戦略とは見えざるもの

2002.09.07

◆戦略とは何か?
戦略(Strategy)の語源は、ギリシャの司令官《ストラテゴス》から来ているそうです。つまり戦略とは、戦闘の前線に立つことではなく、後方から指示する戦争のやり方、戦い方を示しています。
ビジネスにおいては戦略という言葉はおおよそ「目的に対する行動の最適化」と考えられています。少し難しい言い回しですね。
日本では、こう言った人がいます。
「戦略は見えざるもの、戦術は見えるもの」
これは帝国海軍の連合艦隊指令官長官であった山本五十六が残した言葉であると言われています。
とても分かりやすい表現ですね。

◆戦う前に勝負は決まっている
中国の有名な兵法書「孫子」には「算多きは勝ち、算少なきは敗る」という言葉があります。算とは、計算や思索を表します。すなわち、多く考え準備したものが勝ち、考えが足りなかった者は負ける。勝負は時の運、やってみなければ分からないというのは愚者の行動です。そもそも「孫子」は「百戦百勝、善の善なるに非ず」と言っています。戦争してすべて勝ってもそれはベストではない、戦争をした時点で損をしているのだというわけです。戦わずに勝つことがベストです。
第二次世界大戦において、アメリカ海軍に徴用された数学教授のクープマンは、ランチェスター法則やゲーム理論など様々な数式理論を組み合わせて「戦略2、戦術1の法則」を編み出しました。これは、戦術の2倍の戦力を戦略にあてることが戦力を最大化するということを示しています。この場合、戦術とは実際の戦闘行為、戦略とは後方の生産能力や兵站などのことです。この考えに基づき、アメリカ軍は戦略兵器の開発、生産拠点の破壊などを主な作戦にしたと言われています。戦闘行為が行われる頃には、勝負は決している、それがアメリカ軍の戦い方でした。
つまり、見えないもの(戦略)こそ重要なのです。

◆経営者の役割
戦略に責任を持つのは経営者でしかありえません。見えないものを見ることができなければ、経営者は務まらないというわけです。よく現場が好きな社長とかがいますが、現場に張り付くあまり、戦略の視点を忘れてしまえば、経営者失格です。もちろん現場の状況を理解することは結構なことなんですが、それにかまけていてはだめです。
経営者の大きな役割は、会社の大きな方向性を打ち立てること、さらに中期的な戦略目標を作ること。もう1つは、会社の方向性に従って、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報など)を振り分けることです。

◆経営戦略プロセス
戦略的思考とは、見えないものを見る思考のこと。
今、目の前で起こっていることは結果です。それが起こるためには、1時間前に何かきっかけがあったかも知れない。しかも、そのきっかけが起こるためにはさらに1ヶ月前に何か原因があったかも知れない。このように、見えないものを見るとは、長期的な視点と構造(プロセス)的な視点が必要です。
経営において成果を出そうとすれば、行動が必要です。その行動をするための計画や考え方が戦略です。さらに戦略を立てるためには、自社の現状を理解し、目標とのギャップを正確につかんでおかなければなりません。もちろん、ギャップをつかむためには、目標を明確にしておくことが必要です。
経営戦略とは、(1)ビジョン・目標を策定し、(2)現状を把握、経営課題を理解し、(3)戦略を策定し、(4)行動計画に落とし込むプロセスで成り立ちます。

◆ビジョン・目標
未来のことは誰にも分かりません。もし、見えない未来を見ることができれば、多くのことが可能になるに違いありません。
まさにビジョンとは、見えない未来を見ることです。確かなビジョン、皆が夢をかけることのできる魅力的なビジョンを描くことができれば、多くの力が結集して、不可能に思えたことも可能にすることができることでしょう。
ただし、根拠の無い勝手な思い込みは妄想につながるので注意が必要です。ピーター・ドラッカーは客観的なデータを積み上げて少子高齢化社会の状況を予見した「すでに起こった未来」という著作を書いています。すぐれた経営者や経営コンサルタントは、未来を見る力を持っています。
ビジョンとは、科学的・客観的な予測のもと、未来の経営環境において「こうありたい自分」を描くことです。

◆現状・課題
カエルは、徐々に水温を高くしていくと、気づかないままに茹ってしまうそうです。試したことがないので、実際にそうなのかは分かりませんが(笑)
しかし、そのカエルのことを笑うことができない会社はいっぱいあります。
友人の税理士に聞いたところ、古い業種などでは毎年毎年、徐々に売上が下がってきているので、危機感が麻痺しているとしか思えない。とうとう赤字になってしまったのに、それでも社長は安穏としている。昔儲かった時にためたお金や年金があるからいいんだそうです。こんな会社に人生の一時期を託す社員は不幸ですね。
営業コンサルティングを行う時にも、現状把握は不可欠です。その時のツールに3CやSWOT分析があります。
「現状は分かりきっている。営業がダメだから売れないんだ」という会社に限って、自分のことを的確に見ていません。過去の成功体験があるので、自社の強みを過大評価してしまっています。多くは業界人にしか通用しない強みを並べ立て、こんなにすごいんだ、というわけです。
自分にとっていちばん見えないものは自分自身だということを忘れてはなりませんね。

◆戦略
行動は見ることができますが、方法や手順、背景にある考え方は見ることができません。戦略とはその見えない部分です。
戦略には2種類あります。1つは、方向性を決める大きな戦略。もう1つは、それを具体化した個別戦略です。
方向性を決めるには、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を行うのがいいでしょう。ポジショニングマップなどのマトリクスをうまく使うことで、様々な方向性を見ることができます。この方向性を間違うと、後に取り返しがつかなくなります。グズグズしているわけにはいかないのですが、注意しなければなりません。
具体的な個別戦略としては、マーケティング・ミックス(4P)の枠組みで考えれば、整理がしやすくなります。4Pとは、製品、価格、プロモーション、流通(product,price,promotion,place)のこと。
戦略は見えないもの。その見えないものをあぶりだすための工夫が、STPや4Pなどの枠組みです。必ずしも、この枠組みに囚われてはならないのですが、知っておくと便利なツールです。

◆製品
製品は見えるものです。だが、本当に見えるものだけで判断してもいいのでしょうか?
よくヒット商品をマネした類似商品が発売されます。それらが、本家ほどはヒットしないのはなぜでしょうか?
ヒット商品には、ヒットした理由があるはずです。その理由は、見ることはできません。実は、見えないヒットの理由が重要なのです。ですから、見える部分(製品の形態)だけをマネしても、ヒットには至らないことが殆どです。
マーケティングの大家フィリップ・コトラーは製品を三層構造で示しています。まず、中心になるのが製品の核といわれるベネフィット。その外側が製品の形態や機能。一番外側が包装やアフターサービスなどの付随機能。難しいですね。
コトラーの著作にはこんな例が述べられています。ある地域で、1/4インチのドリルが売れたが、顧客は何を欲しかったのか?もちろん、ドリルが欲しかったのではありません。1/4インチの穴が欲しかったのです。
この1/4の穴というのが、顧客にとってのベネフィット(便益)であり、製品の本質です。
チャールズ・レブロンは、口紅の本質を「希望」と言っています。セルマー・ウィーラーはステーキの販売のコツを「ジュージューという音を売れ」と言っています。どれも皆、表面からは見えない本質を言い表した言葉です。
コトラーは、製品とは「問題解決のためのサービスがパッケージされたもの」と言っています。確かに、我々が製品を買う時、のどが渇いた、お腹が空いた、結婚式に着ていく服がない、夜よく眠れない、子供の成績が伸びないなど、何らかの問題を抱えています。その解決をしてくれるものがあるから、代金を支払って、その製品を買うわけです。
もし、その商品がヒットした理由が完璧に分かるとすれば、極端な話、理由(構造)だけをマネして、全く違う形態の商品を作ればいいわけです。そうすれば、知的財産の問題もクリアできます。
営業は、製品に対しても、見えないものを見る力が必要とされるのです。

◆価格
モノの価格が経済学の言うとおり、需要と供給のバランスで決まるならば、価格に悩むことは何もありません。しかし実際には、価格には見えないことだらけです。
安ければ売れるというわけではない。全く売れないからと、やけくそで倍の値段にしたら突如売れ出したなどという話もあるぐらいです。もちろん、高ければすべて売れるというものでもない。
そもそも消費者が価格に感じる値ごろ感は「消費者が感じる価値÷実際の価格」で測ることができます。全くもって主観の問題です。
価格の設定は会社の収益に直結する問題だけに安易に現場の営業が改訂すべきものではありません。
ただ、価格は、営業戦略の要であることを理解する必要があります。

◆プロモーション
顧客ニーズに合致した製品があり、適正な価格設定がされたとしても、それを顧客が知らなければ、モノが売れることはありません。プロモーションとは、顧客に自社の製品やサービスを知らしめるための方法です。
プロモーションには、広告、販売促進、人的営業、パブリシティ、口コミなどがあります。
ヒット商品を豊富に持つ大企業は、テレビCMを大々的に行います。しかし、小さな会社はそれだけの資金はありません。それでは、小さな会社が生きる道はどこにあるのでしょうか。
実は、小さくても強い(戦略的な)会社は、独自のプロモーション手段を持っています。ミニコミ誌に対する広告なのか、DMなのか、口コミを喚起する方法なのか、営業部隊が強靭なのか、何らかの秘密があるものです。そうではないと、強くはなりえません。傍から見ていると、それが見えないだけです。
プロモーション手段は、その企業のSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)に密接に関連しています。ターゲットに到達するための最善の方法が、その企業のプロモーション手段になります。逆に言うと、プロモーション手段を研究することで、その企業の戦略が類推できます。
もちろん、プロモーションの方法は、営業の活動内容に密接に関連するので、営業担当者は自社のプロモーション戦略を理解しておかなければなりません。

◆流通
流通チャネルの選択も、営業の活動内容に密接に関わります。プロモーションが、自社の情報を顧客に届ける手段だとすれば、流通は、製品を顧客に届け、かつ顧客の情報を自社に届けてくれるものです。もちろん、その情報のやりとりを円滑にするのが営業担当者の仕事です。
戦略的な会社は、流通を選んでいます。扱ってくれるならどこでもいいという姿勢は、むしろ営業活動を阻害するものとなります。
営業担当者は、なぜ自社がその流通チャネルを選んだのか、その意味を理解しなければなりません。流通チャネル網は一度構築していまえば、変えてしまうことには大きなエネルギーとコストがかかります。そのため、機能しなくなった流通チャネルを歴史の遺産として大事に守っている会社も多く見られます。最終顧客に確実に届くのが目的なのに、流通チャネルに媚を売ることを目的にしてしまっては本末転倒です。営業担当者は、自分の営業活動が、本当に経営戦略に合致しているのかを考えなければなりません。


◆戦略とは何か?
戦略(Strategy)の語源は、ギリシャの司令官《ストラテゴス》から来ているそうです。つまり戦略とは、戦闘の前線に立つことではなく、後方から指示する戦争のやり方、戦い方を示しています。
ビジネスにおいては戦略という言葉はおおよそ「目的に対する行動の最適化」と考えられています。少し難しい言い回しですね。
日本では、こう言った人がいます。
「戦略は見えざるもの、戦術は見えるもの」
これは帝国海軍の連合艦隊指令官長官であった山本五十六が残した言葉であると言われています。
とても分かりやすい表現ですね。

◆戦う前に勝負は決まっている
中国の有名な兵法書「孫子」には「算多きは勝ち、算少なきは敗る」という言葉があります。算とは、計算や思索を表します。すなわち、多く考え準備したものが勝ち、考えが足りなかった者は負ける。勝負は時の運、やってみなければ分からないというのは愚者の行動です。そもそも「孫子」は「百戦百勝、善の善なるに非ず」と言っています。戦争してすべて勝ってもそれはベストではない、戦争をした時点で損をしているのだというわけです。戦わずに勝つことがベストです。
第二次世界大戦において、アメリカ海軍に徴用された数学教授のクープマンは、ランチェスター法則やゲーム理論など様々な数式理論を組み合わせて「戦略2、戦術1の法則」を編み出しました。これは、戦術の2倍の戦力を戦略にあてることが戦力を最大化するということを示しています。この場合、戦術とは実際の戦闘行為、戦略とは後方の生産能力や兵站などのことです。この考えに基づき、アメリカ軍は戦略兵器の開発、生産拠点の破壊などを主な作戦にしたと言われています。戦闘行為が行われる頃には、勝負は決している、それがアメリカ軍の戦い方でした。
つまり、見えないもの(戦略)こそ重要なのです。

◆経営者の役割
戦略に責任を持つのは経営者でしかありえません。見えないものを見ることができなければ、経営者は務まらないというわけです。よく現場が好きな社長とかがいますが、現場に張り付くあまり、戦略の視点を忘れてしまえば、経営者失格です。もちろん現場の状況を理解することは結構なことなんですが、それにかまけていてはだめです。
経営者の大きな役割は、会社の大きな方向性を打ち立てること、さらに中期的な戦略目標を作ること。もう1つは、会社の方向性に従って、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報など)を振り分けることです。

◆経営戦略プロセス
戦略的思考とは、見えないものを見る思考のこと。
今、目の前で起こっていることは結果です。それが起こるためには、1時間前に何かきっかけがあったかも知れない。しかも、そのきっかけが起こるためにはさらに1ヶ月前に何か原因があったかも知れない。このように、見えないものを見るとは、長期的な視点と構造(プロセス)的な視点が必要です。
経営において成果を出そうとすれば、行動が必要です。その行動をするための計画や考え方が戦略です。さらに戦略を立てるためには、自社の現状を理解し、目標とのギャップを正確につかんでおかなければなりません。もちろん、ギャップをつかむためには、目標を明確にしておくことが必要です。
経営戦略とは、(1)ビジョン・目標を策定し、(2)現状を把握、経営課題を理解し、(3)戦略を策定し、(4)行動計画に落とし込むプロセスで成り立ちます。

◆ビジョン・目標
未来のことは誰にも分かりません。もし、見えない未来を見ることができれば、多くのことが可能になるに違いありません。
まさにビジョンとは、見えない未来を見ることです。確かなビジョン、皆が夢をかけることのできる魅力的なビジョンを描くことができれば、多くの力が結集して、不可能に思えたことも可能にすることができることでしょう。
ただし、根拠の無い勝手な思い込みは妄想につながるので注意が必要です。ピーター・ドラッカーは客観的なデータを積み上げて少子高齢化社会の状況を予見した「すでに起こった未来」という著作を書いています。すぐれた経営者や経営コンサルタントは、未来を見る力を持っています。
ビジョンとは、科学的・客観的な予測のもと、未来の経営環境において「こうありたい自分」を描くことです。

◆現状・課題
カエルは、徐々に水温を高くしていくと、気づかないままに茹ってしまうそうです。試したことがないので、実際にそうなのかは分かりませんが(笑)
しかし、そのカエルのことを笑うことができない会社はいっぱいあります。
友人の税理士に聞いたところ、古い業種などでは毎年毎年、徐々に売上が下がってきているので、危機感が麻痺しているとしか思えない。とうとう赤字になってしまったのに、それでも社長は安穏としている。昔儲かった時にためたお金や年金があるからいいんだそうです。こんな会社に人生の一時期を託す社員は不幸ですね。
営業コンサルティングを行う時にも、現状把握は不可欠です。その時のツールに3CやSWOT分析があります。
「現状は分かりきっている。営業がダメだから売れないんだ」という会社に限って、自分のことを的確に見ていません。過去の成功体験があるので、自社の強みを過大評価してしまっています。多くは業界人にしか通用しない強みを並べ立て、こんなにすごいんだ、というわけです。
自分にとっていちばん見えないものは自分自身だということを忘れてはなりませんね。

◆戦略
行動は見ることができますが、方法や手順、背景にある考え方は見ることができません。戦略とはその見えない部分です。
戦略には2種類あります。1つは、方向性を決める大きな戦略。もう1つは、それを具体化した個別戦略です。
方向性を決めるには、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を行うのがいいでしょう。ポジショニングマップなどのマトリクスをうまく使うことで、様々な方向性を見ることができます。この方向性を間違うと、後に取り返しがつかなくなります。グズグズしているわけにはいかないのですが、注意しなければなりません。
具体的な個別戦略としては、マーケティング・ミックス(4P)の枠組みで考えれば、整理がしやすくなります。4Pとは、製品、価格、プロモーション、流通(product,price,promotion,place)のこと。
戦略は見えないもの。その見えないものをあぶりだすための工夫が、STPや4Pなどの枠組みです。必ずしも、この枠組みに囚われてはならないのですが、知っておくと便利なツールです。

◆製品
製品は見えるものです。だが、本当に見えるものだけで判断してもいいのでしょうか?
よくヒット商品をマネした類似商品が発売されます。それらが、本家ほどはヒットしないのはなぜでしょうか?
ヒット商品には、ヒットした理由があるはずです。その理由は、見ることはできません。実は、見えないヒットの理由が重要なのです。ですから、見える部分(製品の形態)だけをマネしても、ヒットには至らないことが殆どです。
マーケティングの大家フィリップ・コトラーは製品を三層構造で示しています。まず、中心になるのが製品の核といわれるベネフィット。その外側が製品の形態や機能。一番外側が包装やアフターサービスなどの付随機能。難しいですね。
コトラーの著作にはこんな例が述べられています。ある地域で、1/4インチのドリルが売れたが、顧客は何を欲しかったのか?もちろん、ドリルが欲しかったのではありません。1/4インチの穴が欲しかったのです。
この1/4の穴というのが、顧客にとってのベネフィット(便益)であり、製品の本質です。
チャールズ・レブロンは、口紅の本質を「希望」と言っています。セルマー・ウィーラーはステーキの販売のコツを「ジュージューという音を売れ」と言っています。どれも皆、表面からは見えない本質を言い表した言葉です。
コトラーは、製品とは「問題解決のためのサービスがパッケージされたもの」と言っています。確かに、我々が製品を買う時、のどが渇いた、お腹が空いた、結婚式に着ていく服がない、夜よく眠れない、子供の成績が伸びないなど、何らかの問題を抱えています。その解決をしてくれるものがあるから、代金を支払って、その製品を買うわけです。
もし、その商品がヒットした理由が完璧に分かるとすれば、極端な話、理由(構造)だけをマネして、全く違う形態の商品を作ればいいわけです。そうすれば、知的財産の問題もクリアできます。
営業は、製品に対しても、見えないものを見る力が必要とされるのです。

◆価格
モノの価格が経済学の言うとおり、需要と供給のバランスで決まるならば、価格に悩むことは何もありません。しかし実際には、価格には見えないことだらけです。
安ければ売れるというわけではない。全く売れないからと、やけくそで倍の値段にしたら突如売れ出したなどという話もあるぐらいです。もちろん、高ければすべて売れるというものでもない。
そもそも消費者が価格に感じる値ごろ感は「消費者が感じる価値÷実際の価格」で測ることができます。全くもって主観の問題です。
価格の設定は会社の収益に直結する問題だけに安易に現場の営業が改訂すべきものではありません。
ただ、価格は、営業戦略の要であることを理解する必要があります。

◆プロモーション
顧客ニーズに合致した製品があり、適正な価格設定がされたとしても、それを顧客が知らなければ、モノが売れることはありません。プロモーションとは、顧客に自社の製品やサービスを知らしめるための方法です。
プロモーションには、広告、販売促進、人的営業、パブリシティ、口コミなどがあります。
ヒット商品を豊富に持つ大企業は、テレビCMを大々的に行います。しかし、小さな会社はそれだけの資金はありません。それでは、小さな会社が生きる道はどこにあるのでしょうか。
実は、小さくても強い(戦略的な)会社は、独自のプロモーション手段を持っています。ミニコミ誌に対する広告なのか、DMなのか、口コミを喚起する方法なのか、営業部隊が強靭なのか、何らかの秘密があるものです。そうではないと、強くはなりえません。傍から見ていると、それが見えないだけです。
プロモーション手段は、その企業のSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)に密接に関連しています。ターゲットに到達するための最善の方法が、その企業のプロモーション手段になります。逆に言うと、プロモーション手段を研究することで、その企業の戦略が類推できます。
もちろん、プロモーションの方法は、営業の活動内容に密接に関連するので、営業担当者は自社のプロモーション戦略を理解しておかなければなりません。

◆流通
流通チャネルの選択も、営業の活動内容に密接に関わります。プロモーションが、自社の情報を顧客に届ける手段だとすれば、流通は、製品を顧客に届け、かつ顧客の情報を自社に届けてくれるものです。もちろん、その情報のやりとりを円滑にするのが営業担当者の仕事です。
戦略的な会社は、流通を選んでいます。扱ってくれるならどこでもいいという姿勢は、むしろ営業活動を阻害するものとなります。
営業担当者は、なぜ自社がその流通チャネルを選んだのか、その意味を理解しなければなりません。流通チャネル網は一度構築していまえば、変えてしまうことには大きなエネルギーとコストがかかります。そのため、機能しなくなった流通チャネルを歴史の遺産として大事に守っている会社も多く見られます。最終顧客に確実に届くのが目的なのに、流通チャネルに媚を売ることを目的にしてしまっては本末転倒です。営業担当者は、自分の営業活動が、本当に経営戦略に合致しているのかを考えなければなりません。


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