経営理念こそ究極の差別化

2007.03.29


(2007年3月29日メルマガより)

■NPOランチェスター協会の理事であり、ランチェスター戦略コンサルタ
ントの第一人者である福永雅文さんの新著
「ランチェスター戦略『一点突破』の法則」が発売されました。

みなさん、もう読まれたでしょうか?
もし、読まれていないなら、一読されることをお奨めします。

私が読む限り、この本は、近年のランチェスター戦略本の中では出色の出来
です。おそらく、田岡信夫先生の諸作を除けば、ランチェスター戦略本の最
高峰と言えるのではないでしょうか。

■福永さんには、
「ランチェスター戦略『弱者逆転』の法則」という著作もあります。こちらは、
田岡信夫先生が作られたランチェスター戦略を福永さんの視点から分かり
やすく捉えなおしたもので、福永版ランチェスター戦略入門書という趣のもの
でした。

今回の著作は、中小・零細企業を対象に、小さな会社がこの時代を勝ち抜く
ためにはどうすればいいのかを、平易な文章で分かりやすく書かれています。

また、ここでは福永さんのコンサルティング実践の中から、生み出された新
たな「体系」を作ろうという意欲が見られます。それは具体的で実践的な体
系化の試みです。

私は、その体系化の部分でこの著作を評価しています。

■今、巷には、ビジネスのノウハウ伝授を謳った本が溢れています。それら
の多くは、扇情的とでも言えるような強い言葉を使って、短期的な効用を約
束しています。

残念ながらその多くが戦術レベルの方策を列記したものに過ぎません。

本来、戦略から理解しなければ、応用が効かないはず。それなのに、原理原
則や戦略レベルからビジネスを語った本はわずかです。

かくなる上は、私がランチェスター戦略の決定版を書かねばならん!

と勢い込んでいたところに、戦略体系を伝える福永さんの著作が登場しまし
た。

おかげで私は、その責を逃れたわけです。誠に喜ばしいことですね^^

■この本の中で、私が特に感じ入ったのは「経営理念」の重要性をきっちり
と書いていることです。

福永さんは、この経営理念を差別化戦略を突き詰めたところにあると位置づ
けています。

■ランチェスター戦略では、弱者の基本戦略を差別化であると教えています。

力のない者が、強い者のマネをしていてはダメだ。同じことをしていたので
は、きっと潰されてしまう。人と違うことをしなければいけない。

成功した起業家などは、必ず、こういう言い方をしていますね。起業家の半
生記などを読むと、どこかにこういう言葉が出てきますから見てください。

私もセミナーや研修などで、差別化の概念を説明すると、多くの方が賛同し
てくれます。ここに異論を唱える人はあまりいません。

ところが、具体的な差別化を考える段になるととたんにおかしくなる^^;

■大きさを変える。色を変える。素材を変える。パッケージを変える。ネー
ミングを変える。品揃えを変える。サービスを追加する。価格を変える。広
告を変える。

切り口はいろいろありますから、アイデアは出てくるはずです。

ところが、どのアイデアを見ても何かが足りない。

例えばこんなことがありました。ある小さな製造業の方が、チラシを持って
こられました。その業界(ある特殊な製造機械)では、このようなチラシを
作ることは今までなかったとのこと。よく見ると、派手な色使いで、まさに
扇情的な言葉が並べられていました。まるで「インターネットで簡単に月
100万円儲ける」ノウハウを売るような感じです。こんなチラシでは、評判
を落とすことがあっても、会社の長期的な利益に結びつけることができると
は思えません。

要するに、その人は差別化をしていると言いつつも「儲かっている(と思わ
れる)人のマネをしたらきっと儲かる」という姿勢なのです。

皆が皆、差別化を志向し出すと、お互いがぶつかってしまい、結局は人のマ
ネと同じになってしまうという矛盾に陥ってしまいます。

つまり小手先の差別化をいくらやっても意味はあまりないということです。

■結局、差別化に命を吹き込むのは、企業の理念に他なりません。

「理念でメシが喰えるか」とは聞いたような言葉ですが、実際には「理念も
ないのにメシが喰えてるの?」と言いたいぐらいです。

もちろん建前だけの理念なら無い方がマシです。貢献とか奉仕とか発展とか
綺麗な言葉を適当に並べればそれなりの経営理念は作ることができます。し
かし、そんなものを額縁に入れていても意味はありません。

むしろ、どろどろとした本音の言葉で語る理念の方が力を発揮します。

ピーター・ドラッカーは、ある歯医者から「君が身元不明の死体になった時
に、検視官から『この死体はいい歯医者にかかった』と言われるような治療
をする」と言われたそうです。いささかブラックジョークのようなこの言葉
こそ、本音の理念だと私は考えます。

だから、小さな会社は、自分の言葉で経営理念を作らなければなりません。
コンサルタントに作ってもらうことなどもってのほか。「理念を作ってもら
ったのに売上が伸びない。金を返せ」とバカな揉め事に発展するのがオチで
す。

■有名なのは、リッツ・カールトン・ホテルのクレド(信条)です。世界最
高のサービスと言われる同ホテルの秘密を語る時、クレドを抜きにすること
はできません。

「リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは、感覚を満たすこ
こちよさ、満ち足りた幸福感、そしてお客様が言葉にされない願望やニーズ
をも先読みしておこたえするサービスの心です」(クレド・カードの一部)

クレドを読み、従業員は「自分はお客様に満足してもらうためにここにいる」
と確認すると言います。

ここまで理念に真剣に向き合っていると、小手先の差別化など考える必要も
ありません。人と同じサービスをしているようでも、顧客が受ける印象は全
く違うものになっていることでしょう。

彼らにとって、売上や利益は、理念を実現するための手段に過ぎないと思わ
れます。ここまで本音に落ちてこそ、経営理念は力を発揮するものなのです。

■ランチェスター戦略は、第二次世界大戦で利用された軍事戦略を田岡信夫
先生が、ビジネスの戦略に置き換えたものです。

極めて数値的に組み立てられたものなので、時として、敵を叩き潰すための
身も蓋もない競争戦略の側面を持ちます。(また、それだからこそ、効果的
であり、人気が高いというわけです)

そこに経営理念という概念を組み込んだことは、現場に接している福永さん
の実感であり、功績であると、思う次第です。


(2007年3月29日メルマガより)

■NPOランチェスター協会の理事であり、ランチェスター戦略コンサルタ
ントの第一人者である福永雅文さんの新著
「ランチェスター戦略『一点突破』の法則」が発売されました。

みなさん、もう読まれたでしょうか?
もし、読まれていないなら、一読されることをお奨めします。

私が読む限り、この本は、近年のランチェスター戦略本の中では出色の出来
です。おそらく、田岡信夫先生の諸作を除けば、ランチェスター戦略本の最
高峰と言えるのではないでしょうか。

■福永さんには、
「ランチェスター戦略『弱者逆転』の法則」という著作もあります。こちらは、
田岡信夫先生が作られたランチェスター戦略を福永さんの視点から分かり
やすく捉えなおしたもので、福永版ランチェスター戦略入門書という趣のもの
でした。

今回の著作は、中小・零細企業を対象に、小さな会社がこの時代を勝ち抜く
ためにはどうすればいいのかを、平易な文章で分かりやすく書かれています。

また、ここでは福永さんのコンサルティング実践の中から、生み出された新
たな「体系」を作ろうという意欲が見られます。それは具体的で実践的な体
系化の試みです。

私は、その体系化の部分でこの著作を評価しています。

■今、巷には、ビジネスのノウハウ伝授を謳った本が溢れています。それら
の多くは、扇情的とでも言えるような強い言葉を使って、短期的な効用を約
束しています。

残念ながらその多くが戦術レベルの方策を列記したものに過ぎません。

本来、戦略から理解しなければ、応用が効かないはず。それなのに、原理原
則や戦略レベルからビジネスを語った本はわずかです。

かくなる上は、私がランチェスター戦略の決定版を書かねばならん!

と勢い込んでいたところに、戦略体系を伝える福永さんの著作が登場しまし
た。

おかげで私は、その責を逃れたわけです。誠に喜ばしいことですね^^

■この本の中で、私が特に感じ入ったのは「経営理念」の重要性をきっちり
と書いていることです。

福永さんは、この経営理念を差別化戦略を突き詰めたところにあると位置づ
けています。

■ランチェスター戦略では、弱者の基本戦略を差別化であると教えています。

力のない者が、強い者のマネをしていてはダメだ。同じことをしていたので
は、きっと潰されてしまう。人と違うことをしなければいけない。

成功した起業家などは、必ず、こういう言い方をしていますね。起業家の半
生記などを読むと、どこかにこういう言葉が出てきますから見てください。

私もセミナーや研修などで、差別化の概念を説明すると、多くの方が賛同し
てくれます。ここに異論を唱える人はあまりいません。

ところが、具体的な差別化を考える段になるととたんにおかしくなる^^;

■大きさを変える。色を変える。素材を変える。パッケージを変える。ネー
ミングを変える。品揃えを変える。サービスを追加する。価格を変える。広
告を変える。

切り口はいろいろありますから、アイデアは出てくるはずです。

ところが、どのアイデアを見ても何かが足りない。

例えばこんなことがありました。ある小さな製造業の方が、チラシを持って
こられました。その業界(ある特殊な製造機械)では、このようなチラシを
作ることは今までなかったとのこと。よく見ると、派手な色使いで、まさに
扇情的な言葉が並べられていました。まるで「インターネットで簡単に月
100万円儲ける」ノウハウを売るような感じです。こんなチラシでは、評判
を落とすことがあっても、会社の長期的な利益に結びつけることができると
は思えません。

要するに、その人は差別化をしていると言いつつも「儲かっている(と思わ
れる)人のマネをしたらきっと儲かる」という姿勢なのです。

皆が皆、差別化を志向し出すと、お互いがぶつかってしまい、結局は人のマ
ネと同じになってしまうという矛盾に陥ってしまいます。

つまり小手先の差別化をいくらやっても意味はあまりないということです。

■結局、差別化に命を吹き込むのは、企業の理念に他なりません。

「理念でメシが喰えるか」とは聞いたような言葉ですが、実際には「理念も
ないのにメシが喰えてるの?」と言いたいぐらいです。

もちろん建前だけの理念なら無い方がマシです。貢献とか奉仕とか発展とか
綺麗な言葉を適当に並べればそれなりの経営理念は作ることができます。し
かし、そんなものを額縁に入れていても意味はありません。

むしろ、どろどろとした本音の言葉で語る理念の方が力を発揮します。

ピーター・ドラッカーは、ある歯医者から「君が身元不明の死体になった時
に、検視官から『この死体はいい歯医者にかかった』と言われるような治療
をする」と言われたそうです。いささかブラックジョークのようなこの言葉
こそ、本音の理念だと私は考えます。

だから、小さな会社は、自分の言葉で経営理念を作らなければなりません。
コンサルタントに作ってもらうことなどもってのほか。「理念を作ってもら
ったのに売上が伸びない。金を返せ」とバカな揉め事に発展するのがオチで
す。

■有名なのは、リッツ・カールトン・ホテルのクレド(信条)です。世界最
高のサービスと言われる同ホテルの秘密を語る時、クレドを抜きにすること
はできません。

「リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは、感覚を満たすこ
こちよさ、満ち足りた幸福感、そしてお客様が言葉にされない願望やニーズ
をも先読みしておこたえするサービスの心です」(クレド・カードの一部)

クレドを読み、従業員は「自分はお客様に満足してもらうためにここにいる」
と確認すると言います。

ここまで理念に真剣に向き合っていると、小手先の差別化など考える必要も
ありません。人と同じサービスをしているようでも、顧客が受ける印象は全
く違うものになっていることでしょう。

彼らにとって、売上や利益は、理念を実現するための手段に過ぎないと思わ
れます。ここまで本音に落ちてこそ、経営理念は力を発揮するものなのです。

■ランチェスター戦略は、第二次世界大戦で利用された軍事戦略を田岡信夫
先生が、ビジネスの戦略に置き換えたものです。

極めて数値的に組み立てられたものなので、時として、敵を叩き潰すための
身も蓋もない競争戦略の側面を持ちます。(また、それだからこそ、効果的
であり、人気が高いというわけです)

そこに経営理念という概念を組み込んだことは、現場に接している福永さん
の実感であり、功績であると、思う次第です。

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