選手全員でピザ作りに取り組むというイベントは、サッカーに何の関係もないのですが、チームの一体化に資するものだったことでしょう。

これは象徴的な出来事ですが、要するに、普段からラニエリ監督とチームの風通しはよかったということがうかがえます。

采配にもそれが出ており、主力を固定しながらも、控え選手をうまく使ってチームを分裂させないようにしています。

(3)着実に今日を勝ちきる目標設定

「ファンは夢を見ていいが、我々は現実を見なければいけない」

ラニエリ監督はそう言って、選手たちには現実的な目標を提示し続けています。

まずは残留ライン。次にトップ10。次に4位以内。

レスターが失速せず、階段を上がるように勝利を積み重ねていったのは、こうした目の前の試合に集中させるための工夫があったということです。

■スポーツの世界では、まれにこうした「奇跡」が起きます。

もちろんビジネスの世界でも奇跡といえるような出来事は起こります。

唐突かもしれませんが、HISの澤田秀雄氏が、開業以来18年間も赤字だったハウステンボスをわずか1年で黒字化し、いまやドル箱といわれるまでに復活させた事例は、奇跡だといってもいいのではないでしょうか。

ハウステンボスの奇跡も、机上の計算やちょっとした工夫だけで為されたものではありません

その中心になったのは、一枚岩となったチームの存在です。

そしてそんなチームを作りあげた澤田秀雄氏の手腕は称賛されてしかるべきものです。

■ハウステンボスは、長崎県佐世保市にあるテーマパークです。

開業は1992年。オランダの街をつくるというコンセプトに基づきつくられました。

だから園内にはオランダの街並みや田園風景が再現され、実際に住める家もヨットハーバーも造成されました。単独のテーマパークとしては日本最大の面積を持っています。

ところが思うように客数が伸びず、赤字続きでした。

創業した会社は2003年、会社更生法の適用を受け、受け継いだ会社も再生を諦めた状態です。

そこで再生を託されたのが、旅行会社HISを運営する澤田秀雄氏でした。

2010年の時です。

■その時、ハウステンボスが抱えていた累積債務は60億円。会社更生法の適用を受けて再出発した後に、また積みあがった借金です。

澤田氏は、銀行や地元企業と交渉し、債権放棄や出資を受けることで無借金の状態にします。

が、借金がなくなったからといって、急に営業状態がよくなるわけではありません。

赤字体質の企業はそのままでは、また借金を積み重ねてしまいます。

その会社が、HISの屋台骨を支えるほどの黒字企業になっていったのはどうしてなのでしょうか。

■戦略面でいうと、まずはコストの削減。

日本一の広大な面積が重荷になっているとみるや、3分の1をフリーゾーンにしてしまいます。

投資を3分の2に集中する戦略です。

次に集客。

オランダの街並みを再現するというコンセプトではファミリー客は呼べないとみるや、「オランダ」という最大の特徴を捨ててしまいます。

漫画ワンピースのイベントを開催したり、AKBのライブを開催したり。

あるいはイルミネーションを大量投入し、光の王国なるイベントを行ったり。

初期投資の比較的少ないイベント開催を行うことで、集客を成功させていきます。

■ただこうした戦略・戦術が実現したのは、澤田氏のアイデアが優れていたというだけではありません。

澤田氏がやったことで最も効果を発揮したのは、やはり従業員をやる気にさせ、一体化させる工夫でした。

参考:「負け癖社員」を6カ月で変える方法  澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長に聞く(日経新聞・有料記事)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99042240Q6A330C1000000/

わたしなりにまとめてみます。

(1)戦略は単純に

ランチェスター戦略の信奉者として知られる澤田氏が『「ランチェスター戦略」とか「孫子の兵法」などと難しい話をしても、簡単には伝わりません。』と語っています。

そこで打ち出したスローガンが「売上を20%を上げ、経費を20%下げる」

単純なようですが、もし100億円の売り上げ、90億円の経費が掛かっている企業が、上記を成し遂げれば、利益は4.8倍増となります。

ものすごく難しくインパクトの大きい施策を、むちゃくちゃ単純に言っているわけです。

そのための方針として

○出勤後15分の掃除→環境整備

○嘘でもいいから明るく振る舞う→プラス思考および顧客満足度向上

○早く歩く→経費削減

というように、抽象的な言葉ではなく、具体的な行動指針を示しています。

分かりやすさは、チームを動かすための必須の条件であることがわかります。

(2)コミュニケーション

上記記事には載っていませんが、澤田氏がハウステンボス社長に就任当初は、園内を自転車で走り回り、現場スタッフとのふれあいを大事にしたといいます。

お金のないハウステンボスでは、アイデアで勝負です。

お金がかからなくて集客できるようなアイデアを全員で考えひねり出す作業が必要でした。

当初は、スタッフ一人一人が得意なことを持ち寄って、イベントを企画していたそうです。

失敗した企画も多かったといいますが、その中から、光の王国やチューリップ園などのヒット企画が生まれていきました

この柔軟なトライアンドエラーは、スタッフの自律的な協力なくしてはできなかったことに違いありません。

その一連のプロセスが、スタッフを一枚岩にしていったのでしょう。

(3)小さな勝利の積み重ね

そもそもランチェスター戦略は一気に逆転して大儲けするようないかがわしい戦略ではありません。

その本質は、市場シェア(=顧客の支持)を細かな範囲ごとに積み上げて、顧客基盤を確かにしていくことです。

澤田氏はそのことをよく理解しています。

一気の逆転など狙ってはダメです。戦略は常に積み上げを志向しなければなりません。

ハウステンボスでは、お客様の声を数値化して、修正を重ねることで、徐々に支持を集めていきました。

やってみて、修正し、さらにやってみてを繰り返し、小さな勝利を積み上げてきたことが、スタッフの負け癖を払拭していくことになります。

■こうしてみると、レスターのラニエリ監督も、ハウステンボスの澤田秀雄社長も、類似した手法でチームを一丸化したようです。

実をいうと私の場合も、コンサルティングにおいては、チームをまとめるために類似したことをやろうとしています。

企業が業績を上げるためには、適切な戦略も必要ですが、それだけでは足りません。やはりチームがやる気にならなければ、持続した実行も、困難への柔軟な対応も望むことができません。

そのために経営者やマネージャーは何をすればいいのか。

今日のメルマガが、そのヒントになれば幸いです。

■そうそう。

奇跡といえば、「廃業寸前」の小さな事業部が、わずかな期間で世界トップ企業になったというサーモスの事例も、外せませんよ。

参考:『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4827209693/lanchesterkan-22/ref=nosim

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