日本製航空機は羽ばたくか

2007.08.30


(2007年8月30日メルマガより)

■世界を席巻する韓国製の携帯電話。しかし、その中身の半分以上は日本製
の部品が使用されていると言われています。

韓国製だけではありません。中国製、アメリカ製。日本の部品に頼らない電
子機器はありません。

それらの製品が売れれば売れるほど日本の部品メーカーが潤うという状況が
できています。

モトローラなど、社長が毎年日本の仕入先を訪ねてくるそうです。ものづく
り大国ニッポンの面目躍如といったところでしょうか。

■航空機にも同じような現象が見られます。

週刊ダイヤモンド2007/08/25号によると、ボーイング787機では、全体の
35%を日本企業の部品が占めているそうです。

ボーイング社も「787には日本企業ならではの技術とノウハウが詰め込ま
れている」と称えています。

ボーイング社製以外でも、もちろん、日本製部品は多く使われています。東
大阪でも航空機会社にニッチな部品を納入している「小さなトップ企業」は
数多いそうですね。

■特に注目されるのが、炭素製繊維複合材の開発です。これは、鉄の5倍強
く、アルミより軽いという夢の素材で、東レが20年かけて開発したもので
す。

これがボーイング787には使われて、なんと20%の燃費削減に貢献して
いるということです。

■こうなれば、いよいよ日本製航空機の開発機運が盛り上がるのも無理はあ
りません。

もともと日本は航空機の高い技術を持っていました。戦争で活躍した名機の
存在は周知の通りです。

国産航空機の成功は、いわば、日本航空機業界の悲願なのです。

■高知空港でボンバルディア機が事故を起こした際に言われたことですが、
小型飛行機は品揃えが少なく、選択肢がないので、安定性が低くてもボンバ
ルディア機を使わざるを得ないのだとか。

つまりこの分野には大いにチャンスがあるというわけです。

折りしも、三菱重工、川崎重工が相次いで小型国産民間航空機の開発計画を
発表しています。

■しかし、実際にはそう簡単な話でもないらしい。

第一に、日本企業が得意としているのはあくまで翼や機体の素材など。エン
ジンや電子機器系統など主要部分は欧米勢が押さえています。

また、いくら部品で競争力があるといっても、高度な安全性を求められる航
空機には、完成品メーカーの技術やノウハウがなければ成り立ちません。

日本企業には、完成品の組み立てに関して、ボーイングやエアバスほどの信
頼性があるわけではありません。

いや、国際的には、ボンバルディア機の方が遥かに信頼性が高いのです。

さらに言うと、飛行機は売って終わりというビジネスではない。アフターフ
ォローがものすごく重要です。メンテナンスを含めたアフターサービス体制
を整えるには、多大なコストが必要になります。

こうした周辺技術やネットワークの構築は今のところゼロなのです。

■第二に、日本国内の航空機需要はあまりにも小さい。

鳴り物入りで作ったとしても、採算に乗らなければ盛り上がりません。

ということは、ビジネスとして成立させるためには、需要拡大が見込まれる
ロシアや中国市場を狙わなければいけないわけです。

しかし、日本企業に、魑魅魍魎の蠢く世界の航空機業界の競争を勝ち抜く営
業力があるのかどうか...
(なにしろ欧米は、国家元首までがしばしば営業マンになるのですから)

今のところ、強力な海外の販売会社と提携して営業体制を作るしかないとい
うことですが、そういう"他人任せ"の営業で、ビジネス展開ができるとは
私には思えません。

■私は、いろんな創業者を見てきましたが、はなから営業を他人に任せる企
業が成功した事例を知りません。

「私は作るのは得意なんですが、売るのはどうも苦手で...」などと言う経営
者のなんと多いことか。

そういう経営者が内心では「決め手は商品力だ」「営業は商品を紹介するだ
けだから楽な仕事だ」と思っているのを知っています。

実際にはいい商品が売れる保証などどこにもありません。「モノがいい」と
「売れる」こととは因果関係はないと言ってもいいぐらいです。

「モノがよければ必ず売れる」という思想。これは、ものづくり大国ニッポ
ンの"風土病"かも知れませんね。。。

■成功した創業者は、営業に責任を持っています。

ハッキリ言って、自分で売れないものを他人に売らせるのはムリです。

自社の営業マンでさえ、開発者ほどの愛着を自社商品に抱くことはなかなか
できないものです。

商社、問屋、販売代理店、セールスレップ。こうした人たちが、売るのに面
倒な商品をわざわざ頑張って売る理由がどこにあるというのでしょうか。

自分で販路を開拓し、需要を喚起し、売り方を確立し、それを実践してみせ
て、教育し...さらに充分なマージンを渡すことを約束して初めて他人が売る
ことに興味を持ってくれるのです。

「100回説明しないと営業は動いてくれない」と嘆く人がいましたが、他社
の営業なら1000回説明しないとダメですね。

完成品メーカーでも部品メーカーでも事情は変わりません。

■航空機ほどの完成度を誇る商品でも、決め手はモノそのものではありませ
ん。

だから日本の商社でさえ「セールスといういちばんキツイ部分を自社でやる
覚悟がないと結果は厳しい」と日本の航空機業界の姿勢を冷めた目で見てい
ます。

むしろホンダのように、業界の流れとは全く別のところで航空機開発を宣言
している企業の方が有望かも知れません。

彼らは小さなビジネスでも、自分で製造から販売、保守までやってしまうク
レージーなメーカーです。今回も、参入すると決めたからには、とことんや
り抜くことでしょうから。

■もちろん幾多の困難を乗り越えて今日の繁栄を築き上げた日本の製造業の
ことですから、今回も奇跡を起こしてくれると信じています。

日本の航空機ビジネスの興隆を願ってやみません。


(2007年8月30日メルマガより)

■世界を席巻する韓国製の携帯電話。しかし、その中身の半分以上は日本製
の部品が使用されていると言われています。

韓国製だけではありません。中国製、アメリカ製。日本の部品に頼らない電
子機器はありません。

それらの製品が売れれば売れるほど日本の部品メーカーが潤うという状況が
できています。

モトローラなど、社長が毎年日本の仕入先を訪ねてくるそうです。ものづく
り大国ニッポンの面目躍如といったところでしょうか。

■航空機にも同じような現象が見られます。

週刊ダイヤモンド2007/08/25号によると、ボーイング787機では、全体の
35%を日本企業の部品が占めているそうです。

ボーイング社も「787には日本企業ならではの技術とノウハウが詰め込ま
れている」と称えています。

ボーイング社製以外でも、もちろん、日本製部品は多く使われています。東
大阪でも航空機会社にニッチな部品を納入している「小さなトップ企業」は
数多いそうですね。

■特に注目されるのが、炭素製繊維複合材の開発です。これは、鉄の5倍強
く、アルミより軽いという夢の素材で、東レが20年かけて開発したもので
す。

これがボーイング787には使われて、なんと20%の燃費削減に貢献して
いるということです。

■こうなれば、いよいよ日本製航空機の開発機運が盛り上がるのも無理はあ
りません。

もともと日本は航空機の高い技術を持っていました。戦争で活躍した名機の
存在は周知の通りです。

国産航空機の成功は、いわば、日本航空機業界の悲願なのです。

■高知空港でボンバルディア機が事故を起こした際に言われたことですが、
小型飛行機は品揃えが少なく、選択肢がないので、安定性が低くてもボンバ
ルディア機を使わざるを得ないのだとか。

つまりこの分野には大いにチャンスがあるというわけです。

折りしも、三菱重工、川崎重工が相次いで小型国産民間航空機の開発計画を
発表しています。

■しかし、実際にはそう簡単な話でもないらしい。

第一に、日本企業が得意としているのはあくまで翼や機体の素材など。エン
ジンや電子機器系統など主要部分は欧米勢が押さえています。

また、いくら部品で競争力があるといっても、高度な安全性を求められる航
空機には、完成品メーカーの技術やノウハウがなければ成り立ちません。

日本企業には、完成品の組み立てに関して、ボーイングやエアバスほどの信
頼性があるわけではありません。

いや、国際的には、ボンバルディア機の方が遥かに信頼性が高いのです。

さらに言うと、飛行機は売って終わりというビジネスではない。アフターフ
ォローがものすごく重要です。メンテナンスを含めたアフターサービス体制
を整えるには、多大なコストが必要になります。

こうした周辺技術やネットワークの構築は今のところゼロなのです。

■第二に、日本国内の航空機需要はあまりにも小さい。

鳴り物入りで作ったとしても、採算に乗らなければ盛り上がりません。

ということは、ビジネスとして成立させるためには、需要拡大が見込まれる
ロシアや中国市場を狙わなければいけないわけです。

しかし、日本企業に、魑魅魍魎の蠢く世界の航空機業界の競争を勝ち抜く営
業力があるのかどうか...
(なにしろ欧米は、国家元首までがしばしば営業マンになるのですから)

今のところ、強力な海外の販売会社と提携して営業体制を作るしかないとい
うことですが、そういう"他人任せ"の営業で、ビジネス展開ができるとは
私には思えません。

■私は、いろんな創業者を見てきましたが、はなから営業を他人に任せる企
業が成功した事例を知りません。

「私は作るのは得意なんですが、売るのはどうも苦手で...」などと言う経営
者のなんと多いことか。

そういう経営者が内心では「決め手は商品力だ」「営業は商品を紹介するだ
けだから楽な仕事だ」と思っているのを知っています。

実際にはいい商品が売れる保証などどこにもありません。「モノがいい」と
「売れる」こととは因果関係はないと言ってもいいぐらいです。

「モノがよければ必ず売れる」という思想。これは、ものづくり大国ニッポ
ンの"風土病"かも知れませんね。。。

■成功した創業者は、営業に責任を持っています。

ハッキリ言って、自分で売れないものを他人に売らせるのはムリです。

自社の営業マンでさえ、開発者ほどの愛着を自社商品に抱くことはなかなか
できないものです。

商社、問屋、販売代理店、セールスレップ。こうした人たちが、売るのに面
倒な商品をわざわざ頑張って売る理由がどこにあるというのでしょうか。

自分で販路を開拓し、需要を喚起し、売り方を確立し、それを実践してみせ
て、教育し...さらに充分なマージンを渡すことを約束して初めて他人が売る
ことに興味を持ってくれるのです。

「100回説明しないと営業は動いてくれない」と嘆く人がいましたが、他社
の営業なら1000回説明しないとダメですね。

完成品メーカーでも部品メーカーでも事情は変わりません。

■航空機ほどの完成度を誇る商品でも、決め手はモノそのものではありませ
ん。

だから日本の商社でさえ「セールスといういちばんキツイ部分を自社でやる
覚悟がないと結果は厳しい」と日本の航空機業界の姿勢を冷めた目で見てい
ます。

むしろホンダのように、業界の流れとは全く別のところで航空機開発を宣言
している企業の方が有望かも知れません。

彼らは小さなビジネスでも、自分で製造から販売、保守までやってしまうク
レージーなメーカーです。今回も、参入すると決めたからには、とことんや
り抜くことでしょうから。

■もちろん幾多の困難を乗り越えて今日の繁栄を築き上げた日本の製造業の
ことですから、今回も奇跡を起こしてくれると信じています。

日本の航空機ビジネスの興隆を願ってやみません。

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