金本知憲監督はすべての中間管理職の象徴だ

2017.07.27

(2017年7月27日メルマガより)


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■獣王無敵我らが阪神タイガースが正念場を迎えています。

2016年7月26日現在、46勝41敗。首位広島から11ゲーム差。

26日のDeNA戦に敗れたために、3位転落です。

春先には首位に立っていたことを考えると、画に描いたような失速です。

このままずるずると後退してしまうのか、あるいは再び盛り返して首位争いに挑んでいくのか、まさに岐路に立っているといっていいでしょう。

■しかし「若手を育てながら優勝争いをする」ことを標榜して臨んだ金本知憲監督2年目の今年、一時は首位に立ったこともあった戦いぶりは十分に評価できると考えます。

それに生え抜きの若手が徐々にでも育ってきていることも評価できます。

なにしろ阪神タイガースといえば、生え抜きの若手が育たないことでは定評がありましたからねー

いまの主力レギュラー選手の中で、生え抜きは、鳥谷ぐらいではないですか?

鳥谷といえば、2003年のドラフトで入った選手ですよ。13年目のベテランです。

今までの監督は何をしてきたんだって思ってしまいますね。

それに比べると今年の阪神タイガースは楽しみな若手がいっぱいいます。

昨年の新人王、高山俊。

久々の長距離打者、中谷将大。

育成上がりの強打者、原口文人。

怪我してしまいましたが今年の新人、糸原健斗。

そして早くも本塁打を放ったドラフト1位の大山祐輔。

投手でも、今年の新人、小野泰己。

変則右腕の青柳晃洋。

本格左腕の岩貞裕太。

ようやく開花した大型右腕、秋山拓巳。

などなど。

■もちろんチームが強くなるためには、金本監督一人の力ではままなりません。

フロントの戦略方向性。

現場選手の個々の力。

そしてその中間にいる現場首脳陣が役割を果たさなければなりません。

従来、阪神タイガースは、フロントの戦略方向性が定まらず、どのようなチームづくりをしたいのかが見えてこないと批判を浴びてきました。

このあたり「優勝は3年に1度でいい。そのために若手を育てる」という北海道日本ハムファイターズの戦略性を見習ってほしいと常々考えておりました。

ところが、昨年、金本監督を招聘するにおいてフロントは「勝利はいいから、若手を育ててくれ」と依頼したと言われています。

そのフロントの発言は、目先の利益を追求する姿勢が目立つ阪神フロントとしては、画期的なものではありませんか。

■ところが金本監督はフロントの考えをきっぱりと否定し「優勝争いをしながら、若手を育てる」という方針を打ち出しました。

何と潔い宣言でしょうか!

金本監督のいう「超変革」とは、まさに甘えを断ち、勝ちながら育てるという困難な道を進むものだったのです。

■が、考えてみれば、この「勝ちながら育てる」というのは、何も金本監督だけが特別にしていることではありません。

会社組織においても、それぞれの組織が目標を達成するために戦っています。

同時に、中間管理職にある方は、自分が預かったチームメンバーの成長をサポートする役割を担っています。

「チーム目標を達成しながら、メンバーを成長させる」というのは、多くの会社の管理者が役割としていることなのです。

いうなれば、金本監督は、中間管理職が普遍的にやらなければいけないことを、阪神タイガースの監督という立場で、やっている人なのです。

すべての中間管理職は、金本監督に共感し、応援しようじゃありませんか!

■念のためにいうと、会社組織は基本的に、経営陣、中間管理職、現場担当者の三層で成り立っています。

経営陣が戦略方向性を決め、中間管理職がそれをかみ砕いて管理し、現場担当者が実行する。

これがスムーズな姿です。どの層が抜けても、会社としての力を発揮することができません。

■その中で、ある意味、最も難しいのが中間管理職の立場におられる方です。

中間管理職は、経営陣と現場担当者の橋渡し役であり、パイプ役です。

ということは、経営陣が打ち立てる経営戦略を理解しておかなければならず、同時に、現場担当者がどのように動いているかを把握していなければなりません。

中間管理者は、双方に通じていなければならない。いわば、会社の全体を掴んでいなければならない立場の人たちなのです。

■ところが、実際には、いろいろと齟齬が生じます。

たとえば営業の場合、現場で優秀な成績を収めた者が、中間管理職に抜擢されることが多いはずです。

しかし、現場担当者としてやるべきことと、中間管理職としてやるべきことには違いがあります。

はっきりいうと、優秀な現場担当者が、優秀な管理者になれるとは限りません。

野球でいう「名選手、名監督にあらず」というやつです。

もちろん管理者になった者が、その役割と職責をよく理解し、新しい仕事だと認識した上で職務に励むならいいのですが、しばしば勘違いが起こります。

現場営業時代と同じような仕事をしてしまう人の存在です。部下の成績には目もくれず、自分の成績を上げることに躍起になってしまうのです。

こうなれば、彼が預かる組織は機能しなくなります。

■今は、こういう理屈がある程度浸透しているので、表立った大きな問題は少なくなったのかも知れません。

しかし、私が会社員だった十数年前はひどいものでしたよ。

私の知っているある上司は「おれはバカな部下は相手にしない」と平気で言ってましたからね。

その人は自分の成績を上げるのに一所懸命で、部下ができないのはバカだからだ。おれのチームにバカを回すな!と平然と仰っていました。

私もその頃は「それが会社のルールなんだ。バカと言われないように頑張ろう」って健気に思っておりましたが、今思うと、一番バカはその上司です。

その人は管理者としての業務を一切放棄すると堂々と宣言していたわけですからね。そんな人を管理者にしている会社もバカです。

■それに比べて金本知憲監督のなんと思慮深く、なんと努力家であることか。

その就任にあたっては、コーチ経験のないキャリアに疑問を持つ向きもありました。

人気選手をそのまま監督にして、客寄せにしようとしているだけじゃないかとうがった見方もあったようです。

ところが、金本監督はそんな浅はかな気持ちで阪神タイガースの監督になったわけではありませんでした。

彼は相当の覚悟を持って、監督要請を受諾しました。それは、この2年の戦いぶりをみていて、十分に伝わってきます。

■繰り返しますが、中間管理職に期待される役割とは、預かったチームの目標を達成すること、および、預かったチームメンバーを成長させることです。

要するに「優勝を目指しながら、若手を育てる」という金本監督の姿勢です。

管理者は、当然ながら自分の成績など二の次で、メンバーの目標達成をサポートしなければなりません。

同時に、メンバーが業務に必要な知識や経験を得られるように、工夫しなければなりません。

「ベンチがアホやから野球できへん!」とはギリギリ言ってもいいかも知れませんが、「選手がアホやから野球できへん!」と言うのはアウトです。

管理者の能力がないって告白ですから。

■金本監督が一般の中間管理職と違うのは、彼が既にプレーヤーではないことです。

幸か不幸か、多くの会社の中間管理職は、自ら現場担当者でもあります。営業でいえば、自分の売上目標を持っています。

チーム全体の売上目標に加えて、自分の売上目標を持っているわけですから、ダブルで大変な責任を持たされています。

あまりにも大変なんで、自分の売上目標だけでも達成しよう!できれば、チーム全体の目標も自分で達成してしまおう!と怠慢なことを考えてしまう気持ちもわからないではありません。

おそらく金本監督も「おれが代打で出た方がマシだ」と何度も思ったことでしょうね。

だけどそれでは、若手が育ちません。

これまでに何度、大事な場面でベテランを使いたかったことか。あるいは何度、ベンチから細かい指示を出したかったことか。

しかし金本監督は、期待した若手に修羅場の経験を積ませ、自分で考えて切り抜けることを優先してきました。

それが現時点で3位という成績につながっているとすれば、決して悪い結果ではないと信じます。

■最近では「名選手は必ずしも名監督ではない」という理屈が浸透してきたようで、新任管理者の方々も、現場担当者だった時の実績に関わらず、管理とは何たるかを学び、工夫されようとしています。

いいことですよ。

現場担当者と管理者の役割は違うものだし、それに要求される能力も異なるものです。

だとすれば、わざわざ管理者にならなくてもずっと現場で活躍する人がいてもいいでしょうし、現場実績がいまいちでも、管理者として能力を発揮する人がいてもいい。

野球でいうと先頃亡くなられた上田利治氏など、選手時代の成績はパッとしませんでしたが、監督になってからは存分にその能力を発揮されました。

あるいはサッカーの世界では、プロ選手経験のない人が、トップチームの監督をされる例もあります。

役割と機能が違うという理屈に従えば、それも在りうることでしょう。

■ところが、そのために新たな問題が起きています。

そもそも我々はなぜ上司の言うことを聞かなければならないのか?

職責上の上長だから?

確かに「おれは課長なんだから命令に従うのは当然だ」と居丈高に言う人もいますが、そんなやつの言うことを素直に聞くほど我々は初心ではありません

逆らえば罰則を与えられる?あるいは従えば得をする?

それもあるでしょうが、人事権などを振りかざして迫る上司など侮蔑の対象になりこそすれ本気で従う気になれません。

やはり上司たるもの自分より知識もスキルもあり、自分が現場で困った時に導いてくれる存在であってほしい。

そう思う人は多いでしょうね。

■ところが今は、市場の変化が激しく、現場のことを正確に深く理解することは、現場担当者にしかできないことです。

現場一筋何十年という人もいるのですから、そんな人のスキルや経験に太刀打ちできないことも多々あるでしょう。

今は年下の上司、年上の部下など普通にあります。

現場経験もありスキルもあり、少なくとも自分は上司よりも仕事ができると信じ込んでいる年上の部下に対してどう接すればいいのか?

これはシリアスな問題ですよ。

中日ドラゴンズを4度のリーグ優勝に導いた名将落合博満監督は、言うことを聞かない生意気な選手がいたら「文句あるなら、おれの現役時代の成績を抜いてから言え」と言ったそうです。

なんとズルい言い方か!そんなの三冠王3度、史上最高の右打者の成績を抜けるわけがない!

こんなの指導者としての怠慢だと思うので参考にしないでください

ところが金本監督も生意気な選手の指導に苦しんでいます。

誰もが阪神タイガースのエースとしての未来を疑わない最速160キロ右腕、藤浪晋太郎です。

この規格外の大器を誰もが持て余しているようです。

なにしろこの選手、誰のアドバイスも聞かないらしい。

そらそうですね。藤浪ほどの才能を指導できるコーチはなかなかいないでしょう。阪神でいえば、村山實か江夏豊クラスの大才ですよ。

それに加えて、藤浪自身そうとう頑固な性格らしく、聞く耳を持たないものですから、周りは腫物に触るように接していると聞きます。

金本監督も困り果てたのでしょうかね。昨年の7月8日の広島戦で、序盤ふがいない投球をした藤浪をそのまま161球も投げさせるという懲罰とも思われる登板を強いました。

チーム内では喝采を受けたかも知れないこの措置も、さすがに間違いだったと私は思っています。

結果として、藤浪が心を入れ替えて、コーチの助言を聞くようになったという話を聞きませんからね。

今年、危険球まがいのボールを連発した藤浪は、無期限2軍調整中の状態です。

藤浪という才能をいかに開花させるのか?

これは金本監督に課せられた最も大きな課題であり、試練だといっていいでしょうね。

■金本監督ほどではないとしても、多かれ少なかれ管理者は「藤浪問題」を抱えているはずです。

個人的にいうと、コンサル現場では、どこも藤浪だらけですよ^^

「なんで現場をロクに知らないお前に従わなければならない?」とみんな思っています。

そんな状態でいかに人を動かすのか?

マニュアル的な解答はありません。日々、新たな答えを探し続けております。。。

■ただ現時点でのヒントをいうとすれば、

人は「この人のいうことなら従おう」と人格に従う場合と、

「この人に従っていれば成長できる」と専門性に従う場合があるようです。

すなわち、管理者たるもの公正で誠実で思いやりと節度のある人格を持ち、かつ、部下を感銘させる専門性が必要です。

人格のことはともかくとして、専門性とは何か?

先ほど、現場のことは担当者の方が詳しいと言ったばかりですね。

ただ管理者の専門性とは、現場行動に関することだけではありません。

目標達成するための目標管理の知識とスキル。PDCAを回すスキル。問題解決のスキル。戦略立案のスキル。

さらには成長するための知識や経験を得るための方法論など。

つまり管理者として持っていなければならない専門性をできるだけ高いレベルで持っていること。

これが上長としての権威となり、円滑な組織運営につながっていくはずです。

少なくとも私はそう考えて、コンサルティングに臨んでいます。

■これが野村克也監督なら。

もしかしたらもっとうまくチームを考える集団に変えて、強いチームにしていったのかもしれません。

江夏をその気にさせたように、藤浪をエースに育て上げるのかもしれません。

あるいは落合博満監督なら、チームの基礎体力を鍛え上げた上で、抜群の勝負勘をもって勝たせながら育てる状況を作っていったのかもしれません。

それに比べて金本知憲監督は、不器用なのかも知れない。若いコーチ陣とともに、試行錯誤を重ねながら、与えられた課題に取り組んでいるようです。

参考:金本監督は恩師に「よう似とる」。高代コーチが思い出す、ある逸話。
http://number.bunshun.jp/articles/-/828548

だからこそ、私は、金本知憲監督を応援します。

金本監督こそ管理者としての職務に真摯に向き合い自ら成長しようとしている人だから。

その悩みも失敗も逡巡も含めて、すべての中間管理職を代表する存在であり、象徴であると思うから。

皆さん。

金本監督を見守り、応援していこうではないですか。

これからもずっと、永遠に。


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■獣王無敵我らが阪神タイガースが正念場を迎えています。

2016年7月26日現在、46勝41敗。首位広島から11ゲーム差。

26日のDeNA戦に敗れたために、3位転落です。

春先には首位に立っていたことを考えると、画に描いたような失速です。

このままずるずると後退してしまうのか、あるいは再び盛り返して首位争いに挑んでいくのか、まさに岐路に立っているといっていいでしょう。

■しかし「若手を育てながら優勝争いをする」ことを標榜して臨んだ金本知憲監督2年目の今年、一時は首位に立ったこともあった戦いぶりは十分に評価できると考えます。

それに生え抜きの若手が徐々にでも育ってきていることも評価できます。

なにしろ阪神タイガースといえば、生え抜きの若手が育たないことでは定評がありましたからねー

いまの主力レギュラー選手の中で、生え抜きは、鳥谷ぐらいではないですか?

鳥谷といえば、2003年のドラフトで入った選手ですよ。13年目のベテランです。

今までの監督は何をしてきたんだって思ってしまいますね。

それに比べると今年の阪神タイガースは楽しみな若手がいっぱいいます。

昨年の新人王、高山俊。

久々の長距離打者、中谷将大。

育成上がりの強打者、原口文人。

怪我してしまいましたが今年の新人、糸原健斗。

そして早くも本塁打を放ったドラフト1位の大山祐輔。

投手でも、今年の新人、小野泰己。

変則右腕の青柳晃洋。

本格左腕の岩貞裕太。

ようやく開花した大型右腕、秋山拓巳。

などなど。

■もちろんチームが強くなるためには、金本監督一人の力ではままなりません。

フロントの戦略方向性。

現場選手の個々の力。

そしてその中間にいる現場首脳陣が役割を果たさなければなりません。

従来、阪神タイガースは、フロントの戦略方向性が定まらず、どのようなチームづくりをしたいのかが見えてこないと批判を浴びてきました。

このあたり「優勝は3年に1度でいい。そのために若手を育てる」という北海道日本ハムファイターズの戦略性を見習ってほしいと常々考えておりました。

ところが、昨年、金本監督を招聘するにおいてフロントは「勝利はいいから、若手を育ててくれ」と依頼したと言われています。

そのフロントの発言は、目先の利益を追求する姿勢が目立つ阪神フロントとしては、画期的なものではありませんか。

■ところが金本監督はフロントの考えをきっぱりと否定し「優勝争いをしながら、若手を育てる」という方針を打ち出しました。

何と潔い宣言でしょうか!

金本監督のいう「超変革」とは、まさに甘えを断ち、勝ちながら育てるという困難な道を進むものだったのです。

■が、考えてみれば、この「勝ちながら育てる」というのは、何も金本監督だけが特別にしていることではありません。

会社組織においても、それぞれの組織が目標を達成するために戦っています。

同時に、中間管理職にある方は、自分が預かったチームメンバーの成長をサポートする役割を担っています。

「チーム目標を達成しながら、メンバーを成長させる」というのは、多くの会社の管理者が役割としていることなのです。

いうなれば、金本監督は、中間管理職が普遍的にやらなければいけないことを、阪神タイガースの監督という立場で、やっている人なのです。

すべての中間管理職は、金本監督に共感し、応援しようじゃありませんか!

■念のためにいうと、会社組織は基本的に、経営陣、中間管理職、現場担当者の三層で成り立っています。

経営陣が戦略方向性を決め、中間管理職がそれをかみ砕いて管理し、現場担当者が実行する。

これがスムーズな姿です。どの層が抜けても、会社としての力を発揮することができません。

■その中で、ある意味、最も難しいのが中間管理職の立場におられる方です。

中間管理職は、経営陣と現場担当者の橋渡し役であり、パイプ役です。

ということは、経営陣が打ち立てる経営戦略を理解しておかなければならず、同時に、現場担当者がどのように動いているかを把握していなければなりません。

中間管理者は、双方に通じていなければならない。いわば、会社の全体を掴んでいなければならない立場の人たちなのです。

■ところが、実際には、いろいろと齟齬が生じます。

たとえば営業の場合、現場で優秀な成績を収めた者が、中間管理職に抜擢されることが多いはずです。

しかし、現場担当者としてやるべきことと、中間管理職としてやるべきことには違いがあります。

はっきりいうと、優秀な現場担当者が、優秀な管理者になれるとは限りません。

野球でいう「名選手、名監督にあらず」というやつです。

もちろん管理者になった者が、その役割と職責をよく理解し、新しい仕事だと認識した上で職務に励むならいいのですが、しばしば勘違いが起こります。

現場営業時代と同じような仕事をしてしまう人の存在です。部下の成績には目もくれず、自分の成績を上げることに躍起になってしまうのです。

こうなれば、彼が預かる組織は機能しなくなります。

■今は、こういう理屈がある程度浸透しているので、表立った大きな問題は少なくなったのかも知れません。

しかし、私が会社員だった十数年前はひどいものでしたよ。

私の知っているある上司は「おれはバカな部下は相手にしない」と平気で言ってましたからね。

その人は自分の成績を上げるのに一所懸命で、部下ができないのはバカだからだ。おれのチームにバカを回すな!と平然と仰っていました。

私もその頃は「それが会社のルールなんだ。バカと言われないように頑張ろう」って健気に思っておりましたが、今思うと、一番バカはその上司です。

その人は管理者としての業務を一切放棄すると堂々と宣言していたわけですからね。そんな人を管理者にしている会社もバカです。

■それに比べて金本知憲監督のなんと思慮深く、なんと努力家であることか。

その就任にあたっては、コーチ経験のないキャリアに疑問を持つ向きもありました。

人気選手をそのまま監督にして、客寄せにしようとしているだけじゃないかとうがった見方もあったようです。

ところが、金本監督はそんな浅はかな気持ちで阪神タイガースの監督になったわけではありませんでした。

彼は相当の覚悟を持って、監督要請を受諾しました。それは、この2年の戦いぶりをみていて、十分に伝わってきます。

■繰り返しますが、中間管理職に期待される役割とは、預かったチームの目標を達成すること、および、預かったチームメンバーを成長させることです。

要するに「優勝を目指しながら、若手を育てる」という金本監督の姿勢です。

管理者は、当然ながら自分の成績など二の次で、メンバーの目標達成をサポートしなければなりません。

同時に、メンバーが業務に必要な知識や経験を得られるように、工夫しなければなりません。

「ベンチがアホやから野球できへん!」とはギリギリ言ってもいいかも知れませんが、「選手がアホやから野球できへん!」と言うのはアウトです。

管理者の能力がないって告白ですから。

■金本監督が一般の中間管理職と違うのは、彼が既にプレーヤーではないことです。

幸か不幸か、多くの会社の中間管理職は、自ら現場担当者でもあります。営業でいえば、自分の売上目標を持っています。

チーム全体の売上目標に加えて、自分の売上目標を持っているわけですから、ダブルで大変な責任を持たされています。

あまりにも大変なんで、自分の売上目標だけでも達成しよう!できれば、チーム全体の目標も自分で達成してしまおう!と怠慢なことを考えてしまう気持ちもわからないではありません。

おそらく金本監督も「おれが代打で出た方がマシだ」と何度も思ったことでしょうね。

だけどそれでは、若手が育ちません。

これまでに何度、大事な場面でベテランを使いたかったことか。あるいは何度、ベンチから細かい指示を出したかったことか。

しかし金本監督は、期待した若手に修羅場の経験を積ませ、自分で考えて切り抜けることを優先してきました。

それが現時点で3位という成績につながっているとすれば、決して悪い結果ではないと信じます。

■最近では「名選手は必ずしも名監督ではない」という理屈が浸透してきたようで、新任管理者の方々も、現場担当者だった時の実績に関わらず、管理とは何たるかを学び、工夫されようとしています。

いいことですよ。

現場担当者と管理者の役割は違うものだし、それに要求される能力も異なるものです。

だとすれば、わざわざ管理者にならなくてもずっと現場で活躍する人がいてもいいでしょうし、現場実績がいまいちでも、管理者として能力を発揮する人がいてもいい。

野球でいうと先頃亡くなられた上田利治氏など、選手時代の成績はパッとしませんでしたが、監督になってからは存分にその能力を発揮されました。

あるいはサッカーの世界では、プロ選手経験のない人が、トップチームの監督をされる例もあります。

役割と機能が違うという理屈に従えば、それも在りうることでしょう。

■ところが、そのために新たな問題が起きています。

そもそも我々はなぜ上司の言うことを聞かなければならないのか?

職責上の上長だから?

確かに「おれは課長なんだから命令に従うのは当然だ」と居丈高に言う人もいますが、そんなやつの言うことを素直に聞くほど我々は初心ではありません

逆らえば罰則を与えられる?あるいは従えば得をする?

それもあるでしょうが、人事権などを振りかざして迫る上司など侮蔑の対象になりこそすれ本気で従う気になれません。

やはり上司たるもの自分より知識もスキルもあり、自分が現場で困った時に導いてくれる存在であってほしい。

そう思う人は多いでしょうね。

■ところが今は、市場の変化が激しく、現場のことを正確に深く理解することは、現場担当者にしかできないことです。

現場一筋何十年という人もいるのですから、そんな人のスキルや経験に太刀打ちできないことも多々あるでしょう。

今は年下の上司、年上の部下など普通にあります。

現場経験もありスキルもあり、少なくとも自分は上司よりも仕事ができると信じ込んでいる年上の部下に対してどう接すればいいのか?

これはシリアスな問題ですよ。

中日ドラゴンズを4度のリーグ優勝に導いた名将落合博満監督は、言うことを聞かない生意気な選手がいたら「文句あるなら、おれの現役時代の成績を抜いてから言え」と言ったそうです。

なんとズルい言い方か!そんなの三冠王3度、史上最高の右打者の成績を抜けるわけがない!

こんなの指導者としての怠慢だと思うので参考にしないでください

ところが金本監督も生意気な選手の指導に苦しんでいます。

誰もが阪神タイガースのエースとしての未来を疑わない最速160キロ右腕、藤浪晋太郎です。

この規格外の大器を誰もが持て余しているようです。

なにしろこの選手、誰のアドバイスも聞かないらしい。

そらそうですね。藤浪ほどの才能を指導できるコーチはなかなかいないでしょう。阪神でいえば、村山實か江夏豊クラスの大才ですよ。

それに加えて、藤浪自身そうとう頑固な性格らしく、聞く耳を持たないものですから、周りは腫物に触るように接していると聞きます。

金本監督も困り果てたのでしょうかね。昨年の7月8日の広島戦で、序盤ふがいない投球をした藤浪をそのまま161球も投げさせるという懲罰とも思われる登板を強いました。

チーム内では喝采を受けたかも知れないこの措置も、さすがに間違いだったと私は思っています。

結果として、藤浪が心を入れ替えて、コーチの助言を聞くようになったという話を聞きませんからね。

今年、危険球まがいのボールを連発した藤浪は、無期限2軍調整中の状態です。

藤浪という才能をいかに開花させるのか?

これは金本監督に課せられた最も大きな課題であり、試練だといっていいでしょうね。

■金本監督ほどではないとしても、多かれ少なかれ管理者は「藤浪問題」を抱えているはずです。

個人的にいうと、コンサル現場では、どこも藤浪だらけですよ^^

「なんで現場をロクに知らないお前に従わなければならない?」とみんな思っています。

そんな状態でいかに人を動かすのか?

マニュアル的な解答はありません。日々、新たな答えを探し続けております。。。

■ただ現時点でのヒントをいうとすれば、

人は「この人のいうことなら従おう」と人格に従う場合と、

「この人に従っていれば成長できる」と専門性に従う場合があるようです。

すなわち、管理者たるもの公正で誠実で思いやりと節度のある人格を持ち、かつ、部下を感銘させる専門性が必要です。

人格のことはともかくとして、専門性とは何か?

先ほど、現場のことは担当者の方が詳しいと言ったばかりですね。

ただ管理者の専門性とは、現場行動に関することだけではありません。

目標達成するための目標管理の知識とスキル。PDCAを回すスキル。問題解決のスキル。戦略立案のスキル。

さらには成長するための知識や経験を得るための方法論など。

つまり管理者として持っていなければならない専門性をできるだけ高いレベルで持っていること。

これが上長としての権威となり、円滑な組織運営につながっていくはずです。

少なくとも私はそう考えて、コンサルティングに臨んでいます。

■これが野村克也監督なら。

もしかしたらもっとうまくチームを考える集団に変えて、強いチームにしていったのかもしれません。

江夏をその気にさせたように、藤浪をエースに育て上げるのかもしれません。

あるいは落合博満監督なら、チームの基礎体力を鍛え上げた上で、抜群の勝負勘をもって勝たせながら育てる状況を作っていったのかもしれません。

それに比べて金本知憲監督は、不器用なのかも知れない。若いコーチ陣とともに、試行錯誤を重ねながら、与えられた課題に取り組んでいるようです。

参考:金本監督は恩師に「よう似とる」。高代コーチが思い出す、ある逸話。
http://number.bunshun.jp/articles/-/828548

だからこそ、私は、金本知憲監督を応援します。

金本監督こそ管理者としての職務に真摯に向き合い自ら成長しようとしている人だから。

その悩みも失敗も逡巡も含めて、すべての中間管理職を代表する存在であり、象徴であると思うから。

皆さん。

金本監督を見守り、応援していこうではないですか。

これからもずっと、永遠に。


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