農耕営業のススメ

2010.01.28

(2010年1月28日メルマガより)

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■戦略がなければ生き残れない。

私のセミナーでよく使うフレーズです。

まさにその通り。戦略がなければ生き残れません。

私がこのメルマガで伝えたいと思っていることは、この言葉に集約されてい
ます。

なんだか最終回のようですね。

いや、そういうわけではありません。

■今更ながら自己紹介をさせていただくと、私自身は経営コンサルティング
を生業にしています。

その中でも「営業」に関するコンサルティングが中心です。

講演や研修などでは、営業以外のことも扱うことはありますが、コンサルテ
ィングに関しては、組織や個人の営業力を向上させることに集中しています。

もともと私は製造業の営業出身ですので、最も馴染みのある分野をフィール
ドにしたわけですが、今では、それなりにスタイルや手法も構築しており、
堂々と「営業コンサルタント」と名乗るようにしています。

偉そうにしているわけではありませんよ。念のため^^;

■ところで、コンサルタントとして独立した当初は、自分の「営業現場経験」
を活かして、ノウハウ満載の"実践的な"営業指導を売りにしようと目論ん
でいたものです。

しかし、実際に企業に接して営業内容を見てみると、現場に出る以前に片付
けなければならないことが多すぎることに気づきました。

戦争においては「戦闘が始まった時点で勝負はついている」と言われます。
これは中国の兵法書「孫子」のテーマでもあります。

余談になりますが「孫子」は、いかに戦争に勝つか?ということをテーマに
している書だと考えている方が多いと思いますが、実際には「戦争にならな
いように優位性を保つ」ことをテーマにしています。

孫子は「戦争が始まった時点で損をしている」と述べています。戦争になら
ないように相手を弱らせ追い落とすことの手法がリアルに書かれている"え
げつない"本です。以上余談でした。

■「戦闘が始まった時点で勝負がついている」ということは、営業において
も同じだと私は実感しています。

すなわち営業現場に出た時点で趨勢は決まっています。その前の準備段階で
やるべきことは殆ど終わっており、営業が現場の対応力で逆転できることな
どごく稀でしかありません。

それなのに。。。

私がコンサルティングに関わった事例では製造業が多いこともありますが、
「最後は営業が現場対応で何とかしてくれる!」と能天気に考える企業のい
かに多かったことか。

能天気というよりも純真なんですね。日本の製造業は。

組織として標的顧客を明確にしていない。何を自社の強みとするか決めてい
ない。向かうべき方向性がない。そういう営業の現場指導をいくらしたとこ
ろで、営業実績は上がりません。

顧客の不満にうまく切り返して丸め込んでしまったところで、話を少し長引
かせるぐらいの効果しかありません。現場のノウハウなどそんな程度です。

営業ツールを簡単に整えて、営業トークを統一して、反復練習をすることで、
一定の向上は見られる場合もありますが、そういった対処療法では一時期の
効果しか望めません。

というわけで、私がコンサルティングする時は、戦略構築の部分から関わる
ことが条件となります。

「営業コンサルティング」というといかにも現場対応を教える役割だと思わ
れる企業もあるようですが、私は「営業戦略」を作ることから取り掛かりま
すので、時間がかかりますよ^^

■今では、多くのコンサルタントが「現場対応よりも、戦略や仕組みが大切」
だと発言していますが、実際の営業現場にはまだまだ浸透しているとは言え
ないようです。

結構大きくて歴史のある会社でも、いまだに「営業は反射神経だ」とか「営
業はセンスだ」とか仰います。

日本の場合、優秀な製造業が多いので、開発や製造技術については一つ一つ
精緻に積み上げてきた歴史がありますが、どうも営業については特別枠で捉
えてきたきらいがあるようですね。

日本の営業に戦略という概念を浸透させる。

私の目指すところは、まだまだ先になりそうですな。

■さて以上は前置きです。

今日は、戦略よりも管理(仕組み)の話をしようとしています。

昔から言われていることですが、日本企業の製造部門の生産性は世界一なの
に、間接部門の生産性は非常に低いようです。

これは田岡信夫先生の著作にもありますが、営業部門に関しては、欧米の半
分程度の生産性しかありません。ということは30年以上前から、同じ課題を
抱えたままになっているわけです。

進歩がない...と言うべきか。それとも、営業部門に手をつけなくても、世界
2位の経済大国になれたんだから凄いというべきか。

今年は、中国にGDPで追い抜かされる節目の年でもありますし、伸ばす余
地のある営業部門の生産性を上げることに焦点を合わせるべきではないでし
ょうか。

■さてどのように営業の生産性を伸ばすのか。

(私は営業の生産性を"一人当たりの営業利益"という指標で捉えています。
念のため)

営業に関する本などを読んでいると、大きく仕組みを改善する方法を説く本
と、現場での対応や個人の姿勢を説く本があります。

私の「戦略・管理・実践」という分類に従うと、前者は営業の「管理」につ
いて書いている本で、後者は営業の「実践」について書いた本です。

特に、生産性が高いという欧米の翻訳本を読んでいると、双方とも徹底して
いることが分かります。

「仕組み・管理」については、営業プロセスごとに数値指標を設定した上、
コンピュータを駆使した数値管理と評価の仕組みを水も漏らさぬ厳密さで設
計する思想が書かれています。

言葉は悪いですが、営業担当をいかに"道具"として使いこなすかを突き詰
めているようです。

これに対して「実践」については、スーパーマンのごとき営業が、いかに自
分のモチベーションを上げて、行動を自己管理し、相手の心理を読んで自分
の思う方向に誘導する様が書かれています。

もちろん参考になる本ではありますが、凡人営業である私は圧倒されてしま
いますな^^;

日本にもカリスマ営業氏が書いた本は多くありますが、日本の実践本が、む
しろ自分自身の営業に対する姿勢や哲学を語ることに多くの頁を費やしてい
るのに対して、欧米のカリスマ営業は自分のスキルやノウハウを誇らしげに
開示することが多いように感じます。

「管理」の冷徹な徹底と、「実践」の強烈なプライド。

さすが欧米は何でも極端ですな^^

■これは恐らく、欧米ではセールスが専門職として独立した存在として認識
されていることにも関係しているのでしょう。

要するに、会社側は戦略を決めて、仕組みを作る。セールスは与えられたツ
ールを使って販売して決められた報酬を得る。役割の完全な分担です。

営業は、会社の戦略にノータッチとなり、売ることだけに専念するようにな
ります。現場におけるスキルやノウハウが発達するわけです。

また会社の方針や商品に不満があれば、よりよい会社や商品を求めて移動す
るようになるので、自分自身にスキルやノウハウがなければセールスとして
生きていけないという事情にもなります。

ちょっと極端な例ですが、これが欧米流のプロ営業の姿です。

まさに狩猟民族の魂ここにあり。といった姿ですな^^

■少し前、テレビで「欧米の金融投資ビジネスと日本のそれの違い」という
内容の番組がありました。(CS放送ですが、番組名は失念しました)

それによると、欧米の投資家は、リスクがあってもチャンスを捉えて大胆な
投資をする傾向にある。

ただし予測が外れて損をした時には、大火傷しないようにロスカットをする
ことができる。

それに対して、日本の投資家は、チャンスよりもリスクに目が行くので、安
全策になる。

全員が安全策をとるのでどうしても横並びになり、金融危機などの際には皆
で大損をしてしまう。

しかも、ロスカットすることがなかなかできずに、塩漬けにしてしまう傾向
にある。

番組では、これは狩猟民族と農耕民族の本能の違いが出ており、どうも日本
人に金融投資ビジネスは向いていないのではないかとの意見が出ていました。

日本人は、製造業のように、コツコツと経験とノウハウを積み上げるビジネ
スを得意としています。

一つのことを始めると、ちょっとしたことでは諦めずに、ものになるまで継
続する粘り強さがあります。

これはまさに農耕民族の特徴です。

それに対して、欧米人は、チャンスを追い求め、ダメならすぐに切り替えて
次のチャンスを探す潔さがあります。

これは狩猟民族の特徴なのでしょう。

もちろんどちらがいいというわけではありません。

■営業の分野でも、欧米のシステムは、セールスマンの狩猟民族的な感性に
頼ったものであると私は感じています。

管理システムは、営業の業績を評価するために活用されて、営業マンを育成
して組織営業力を高めようという発想は乏しいものものです。

同じシステムを農耕民族である日本人が取り入れるのは無理があるのではな
いかというのが私の意見です。

従って、農耕民族には農耕民族の営業があるのだと考えます。

■農耕民族、狩猟民族などといった類型に当てはめて考えることには批判も
あるでしょうが、ここは一つの仮説だと思ってお聞きください。

私は、営業コンサルティングをする際には、顧客や営業マン自身をいくつか
の類型に分けて、それぞれに営業方法を変えようという指導をすることがあ
ります。

その方が、当てはまらない例外を考慮した上でも、理解しやすくて身につけ
られるからです。

■農耕民族の営業とは何か。

結論から言うと、結果に頼らない、プロセスを積み上げる営業の方式だと考
えます。

営業はプロセスに分解できるというのが私の以前からの主張です。

具体的には、集客(リストアップ)、アプローチ、ヒアリング、プレゼンテ
ーション、クロージング、アフターフォローというプロセスです。

結果(売上、利益、シェア)は、プロセスの積み上げによってもたらされる
ものです。

だから結果が出ない場合は、どこかのプロセスに原因があるということです。

これは、まさに種をまき、水をやり、雑草を除き、肥料をやって...収穫する
農作業と同じです。

やるべきことをやることで、結果につなげていく。どこかで手を抜くと、思
うように収穫ができないと戒める。

そこには、奇抜なアイデアも、抜け駆けのような行動も、カリスマも必要あ
りません。

やるべきことを繰り返しやることこそが重要なのです。

■さらに言うと、どのプロセスに原因があるのかを突き止めるためのシステ
ムが、農耕民族のための営業システムです。

農耕で例えると、水やりの回数、日照条件、気温などの記録をデータ化して、
どこに影響力を持つ原因があるかを確認することです。

このシステム構築に関しては、製造業の生産管理システムが参考になります。
それぞれのプロセスに数値的な指標を作って、緻密に記録をとっていきます。
その記録の積み上げが、プロセスの状態や異常値を知らせる拠り所となるわ
けです。

結果を出せ!と言われても、困惑するばかりの新人営業も「訪問件数が少な
いから時間管理を見直そう」とか「見積もり提案件数が少ないから、聞き取
り調査の内容を変えよう」とか言われれば工夫の仕様があります。

営業マネージャーの指示も常識的、具体的になります。

また経営者が「みんなで儲け話を探して来い」などと自分の責任を放棄する
ようなアホな指示を出すこともなくなります。

■日本人は、製造業を農耕のように運営することで世界にも類を見ない生産
性を実現してきました。

営業という分野も、農耕と同じく積み上げることで生産性を高められるとい
うことに、そろそろ気づく時が来ているのです。

そのためにも、営業の分野に細かな管理指標を作って管理する仕組みを導入
する。

それが「農耕営業」の第一歩です。

■バブル崩壊以降、日本でも、新しい営業のあり方が模索されてきました。

高度成長期は1973年に終わっているのに「もうあの頃の営業手法は見直そう
よ」という機運がようやく主流となってきたわけです。

欧米型の成果主義。またその反省からくるプロセス主義。あるいはコンサル
ティングセールスやソリューションセールス。

欧米の手法を参考に新しい時代にマッチする営業のあり方を探し続けてきた
わけですが、この数年、日本でも、わが国固有の営業方法を生み出そうとす
る動きが目立ってきたように思います。

やっぱり変だよ日本の営業

御社の営業がダメな理由

といった著作は、日本の営業に「組織力」を導入する重要性を説いた本であ
り、大げさに言うとエポックメメイキング的な"古典"です。

最近では「営業の見える化

といったより具体的に組織営業導入の方法を説いた本も出ています。

また個人の営業手法については「最強の営業術

が、教科書的に分かりやすく書かれていていいと思います。

また念のためですが、欧米も営業に組織力を導入しようという動きはあり、
こちら「一流の「営業力」を育てる」などに見て取れます。

■私自身も、営業のあり方というものをずっと探し続けてきました。

勘や経験でものを言わない。かといって欧米の受け売りでもない。日本とい
う風土に合った営業のあり方や手法があるのではないか。

私はそこに「農耕民族」と「狩猟民族」というフレームワークを持ち込んで、
何らかの答えを出そうとしているわけです。

私も乏しい経験ながら、日本人に合った「農耕営業」といったものが、あり
えるのだと徐々に手ごたえを感じています。

そのためのシステムやスキル、手法をこれからも研究し、研鑽していきたい
と考えています。

高らかに宣言するわけではありませんが、粘り強く、泥臭く取り組んでいき
たいと思います。

まさに農耕民族として^^

今後ともよろしくお願いいたします。


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■戦略がなければ生き残れない。

私のセミナーでよく使うフレーズです。

まさにその通り。戦略がなければ生き残れません。

私がこのメルマガで伝えたいと思っていることは、この言葉に集約されてい
ます。

なんだか最終回のようですね。

いや、そういうわけではありません。

■今更ながら自己紹介をさせていただくと、私自身は経営コンサルティング
を生業にしています。

その中でも「営業」に関するコンサルティングが中心です。

講演や研修などでは、営業以外のことも扱うことはありますが、コンサルテ
ィングに関しては、組織や個人の営業力を向上させることに集中しています。

もともと私は製造業の営業出身ですので、最も馴染みのある分野をフィール
ドにしたわけですが、今では、それなりにスタイルや手法も構築しており、
堂々と「営業コンサルタント」と名乗るようにしています。

偉そうにしているわけではありませんよ。念のため^^;

■ところで、コンサルタントとして独立した当初は、自分の「営業現場経験」
を活かして、ノウハウ満載の"実践的な"営業指導を売りにしようと目論ん
でいたものです。

しかし、実際に企業に接して営業内容を見てみると、現場に出る以前に片付
けなければならないことが多すぎることに気づきました。

戦争においては「戦闘が始まった時点で勝負はついている」と言われます。
これは中国の兵法書「孫子」のテーマでもあります。

余談になりますが「孫子」は、いかに戦争に勝つか?ということをテーマに
している書だと考えている方が多いと思いますが、実際には「戦争にならな
いように優位性を保つ」ことをテーマにしています。

孫子は「戦争が始まった時点で損をしている」と述べています。戦争になら
ないように相手を弱らせ追い落とすことの手法がリアルに書かれている"え
げつない"本です。以上余談でした。

■「戦闘が始まった時点で勝負がついている」ということは、営業において
も同じだと私は実感しています。

すなわち営業現場に出た時点で趨勢は決まっています。その前の準備段階で
やるべきことは殆ど終わっており、営業が現場の対応力で逆転できることな
どごく稀でしかありません。

それなのに。。。

私がコンサルティングに関わった事例では製造業が多いこともありますが、
「最後は営業が現場対応で何とかしてくれる!」と能天気に考える企業のい
かに多かったことか。

能天気というよりも純真なんですね。日本の製造業は。

組織として標的顧客を明確にしていない。何を自社の強みとするか決めてい
ない。向かうべき方向性がない。そういう営業の現場指導をいくらしたとこ
ろで、営業実績は上がりません。

顧客の不満にうまく切り返して丸め込んでしまったところで、話を少し長引
かせるぐらいの効果しかありません。現場のノウハウなどそんな程度です。

営業ツールを簡単に整えて、営業トークを統一して、反復練習をすることで、
一定の向上は見られる場合もありますが、そういった対処療法では一時期の
効果しか望めません。

というわけで、私がコンサルティングする時は、戦略構築の部分から関わる
ことが条件となります。

「営業コンサルティング」というといかにも現場対応を教える役割だと思わ
れる企業もあるようですが、私は「営業戦略」を作ることから取り掛かりま
すので、時間がかかりますよ^^

■今では、多くのコンサルタントが「現場対応よりも、戦略や仕組みが大切」
だと発言していますが、実際の営業現場にはまだまだ浸透しているとは言え
ないようです。

結構大きくて歴史のある会社でも、いまだに「営業は反射神経だ」とか「営
業はセンスだ」とか仰います。

日本の場合、優秀な製造業が多いので、開発や製造技術については一つ一つ
精緻に積み上げてきた歴史がありますが、どうも営業については特別枠で捉
えてきたきらいがあるようですね。

日本の営業に戦略という概念を浸透させる。

私の目指すところは、まだまだ先になりそうですな。

■さて以上は前置きです。

今日は、戦略よりも管理(仕組み)の話をしようとしています。

昔から言われていることですが、日本企業の製造部門の生産性は世界一なの
に、間接部門の生産性は非常に低いようです。

これは田岡信夫先生の著作にもありますが、営業部門に関しては、欧米の半
分程度の生産性しかありません。ということは30年以上前から、同じ課題を
抱えたままになっているわけです。

進歩がない...と言うべきか。それとも、営業部門に手をつけなくても、世界
2位の経済大国になれたんだから凄いというべきか。

今年は、中国にGDPで追い抜かされる節目の年でもありますし、伸ばす余
地のある営業部門の生産性を上げることに焦点を合わせるべきではないでし
ょうか。

■さてどのように営業の生産性を伸ばすのか。

(私は営業の生産性を"一人当たりの営業利益"という指標で捉えています。
念のため)

営業に関する本などを読んでいると、大きく仕組みを改善する方法を説く本
と、現場での対応や個人の姿勢を説く本があります。

私の「戦略・管理・実践」という分類に従うと、前者は営業の「管理」につ
いて書いている本で、後者は営業の「実践」について書いた本です。

特に、生産性が高いという欧米の翻訳本を読んでいると、双方とも徹底して
いることが分かります。

「仕組み・管理」については、営業プロセスごとに数値指標を設定した上、
コンピュータを駆使した数値管理と評価の仕組みを水も漏らさぬ厳密さで設
計する思想が書かれています。

言葉は悪いですが、営業担当をいかに"道具"として使いこなすかを突き詰
めているようです。

これに対して「実践」については、スーパーマンのごとき営業が、いかに自
分のモチベーションを上げて、行動を自己管理し、相手の心理を読んで自分
の思う方向に誘導する様が書かれています。

もちろん参考になる本ではありますが、凡人営業である私は圧倒されてしま
いますな^^;

日本にもカリスマ営業氏が書いた本は多くありますが、日本の実践本が、む
しろ自分自身の営業に対する姿勢や哲学を語ることに多くの頁を費やしてい
るのに対して、欧米のカリスマ営業は自分のスキルやノウハウを誇らしげに
開示することが多いように感じます。

「管理」の冷徹な徹底と、「実践」の強烈なプライド。

さすが欧米は何でも極端ですな^^

■これは恐らく、欧米ではセールスが専門職として独立した存在として認識
されていることにも関係しているのでしょう。

要するに、会社側は戦略を決めて、仕組みを作る。セールスは与えられたツ
ールを使って販売して決められた報酬を得る。役割の完全な分担です。

営業は、会社の戦略にノータッチとなり、売ることだけに専念するようにな
ります。現場におけるスキルやノウハウが発達するわけです。

また会社の方針や商品に不満があれば、よりよい会社や商品を求めて移動す
るようになるので、自分自身にスキルやノウハウがなければセールスとして
生きていけないという事情にもなります。

ちょっと極端な例ですが、これが欧米流のプロ営業の姿です。

まさに狩猟民族の魂ここにあり。といった姿ですな^^

■少し前、テレビで「欧米の金融投資ビジネスと日本のそれの違い」という
内容の番組がありました。(CS放送ですが、番組名は失念しました)

それによると、欧米の投資家は、リスクがあってもチャンスを捉えて大胆な
投資をする傾向にある。

ただし予測が外れて損をした時には、大火傷しないようにロスカットをする
ことができる。

それに対して、日本の投資家は、チャンスよりもリスクに目が行くので、安
全策になる。

全員が安全策をとるのでどうしても横並びになり、金融危機などの際には皆
で大損をしてしまう。

しかも、ロスカットすることがなかなかできずに、塩漬けにしてしまう傾向
にある。

番組では、これは狩猟民族と農耕民族の本能の違いが出ており、どうも日本
人に金融投資ビジネスは向いていないのではないかとの意見が出ていました。

日本人は、製造業のように、コツコツと経験とノウハウを積み上げるビジネ
スを得意としています。

一つのことを始めると、ちょっとしたことでは諦めずに、ものになるまで継
続する粘り強さがあります。

これはまさに農耕民族の特徴です。

それに対して、欧米人は、チャンスを追い求め、ダメならすぐに切り替えて
次のチャンスを探す潔さがあります。

これは狩猟民族の特徴なのでしょう。

もちろんどちらがいいというわけではありません。

■営業の分野でも、欧米のシステムは、セールスマンの狩猟民族的な感性に
頼ったものであると私は感じています。

管理システムは、営業の業績を評価するために活用されて、営業マンを育成
して組織営業力を高めようという発想は乏しいものものです。

同じシステムを農耕民族である日本人が取り入れるのは無理があるのではな
いかというのが私の意見です。

従って、農耕民族には農耕民族の営業があるのだと考えます。

■農耕民族、狩猟民族などといった類型に当てはめて考えることには批判も
あるでしょうが、ここは一つの仮説だと思ってお聞きください。

私は、営業コンサルティングをする際には、顧客や営業マン自身をいくつか
の類型に分けて、それぞれに営業方法を変えようという指導をすることがあ
ります。

その方が、当てはまらない例外を考慮した上でも、理解しやすくて身につけ
られるからです。

■農耕民族の営業とは何か。

結論から言うと、結果に頼らない、プロセスを積み上げる営業の方式だと考
えます。

営業はプロセスに分解できるというのが私の以前からの主張です。

具体的には、集客(リストアップ)、アプローチ、ヒアリング、プレゼンテ
ーション、クロージング、アフターフォローというプロセスです。

結果(売上、利益、シェア)は、プロセスの積み上げによってもたらされる
ものです。

だから結果が出ない場合は、どこかのプロセスに原因があるということです。

これは、まさに種をまき、水をやり、雑草を除き、肥料をやって...収穫する
農作業と同じです。

やるべきことをやることで、結果につなげていく。どこかで手を抜くと、思
うように収穫ができないと戒める。

そこには、奇抜なアイデアも、抜け駆けのような行動も、カリスマも必要あ
りません。

やるべきことを繰り返しやることこそが重要なのです。

■さらに言うと、どのプロセスに原因があるのかを突き止めるためのシステ
ムが、農耕民族のための営業システムです。

農耕で例えると、水やりの回数、日照条件、気温などの記録をデータ化して、
どこに影響力を持つ原因があるかを確認することです。

このシステム構築に関しては、製造業の生産管理システムが参考になります。
それぞれのプロセスに数値的な指標を作って、緻密に記録をとっていきます。
その記録の積み上げが、プロセスの状態や異常値を知らせる拠り所となるわ
けです。

結果を出せ!と言われても、困惑するばかりの新人営業も「訪問件数が少な
いから時間管理を見直そう」とか「見積もり提案件数が少ないから、聞き取
り調査の内容を変えよう」とか言われれば工夫の仕様があります。

営業マネージャーの指示も常識的、具体的になります。

また経営者が「みんなで儲け話を探して来い」などと自分の責任を放棄する
ようなアホな指示を出すこともなくなります。

■日本人は、製造業を農耕のように運営することで世界にも類を見ない生産
性を実現してきました。

営業という分野も、農耕と同じく積み上げることで生産性を高められるとい
うことに、そろそろ気づく時が来ているのです。

そのためにも、営業の分野に細かな管理指標を作って管理する仕組みを導入
する。

それが「農耕営業」の第一歩です。

■バブル崩壊以降、日本でも、新しい営業のあり方が模索されてきました。

高度成長期は1973年に終わっているのに「もうあの頃の営業手法は見直そう
よ」という機運がようやく主流となってきたわけです。

欧米型の成果主義。またその反省からくるプロセス主義。あるいはコンサル
ティングセールスやソリューションセールス。

欧米の手法を参考に新しい時代にマッチする営業のあり方を探し続けてきた
わけですが、この数年、日本でも、わが国固有の営業方法を生み出そうとす
る動きが目立ってきたように思います。

やっぱり変だよ日本の営業

御社の営業がダメな理由

といった著作は、日本の営業に「組織力」を導入する重要性を説いた本であ
り、大げさに言うとエポックメメイキング的な"古典"です。

最近では「営業の見える化

といったより具体的に組織営業導入の方法を説いた本も出ています。

また個人の営業手法については「最強の営業術

が、教科書的に分かりやすく書かれていていいと思います。

また念のためですが、欧米も営業に組織力を導入しようという動きはあり、
こちら「一流の「営業力」を育てる」などに見て取れます。

■私自身も、営業のあり方というものをずっと探し続けてきました。

勘や経験でものを言わない。かといって欧米の受け売りでもない。日本とい
う風土に合った営業のあり方や手法があるのではないか。

私はそこに「農耕民族」と「狩猟民族」というフレームワークを持ち込んで、
何らかの答えを出そうとしているわけです。

私も乏しい経験ながら、日本人に合った「農耕営業」といったものが、あり
えるのだと徐々に手ごたえを感じています。

そのためのシステムやスキル、手法をこれからも研究し、研鑽していきたい
と考えています。

高らかに宣言するわけではありませんが、粘り強く、泥臭く取り組んでいき
たいと思います。

まさに農耕民族として^^

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