ヤマダ電機は、大塚家具の救済よりも、家電産業の復活に取り組め

2020.12.10

(2020年12月10日メルマガより)

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大塚家具の二代目社長、大塚久美子氏が12月1日付けで退任されました。

5年前から、父と娘の闘いとして大いに耳目を集めた大塚家具の騒動に、一つの区切りができたかっこうです。

人口減少と新築着工件数の減少という環境下、大塚家具が長年取り組んできた高級家具を会員価格でまとめ買いしてもらうというビジネスが老朽化していました。

戦略転換を迫られる中、創業者である父とコンサル会社出身の娘との考えが違ったようで、お互い解任動議を発行したうえで、プロシキーファイト(株主総会における議決委任状争奪戦)に発展するというワイドショーネタとなってしまいました。

法的に勝利したのは娘の久美子氏で、社長の座につき、思う経営をするはずでした。

ところが、どういうわけか、久美子氏は、安売りキャンペーンをするばかりで、何ら有効な策を打つことができず、業績を悪化させ続けてしまいます。

いったい何があったのだろう?と不思議に思っていたのですが、最近のニュースをみると、どうやら、久美子氏は大塚家具という組織を動かすことができなかったようですな。


資金潤沢で優良企業だった大塚家具の財務状況は坂を転げるように悪化していき、倒産もささやかれるような事態となってしまいました。


■そんな大塚家具に救済の手を差し伸べたのが、家電量販チェーン最大手のヤマダ電機です。

切羽詰まっていた大塚家具に、ヤマダ電機は、43億7400万円の資金を提供、子会社化しました。

もっともこの救済は、世間を困惑させるものでした。

まず、ヤマダ電機が、大塚家具を子会社にする理由がよくわからない。

ヤマダが進めている住宅関連部門を強化する、といえば一見もっともらしいですが、大塚家具の品ぞろえがヤマダの客層にあっているとは思えません。

そんなことをするぐらいなら、再編渦中業界のホームセンターを買収して、客層にあった品ぞろえ強化に取り組むべきでしょう。

さらに大塚久美子氏を社長の座に留めた温情采配も奇妙です。1年経って、退任する理由も「黒字化の目途が立ったから」というもっともらしいもので、久美子氏への配慮がありありです。

厳しい人だと聞こえている山田昇会長にしては、甘すぎるだろう。ということから「山田会長は、久美子氏に亡き娘の面影をみているのではないか」というトンデモ話が出るほどでした。


ともあれ、大塚家具はヤマダ電機傘下になることで決着しました。ヤマダ電機グループは、決して順風とはいえない環境下、どのように生き残ろうとするのか。

私なりに書いてみました。

どうか最後までお読みください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ヤマダ電機は、店舗数990店、売上高1兆8115億円を誇る国内最大の家電量販チェーンです。(2020年3月期)

ただし、日本の国内家電小売市場は、2010年をピークに急激に落ち込んでおり、現在の市場規模は6兆5千億円。ピーク時の3割減です。

明かな衰退産業であり、各チェーンは、再編をくりかえしています。ヤマダ電機も、ベスト電器などを吸収してきましたが、売上高は横ばいが精いっぱいの状況です。

だから実質は、右肩下がりの業績です。売り場面積あたりの売上高をみると、2000年頃に比べると、3分の1ほどになっています。

これはもちろんヤマダ電機だけではありません。ビッグカメラも、エディオンも、ケーズデンキも、ヨドバシカメラも、苦しい業績状況ですから、生き残るための戦略を練り直しています。

市場が縮小するなか、どのような方向性をもって生き残りを図るかが、各社の特徴が出るところであり、腕の見せ所だといえます。


家電量販店の生き残り戦略


たとえば、都心に店舗が多いビッグカメラは、インバウンド向けに集中してきました。もっともこれはコロナ禍で裏目に出てしまいました。戦略の見直しが急務です。

エディオンは、LIXILと提携し、リフォーム事業に参入しています。同時に、プログラミング教室などの運営にも乗り出しています。

ヨドバシカメラは、ネット通販を本格化し、それに伴い日用品の品ぞろえを増やしてきました。ヨドバシのネット通販は評判がよく、一定の成功を収めています。

そんな中、業界トップであるヤマダ電機は、住宅関連事業への進出に取り組んでいます。

2011年には、戸建て住宅のエス・バイ・エルを買収。2012年には、住設機器の日立ハウテックを買収。

そして2019年には、大塚家具の買収に踏み切りました。


住宅関連市場も衰退している


2011年から市場縮小を見越して住宅関連事業進出を目指したヤマダ電機の判断は素早かったと思います。

が、あれから9年経ち、目に見える効果が表れているとはいえないのが辛いところです。

実をいうと、住宅産業も成長しているとはいえない事情です。

新築の着工件数は、家電製品と同じく右肩下がりで、ピーク時の半分程度です。この先、人口減少していきますから、さらに減少することはあれ、増加に転じることは考えられません。

日本には住宅が余っている状態で、空き家が社会問題になるほどです。

そんな市場環境ですから、リフォーム事業に進出するならまだしも、戸建て住宅メーカーを買収したヤマダの戦略は、果たして正しい方向性なのだろうかと疑いたくなります。

ヤマダの目論見は、新築住宅と最新家電と家具をオールインワンで提供するというものでしょう。が、その需要はあるのでしょうか。

ちなみにヤマダが提唱するスマートハウス構想(最新の情報家電で家全体を管理し、エネルギー効率を高める)は、以前からパナソニックが前のめりに取り組んでいたものです。

しかしパナソニックはあきらめたのか、住宅部門を切り離し、トヨタ等と合併して別会社にしています。


大塚家具の買収は正しかったのか


それにしても大塚家具です。

大塚家具が扱うようなレベルの商品をオールインワンで揃えようと考える家庭がどの程度あるというのか、その予測を聞きたいものです。

家具店最大手のニトリは、もはや家具ではなく、日用品や雑貨の販売にシフトしています。家具についても急速にカジュアル化が進んでおり、使い捨て可能だと思えるような商品群は、まるで雑貨の一部のようです。

そのニトリの戦略が人口減少化していく日本市場に受け入れられ、独り勝ちといいたくなるような様相を呈しています。


それに対して、大塚家具は一生ものの家具を扱っています。

いやそれが悪いとはいいません。むしろ意義あることです。

ニトリの逆をいく戦略もいいでしょう。

ただ、それほど大きな市場にならないことは理解しておかなければなりません。

つまり、大塚家具が持つ客層では、ヤマダ電機の成長のエンジンにはならないということです。

怪物経営者といわれ、超好戦的な山田昇会長のことですから、きっと第二弾、第三弾の成長戦略が用意されているのだと想像しますが、今のところ、それが見えないのが、もどかしいと思えます。


最悪期を脱した家電市場


ところで、国内家電小売市場は、落ち込んでいるといいましたが、実は、最悪期は脱して、反転する兆しを見せています。

たしかにかつて家電王国であった頃の市場ではありません。東芝もシャープも三洋も、家電部門は海外企業の傘下となりました。

日立やソニー、パナソニックも家電部門の縮小、絞り込みを行っています。

が、その縮小トレンドも落ち着いたようです。

日本メーカーの退潮にともない、アイロボット(米)、ダイソン(英)、ハイアール(中国)、美的集団(中国)、サムスン(韓国)、LG(韓国)などの海外メーカーが進出してきました。

海外メーカーは、それまで日本のメーカーが明け暮れていた同質化競争(似たようなものを作る競争)ではなく、使用状況にあわせた顧客目線の商品づくりと特徴のあるデザイン性を武器に、売上を伸ばしてきました。

性能も悪くありません。いやむしろ、日本の技術を吸収した中国勢は、日本製を凌駕するようになってきています。

ダイソンやアイロボットのように、日本製になかった独自技術をもって家電に進出しているメーカーもあって、市場を活性化させています。


新興家電メーカーの台頭


そんな海外メーカーに刺激を受けたのか、日本でもアイリスオーヤマなど注目すべき新興メーカーが台頭してきました。

多くは、総合家電メーカーのような多機能な商品ではなく、ニッチ市場狙いの単機能商品を手掛けて、存在感を示しています。

必ずしも先端技術を競うのではなく、ローテクながらユニークな視点からの開発と、独自のデザイン性を武器にしています。

ローテクなので、アイデア勝負です。小さな会社でも商品が作れます。そんな面白い商品づくりが話題になり「一芸家電」としてちょっとしたブームになっているほどです。

そんなメーカーの一つ、高級トースターや掃除機で知られるバルミューダが、東証マザーズに上場することが発表されました。


売上は108億円程度ですが、成長する気まんまんのメーカーが現れたことは、日本の家電産業の未来を照らすものだと思います。


販売チャネルの確保が課題


新興家電メーカーは、販売施策も独特です。

従来のような家電量販チェーンで全国展開するような量産体制がないメーカーが多いものですから、販売チャネルを絞ることになります。

ネット販売のみのメーカーもありますし、百貨店を主要チャネルにしているメーカーもあります。ローカルなホームセンターやディスカウントストアなどで販売しているメーカーもあります。

その他、想像もつかない売り方をしているところもあるのでしょうね。

そんな販売チャネルの絞り込みが、希少性となって、わくわく感を生み出しているところもあるのでしょう。

しかし、やはり販売チャネルの制限は、成長を阻害するものです。

小さいがユニークなメーカーにとって、安定した販売機会の確保は、非常に大きな経営上の課題であると思います。


家電産業復活に向けて


本来、こうした産業の育成こそ、トップ企業であるヤマダ電機が取り組むべき課題ではないでしょうか。

つまり、ヤマダ電機の一部店舗やネットサイトで、新興家電メーカーの商品を積極的に扱い、育成支援するのです。

もう少し詳しくいうと、テスト販売機会の提供と、その後の本格販売の支援です。

最低限の審査を経て、メーカーを選別し、商品化してもらいます。商品ができれば、一部店舗やネットでテスト販売します。

顧客の声や売れ行きをみて、いけると思えば、本格展開をします。

その際、専売契約やPB契約をすればいい。家電量販店を悩ませるショールーム化をある程度回避できます。

量産体制に乏しいメーカーに対しては、工場の紹介や資金援助を行えばいいのです。大塚家具を買収するのに比べれば、微々たる資金でしかないはずです。

育成ノウハウを確立するまで時間がかかるかもしれませんが、システムができあがれば、産業そのものを活性化させることができます。

家電王国復活、というと大きな目標すぎますか。しかしそれが可能となった時には、ヤマダ電機の果たした社会的役割は、ものすごく意義のあるものとなります。


わくわく感のある売り場を復活させよ


家電量販店の売り場にわくわく感がなくなって久しいと感じませんか。

昔は、家電品といえば、夢のような生活を想起させるものだったはずです。家電量販店とは、そんな夢の集積でした。

しかし、いまはどうでしょう。見慣れた商品、予測のつく商品しかないただの置き場のようです。

わくわく感のない売り場が人を惹きつけるはずがありませんし、成長するはずがありません。

家電量販店の復活は、輝ける家電品があってこそです。

従来の大手メーカーにその力も意欲もないとすれば、そこは見限って、自分で産業活性化に取り組むことです。

小さなメーカーの中には、わくわくさせるような商品を作っているところもあります。SNSをみると、家電製品の自慢や称賛がいまだにあふれています。

その芽を育て、林や森にしていくことこそが、トップ量販店たるヤマダ電機の役割としてふさわしいと考えます。


(2020年12月10日メルマガより)

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大塚家具の二代目社長、大塚久美子氏が12月1日付けで退任されました。

5年前から、父と娘の闘いとして大いに耳目を集めた大塚家具の騒動に、一つの区切りができたかっこうです。

人口減少と新築着工件数の減少という環境下、大塚家具が長年取り組んできた高級家具を会員価格でまとめ買いしてもらうというビジネスが老朽化していました。

戦略転換を迫られる中、創業者である父とコンサル会社出身の娘との考えが違ったようで、お互い解任動議を発行したうえで、プロシキーファイト(株主総会における議決委任状争奪戦)に発展するというワイドショーネタとなってしまいました。

法的に勝利したのは娘の久美子氏で、社長の座につき、思う経営をするはずでした。

ところが、どういうわけか、久美子氏は、安売りキャンペーンをするばかりで、何ら有効な策を打つことができず、業績を悪化させ続けてしまいます。

いったい何があったのだろう?と不思議に思っていたのですが、最近のニュースをみると、どうやら、久美子氏は大塚家具という組織を動かすことができなかったようですな。


資金潤沢で優良企業だった大塚家具の財務状況は坂を転げるように悪化していき、倒産もささやかれるような事態となってしまいました。


■そんな大塚家具に救済の手を差し伸べたのが、家電量販チェーン最大手のヤマダ電機です。

切羽詰まっていた大塚家具に、ヤマダ電機は、43億7400万円の資金を提供、子会社化しました。

もっともこの救済は、世間を困惑させるものでした。

まず、ヤマダ電機が、大塚家具を子会社にする理由がよくわからない。

ヤマダが進めている住宅関連部門を強化する、といえば一見もっともらしいですが、大塚家具の品ぞろえがヤマダの客層にあっているとは思えません。

そんなことをするぐらいなら、再編渦中業界のホームセンターを買収して、客層にあった品ぞろえ強化に取り組むべきでしょう。

さらに大塚久美子氏を社長の座に留めた温情采配も奇妙です。1年経って、退任する理由も「黒字化の目途が立ったから」というもっともらしいもので、久美子氏への配慮がありありです。

厳しい人だと聞こえている山田昇会長にしては、甘すぎるだろう。ということから「山田会長は、久美子氏に亡き娘の面影をみているのではないか」というトンデモ話が出るほどでした。


ともあれ、大塚家具はヤマダ電機傘下になることで決着しました。ヤマダ電機グループは、決して順風とはいえない環境下、どのように生き残ろうとするのか。

私なりに書いてみました。

どうか最後までお読みください。


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ヤマダ電機は、店舗数990店、売上高1兆8115億円を誇る国内最大の家電量販チェーンです。(2020年3月期)

ただし、日本の国内家電小売市場は、2010年をピークに急激に落ち込んでおり、現在の市場規模は6兆5千億円。ピーク時の3割減です。

明かな衰退産業であり、各チェーンは、再編をくりかえしています。ヤマダ電機も、ベスト電器などを吸収してきましたが、売上高は横ばいが精いっぱいの状況です。

だから実質は、右肩下がりの業績です。売り場面積あたりの売上高をみると、2000年頃に比べると、3分の1ほどになっています。

これはもちろんヤマダ電機だけではありません。ビッグカメラも、エディオンも、ケーズデンキも、ヨドバシカメラも、苦しい業績状況ですから、生き残るための戦略を練り直しています。

市場が縮小するなか、どのような方向性をもって生き残りを図るかが、各社の特徴が出るところであり、腕の見せ所だといえます。


家電量販店の生き残り戦略


たとえば、都心に店舗が多いビッグカメラは、インバウンド向けに集中してきました。もっともこれはコロナ禍で裏目に出てしまいました。戦略の見直しが急務です。

エディオンは、LIXILと提携し、リフォーム事業に参入しています。同時に、プログラミング教室などの運営にも乗り出しています。

ヨドバシカメラは、ネット通販を本格化し、それに伴い日用品の品ぞろえを増やしてきました。ヨドバシのネット通販は評判がよく、一定の成功を収めています。

そんな中、業界トップであるヤマダ電機は、住宅関連事業への進出に取り組んでいます。

2011年には、戸建て住宅のエス・バイ・エルを買収。2012年には、住設機器の日立ハウテックを買収。

そして2019年には、大塚家具の買収に踏み切りました。


住宅関連市場も衰退している


2011年から市場縮小を見越して住宅関連事業進出を目指したヤマダ電機の判断は素早かったと思います。

が、あれから9年経ち、目に見える効果が表れているとはいえないのが辛いところです。

実をいうと、住宅産業も成長しているとはいえない事情です。

新築の着工件数は、家電製品と同じく右肩下がりで、ピーク時の半分程度です。この先、人口減少していきますから、さらに減少することはあれ、増加に転じることは考えられません。

日本には住宅が余っている状態で、空き家が社会問題になるほどです。

そんな市場環境ですから、リフォーム事業に進出するならまだしも、戸建て住宅メーカーを買収したヤマダの戦略は、果たして正しい方向性なのだろうかと疑いたくなります。

ヤマダの目論見は、新築住宅と最新家電と家具をオールインワンで提供するというものでしょう。が、その需要はあるのでしょうか。

ちなみにヤマダが提唱するスマートハウス構想(最新の情報家電で家全体を管理し、エネルギー効率を高める)は、以前からパナソニックが前のめりに取り組んでいたものです。

しかしパナソニックはあきらめたのか、住宅部門を切り離し、トヨタ等と合併して別会社にしています。


大塚家具の買収は正しかったのか


それにしても大塚家具です。

大塚家具が扱うようなレベルの商品をオールインワンで揃えようと考える家庭がどの程度あるというのか、その予測を聞きたいものです。

家具店最大手のニトリは、もはや家具ではなく、日用品や雑貨の販売にシフトしています。家具についても急速にカジュアル化が進んでおり、使い捨て可能だと思えるような商品群は、まるで雑貨の一部のようです。

そのニトリの戦略が人口減少化していく日本市場に受け入れられ、独り勝ちといいたくなるような様相を呈しています。


それに対して、大塚家具は一生ものの家具を扱っています。

いやそれが悪いとはいいません。むしろ意義あることです。

ニトリの逆をいく戦略もいいでしょう。

ただ、それほど大きな市場にならないことは理解しておかなければなりません。

つまり、大塚家具が持つ客層では、ヤマダ電機の成長のエンジンにはならないということです。

怪物経営者といわれ、超好戦的な山田昇会長のことですから、きっと第二弾、第三弾の成長戦略が用意されているのだと想像しますが、今のところ、それが見えないのが、もどかしいと思えます。


最悪期を脱した家電市場


ところで、国内家電小売市場は、落ち込んでいるといいましたが、実は、最悪期は脱して、反転する兆しを見せています。

たしかにかつて家電王国であった頃の市場ではありません。東芝もシャープも三洋も、家電部門は海外企業の傘下となりました。

日立やソニー、パナソニックも家電部門の縮小、絞り込みを行っています。

が、その縮小トレンドも落ち着いたようです。

日本メーカーの退潮にともない、アイロボット(米)、ダイソン(英)、ハイアール(中国)、美的集団(中国)、サムスン(韓国)、LG(韓国)などの海外メーカーが進出してきました。

海外メーカーは、それまで日本のメーカーが明け暮れていた同質化競争(似たようなものを作る競争)ではなく、使用状況にあわせた顧客目線の商品づくりと特徴のあるデザイン性を武器に、売上を伸ばしてきました。

性能も悪くありません。いやむしろ、日本の技術を吸収した中国勢は、日本製を凌駕するようになってきています。

ダイソンやアイロボットのように、日本製になかった独自技術をもって家電に進出しているメーカーもあって、市場を活性化させています。


新興家電メーカーの台頭


そんな海外メーカーに刺激を受けたのか、日本でもアイリスオーヤマなど注目すべき新興メーカーが台頭してきました。

多くは、総合家電メーカーのような多機能な商品ではなく、ニッチ市場狙いの単機能商品を手掛けて、存在感を示しています。

必ずしも先端技術を競うのではなく、ローテクながらユニークな視点からの開発と、独自のデザイン性を武器にしています。

ローテクなので、アイデア勝負です。小さな会社でも商品が作れます。そんな面白い商品づくりが話題になり「一芸家電」としてちょっとしたブームになっているほどです。

そんなメーカーの一つ、高級トースターや掃除機で知られるバルミューダが、東証マザーズに上場することが発表されました。


売上は108億円程度ですが、成長する気まんまんのメーカーが現れたことは、日本の家電産業の未来を照らすものだと思います。


販売チャネルの確保が課題


新興家電メーカーは、販売施策も独特です。

従来のような家電量販チェーンで全国展開するような量産体制がないメーカーが多いものですから、販売チャネルを絞ることになります。

ネット販売のみのメーカーもありますし、百貨店を主要チャネルにしているメーカーもあります。ローカルなホームセンターやディスカウントストアなどで販売しているメーカーもあります。

その他、想像もつかない売り方をしているところもあるのでしょうね。

そんな販売チャネルの絞り込みが、希少性となって、わくわく感を生み出しているところもあるのでしょう。

しかし、やはり販売チャネルの制限は、成長を阻害するものです。

小さいがユニークなメーカーにとって、安定した販売機会の確保は、非常に大きな経営上の課題であると思います。


家電産業復活に向けて


本来、こうした産業の育成こそ、トップ企業であるヤマダ電機が取り組むべき課題ではないでしょうか。

つまり、ヤマダ電機の一部店舗やネットサイトで、新興家電メーカーの商品を積極的に扱い、育成支援するのです。

もう少し詳しくいうと、テスト販売機会の提供と、その後の本格販売の支援です。

最低限の審査を経て、メーカーを選別し、商品化してもらいます。商品ができれば、一部店舗やネットでテスト販売します。

顧客の声や売れ行きをみて、いけると思えば、本格展開をします。

その際、専売契約やPB契約をすればいい。家電量販店を悩ませるショールーム化をある程度回避できます。

量産体制に乏しいメーカーに対しては、工場の紹介や資金援助を行えばいいのです。大塚家具を買収するのに比べれば、微々たる資金でしかないはずです。

育成ノウハウを確立するまで時間がかかるかもしれませんが、システムができあがれば、産業そのものを活性化させることができます。

家電王国復活、というと大きな目標すぎますか。しかしそれが可能となった時には、ヤマダ電機の果たした社会的役割は、ものすごく意義のあるものとなります。


わくわく感のある売り場を復活させよ


家電量販店の売り場にわくわく感がなくなって久しいと感じませんか。

昔は、家電品といえば、夢のような生活を想起させるものだったはずです。家電量販店とは、そんな夢の集積でした。

しかし、いまはどうでしょう。見慣れた商品、予測のつく商品しかないただの置き場のようです。

わくわく感のない売り場が人を惹きつけるはずがありませんし、成長するはずがありません。

家電量販店の復活は、輝ける家電品があってこそです。

従来の大手メーカーにその力も意欲もないとすれば、そこは見限って、自分で産業活性化に取り組むことです。

小さなメーカーの中には、わくわくさせるような商品を作っているところもあります。SNSをみると、家電製品の自慢や称賛がいまだにあふれています。

その芽を育て、林や森にしていくことこそが、トップ量販店たるヤマダ電機の役割としてふさわしいと考えます。


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