マイクロソフトはなぜ比類なき復活を遂げたのか?

2019.08.22

(2019年8月22日メルマガより)


マイクロソフトの好業績が続いています。

2019年6月期、売上高は1258億4300万ドル(約13兆5300億円)、純利益は、392億4000万ドル。ともに過去最高です。

マイクロソフトといえば、ちょっと前までは落ちぶれてしまって栄枯盛衰の残酷さを体現する存在でした。なにしろアメリカを代表する超巨大IT企業のことをGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)というのですが、そこにマイクロソフトの名前はありません。すっかり過去の会社扱いです。

ところが、最近の好業績で、株式市場の評価はうなぎのぼりです。株式時価総額はGAFA(特にアマゾン、アップル)と激しいトップ争いを演じるところまで回復しています。

ウィンドウズで一世を風靡してから二十数年、これほどの巨大企業がいったん凋落しながら、復活した例は聞いたことがありません。

いったい何があったというのでしょうか。


スマホの登場とともに落ち目に


マイクロソフトといえば、パソコン上のオペレーティングソフト「ウィンドウズ」を開発し、市場を独占した企業です。

同社は、ウィンドウズとともに、ワープロソフトの「ワード」や表計算ソフトの「エクセル」などを併せ販売することで、パソコン全盛時代には、莫大な収益を上げました。

われわれ消費者からすると、ウィンドウズやワードやエクセルって、パソコンに無料でついていたものじゃね?という気がしますが、実際には、パソコンメーカーがライセンスを購入して商品に付属していたものです。

パソコンの組み立てメーカーはいっぱいあるので競争が激しく利益を上げることはできませんでしたが、ウィンドウズは唯一無二でしたから、それを購入するしかありません。メーカーが儲からないのに、ソフトの会社だけが儲かるという構図が、その頃は出来上がっていました。

我が世の春を謳歌していたマイクロソフトを奈落の底に突き落としたのは、アップルやグーグルが主導するスマートフォンの登場です。

手のひらの上のパソコンのようなスマホが普及することで、パソコンの時代は終わり、同時に、ウィンドウズやワード、エクセルは、使われる機会が少なくなっていきました。

スマホ対応に遅れたマイクロソフトは、やることなすこと後手後手に迷走し、一気に業績を悪化させて、株価も落ち込み、2010年頃には、もう終わった企業感を漂わせる程になってしまいました。


3代目CEOサティア・ナデラによる方向転換


そんなマイクロソフトがV字回復していくのは、3代目CEOサティア・ナデラが就任してからです。

ナデラは、インド出身。1992年にマイクロソフトに入社し、CEOに就任したのは2014年です。

ナデラはそれまで、マイクロソフトの中では傍流に位置する企業部門やクラウド部門を担当していました。

そんな彼が3代目CEOに選ばれたというのは、その能力が評価されたことに加えて、社内での経歴が今後の同社の方向性に合致するものだと期待されたからでしょう。

期待通り、ナデラは、企業向けビジネスとクラウドビジネスに注力していきます。

まずは、ウィンドウズの販売をやめて、基本無償にしました。ワードやエクセルなどの基本ソフトも無料です。

その代わり、ビジネスで使用するような高機能なソフトは月定額料金で使用できるようにしました。この有料版は、常に最新機能に更新されます。

基本ソフトを無料提供し、高機能版を有料にするビジネスモデルを「フリーミアム」といい、月定額で使い放題にする方式を「サブスクリプション」といいます。

つまりナデラCEOがやったことは、フリーミアムとサブスクという時代に即したビジネスモデルへの転換です。


先行企業の成功例を採り入れ


実のところ、マイクロソフトの試みが最先端だったわけではありません。

月定額のソフト使用ビジネスについてはアドビシステムズが既に成功していました。

アドビは、PDFという文書ファイル形式を作った企業として有名です。同社は、PDFファイルを閲覧するソフトを無償提供し、それを作成するソフトを有料で販売して成功しました。

同社は、フォトショップなどの画像編集ソフトや、動画編集ソフトも取り扱っています。それらプロ仕様のソフトについては、より機能の最適化、高度化が求められるため、パッケージで購入するよりも、月定額で最新版を使用できるサブスク・モデルの方が使い勝手がいいとその道のプロたちに受け入れられたわけです。

一般ユーザー向けに一般ソフトを広く販売するより、プロ向けのソフトを狭く深く販売することで、収益を大きくしたアドビの事例は大いに参考になったはずです。


さらにマイクロソフトは、クラウドコンピューティング(ネットワーク上でコンピュータの様々な機能が使えるサービス)も提供し、成功しています。

こちらは、世界トップ企業であるアマゾンという成功例があります。

ことにアマゾンというインターネット通販の会社が、必要性から始めたクラウドコンピューティングの機能を自社の商品として販売し、世界1位にまで育て上げた実行力と柔軟性は、大いに参考にしたことでしょう。


つまりナデラCEOの功績は、全く新しいビジネスを立ち上げ市場を切り開いたのではなく、すでにあるビジネスを取り入れて、確実に自社のものにしたというところに尽きます。

そんなのただの真似やん。と言うのは簡単ですが、実際には、マイクロソフトほどの超巨大企業が、ビジネスモデルを180°転換させるなど、並大抵のことでできるものではありません。

なにしろマイクロソフトは、ウィンドウズという商品で天下をとった会社なのです。創業者のビル・ゲイツは歴史に名を残す偉大なカリスマであり、その彼が精魂込めたのが、ウィンドウズを中心としたビジネスの構築でした。その会社が、ウィンドウズを手放すなど、魂を捨てるような衝撃だったはず。

ビル・ゲイツを慕う社員も多くいる中、超巨大企業を一つの方向へ導いたナデラCEOの手腕は驚嘆すべきものです。


自社以外すべて敵という傲慢


創業者のビル・ゲイツは、ライバル企業を容赦なく叩き潰していく苛烈さで知られていました。その極端な覇権主義は、各国の政府と対立するに至り、あげくは独占禁止法や競争法違反の適用を受けてしまったほどです。

これに対して、雇われCEOのサティア・ナデラは「みんな仲良く」タイプのようです。社内でも社外でも、敵を作らず、協力できるところはしていく姿勢を取り続けています。

例えていうと、ビル・ゲイツは織田信長であり、サティア・ナデラは豊臣秀吉ですな。

ビル・ゲイツや2代目スティーブ・バルマーが、長年目の敵にしていたのが、無料プログラムの「リナックス」です。ウィンドウズを売り物にしている同社としては、無料でプログラムを開放しているリナックスは、ビジネスモデルを破壊しかねない邪魔な存在でしたから。

しかし、そのリナックスでさえ、ナデラCEOは取り込みました。自社のシステムにリナックスを採用し、今やクラウド上で動く半数のプログラムに採り入れられているといいます。

「危機においては、味方ではなく、敵と組め」とは、ティリオン・ラニスターの言葉ですが、ナデラCEOの信条はさながら「敵なんていない。皆と組め」というものでしょう。

アマゾンやアドビのビジネスを参考にしたのはその一環ですし、その他、小さなベンチャーのやることでも、気に入れば採り入れるということを繰り返しています。

いうなれば、この「顧客のためになるなら誰とでも組もう」という姿勢が、マイクロソフト復活の最大のポイントだったと私は考えます。

それまでのマイクロソフトというと、他者を寄せ付けない傲岸不遜な会社というイメージで見られていました。一代で帝国を築き上げる創業企業には、そんな独善性も必要な要素だったのかも知れません。

しかし落ち目の大企業に、傲慢な姿勢は百害あって一利なしです。

ビル・ゲイツ時代のマイクロソフトの功績は、パソコンでインターネットを利用する際の利便性を、とことん高めたということです。ウィンドウズがなければ、これほどインターネットが一般的に普及することはなかったでしょう。それは認めなければばりません。

が、同社の他社を叩き潰すという姿勢が、一般ユーザーから他の選択肢を奪っていたのも事実です。ウィンドウズの常識外れの成功は、他社の可能性をつぶした上でなりたっていたのです。

この自社のサービスだけしか使わせないという姿勢が、ここでいう傲慢さです。

それでも人々はウィンドウズを使用していました。それしかないのだから比較のしようがありません。

ところが、スマホがあっという間に普及してパソコンを使わなくても困らない人が多くなると、マイクロソフトの傲慢さはマイナスに働いてしまいました。

スマホはアップルもアンドロイドもあるし、そのほかいろいろ格安のものもあって競い合っているけど、パソコンはウィンドウズしかなかったよね。と気づかれてしまったのですな。

慌てたマイクロソフトは、ウィンドウズフォンなんてのを出しますが、遅きに失したのか、鳴かず飛ばずで終わってしまいました。

こうなると、傲慢さが裏目に出て、誰も助けてくれません。ざまーみろと思われるぐらいです。

そんな時に登場したナデラCEOの「謙虚に顧客のためになることをしよう」という姿勢は、本当に凋落してしまう一歩手前で同社を踏みとどまらせました。


現代のビジネスのルールに従った


ナデラCEOが取り組んだ「フリーミアム」や「サブスク」の本質は、顧客と接触する場面を多くして、顧客をより深く理解しようというものです。

顧客を安易に囲いこもうとすると失敗します。むしろ出入りは自由です。選択肢も多くあります。その中で顧客に選ばれるために、顧客を理解しようとする試みです。

かつてマイクロソフトが持っていた独善性(パソコンを使いたければウィンドウズを使えやーって感じ)とは一線を画したものだと思えます。

そもそも今の時代、顧客は囲い込まれることを嫌います。変に囲い込もうとすると、顧客は逃げてしまいます。逃げるだけならまだしも騒がれて炎上案件になってしまう恐れすらあります。

顧客は自由です。選択権を常に持っています。それが今のビジネスの絶対のルールです。

今のマイクロソフト=ナデラCEOが顧客から高く評価されているのは、そのルールを遵守した上で顧客満足を実現し、他社と無用な軋轢を生まずにビジネス展開ができているからです。

いわば、ナデラCEOの方向性は、時代に則したものであり、ウィンドウズを後生大事にしようというビジネスからの脱皮は、必然だったといえます。


膨大な既存顧客群が最大の資産だった


社内にも社外にも敵を作らず、協力者にしていこうとするナデラCEOのマネジメントスタイルは、もしかすると時間がかかるものかも知れません。いや、そうでもないかな。豊臣秀吉の天下統一のスピードはやたら速かったですからね。余計な敵を作らないスタイルの方が、実は時間がかからないのですかね。


ともかく一方を向いた企業のパワーはすさまじいものがあります。特にマイクロソフトの場合、企業規模が大きく、ビジネスも多岐にわたっているので、その効果も大きい。

既存の顧客、ファンが多いものですから、新規顧客を開拓する必要さえありません。既存顧客を「フリーミアム」「サブスク」に巻き込んでいけば、それだけでビジネスが成立します。

マイクロソフトが短期間に業績を回復させたのは、その最大の特長である膨大な既存顧客群を味方につけることができたということが大きいといえます。


マイクロソフトの業績がまだまだ伸びるだろうと予測されているのは、そのビジネス展開がいまだ既存顧客枠を出ていないからです。これから新規顧客に向けて「フリーミアム」「サブスク」を展開していけば、さらに大きな収益を見込むことができます。

他の企業も黙っていないでしょう。マイクロソフトが示した「フリーミアム」「サブスク」の展開方法は、他の分野でも再現できそうです。アップルもグーグルも、取り組んでくるはずです。

そうなると競争は次の段階に入っていきます。これからも各企業のダイナミックな動きは続いていくことでしょうね。

《参考》





(2019年8月22日メルマガより)


マイクロソフトの好業績が続いています。

2019年6月期、売上高は1258億4300万ドル(約13兆5300億円)、純利益は、392億4000万ドル。ともに過去最高です。

マイクロソフトといえば、ちょっと前までは落ちぶれてしまって栄枯盛衰の残酷さを体現する存在でした。なにしろアメリカを代表する超巨大IT企業のことをGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)というのですが、そこにマイクロソフトの名前はありません。すっかり過去の会社扱いです。

ところが、最近の好業績で、株式市場の評価はうなぎのぼりです。株式時価総額はGAFA(特にアマゾン、アップル)と激しいトップ争いを演じるところまで回復しています。

ウィンドウズで一世を風靡してから二十数年、これほどの巨大企業がいったん凋落しながら、復活した例は聞いたことがありません。

いったい何があったというのでしょうか。


スマホの登場とともに落ち目に


マイクロソフトといえば、パソコン上のオペレーティングソフト「ウィンドウズ」を開発し、市場を独占した企業です。

同社は、ウィンドウズとともに、ワープロソフトの「ワード」や表計算ソフトの「エクセル」などを併せ販売することで、パソコン全盛時代には、莫大な収益を上げました。

われわれ消費者からすると、ウィンドウズやワードやエクセルって、パソコンに無料でついていたものじゃね?という気がしますが、実際には、パソコンメーカーがライセンスを購入して商品に付属していたものです。

パソコンの組み立てメーカーはいっぱいあるので競争が激しく利益を上げることはできませんでしたが、ウィンドウズは唯一無二でしたから、それを購入するしかありません。メーカーが儲からないのに、ソフトの会社だけが儲かるという構図が、その頃は出来上がっていました。

我が世の春を謳歌していたマイクロソフトを奈落の底に突き落としたのは、アップルやグーグルが主導するスマートフォンの登場です。

手のひらの上のパソコンのようなスマホが普及することで、パソコンの時代は終わり、同時に、ウィンドウズやワード、エクセルは、使われる機会が少なくなっていきました。

スマホ対応に遅れたマイクロソフトは、やることなすこと後手後手に迷走し、一気に業績を悪化させて、株価も落ち込み、2010年頃には、もう終わった企業感を漂わせる程になってしまいました。


3代目CEOサティア・ナデラによる方向転換


そんなマイクロソフトがV字回復していくのは、3代目CEOサティア・ナデラが就任してからです。

ナデラは、インド出身。1992年にマイクロソフトに入社し、CEOに就任したのは2014年です。

ナデラはそれまで、マイクロソフトの中では傍流に位置する企業部門やクラウド部門を担当していました。

そんな彼が3代目CEOに選ばれたというのは、その能力が評価されたことに加えて、社内での経歴が今後の同社の方向性に合致するものだと期待されたからでしょう。

期待通り、ナデラは、企業向けビジネスとクラウドビジネスに注力していきます。

まずは、ウィンドウズの販売をやめて、基本無償にしました。ワードやエクセルなどの基本ソフトも無料です。

その代わり、ビジネスで使用するような高機能なソフトは月定額料金で使用できるようにしました。この有料版は、常に最新機能に更新されます。

基本ソフトを無料提供し、高機能版を有料にするビジネスモデルを「フリーミアム」といい、月定額で使い放題にする方式を「サブスクリプション」といいます。

つまりナデラCEOがやったことは、フリーミアムとサブスクという時代に即したビジネスモデルへの転換です。


先行企業の成功例を採り入れ


実のところ、マイクロソフトの試みが最先端だったわけではありません。

月定額のソフト使用ビジネスについてはアドビシステムズが既に成功していました。

アドビは、PDFという文書ファイル形式を作った企業として有名です。同社は、PDFファイルを閲覧するソフトを無償提供し、それを作成するソフトを有料で販売して成功しました。

同社は、フォトショップなどの画像編集ソフトや、動画編集ソフトも取り扱っています。それらプロ仕様のソフトについては、より機能の最適化、高度化が求められるため、パッケージで購入するよりも、月定額で最新版を使用できるサブスク・モデルの方が使い勝手がいいとその道のプロたちに受け入れられたわけです。

一般ユーザー向けに一般ソフトを広く販売するより、プロ向けのソフトを狭く深く販売することで、収益を大きくしたアドビの事例は大いに参考になったはずです。


さらにマイクロソフトは、クラウドコンピューティング(ネットワーク上でコンピュータの様々な機能が使えるサービス)も提供し、成功しています。

こちらは、世界トップ企業であるアマゾンという成功例があります。

ことにアマゾンというインターネット通販の会社が、必要性から始めたクラウドコンピューティングの機能を自社の商品として販売し、世界1位にまで育て上げた実行力と柔軟性は、大いに参考にしたことでしょう。


つまりナデラCEOの功績は、全く新しいビジネスを立ち上げ市場を切り開いたのではなく、すでにあるビジネスを取り入れて、確実に自社のものにしたというところに尽きます。

そんなのただの真似やん。と言うのは簡単ですが、実際には、マイクロソフトほどの超巨大企業が、ビジネスモデルを180°転換させるなど、並大抵のことでできるものではありません。

なにしろマイクロソフトは、ウィンドウズという商品で天下をとった会社なのです。創業者のビル・ゲイツは歴史に名を残す偉大なカリスマであり、その彼が精魂込めたのが、ウィンドウズを中心としたビジネスの構築でした。その会社が、ウィンドウズを手放すなど、魂を捨てるような衝撃だったはず。

ビル・ゲイツを慕う社員も多くいる中、超巨大企業を一つの方向へ導いたナデラCEOの手腕は驚嘆すべきものです。


自社以外すべて敵という傲慢


創業者のビル・ゲイツは、ライバル企業を容赦なく叩き潰していく苛烈さで知られていました。その極端な覇権主義は、各国の政府と対立するに至り、あげくは独占禁止法や競争法違反の適用を受けてしまったほどです。

これに対して、雇われCEOのサティア・ナデラは「みんな仲良く」タイプのようです。社内でも社外でも、敵を作らず、協力できるところはしていく姿勢を取り続けています。

例えていうと、ビル・ゲイツは織田信長であり、サティア・ナデラは豊臣秀吉ですな。

ビル・ゲイツや2代目スティーブ・バルマーが、長年目の敵にしていたのが、無料プログラムの「リナックス」です。ウィンドウズを売り物にしている同社としては、無料でプログラムを開放しているリナックスは、ビジネスモデルを破壊しかねない邪魔な存在でしたから。

しかし、そのリナックスでさえ、ナデラCEOは取り込みました。自社のシステムにリナックスを採用し、今やクラウド上で動く半数のプログラムに採り入れられているといいます。

「危機においては、味方ではなく、敵と組め」とは、ティリオン・ラニスターの言葉ですが、ナデラCEOの信条はさながら「敵なんていない。皆と組め」というものでしょう。

アマゾンやアドビのビジネスを参考にしたのはその一環ですし、その他、小さなベンチャーのやることでも、気に入れば採り入れるということを繰り返しています。

いうなれば、この「顧客のためになるなら誰とでも組もう」という姿勢が、マイクロソフト復活の最大のポイントだったと私は考えます。

それまでのマイクロソフトというと、他者を寄せ付けない傲岸不遜な会社というイメージで見られていました。一代で帝国を築き上げる創業企業には、そんな独善性も必要な要素だったのかも知れません。

しかし落ち目の大企業に、傲慢な姿勢は百害あって一利なしです。

ビル・ゲイツ時代のマイクロソフトの功績は、パソコンでインターネットを利用する際の利便性を、とことん高めたということです。ウィンドウズがなければ、これほどインターネットが一般的に普及することはなかったでしょう。それは認めなければばりません。

が、同社の他社を叩き潰すという姿勢が、一般ユーザーから他の選択肢を奪っていたのも事実です。ウィンドウズの常識外れの成功は、他社の可能性をつぶした上でなりたっていたのです。

この自社のサービスだけしか使わせないという姿勢が、ここでいう傲慢さです。

それでも人々はウィンドウズを使用していました。それしかないのだから比較のしようがありません。

ところが、スマホがあっという間に普及してパソコンを使わなくても困らない人が多くなると、マイクロソフトの傲慢さはマイナスに働いてしまいました。

スマホはアップルもアンドロイドもあるし、そのほかいろいろ格安のものもあって競い合っているけど、パソコンはウィンドウズしかなかったよね。と気づかれてしまったのですな。

慌てたマイクロソフトは、ウィンドウズフォンなんてのを出しますが、遅きに失したのか、鳴かず飛ばずで終わってしまいました。

こうなると、傲慢さが裏目に出て、誰も助けてくれません。ざまーみろと思われるぐらいです。

そんな時に登場したナデラCEOの「謙虚に顧客のためになることをしよう」という姿勢は、本当に凋落してしまう一歩手前で同社を踏みとどまらせました。


現代のビジネスのルールに従った


ナデラCEOが取り組んだ「フリーミアム」や「サブスク」の本質は、顧客と接触する場面を多くして、顧客をより深く理解しようというものです。

顧客を安易に囲いこもうとすると失敗します。むしろ出入りは自由です。選択肢も多くあります。その中で顧客に選ばれるために、顧客を理解しようとする試みです。

かつてマイクロソフトが持っていた独善性(パソコンを使いたければウィンドウズを使えやーって感じ)とは一線を画したものだと思えます。

そもそも今の時代、顧客は囲い込まれることを嫌います。変に囲い込もうとすると、顧客は逃げてしまいます。逃げるだけならまだしも騒がれて炎上案件になってしまう恐れすらあります。

顧客は自由です。選択権を常に持っています。それが今のビジネスの絶対のルールです。

今のマイクロソフト=ナデラCEOが顧客から高く評価されているのは、そのルールを遵守した上で顧客満足を実現し、他社と無用な軋轢を生まずにビジネス展開ができているからです。

いわば、ナデラCEOの方向性は、時代に則したものであり、ウィンドウズを後生大事にしようというビジネスからの脱皮は、必然だったといえます。


膨大な既存顧客群が最大の資産だった


社内にも社外にも敵を作らず、協力者にしていこうとするナデラCEOのマネジメントスタイルは、もしかすると時間がかかるものかも知れません。いや、そうでもないかな。豊臣秀吉の天下統一のスピードはやたら速かったですからね。余計な敵を作らないスタイルの方が、実は時間がかからないのですかね。


ともかく一方を向いた企業のパワーはすさまじいものがあります。特にマイクロソフトの場合、企業規模が大きく、ビジネスも多岐にわたっているので、その効果も大きい。

既存の顧客、ファンが多いものですから、新規顧客を開拓する必要さえありません。既存顧客を「フリーミアム」「サブスク」に巻き込んでいけば、それだけでビジネスが成立します。

マイクロソフトが短期間に業績を回復させたのは、その最大の特長である膨大な既存顧客群を味方につけることができたということが大きいといえます。


マイクロソフトの業績がまだまだ伸びるだろうと予測されているのは、そのビジネス展開がいまだ既存顧客枠を出ていないからです。これから新規顧客に向けて「フリーミアム」「サブスク」を展開していけば、さらに大きな収益を見込むことができます。

他の企業も黙っていないでしょう。マイクロソフトが示した「フリーミアム」「サブスク」の展開方法は、他の分野でも再現できそうです。アップルもグーグルも、取り組んでくるはずです。

そうなると競争は次の段階に入っていきます。これからも各企業のダイナミックな動きは続いていくことでしょうね。

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