理屈でメシは食えん!でいいの?

2011.11.03

(2011年11月3日メルマガより)


■昨日(11月2日)の日経新聞に「
高校生の論理的思考力テストが来年2月か
ら実施される」旨の記事が載っていました。

ただし今回は、実態を調査しようというもので、高校生の論理的思考力を積
極的に鍛えようというものではありません。

それでも、日本の教育が知識の詰め込み型から思考力養成型へ脱却しようと
いう兆しなのだとすれば喜ばしいことです。

実際、社会に出ると、論理こそが、万国共通の「共通言語」であることを実
感します。

論理がなければ、言語が明瞭でも、根本的に意思疎通することは困難です。

現在のように経済がグローバル化し、日本企業が積極的に海外に進出してい
かなければいけない状況において、論理的思考力は必要不可欠なものである
といえます。

ぜひとも学校教育から論理的思考の重要性を認識して、学習していただきた
いものだと思います。

■さりながら、現在の日本の企業人がすべて論理的思考をマスターしている
かといえば、甚だ心もとないものがあります。

例えば、ワイドショーを賑わせているスキャンダルなども、関わった人物が
それぞれ論理的に動くことができる人たちなら、起こりえなかったことかも
知れません。

大王製紙御曹司の「エリエールより軽い1万円札」
http://media.yucasee.jp/posts/index/8980

大手メーカーの御曹司が、会社の金を湯水の如く私用に使ったというスキャ
ンダルは、いかにもワイドショー好みのネタですから、ご存知の方も多いで
しょう。

時を同じくして、精密機器メーカーにも不明朗な金がらみのスキャンダルが
持ち上がりました。

これが杜撰経営の核心!ほとんど価値のない会社を700億円で買収したオ
リンパス「疑惑の取締役会資料」をスクープ公開
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/23598

こちらはワイドショーネタではありませんが、内容はより深刻です。

疑惑通りだとすれば、前経営陣が自分たちの怪しげな所業を隠蔽するために
イギリス人の社長を突如解任したわけです。

国際的な注目を集めてしまい外資系金融機関が日本企業に対する警戒感を強
めているそうです。

■この2つのスキャンダルに共通しているのが、論理性の欠如です。

両社とも、これだけ世間の疑惑に晒されながら、論理的な説明なしに事態の
鎮静化を待っているような感があります。

ありていに言えば、この2つの会社の経営陣は「会社は経営者のものだ」と
思っているのではないか?

当然のことながら、制度上、株式会社は株主のものです。そして会社は上場
しても、していなくても、極めて社会的な存在です。

「会社は誰のものか?」という議論は、ライブドア事件の頃に散々なされま
した。

会社が様々なステークホルダー(利害関係者)と関わっている限りは、その
すべての関係者に大なり小なりの責任を持っています。

つまりあらゆる会社は、社会のものであると言ってもいい。社会のものでな
い会社は、不要な存在です。

マーケティングの教科書を読めば、1頁目から会社が社会的な存在であるこ
とが懇切丁寧に書かれていますので、両社の経営陣には、一読をお勧めいた
します。

こういった原理原則を無視した所業がまかり通ると考えているとすれば、そ
れは両社の経営陣が「おれの会社のことなんだからおれの勝手だ。外野がご
ちゃごちゃ言うな!」とでも思っているのではないか。

なんて感じてしまいます。

■そんな傲慢な経営者像は、時代錯誤でしょうかね。。。

しかし、私が見聞きした限り「理屈で飯は食えん」「理屈はどうでもええか
ら儲かるようにしてくれ」と言う経営者は多い(言外に匂わせる人も含めて)
と思います。

もちろん私の拙い経験ですから、それが全てではありませんが。

正直なところ、自分で業績を上げようというオーナー経営者はまだマシかも
知れません。

ひどい場合、自分の任期中に波風を立てなければいいや...ぐらいに考えてい
るのではないか、と思える人もいます。

■会社の将来を真剣に憂うなら、方向性(戦略)をどのようにしていくかを
決めなければなりません。

戦略は占いの類で決めるべきものではありません。

つまりそれは、極めて論理的でなければならない。

全社が論理的思考を普通に行うことで、戦略に納得性ができて、力を発揮す
ることができるのです。

だから、企業経営の基盤は論理的思考でなければならない。

当たり前のことなんですよね。

■とはいいながら、現場営業の立場から言わせていただくと、理屈通りに物
事が進まないというのも、事実としてありますので、気持ちは分かります。

例えば、経営陣は大まかな方向性をもって企業の戦略を作りますが、そうし
た方向性は抽象的になってしまいますから、応用するのは、現場を預かる者
の裁量です。

一回一回応用することが必要になる上、場合によっては戦略と逆のことをし
なければ現場に当てはまらないこともあります。

応用力の無いものにとっては「戦略なんて役に立たん!」と言いたくもなる
でしょうね。

■現場の営業が、実績を上げるために直接必要になるのは、主に人間関係の
スキルです。

まずは顧客の中のキーマンを見極めて良好な人間関係を作る。

顧客の要望や欲求だけではなく、様々な気持ちの機微を読み取り、タイミン
グよく対応する。

情熱や誠意が伝わるようなコミュニケーションを行う。

こうしたことが、現場では求められます。

しかもそれは一回きりの作業ではなく、何度も何度も繰り返して積み上げて
いくものです。

いわゆる優秀な営業は、上記のようなコミュニケーションを丁寧に粘り強く
行うことができる者であるはずです。

■もう一つは、社内で自分の意見を通すためのスキル。

会社としても顧客の要望を全て聞くわけにはいきませんから、優先順位をつ
けざるを得ません。

どのように優先順位をつけるかが、戦略の大きな機能なのですが、実際には、
担当営業マンの力関係や社内営業の巧拙で順位が変動していきます

例えば商品が欠品している時に、誰の得意先にものを出荷するのか、という
瀬戸際でこうした力が発揮されます。

要するに、現場を預かる者とすれば、業績を上げるために「戦略なんて関係
ない」という状態です。

■どんな企業であろうとも、実績を上げることが出来る人は、こうした人間
関係に関するスキルに優れています。

このスキルなくしては、いくら優等な頭脳があろうとも、ただの迷惑な批判
屋になってしまいます。

だから、会社の中枢にいる人ほど、こうしたスキルに長けていなければなら
ない。

それは間違いありません。

ただし、それだけで、会社生活が対応できてしまうという事態はいささか厄
介です。

下手をすれば、それだけで経営陣に並ぶ人が出てくるかも知れない。

■論理的に考えれば、自分の長期的な発展や成長のためには、戦略を十分に
理解した上で、それを現場に応用する道を探すべきです。

だが、論理を持たない者からすれば、そんな面倒なことはせずに、ひたすら
人間関係スキルに磨きをかけて、その場その場で対応する方が、短期的には
うまくいきます。

特にこの道数十年というベテランからすれば、将来のことを考える必要がな
い身なので、戦略とか論理とかなど邪魔なものでしかありません。

経営陣に入ることを諦めた現場のベテランは怖いものなしですから、お構い
なしですな^^;

私は、組織の戦略立案や戦略的思考の浸透を仕事にしていますので、こうし
た現場のベテラン諸氏との戦いに明け暮れておりますので。。

■ただもっと恐ろしいのは、そうした「現場対応のプロ」のような人が、そ
のまま経営陣に入ってしまう例も多いということです。

たぶんどの企業でも憶えがあるはずです。

本来、管理職になってはいけない人が「兵隊として実績を上げた」というだ
けで上長になってはいませんか。

あるいは実績を上げてもいないが「社内の人間関係のスキルが高い」という
だけで上に行っている人はいませんか。

いずれも、ごく普通の論理的思考ができない上長が、そうした部下を引き上
げた結果、人間関係や情緒で動く組織が出来上がってしまいます。

組織にとっても、当人にとっても、不幸なことです。

もしかすると、日本でも優秀な企業とされてきた冒頭の2社の内情は、そう
した組織づくりが行われてきたのかも知れません。

■個人としては論理的である。仕事もできる。

こうした人たちが集まっているはずなのに、全体としては、論理的な判断が
できない。

そんな組織が出来上がってしまうのは、やはり戦略や論理を軽視してきたた
歴史が知らず知らずのうちに影響を持っているのではないか。

「理屈でメシは食えん」「業績を上げたら文句はないんやろ」こうした発想
が本音としてある限り、組織は変わりません。

やはり、論理的に考えておかしい。判断の根拠が曖昧だ。こうした事態には、
納得できないという態度がとれる組織でなければならない。

「理屈はそうやけど、現実は違うよなーー」という言葉が現場から出るうち
は、今後も、2社のようなリスクを抱えているということです。

特に海外勢は、理屈に合わないことを許してくれませんから。

■というわけで、今回の「高校生の論理的思考をテスト」するという記事を
読んで、素直に喜ばしいことだと思う次第です。

複雑で曖昧な現実を知る前に「理屈に合わないものにはうなづけない」とい
う当たり前の感覚を身に着けるべきです。

できれば小学生あたりから論理的思考の習得に励んでもらいたいものですね。

私も、論理的思考が苦手で苦労してきた歴史があるものですから、若い人に
はそう願いたいものです。

(2011年11月3日メルマガより)


■昨日(11月2日)の日経新聞に「
高校生の論理的思考力テストが来年2月か
ら実施される」旨の記事が載っていました。

ただし今回は、実態を調査しようというもので、高校生の論理的思考力を積
極的に鍛えようというものではありません。

それでも、日本の教育が知識の詰め込み型から思考力養成型へ脱却しようと
いう兆しなのだとすれば喜ばしいことです。

実際、社会に出ると、論理こそが、万国共通の「共通言語」であることを実
感します。

論理がなければ、言語が明瞭でも、根本的に意思疎通することは困難です。

現在のように経済がグローバル化し、日本企業が積極的に海外に進出してい
かなければいけない状況において、論理的思考力は必要不可欠なものである
といえます。

ぜひとも学校教育から論理的思考の重要性を認識して、学習していただきた
いものだと思います。

■さりながら、現在の日本の企業人がすべて論理的思考をマスターしている
かといえば、甚だ心もとないものがあります。

例えば、ワイドショーを賑わせているスキャンダルなども、関わった人物が
それぞれ論理的に動くことができる人たちなら、起こりえなかったことかも
知れません。

大王製紙御曹司の「エリエールより軽い1万円札」
http://media.yucasee.jp/posts/index/8980

大手メーカーの御曹司が、会社の金を湯水の如く私用に使ったというスキャ
ンダルは、いかにもワイドショー好みのネタですから、ご存知の方も多いで
しょう。

時を同じくして、精密機器メーカーにも不明朗な金がらみのスキャンダルが
持ち上がりました。

これが杜撰経営の核心!ほとんど価値のない会社を700億円で買収したオ
リンパス「疑惑の取締役会資料」をスクープ公開
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/23598

こちらはワイドショーネタではありませんが、内容はより深刻です。

疑惑通りだとすれば、前経営陣が自分たちの怪しげな所業を隠蔽するために
イギリス人の社長を突如解任したわけです。

国際的な注目を集めてしまい外資系金融機関が日本企業に対する警戒感を強
めているそうです。

■この2つのスキャンダルに共通しているのが、論理性の欠如です。

両社とも、これだけ世間の疑惑に晒されながら、論理的な説明なしに事態の
鎮静化を待っているような感があります。

ありていに言えば、この2つの会社の経営陣は「会社は経営者のものだ」と
思っているのではないか?

当然のことながら、制度上、株式会社は株主のものです。そして会社は上場
しても、していなくても、極めて社会的な存在です。

「会社は誰のものか?」という議論は、ライブドア事件の頃に散々なされま
した。

会社が様々なステークホルダー(利害関係者)と関わっている限りは、その
すべての関係者に大なり小なりの責任を持っています。

つまりあらゆる会社は、社会のものであると言ってもいい。社会のものでな
い会社は、不要な存在です。

マーケティングの教科書を読めば、1頁目から会社が社会的な存在であるこ
とが懇切丁寧に書かれていますので、両社の経営陣には、一読をお勧めいた
します。

こういった原理原則を無視した所業がまかり通ると考えているとすれば、そ
れは両社の経営陣が「おれの会社のことなんだからおれの勝手だ。外野がご
ちゃごちゃ言うな!」とでも思っているのではないか。

なんて感じてしまいます。

■そんな傲慢な経営者像は、時代錯誤でしょうかね。。。

しかし、私が見聞きした限り「理屈で飯は食えん」「理屈はどうでもええか
ら儲かるようにしてくれ」と言う経営者は多い(言外に匂わせる人も含めて)
と思います。

もちろん私の拙い経験ですから、それが全てではありませんが。

正直なところ、自分で業績を上げようというオーナー経営者はまだマシかも
知れません。

ひどい場合、自分の任期中に波風を立てなければいいや...ぐらいに考えてい
るのではないか、と思える人もいます。

■会社の将来を真剣に憂うなら、方向性(戦略)をどのようにしていくかを
決めなければなりません。

戦略は占いの類で決めるべきものではありません。

つまりそれは、極めて論理的でなければならない。

全社が論理的思考を普通に行うことで、戦略に納得性ができて、力を発揮す
ることができるのです。

だから、企業経営の基盤は論理的思考でなければならない。

当たり前のことなんですよね。

■とはいいながら、現場営業の立場から言わせていただくと、理屈通りに物
事が進まないというのも、事実としてありますので、気持ちは分かります。

例えば、経営陣は大まかな方向性をもって企業の戦略を作りますが、そうし
た方向性は抽象的になってしまいますから、応用するのは、現場を預かる者
の裁量です。

一回一回応用することが必要になる上、場合によっては戦略と逆のことをし
なければ現場に当てはまらないこともあります。

応用力の無いものにとっては「戦略なんて役に立たん!」と言いたくもなる
でしょうね。

■現場の営業が、実績を上げるために直接必要になるのは、主に人間関係の
スキルです。

まずは顧客の中のキーマンを見極めて良好な人間関係を作る。

顧客の要望や欲求だけではなく、様々な気持ちの機微を読み取り、タイミン
グよく対応する。

情熱や誠意が伝わるようなコミュニケーションを行う。

こうしたことが、現場では求められます。

しかもそれは一回きりの作業ではなく、何度も何度も繰り返して積み上げて
いくものです。

いわゆる優秀な営業は、上記のようなコミュニケーションを丁寧に粘り強く
行うことができる者であるはずです。

■もう一つは、社内で自分の意見を通すためのスキル。

会社としても顧客の要望を全て聞くわけにはいきませんから、優先順位をつ
けざるを得ません。

どのように優先順位をつけるかが、戦略の大きな機能なのですが、実際には、
担当営業マンの力関係や社内営業の巧拙で順位が変動していきます

例えば商品が欠品している時に、誰の得意先にものを出荷するのか、という
瀬戸際でこうした力が発揮されます。

要するに、現場を預かる者とすれば、業績を上げるために「戦略なんて関係
ない」という状態です。

■どんな企業であろうとも、実績を上げることが出来る人は、こうした人間
関係に関するスキルに優れています。

このスキルなくしては、いくら優等な頭脳があろうとも、ただの迷惑な批判
屋になってしまいます。

だから、会社の中枢にいる人ほど、こうしたスキルに長けていなければなら
ない。

それは間違いありません。

ただし、それだけで、会社生活が対応できてしまうという事態はいささか厄
介です。

下手をすれば、それだけで経営陣に並ぶ人が出てくるかも知れない。

■論理的に考えれば、自分の長期的な発展や成長のためには、戦略を十分に
理解した上で、それを現場に応用する道を探すべきです。

だが、論理を持たない者からすれば、そんな面倒なことはせずに、ひたすら
人間関係スキルに磨きをかけて、その場その場で対応する方が、短期的には
うまくいきます。

特にこの道数十年というベテランからすれば、将来のことを考える必要がな
い身なので、戦略とか論理とかなど邪魔なものでしかありません。

経営陣に入ることを諦めた現場のベテランは怖いものなしですから、お構い
なしですな^^;

私は、組織の戦略立案や戦略的思考の浸透を仕事にしていますので、こうし
た現場のベテラン諸氏との戦いに明け暮れておりますので。。

■ただもっと恐ろしいのは、そうした「現場対応のプロ」のような人が、そ
のまま経営陣に入ってしまう例も多いということです。

たぶんどの企業でも憶えがあるはずです。

本来、管理職になってはいけない人が「兵隊として実績を上げた」というだ
けで上長になってはいませんか。

あるいは実績を上げてもいないが「社内の人間関係のスキルが高い」という
だけで上に行っている人はいませんか。

いずれも、ごく普通の論理的思考ができない上長が、そうした部下を引き上
げた結果、人間関係や情緒で動く組織が出来上がってしまいます。

組織にとっても、当人にとっても、不幸なことです。

もしかすると、日本でも優秀な企業とされてきた冒頭の2社の内情は、そう
した組織づくりが行われてきたのかも知れません。

■個人としては論理的である。仕事もできる。

こうした人たちが集まっているはずなのに、全体としては、論理的な判断が
できない。

そんな組織が出来上がってしまうのは、やはり戦略や論理を軽視してきたた
歴史が知らず知らずのうちに影響を持っているのではないか。

「理屈でメシは食えん」「業績を上げたら文句はないんやろ」こうした発想
が本音としてある限り、組織は変わりません。

やはり、論理的に考えておかしい。判断の根拠が曖昧だ。こうした事態には、
納得できないという態度がとれる組織でなければならない。

「理屈はそうやけど、現実は違うよなーー」という言葉が現場から出るうち
は、今後も、2社のようなリスクを抱えているということです。

特に海外勢は、理屈に合わないことを許してくれませんから。

■というわけで、今回の「高校生の論理的思考をテスト」するという記事を
読んで、素直に喜ばしいことだと思う次第です。

複雑で曖昧な現実を知る前に「理屈に合わないものにはうなづけない」とい
う当たり前の感覚を身に着けるべきです。

できれば小学生あたりから論理的思考の習得に励んでもらいたいものですね。

私も、論理的思考が苦手で苦労してきた歴史があるものですから、若い人に
はそう願いたいものです。

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