アマゾンにチャレンジ!

2011.09.22

(2011年9月22日メルマガより)


■このメルマガでも紹介した「ストーリーとしての競争戦略」という本の中
に、アマゾンの事例が載っています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4492532706/lanchesterkan-22/ref=nosim

言わずと知れた amazon.com は、インターネット通販サイトの大手です。
日本では、amazon.co.jp で登録されています。

この会社、何がすごいのかと言えば、単に実店舗で行っているビジネスをイ
ンターネットに置き換えたというだけのものではなく、インターネットでし
か成立しないビジネスモデルを展開していることです。

だから、web2.0企業の代表格ともみられています。

アマゾンについては、以前、メルマガで書いたことがありましたね。
参考:「とるに足りない80%」
http://www.createvalue.biz/column2/post-115.html

■アマゾンは、コンピュータのエンジニアだったジェフ・ベゾスが、1994年
に創業した会社です。

彼はインターネットの黎明期に、電子商取引の将来性を見込んで、書籍のオ
ンライン販売に参入します。

彼はこう考えました。

「世の中では膨大な書籍が出版されているが、実際の書店で扱うことができ
るのは、その一部にしか過ぎない。そこから漏れ出た多くの書籍を、インタ
ーネット販売なら取り扱うことができるのではないか...」

■実際の店舗は、陳列場所や在庫という制限があるため扱うことができるの
はほんの一部です。

だからどの本を扱うかが商売の肝となります。

その際に拠り所となるのが、いわゆる8-2の法則というもの。簡単にいえ
ば、売れ筋の2割が、全体の8割の売上を占めているというシンプルだが強
固な法則です。

この法則に従うと、実際の店舗では、売れない8割の書籍など気にしなくて
もよい。2割の売れ筋だけ集めればよい。ということです。

コンビニエンスストアは、この考え方を最大限突き詰めたものです。

そこでは、雑誌や一部の本、CDなど、極端な売れ筋だけに絞って、店頭に
置いています。

■だからチャンスがある。とベゾスは考えました。

陳列場所や在庫という制限のないインターネット販売なら売れ筋の2割に特
化する必要がない。

売れるか売れないか分らない残り8割の書籍を置いておけば、そのうち注文
が入るだろう。なにしろ、インターネットは全国いや世界を対象にしている
わけですから。

■この考え方は「ロングテール」という言葉とともに一世を風靡しました。

ロングテールとは、すべての書籍を売れる順番に並べて棒グラフにした時、
まるで草食恐竜の長い尻尾のように見えるたまにしか売れない書籍の集合を
現した言葉です。

実際には恐竜の尻尾どころではない。1冊、2冊しか売れない本の羅列が延
々と続くわけです。

確かに、あまり売れないといっても、残り8割の書籍に需要がないわけでは
ない。全国、全世界には、それを欲しいと思う人がいるわけです。

実際の店舗ではその需要に応えることは不可能ですが、インターネット販売
ならばそれが可能となります。

それは、インターネット販売の1個当たりの販売コストが非常に小さいこと
を根拠にしています。

■ジェフ・ベゾスは「消費者の購買代行」を志向し、様々な工夫を凝らしま
した。

中でも顕著なのは、売れないロングテールの需要を喚起しようという仕掛け
です。

インターネット販売の武器は、消費者の個別データが蓄積されることですか
ら、購入履歴データから、好みの書籍の傾向が分ります。

だからお勧めの書籍を提案すれば、購入する可能性が高まります。

アマゾンで購入した経験のある方なら、そこからお勧め書籍のメールが届く
ことをご存知でしょう。

あるいは、購入した直後に「この本を購入した方の70%が、こちらの本も
購入しています」といった案内が入ります。

つい心惹かれて購入してしまった経験のある人は多いのではないですか?

巧妙な手口です^^が、これらは、何らかのアルゴリズムで解析し、自動で
挿入される案内ですから、やはり手間がかかるわけではありません。

■ただし、アマゾンのキラーパス(ビジネスのポイント)は、それ以外のと
ころにある。というのが「ストーリーとしての競争戦略」に書かれているこ
とです。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4492532706/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本によると、ジェフ・ベゾスは、当初、購買代行業に特化して、その他
のリアルな物流は、既存の書籍物流業者に任せようと考えていたふしがあり
ます。

ところが彼は、すぐにその考えを撤回し、巨大な物流センターを自前で所有
することにこだわり始めます。

思い起こせば、私が中小企業診断士の勉強をしていた2000年頃、アマゾンは
既に革新的なビジネスモデルとして事例に挙げられていました。

ただしその時点ではまだ赤字企業だったので、評価は未知数である、ともい
われていました。

ベゾスが、インターネット上での購買代行業に特化していると、コストもそ
れほどかからず、すぐに黒字化していたのかも知れませんが、彼はどういう
わけか物流センターへの巨額投資を続けました。

投資家は、IT企業の特徴である固定費の小ささがアマゾンにはないと嫌気
される場面もありましたが、ベゾスは意に介しませんでした。

そして2003年ついに黒字化。その後は、増収への道を突き進んでいます。

■彼がなぜ自前の物流センターにこだわったかというと、既存の物流センタ
ーはあくまで既存の店舗のためのもので、アマゾンの志向するロングテール
の販売を必ずしもカバーしていなかったということでしょう。

売れない書籍は、物流センターの倉庫に眠っていたり、出版社の死蔵在庫に
なっていたり、日の目を見ないわけです。だから、突然注文が入っても、ど
こにあるのかを探すだけでも大変です。

消費者とすれば、お勧めされたから買ったというのに、注文から1週間も待
たされたのでは、興ざめです。

これではアマゾンに対する好感度も下がってしまいます。

ベゾスが回りを見渡せば、多くのインターネット通販は物流の問題で苦労し
ていました。

インターネット通販の理想と現実にはギャップがあったわけです。

そこで、彼は、自前で物流センターを作ることが、数多のインターネット通
販の中から抜け出すための競争力になると考えたのです。

だからアマゾンの自前の物流センターは、完全にコンピュータ化されたオペ
レーションと作業者の効率化を実現する技術で武装されています。

さながらデジタルとアナログを融合した泥臭い技術の集合体のようですね。

この狙いは当たり、今では、アマゾンの物流体制に対抗できるオンライン書
店を探すことは困難です。

だから、アマゾンで購入した本が届かないとイライラすることはあまりあり
ません。

■それにしても、インターネット通販といえども、配送という制約から逃れ
ることはできないのでしょうか。

電子書籍なら、配送が制約になることはありません。もし、電子書籍が一般
的になるとアマゾンはどのように競争力を発揮するのでしょうか。

あるいは注文を受けてからすぐに印刷するオンデマンド製本ならば、巨大な
物流センターは不要です。こちらも印刷技術が進んでコスト削減が為せれば、
実現するかも知れません。

そうなるとアマゾンの武器は、オンライン書店トップという現在のブランド
力が頼りになります。

ブランド力も強い競争力の源泉なのですが、その時には、新たな競争相手が
現れるかも知れませんね。

■さて、こうした事例を見て、我々は何を学ぶべきでしょうか。

例えば、アマゾンのビジネスを横展開できないか。

要するに、本以外で、アマゾンのようなビジネスを展開できないか。

もっとも、アマゾン自身が、本だけに止まらず、家電製品や食品までも扱う
ようになっていますから、それを見つけるのは容易ではありません。

健康食品のケンコーコムなどは、アマゾンのビジネスのバリエーションとい
えるかも知れませんね。

ただ、探せば隙間はいろいろあるはずですから、興味のある方は、探してみ
てください。

■縦展開はできないか。

これは、アマゾンの上流や下流でビジネスを展開するというものです。

実は、こちらはアマゾン自身が、周辺ビジネスの展開を奨励しています。

例えば、アマゾンの物流センターでもカバーできない絶版書籍などは、個人
がアマゾンのホームページ内のフリーマーケットのようなところで販売でき
るような仕組みを提供しています。

本は大した売上にはならないでしょうけど、家電製品などになると、問屋さ
んなどが自社の物流在庫を処分する時などにこの仕組みを活用することがで
きるでしょう。

あるいは、独自にセレクトした書籍を紹介して購入されると、その手数料が
入るという仕掛けもあります。(このメルマガで紹介した書籍も皆さんが購
入した場合、アマゾンから手数料が入ります)

手数料そのものは小さいので、本を紹介しても大した売上にはなりませんが、
家電製品などを紹介すると、個人レベルでは、そこそこの収益が見込めるの
かも知れません。

それを見込んで、小遣い稼ぎをしたい個人にノウハウやツールを提供してい
る業者もいますね。。。いろいろありますよ。

もっと大掛かりなものだと、物流センターを丸々代行するというところもあ
るようです。

アマゾンといえども世界中に物流センターを自前で建設するわけにはいきま
せんから、地元のしっかりした業者にノウハウを提供して、共同運営という
形をとるビジネスもあり得ます。

その他、思いつくことがありましたら、教えてください^^

■では、あえて、書籍のインターネット販売というジャンルで真っ向勝負す
るためには、どうすればいいのか。

そんな無謀なこと考える人はいませんかね^^;

でも、もともと書籍の販売を生業にしている人にとっては死活問題ですから、
考える意味はあるはずです。

ランチェスター戦略は競争戦略ですから、同じ市場の中で、顧客を奪い合う
場面を想定しています。

例えば、アマゾンに対抗して新しいインターネット書籍販売をしようとする
場合。

アマゾンは圧倒的な強者ですから、それとの差別化を行う必要があります。

なぜなら、弱者の基本戦略は差別化だからです。

■こういう場合、まずはアマゾンの強みを把握します。

まず商品。

アマゾンの象徴であるロングテール販売を実現すべくものすごい量の品揃え
を実現しています。この品数の多さが強みです。

つぎに価格。

こちらは日本では再販価格制度が強固なので差別化できません。アマゾンは
値引き販売したいようですが...

チャネル。

自社ホームページでの販売です。ただし、ナンバーワンとして圧倒的なブラ
ンド力があります。ネットで本を検索すると必ずアマゾンのサイトが上位に
出てきますので、アクセス数が非常に多い。

プロモーション。

消費者の購買データの蓄積があり、お勧め商品選定のアルゴリズムが他社よ
りも精緻であると思われます。また検索エンジン対策は徹底しています。

デリバリー。

注文してから基本的に3日以内に届きます。早便で注文すれば翌日届きます。

■例えば商品に着目します。

アマゾンよりも多くの品揃えを持つことは可能でしょうか?

こちらは、多くの書店や古書店が集まってネットワークを作れば可能かも知
れません。

古書店を入れないと品揃えで勝つことはできませんよ。

しかし、アマゾンの提供するフリーマーケットで、多くの古書店がビジネス
展開をしている現状があるので、それは難しいかもしれません。

■では、アマゾンがまだ手を出していない同人誌(マンガ)の類はどうでし
ょうか。

こちらは著作権の問題があるので難しいのですが、試してみる価値はあるか
も知れません。

同人誌のフリーマーケットは普通にあるので、やる意味は薄いですが、電子
書籍やオンデマンド出版に挑戦してみるのも面白いでしょう。

これがうまく回れば、出版社が協同で、商業出版の電子書籍やオンデマンド
出版に乗り出せばいい。そのモデルケースになるのではないでしょうか。

■チャネルについて。

圧倒的なブランド力があり、アクセス数(人通り)が多いというのは、もの
すごい強みです。

とすれば、弱者としては、裏通りでエッジの効いた品揃えにしなければなり
ません。

いわゆるセレクトショップですね。

例えば、重病を患った方の体験記ばかりを集めた本屋があるそうですが、こ
れなどインターネット販売に適しているはずです。

(重病を患った方は、孤独感から、同じ体験をした人の気持ちや行動を知り
たいと思うものです。非常に強い需要があります)

単に、本を集めるだけではなく、出版社を巻き込んで、商品製作から一貫し
て取り組めば、より強みが先鋭化します。

やはり、電子書籍やオンデマンド出版の仕組みを使えば、固定費が削減され
ると思うのですがいかがでしょう。

■まあ、このように差別化戦略は、強者の強みの逆や斜めを考えることから
始まります。

どんなに強いナンバーワンだと思っていても、どこかに手がかりはあるもの
です。

小さな手がかりを見つけて戦略を組み立てることが、弱者の戦略の醍醐味だ
と思ってください。

■などと思っていたら、中国でアマゾンに真っ向勝負しているインターネッ
ト販売企業があるそうなので紹介しておきます。

参考→http://diamond.jp/articles/-/13882

記事によると中国では「亜馬遜」(Amazon)と、中国ローカルである「当当
網」がしのぎを削る状況です。

この当当網というのは、どうやらアマゾンのフォロワーらしい。多分、同じ
コンセプトで、同じビジネスを展開し、地の利の優位さで闘っているのでし
ょう。グーグルに対抗する「百度」のようなものですかね。

ところがこの2社に対抗するには、フォロワーなどと悠長なことは言ってら
れません。

そこで登場した「快書包」は、上位2社と差別化することにしたようです。

それはなんと、注文から1時間で配達をするというピザ屋のようなサービス
です。

えらいことを考えましたね。

■これまで説明してきたように、アマゾンは物流センターの充実を強みとし
てきました。

そして大量の品揃えにも関わらず、注文後、2,3日で配達する体制を整え
ています。

ところが、この快書包は、デリバリーのスピードをさらに推し進めようとい
うのです。

■快書包の戦略を見てみます。

まず市場を1時間で配達できる地域に絞っています。これは、デリバリーを
武器にする以上必要なことです。

市場は昼間人口が集中するオフィス街や商業施設が集まる地域にして効率性
を高めようとしています。

そして品揃えは、500種類程度の売れ筋に絞っています。

ということは、ロングテールなど狙わないというアマゾンの全く逆をいくコ
ンセプトです。

同じオンライン書店だといっても似て非なるものを志向していることが分り
ます。

チャネルは自社サイト。これは同じですね。

プロモーションについては、購買データからの自動抽出という手法ではなく、
快書包側からのお勧めの理由をtwitterでつぶやくという極めてアナログな
方法をとっています。

要するに、これは、売れ筋に特化したセレクトショップです。コンビニのよ
うに、自動的に売れ筋を扱うのではなく、書籍のセレクトに恣意的な要素を
入れていることが、快書包のもうひとつの特徴となっています。

■でもやはり最大の特徴は、注文から1時間で届けるという強烈なインパク
トですね。

消費者とすれば、twitterでお勧めしていた書籍に興味を持って注文したら
1時間で届くというのは便利この上ない。

ベストセラー小説やビジネスのノウハウ本など、短時間で読めてしまう書籍
なら、そんな読み方が理想です。(読み終われば、アマゾンで売ればいいわ
けですし^^)

快書包の経営者は、もともとリアル店舗の経営をしており、しかも本オタク
だったということですから、アマゾンに対抗してセレクトショップを志向す
るというのは自然な流れとして理解できます。

ところが、どういうところからか、極端なデリバリーのスピードを武器にす
ることを思いつき、それに沿ってビジネスを組み立てていったわけです。

ピザ屋とか宅配便とか、あるいはセメックスのビジネスを参考にしたのかも
知れませんね。

でも、それを実現してしまう力は起業家ならではです。

■久々に見事な差別化の事例を見たような気がします。

こんな強烈な差別化ではなくても、小さな差別化でも積み上げれば、戦う時
の手がかりになるものです。

安易に儲かっている会社の真似をせずに、その逆を行く。ということが、弱
者の生き残る道です。

探せばまだまだありそうですよね。

お互い頑張っていきましょう^^

(2011年9月22日メルマガより)


■このメルマガでも紹介した「ストーリーとしての競争戦略」という本の中
に、アマゾンの事例が載っています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4492532706/lanchesterkan-22/ref=nosim

言わずと知れた amazon.com は、インターネット通販サイトの大手です。
日本では、amazon.co.jp で登録されています。

この会社、何がすごいのかと言えば、単に実店舗で行っているビジネスをイ
ンターネットに置き換えたというだけのものではなく、インターネットでし
か成立しないビジネスモデルを展開していることです。

だから、web2.0企業の代表格ともみられています。

アマゾンについては、以前、メルマガで書いたことがありましたね。
参考:「とるに足りない80%」
http://www.createvalue.biz/column2/post-115.html

■アマゾンは、コンピュータのエンジニアだったジェフ・ベゾスが、1994年
に創業した会社です。

彼はインターネットの黎明期に、電子商取引の将来性を見込んで、書籍のオ
ンライン販売に参入します。

彼はこう考えました。

「世の中では膨大な書籍が出版されているが、実際の書店で扱うことができ
るのは、その一部にしか過ぎない。そこから漏れ出た多くの書籍を、インタ
ーネット販売なら取り扱うことができるのではないか...」

■実際の店舗は、陳列場所や在庫という制限があるため扱うことができるの
はほんの一部です。

だからどの本を扱うかが商売の肝となります。

その際に拠り所となるのが、いわゆる8-2の法則というもの。簡単にいえ
ば、売れ筋の2割が、全体の8割の売上を占めているというシンプルだが強
固な法則です。

この法則に従うと、実際の店舗では、売れない8割の書籍など気にしなくて
もよい。2割の売れ筋だけ集めればよい。ということです。

コンビニエンスストアは、この考え方を最大限突き詰めたものです。

そこでは、雑誌や一部の本、CDなど、極端な売れ筋だけに絞って、店頭に
置いています。

■だからチャンスがある。とベゾスは考えました。

陳列場所や在庫という制限のないインターネット販売なら売れ筋の2割に特
化する必要がない。

売れるか売れないか分らない残り8割の書籍を置いておけば、そのうち注文
が入るだろう。なにしろ、インターネットは全国いや世界を対象にしている
わけですから。

■この考え方は「ロングテール」という言葉とともに一世を風靡しました。

ロングテールとは、すべての書籍を売れる順番に並べて棒グラフにした時、
まるで草食恐竜の長い尻尾のように見えるたまにしか売れない書籍の集合を
現した言葉です。

実際には恐竜の尻尾どころではない。1冊、2冊しか売れない本の羅列が延
々と続くわけです。

確かに、あまり売れないといっても、残り8割の書籍に需要がないわけでは
ない。全国、全世界には、それを欲しいと思う人がいるわけです。

実際の店舗ではその需要に応えることは不可能ですが、インターネット販売
ならばそれが可能となります。

それは、インターネット販売の1個当たりの販売コストが非常に小さいこと
を根拠にしています。

■ジェフ・ベゾスは「消費者の購買代行」を志向し、様々な工夫を凝らしま
した。

中でも顕著なのは、売れないロングテールの需要を喚起しようという仕掛け
です。

インターネット販売の武器は、消費者の個別データが蓄積されることですか
ら、購入履歴データから、好みの書籍の傾向が分ります。

だからお勧めの書籍を提案すれば、購入する可能性が高まります。

アマゾンで購入した経験のある方なら、そこからお勧め書籍のメールが届く
ことをご存知でしょう。

あるいは、購入した直後に「この本を購入した方の70%が、こちらの本も
購入しています」といった案内が入ります。

つい心惹かれて購入してしまった経験のある人は多いのではないですか?

巧妙な手口です^^が、これらは、何らかのアルゴリズムで解析し、自動で
挿入される案内ですから、やはり手間がかかるわけではありません。

■ただし、アマゾンのキラーパス(ビジネスのポイント)は、それ以外のと
ころにある。というのが「ストーリーとしての競争戦略」に書かれているこ
とです。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4492532706/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本によると、ジェフ・ベゾスは、当初、購買代行業に特化して、その他
のリアルな物流は、既存の書籍物流業者に任せようと考えていたふしがあり
ます。

ところが彼は、すぐにその考えを撤回し、巨大な物流センターを自前で所有
することにこだわり始めます。

思い起こせば、私が中小企業診断士の勉強をしていた2000年頃、アマゾンは
既に革新的なビジネスモデルとして事例に挙げられていました。

ただしその時点ではまだ赤字企業だったので、評価は未知数である、ともい
われていました。

ベゾスが、インターネット上での購買代行業に特化していると、コストもそ
れほどかからず、すぐに黒字化していたのかも知れませんが、彼はどういう
わけか物流センターへの巨額投資を続けました。

投資家は、IT企業の特徴である固定費の小ささがアマゾンにはないと嫌気
される場面もありましたが、ベゾスは意に介しませんでした。

そして2003年ついに黒字化。その後は、増収への道を突き進んでいます。

■彼がなぜ自前の物流センターにこだわったかというと、既存の物流センタ
ーはあくまで既存の店舗のためのもので、アマゾンの志向するロングテール
の販売を必ずしもカバーしていなかったということでしょう。

売れない書籍は、物流センターの倉庫に眠っていたり、出版社の死蔵在庫に
なっていたり、日の目を見ないわけです。だから、突然注文が入っても、ど
こにあるのかを探すだけでも大変です。

消費者とすれば、お勧めされたから買ったというのに、注文から1週間も待
たされたのでは、興ざめです。

これではアマゾンに対する好感度も下がってしまいます。

ベゾスが回りを見渡せば、多くのインターネット通販は物流の問題で苦労し
ていました。

インターネット通販の理想と現実にはギャップがあったわけです。

そこで、彼は、自前で物流センターを作ることが、数多のインターネット通
販の中から抜け出すための競争力になると考えたのです。

だからアマゾンの自前の物流センターは、完全にコンピュータ化されたオペ
レーションと作業者の効率化を実現する技術で武装されています。

さながらデジタルとアナログを融合した泥臭い技術の集合体のようですね。

この狙いは当たり、今では、アマゾンの物流体制に対抗できるオンライン書
店を探すことは困難です。

だから、アマゾンで購入した本が届かないとイライラすることはあまりあり
ません。

■それにしても、インターネット通販といえども、配送という制約から逃れ
ることはできないのでしょうか。

電子書籍なら、配送が制約になることはありません。もし、電子書籍が一般
的になるとアマゾンはどのように競争力を発揮するのでしょうか。

あるいは注文を受けてからすぐに印刷するオンデマンド製本ならば、巨大な
物流センターは不要です。こちらも印刷技術が進んでコスト削減が為せれば、
実現するかも知れません。

そうなるとアマゾンの武器は、オンライン書店トップという現在のブランド
力が頼りになります。

ブランド力も強い競争力の源泉なのですが、その時には、新たな競争相手が
現れるかも知れませんね。

■さて、こうした事例を見て、我々は何を学ぶべきでしょうか。

例えば、アマゾンのビジネスを横展開できないか。

要するに、本以外で、アマゾンのようなビジネスを展開できないか。

もっとも、アマゾン自身が、本だけに止まらず、家電製品や食品までも扱う
ようになっていますから、それを見つけるのは容易ではありません。

健康食品のケンコーコムなどは、アマゾンのビジネスのバリエーションとい
えるかも知れませんね。

ただ、探せば隙間はいろいろあるはずですから、興味のある方は、探してみ
てください。

■縦展開はできないか。

これは、アマゾンの上流や下流でビジネスを展開するというものです。

実は、こちらはアマゾン自身が、周辺ビジネスの展開を奨励しています。

例えば、アマゾンの物流センターでもカバーできない絶版書籍などは、個人
がアマゾンのホームページ内のフリーマーケットのようなところで販売でき
るような仕組みを提供しています。

本は大した売上にはならないでしょうけど、家電製品などになると、問屋さ
んなどが自社の物流在庫を処分する時などにこの仕組みを活用することがで
きるでしょう。

あるいは、独自にセレクトした書籍を紹介して購入されると、その手数料が
入るという仕掛けもあります。(このメルマガで紹介した書籍も皆さんが購
入した場合、アマゾンから手数料が入ります)

手数料そのものは小さいので、本を紹介しても大した売上にはなりませんが、
家電製品などを紹介すると、個人レベルでは、そこそこの収益が見込めるの
かも知れません。

それを見込んで、小遣い稼ぎをしたい個人にノウハウやツールを提供してい
る業者もいますね。。。いろいろありますよ。

もっと大掛かりなものだと、物流センターを丸々代行するというところもあ
るようです。

アマゾンといえども世界中に物流センターを自前で建設するわけにはいきま
せんから、地元のしっかりした業者にノウハウを提供して、共同運営という
形をとるビジネスもあり得ます。

その他、思いつくことがありましたら、教えてください^^

■では、あえて、書籍のインターネット販売というジャンルで真っ向勝負す
るためには、どうすればいいのか。

そんな無謀なこと考える人はいませんかね^^;

でも、もともと書籍の販売を生業にしている人にとっては死活問題ですから、
考える意味はあるはずです。

ランチェスター戦略は競争戦略ですから、同じ市場の中で、顧客を奪い合う
場面を想定しています。

例えば、アマゾンに対抗して新しいインターネット書籍販売をしようとする
場合。

アマゾンは圧倒的な強者ですから、それとの差別化を行う必要があります。

なぜなら、弱者の基本戦略は差別化だからです。

■こういう場合、まずはアマゾンの強みを把握します。

まず商品。

アマゾンの象徴であるロングテール販売を実現すべくものすごい量の品揃え
を実現しています。この品数の多さが強みです。

つぎに価格。

こちらは日本では再販価格制度が強固なので差別化できません。アマゾンは
値引き販売したいようですが...

チャネル。

自社ホームページでの販売です。ただし、ナンバーワンとして圧倒的なブラ
ンド力があります。ネットで本を検索すると必ずアマゾンのサイトが上位に
出てきますので、アクセス数が非常に多い。

プロモーション。

消費者の購買データの蓄積があり、お勧め商品選定のアルゴリズムが他社よ
りも精緻であると思われます。また検索エンジン対策は徹底しています。

デリバリー。

注文してから基本的に3日以内に届きます。早便で注文すれば翌日届きます。

■例えば商品に着目します。

アマゾンよりも多くの品揃えを持つことは可能でしょうか?

こちらは、多くの書店や古書店が集まってネットワークを作れば可能かも知
れません。

古書店を入れないと品揃えで勝つことはできませんよ。

しかし、アマゾンの提供するフリーマーケットで、多くの古書店がビジネス
展開をしている現状があるので、それは難しいかもしれません。

■では、アマゾンがまだ手を出していない同人誌(マンガ)の類はどうでし
ょうか。

こちらは著作権の問題があるので難しいのですが、試してみる価値はあるか
も知れません。

同人誌のフリーマーケットは普通にあるので、やる意味は薄いですが、電子
書籍やオンデマンド出版に挑戦してみるのも面白いでしょう。

これがうまく回れば、出版社が協同で、商業出版の電子書籍やオンデマンド
出版に乗り出せばいい。そのモデルケースになるのではないでしょうか。

■チャネルについて。

圧倒的なブランド力があり、アクセス数(人通り)が多いというのは、もの
すごい強みです。

とすれば、弱者としては、裏通りでエッジの効いた品揃えにしなければなり
ません。

いわゆるセレクトショップですね。

例えば、重病を患った方の体験記ばかりを集めた本屋があるそうですが、こ
れなどインターネット販売に適しているはずです。

(重病を患った方は、孤独感から、同じ体験をした人の気持ちや行動を知り
たいと思うものです。非常に強い需要があります)

単に、本を集めるだけではなく、出版社を巻き込んで、商品製作から一貫し
て取り組めば、より強みが先鋭化します。

やはり、電子書籍やオンデマンド出版の仕組みを使えば、固定費が削減され
ると思うのですがいかがでしょう。

■まあ、このように差別化戦略は、強者の強みの逆や斜めを考えることから
始まります。

どんなに強いナンバーワンだと思っていても、どこかに手がかりはあるもの
です。

小さな手がかりを見つけて戦略を組み立てることが、弱者の戦略の醍醐味だ
と思ってください。

■などと思っていたら、中国でアマゾンに真っ向勝負しているインターネッ
ト販売企業があるそうなので紹介しておきます。

参考→http://diamond.jp/articles/-/13882

記事によると中国では「亜馬遜」(Amazon)と、中国ローカルである「当当
網」がしのぎを削る状況です。

この当当網というのは、どうやらアマゾンのフォロワーらしい。多分、同じ
コンセプトで、同じビジネスを展開し、地の利の優位さで闘っているのでし
ょう。グーグルに対抗する「百度」のようなものですかね。

ところがこの2社に対抗するには、フォロワーなどと悠長なことは言ってら
れません。

そこで登場した「快書包」は、上位2社と差別化することにしたようです。

それはなんと、注文から1時間で配達をするというピザ屋のようなサービス
です。

えらいことを考えましたね。

■これまで説明してきたように、アマゾンは物流センターの充実を強みとし
てきました。

そして大量の品揃えにも関わらず、注文後、2,3日で配達する体制を整え
ています。

ところが、この快書包は、デリバリーのスピードをさらに推し進めようとい
うのです。

■快書包の戦略を見てみます。

まず市場を1時間で配達できる地域に絞っています。これは、デリバリーを
武器にする以上必要なことです。

市場は昼間人口が集中するオフィス街や商業施設が集まる地域にして効率性
を高めようとしています。

そして品揃えは、500種類程度の売れ筋に絞っています。

ということは、ロングテールなど狙わないというアマゾンの全く逆をいくコ
ンセプトです。

同じオンライン書店だといっても似て非なるものを志向していることが分り
ます。

チャネルは自社サイト。これは同じですね。

プロモーションについては、購買データからの自動抽出という手法ではなく、
快書包側からのお勧めの理由をtwitterでつぶやくという極めてアナログな
方法をとっています。

要するに、これは、売れ筋に特化したセレクトショップです。コンビニのよ
うに、自動的に売れ筋を扱うのではなく、書籍のセレクトに恣意的な要素を
入れていることが、快書包のもうひとつの特徴となっています。

■でもやはり最大の特徴は、注文から1時間で届けるという強烈なインパク
トですね。

消費者とすれば、twitterでお勧めしていた書籍に興味を持って注文したら
1時間で届くというのは便利この上ない。

ベストセラー小説やビジネスのノウハウ本など、短時間で読めてしまう書籍
なら、そんな読み方が理想です。(読み終われば、アマゾンで売ればいいわ
けですし^^)

快書包の経営者は、もともとリアル店舗の経営をしており、しかも本オタク
だったということですから、アマゾンに対抗してセレクトショップを志向す
るというのは自然な流れとして理解できます。

ところが、どういうところからか、極端なデリバリーのスピードを武器にす
ることを思いつき、それに沿ってビジネスを組み立てていったわけです。

ピザ屋とか宅配便とか、あるいはセメックスのビジネスを参考にしたのかも
知れませんね。

でも、それを実現してしまう力は起業家ならではです。

■久々に見事な差別化の事例を見たような気がします。

こんな強烈な差別化ではなくても、小さな差別化でも積み上げれば、戦う時
の手がかりになるものです。

安易に儲かっている会社の真似をせずに、その逆を行く。ということが、弱
者の生き残る道です。

探せばまだまだありそうですよね。

お互い頑張っていきましょう^^

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