「けっこういい」よりも「並外れてダメ」がいい

2015.06.11

(2015年6月11日メルマガより)


■この記事、面白いですね。

参考:「けっこういい」が一番ダメ 拡散する商品をつくるための重要なルールをマーケティングのプロが解説
http://logmi.jp/63237

作者(というか話者)は、セス・ゴーディン。アメリカの著作家です。

マーケティング関連をテーマに書いている方で、パーミッション・マーケティングの提唱者だといわれています。

参考:パーミッション・マーケティング
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4903212297/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに、パーミッションとは「許容」の意味。パーミッション・マーケティングとは、ユーザーの許可を得た上で行うマーケティング活動のことです。

例えば、あらかじめ「飲食店の情報がほしい」と登録した人たちに向けて、飲食店の新規開店情報やクーポンを提供するような活動です。

これだと、欲しくもない商品の広告宣伝にうんざりするようなことはありませんね。

■マーケティングの基本的な考え方は、需要(買いたいというニーズ)に応じて、供給をする(売る)というものです。

既にある在庫をうまいこと言って売るのは、セリングといって、売り手側のわがままです。

それに対するアンチテーゼとして、マーケティングがあります。

かといって言うは易し。実際には、買い手一人一人のニーズを掴むのは至難の業です。売り手側としては、たぶん、これがニーズだろうと推し量るしかありませんでした。

ただ最近は、技術の進歩により、確実に買い手のニーズを掴み、すぐに商品やサービスを作る。ということも可能になりつつあります。

私の知っているネットビジネスをしている方は、予約注文がある程度溜まってから商品を作る(仕入れる)と言っていました。彼は、それを「後だしジャンケン」と称していましたっけ。

後だしジャンケンなどというといかにもずるい仕業のようですが、そちらの方がマーケティングの考え方に則しています。

■セス・ゴーディンも、ビジネスの主役が、売り手側から買い手側に移っていると考えています。

売り手側にとって、大量に作って大量に売ることが一番儲かります。大量に作ると、コストは下がります。ただ大量に売りさばく必要があります。かくて売り手側は、マス広告の大量投下みたいな強引なマーケティング手法で迫ります。

買い手側、要するに我々とすれば、大して欲しくないものも、欲しいような気にさせられて、買ってしまうということになるかも知れません。

ところが、現在は、消費者も情報を収集する手段が多岐にわたります。商品を使用した人の意見も知ることができます。

つまりユーザーは賢くなったわけですね。

欲しいもの、必要なものしか買わない。というユーザーが増えており、過去の単純かつ強引なマーケティング手法は通用しなくなりつつあります。

これが、ビジネスの主役が買い手側に移ったということです。

■買い手側が主役になると、わがままを言い出します。既製品ではいや。細かい仕様を変えてほしい。デザインも変えてほしい。

個人によって好みが違うわけですから大変です。が、実際には、好みはいくつかの塊に分かれていくでしょう。

その塊のことを、ゴーディンは「部族」と呼びます。(この記事ではなく、別のところで言っています)

近代に生まれた「大衆」から中世以前の「部族」に戻るというのです。

マス・マーケティングではなく、部族マーケティング。そういうイメージですね。

■ただし、全ての買い手が、そんなにわがままな自己主張をするわけではありません。

自動車が好きでこだわる人は、それはうるさいでしょう。細かな仕様をあれこれ言うはずです。

しかし、自動車なんて乗れればいいや。と思っている人にとっては、選択肢そのものが面倒です。一番売れてるやつでいいよ。と言いたくなります。

つまり、われわれ買い手は、一部のこだわりが強い「部族」と、こだわりのない「その他」に分かれてしまうのです。

「その他」の人たちは、既に売れているものでいいや。と思っているので、ここに必死で売り込んでも意味はありません。

狙うべきは、こだわりの強い「部族」の人たちです。彼らがこだわりを認めて買うものが、全体に影響を与えていくのです。

■この記事の中で、ゴーディンは「部族」のことを「オタク」と呼んでいます。

日本語そのままのオタクです。世界的な用語になったものです。

まずはオタクに認められよ。ということです。

■そこで、「けっこういい」が一番ダメ。という言葉に戻ります。

オタクが認めるものは並外れたものです。

ラーメン屋でも、考えられないほど美味しいラーメン屋か、あるいは考えられないほど不味いラーメン屋です。

けっこう美味しいというレベルでは、オタクの心は動きません。

それぐらいなら、むちゃくちゃマズい。という方がいいでしょう。

■なぜなら、極端なマイナスは、どこかにプラスを含んでいます。

ムチャクチャ不味い。が、身体にはすごくいい。

ムチャクチャ使いにくい。が、特殊な機能がある。

ムチャクチャ価格が高い。が、性能がいい。

ムチャクチャ品質が悪い。が、ものすごく希少だ。

そういう幻想も含めて、ムチャクチャなものには、何かある。と思われるわけです。

■これは重要な指摘です。

未だにメーカーや売り手側には、いいものは売れる。そこそこいいもので安ければ売れる。と考えている方が多いはずです。

しかし、ゴーディンは、どんな素晴らしい商品も、その存在を知られなければ意味がない。と言います。

かといって、テレビCMなどマス広告を出していたら、経費倒れになります。

経費をかけずに、買い手に、特にオタクに目をとめてもらうためには、並外れたものでなければならないということになります。

■これは営業の立場でも同じです。

営業は、その現場活動において、差別化を武器に戦っています。

差別化とは、納期や希少性、アフターサービスを含めた商品の他との違いです。

差別化がなければ、営業の武器は、価格を下げるタイミングと、人間的魅力だけになってしまいます。

手の内に交渉材料を持たない営業交渉ほどつらいものはありませんよ。

特徴のないものを売るぐらいなら、並外れてダメで、わけのわからないものを売る方が、ずっと営業のやりようがあるというものです。

■差別化は、ランチェスター戦略でいう「弱者の基本戦略」です。

逆にそこそこよくて安いというのは、ミート戦略といって「強者の基本戦略」に近いものです。

マス・マーケティングが崩壊して、小さな需要層をターゲットにビジネスしなければならないというのは、これからはすべてのビジネスが「弱者の戦略」をとらなければならないという指摘に思えます。

しかし、強者の戦略が通用しなくなったわけではありません。

たとえ小さな需要層であろうと、塊ごとに弱者と強者が存在します。ということは、弱者の戦略と強者の戦略は存在するのです。

ゴーディンの指摘は、むしろ、並外れた差別化によって、それにひきつけられるオタクの小集団を探せ。ということです。

ランチェスター戦略の勝ち方は

(1)自分でも勝てる場所(市場)を見つける。

(2)その場所で、勝てる戦略を作る。

(3)あとは諦めずに営業展開する。

ということです。

つまり、オタクに売れ。というゴーディンの提言は、(1)の勝てる場所を見つけろ。ということと同じです。

ランチェスター戦略を学ぶとわかると思いますが、戦略は、強者のポジションをとる方が圧倒的に有利です。

安易に、弱者でも勝てるのがランチェスター戦略だ。と思ってはいけません。

ランチェスター戦略についてはこちらを→http://goo.gl/ka0BBL

■さて、私は、昨年来、取り組んでいる「孫子の兵法」が教えることとして、企業が生き残るためには、独自の「城」を持たなければならない。と言いました。

参考:「孫子」を活用するための最大のキーワード
http://www.createvalue.biz/column2/post-302.html

この城という概念と、セス・ゴーディン氏のいう部族へのパーミッション・マーケティングという概念は、つながっていると考えます。

すなわち、買い手側のニーズが多様化していること。買い手ごとにこだわりの強い部族のような塊が形成されること。並外れた特質を気に入れば、それ以外のマイナスは許容できること。

これらを勘案すると、ファン、あるいは信者に近いような強いロイヤリティを持つリピーターに特化して、彼らのニーズに応えたビジネス展開をすることが、現状に最もマッチしたビジネスモデルではないかと考えるわけです

秘訣は、自分だけの城で強者の戦略を展開することです。

今回は、抽象的で小難しい書き方をしましたが、自分としては重要なことを書いていると考えておりますので(^^

(2015年6月11日メルマガより)


■この記事、面白いですね。

参考:「けっこういい」が一番ダメ 拡散する商品をつくるための重要なルールをマーケティングのプロが解説
http://logmi.jp/63237

作者(というか話者)は、セス・ゴーディン。アメリカの著作家です。

マーケティング関連をテーマに書いている方で、パーミッション・マーケティングの提唱者だといわれています。

参考:パーミッション・マーケティング
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4903212297/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに、パーミッションとは「許容」の意味。パーミッション・マーケティングとは、ユーザーの許可を得た上で行うマーケティング活動のことです。

例えば、あらかじめ「飲食店の情報がほしい」と登録した人たちに向けて、飲食店の新規開店情報やクーポンを提供するような活動です。

これだと、欲しくもない商品の広告宣伝にうんざりするようなことはありませんね。

■マーケティングの基本的な考え方は、需要(買いたいというニーズ)に応じて、供給をする(売る)というものです。

既にある在庫をうまいこと言って売るのは、セリングといって、売り手側のわがままです。

それに対するアンチテーゼとして、マーケティングがあります。

かといって言うは易し。実際には、買い手一人一人のニーズを掴むのは至難の業です。売り手側としては、たぶん、これがニーズだろうと推し量るしかありませんでした。

ただ最近は、技術の進歩により、確実に買い手のニーズを掴み、すぐに商品やサービスを作る。ということも可能になりつつあります。

私の知っているネットビジネスをしている方は、予約注文がある程度溜まってから商品を作る(仕入れる)と言っていました。彼は、それを「後だしジャンケン」と称していましたっけ。

後だしジャンケンなどというといかにもずるい仕業のようですが、そちらの方がマーケティングの考え方に則しています。

■セス・ゴーディンも、ビジネスの主役が、売り手側から買い手側に移っていると考えています。

売り手側にとって、大量に作って大量に売ることが一番儲かります。大量に作ると、コストは下がります。ただ大量に売りさばく必要があります。かくて売り手側は、マス広告の大量投下みたいな強引なマーケティング手法で迫ります。

買い手側、要するに我々とすれば、大して欲しくないものも、欲しいような気にさせられて、買ってしまうということになるかも知れません。

ところが、現在は、消費者も情報を収集する手段が多岐にわたります。商品を使用した人の意見も知ることができます。

つまりユーザーは賢くなったわけですね。

欲しいもの、必要なものしか買わない。というユーザーが増えており、過去の単純かつ強引なマーケティング手法は通用しなくなりつつあります。

これが、ビジネスの主役が買い手側に移ったということです。

■買い手側が主役になると、わがままを言い出します。既製品ではいや。細かい仕様を変えてほしい。デザインも変えてほしい。

個人によって好みが違うわけですから大変です。が、実際には、好みはいくつかの塊に分かれていくでしょう。

その塊のことを、ゴーディンは「部族」と呼びます。(この記事ではなく、別のところで言っています)

近代に生まれた「大衆」から中世以前の「部族」に戻るというのです。

マス・マーケティングではなく、部族マーケティング。そういうイメージですね。

■ただし、全ての買い手が、そんなにわがままな自己主張をするわけではありません。

自動車が好きでこだわる人は、それはうるさいでしょう。細かな仕様をあれこれ言うはずです。

しかし、自動車なんて乗れればいいや。と思っている人にとっては、選択肢そのものが面倒です。一番売れてるやつでいいよ。と言いたくなります。

つまり、われわれ買い手は、一部のこだわりが強い「部族」と、こだわりのない「その他」に分かれてしまうのです。

「その他」の人たちは、既に売れているものでいいや。と思っているので、ここに必死で売り込んでも意味はありません。

狙うべきは、こだわりの強い「部族」の人たちです。彼らがこだわりを認めて買うものが、全体に影響を与えていくのです。

■この記事の中で、ゴーディンは「部族」のことを「オタク」と呼んでいます。

日本語そのままのオタクです。世界的な用語になったものです。

まずはオタクに認められよ。ということです。

■そこで、「けっこういい」が一番ダメ。という言葉に戻ります。

オタクが認めるものは並外れたものです。

ラーメン屋でも、考えられないほど美味しいラーメン屋か、あるいは考えられないほど不味いラーメン屋です。

けっこう美味しいというレベルでは、オタクの心は動きません。

それぐらいなら、むちゃくちゃマズい。という方がいいでしょう。

■なぜなら、極端なマイナスは、どこかにプラスを含んでいます。

ムチャクチャ不味い。が、身体にはすごくいい。

ムチャクチャ使いにくい。が、特殊な機能がある。

ムチャクチャ価格が高い。が、性能がいい。

ムチャクチャ品質が悪い。が、ものすごく希少だ。

そういう幻想も含めて、ムチャクチャなものには、何かある。と思われるわけです。

■これは重要な指摘です。

未だにメーカーや売り手側には、いいものは売れる。そこそこいいもので安ければ売れる。と考えている方が多いはずです。

しかし、ゴーディンは、どんな素晴らしい商品も、その存在を知られなければ意味がない。と言います。

かといって、テレビCMなどマス広告を出していたら、経費倒れになります。

経費をかけずに、買い手に、特にオタクに目をとめてもらうためには、並外れたものでなければならないということになります。

■これは営業の立場でも同じです。

営業は、その現場活動において、差別化を武器に戦っています。

差別化とは、納期や希少性、アフターサービスを含めた商品の他との違いです。

差別化がなければ、営業の武器は、価格を下げるタイミングと、人間的魅力だけになってしまいます。

手の内に交渉材料を持たない営業交渉ほどつらいものはありませんよ。

特徴のないものを売るぐらいなら、並外れてダメで、わけのわからないものを売る方が、ずっと営業のやりようがあるというものです。

■差別化は、ランチェスター戦略でいう「弱者の基本戦略」です。

逆にそこそこよくて安いというのは、ミート戦略といって「強者の基本戦略」に近いものです。

マス・マーケティングが崩壊して、小さな需要層をターゲットにビジネスしなければならないというのは、これからはすべてのビジネスが「弱者の戦略」をとらなければならないという指摘に思えます。

しかし、強者の戦略が通用しなくなったわけではありません。

たとえ小さな需要層であろうと、塊ごとに弱者と強者が存在します。ということは、弱者の戦略と強者の戦略は存在するのです。

ゴーディンの指摘は、むしろ、並外れた差別化によって、それにひきつけられるオタクの小集団を探せ。ということです。

ランチェスター戦略の勝ち方は

(1)自分でも勝てる場所(市場)を見つける。

(2)その場所で、勝てる戦略を作る。

(3)あとは諦めずに営業展開する。

ということです。

つまり、オタクに売れ。というゴーディンの提言は、(1)の勝てる場所を見つけろ。ということと同じです。

ランチェスター戦略を学ぶとわかると思いますが、戦略は、強者のポジションをとる方が圧倒的に有利です。

安易に、弱者でも勝てるのがランチェスター戦略だ。と思ってはいけません。

ランチェスター戦略についてはこちらを→http://goo.gl/ka0BBL

■さて、私は、昨年来、取り組んでいる「孫子の兵法」が教えることとして、企業が生き残るためには、独自の「城」を持たなければならない。と言いました。

参考:「孫子」を活用するための最大のキーワード
http://www.createvalue.biz/column2/post-302.html

この城という概念と、セス・ゴーディン氏のいう部族へのパーミッション・マーケティングという概念は、つながっていると考えます。

すなわち、買い手側のニーズが多様化していること。買い手ごとにこだわりの強い部族のような塊が形成されること。並外れた特質を気に入れば、それ以外のマイナスは許容できること。

これらを勘案すると、ファン、あるいは信者に近いような強いロイヤリティを持つリピーターに特化して、彼らのニーズに応えたビジネス展開をすることが、現状に最もマッチしたビジネスモデルではないかと考えるわけです

秘訣は、自分だけの城で強者の戦略を展開することです。

今回は、抽象的で小難しい書き方をしましたが、自分としては重要なことを書いていると考えておりますので(^^

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