マクドナルドもスターバックスも日本市場をなめるな!

2016.01.28

(2016年1月28日メルマガより)


■不振を極めていた米国マクドナルドですが、
どうやら改善の兆しがみられるようです。

参考:米マクドナルド:既存店売上高が大幅な伸び-朝食の終日提供が寄与
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1IMK1SYF01X01.html

朝食メニューを終日提供することで収益改善したらしい。確かに、ヘルシーメニューっぽい朝マックを夜でも食べたいという需要はあるでしょうね。

収益改善のためならなんでもやる!というスティーブ・イースターブルック最高経営責任者(CEO)の決意をうかがわせる記事です。

■イースターブルックCEOは、昨年の3月に就任したばかりです。

就任してすぐに「マクドナルドは、危機的状況にある」と宣言したイースターブルックCEOは、世界を4つのセグメントに振り分けました。

(1)米国市場→アメリカ

(2)業績を牽引する市場→カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア

(3)成長が見込まれる市場→中国、ロシア、韓国、ポーランド、スイス、オランダ、イタリア、スペイン

(4)基礎的市場→その他の国

こうしたセグメント分けは、戦略方向性を作る上で必要不可欠なものです。

なぜなら、どこに力を入れるのか、入れないのかを決めなければならないからです。

■このセグメントでいうと、日本は「基礎的市場」となります。

言い換えると、これ以上、成長が見込めない重要性の低い市場です。

記憶に新しいでしょうが、およそ1か月前、マクドナルドの米国本社は、日本マクドナルドの株式を売却すると発表しました。

それは、上のセグメント分けに沿ったものです。

すなわち、日本の株式を売却したお金で、成長が見込まれる市場に投資しようという考えです。

■まあ、ありていにいうと、日本は切り捨てられたわけですな。

さぞかし日本マクドナルドはがっくしきているのかなーと思うのですが、案外そうではありません。

もちろん「こりゃダメだ」とレッテルを貼られた現経営陣は落ち込んでいるでしょうが、現場やフランチャイジー店舗の人々は、むしろ歓迎しているようです。

それだけ、米国本社主導による経営が、日本市場にとって的外れなものであったということでしょう。

■なにしろ原田泳幸CEO時代の前半は、うまくまわっていたのです。

ところが、本社が干渉を強めた後半においては、業績悪化に歯止めがかからなくなりました。

この点、原田CEOのやり方に問題があるのだとか、あるいは逆に原田CEOがやりたかった改革を米国本社がやらせなかったのだとか、いろいろ言われております。

私は、個人的には後者ではないかと思っておりますが、本当のところは外野からはわかりません。

ただ、原田CEOの後任であるサラ・カサノバCEOの時代になっても、業績は上向いていない状況を考えると、やはり米国主導の経営には問題があるということです。

■これって、まるでソフトバンクが買収する前のボーダーフォンのような状況ではないですか。

英国本社からの遠隔経営で、日本市場の状況に合わない施策をとり続け、じり貧に陥っていたのが、当時のボーダーフォンでした。

それを立て直したのが、ソフトバンクです。

当然、日本市場をよく知る者に任せなければ、的確な経営などできません。日本市場をなめるな。という話ですよ。

だから米国本社が、日本マクドナルドの再建を日本の誰かに任せようというのは理にかなった施策だと思います。

■ところが、その後のニュースをみると、売却先が決まらないらしい。

それもむべなるかな。今回、売り出したのは、本社が保有する約50%の株式のうちの33%です。

米国本社は、これで1000億円を調達しようという腹積もりのようです。

が、この中途半端な割合では、米国本社の影響力は引き続き残るでしょうし、いろいろ制約がありそうです。

はっきりいって、今の日本マクドナルドの業績を上向かせるためには、抜本的な対策が必要です。相当の資金が必要となるはずです。

金はかかる、経営は自由にできないでは、やってられんということでしょう。

■日本は見込みがないから切り捨ててしまおう。という米国本社の決断は評価すべきものです。

ただ、それなら中途半端なことをせずに、全部任せてしまうべきです。

なにしろ、日本のファストフード市場は、米国よりもはるかに複雑で厳しいといわれています。

牛丼はある、讃岐うどんはある、ファミレスはある、コンビニはある。

そんな選択肢が多い市場において、単一ブランドの店舗チェーンがとりこめる需要に限界があるのはわかりきっています。

要するに、今の日本マクドナルドは大きすぎるのです。

■トップ企業がやるべきは、自分が所属している市場の規模を維持・拡大することであり、相対的に自分の地位を高めていくことです。

ハンバーガー市場トップのマクドナルドとしては、牛丼や讃岐うどんに市場を切り崩される事態を避けなければなりません。

そのためには、ハンバーガーを提供する魅力的な店舗を増やさなければなりません

モスバーガーやバーガーキング、その他バラエティに富んだハンバーガーが存在することは、ハンバーガー市場の魅力を高めることにつながっています。

さらに魅力を高めるには、マクドナルド自身が、資金を出して、別ブランド店舗を運営することです。

ランチェスター戦略でいうと、自ら確率戦の市場を作るという施策です。

つまり、今の時点で、マクドナルドの店舗を増やす必要はありません。別ブランドの店舗を作りなさいということです。

■どこが日本マクドナルドの株式を買うにせよ、再建のためにはブランドを増やしていかなければならないでしょう

しかし、中途半端な株式を買っても、米国本社からいちいち難癖をつけてこられるようなら、うるさくて仕方ありません。

そんなうるさいヒモがついているなら、買わん方がマシや。というわけですな。

■マクドナルドの件もそうですが、もう一つ、懸念するのは、コーヒーチェーン日本トップとなったスターバックスコーヒーです

同社は、日本進出から20年足らずで、1000店舗を達成しました。

当初は、洗練されたおしゃれな空間を提供する店として、カフェブームを引き起こしましたが、いまとなっては、どこにでもあるありふれた店です。

1000店舗というのは、日本進出にあたっての約束事項だったといわれていますから、無理やり全国展開したきらいがあります。

全世界同一ブランドでの展開には、もちろん意味はあるのですが、ちょっと日本市場の多様性というものをなめているのではないかと思うのです。

こちらも、成長が止まった時、下手な効率化で対応しようとして、一気にガタがくるのではないかと懸念します。

一方の雄、ドトールコーヒーは、いち早く多ブランド化を進めています。

それと対照的なスタバの今後はどうなっていくのでしょうか。

興味がわくところです。

■マクドにしろ、スタバにしろ、成長期のビジネスモデルをそのまま引きずっているように思えて仕方ありません。

新興国を開拓するには、それでいいのでしょうが、先進国ではそうはいかないはずです。

いち早く高齢化し、多様性をもつ日本市場で成り立つモデルを作った者が、今後のビジネスの成否を握るのではないか。

そんなことを思うわけです。

(2016年1月28日メルマガより)


■不振を極めていた米国マクドナルドですが、
どうやら改善の兆しがみられるようです。

参考:米マクドナルド:既存店売上高が大幅な伸び-朝食の終日提供が寄与
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1IMK1SYF01X01.html

朝食メニューを終日提供することで収益改善したらしい。確かに、ヘルシーメニューっぽい朝マックを夜でも食べたいという需要はあるでしょうね。

収益改善のためならなんでもやる!というスティーブ・イースターブルック最高経営責任者(CEO)の決意をうかがわせる記事です。

■イースターブルックCEOは、昨年の3月に就任したばかりです。

就任してすぐに「マクドナルドは、危機的状況にある」と宣言したイースターブルックCEOは、世界を4つのセグメントに振り分けました。

(1)米国市場→アメリカ

(2)業績を牽引する市場→カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア

(3)成長が見込まれる市場→中国、ロシア、韓国、ポーランド、スイス、オランダ、イタリア、スペイン

(4)基礎的市場→その他の国

こうしたセグメント分けは、戦略方向性を作る上で必要不可欠なものです。

なぜなら、どこに力を入れるのか、入れないのかを決めなければならないからです。

■このセグメントでいうと、日本は「基礎的市場」となります。

言い換えると、これ以上、成長が見込めない重要性の低い市場です。

記憶に新しいでしょうが、およそ1か月前、マクドナルドの米国本社は、日本マクドナルドの株式を売却すると発表しました。

それは、上のセグメント分けに沿ったものです。

すなわち、日本の株式を売却したお金で、成長が見込まれる市場に投資しようという考えです。

■まあ、ありていにいうと、日本は切り捨てられたわけですな。

さぞかし日本マクドナルドはがっくしきているのかなーと思うのですが、案外そうではありません。

もちろん「こりゃダメだ」とレッテルを貼られた現経営陣は落ち込んでいるでしょうが、現場やフランチャイジー店舗の人々は、むしろ歓迎しているようです。

それだけ、米国本社主導による経営が、日本市場にとって的外れなものであったということでしょう。

■なにしろ原田泳幸CEO時代の前半は、うまくまわっていたのです。

ところが、本社が干渉を強めた後半においては、業績悪化に歯止めがかからなくなりました。

この点、原田CEOのやり方に問題があるのだとか、あるいは逆に原田CEOがやりたかった改革を米国本社がやらせなかったのだとか、いろいろ言われております。

私は、個人的には後者ではないかと思っておりますが、本当のところは外野からはわかりません。

ただ、原田CEOの後任であるサラ・カサノバCEOの時代になっても、業績は上向いていない状況を考えると、やはり米国主導の経営には問題があるということです。

■これって、まるでソフトバンクが買収する前のボーダーフォンのような状況ではないですか。

英国本社からの遠隔経営で、日本市場の状況に合わない施策をとり続け、じり貧に陥っていたのが、当時のボーダーフォンでした。

それを立て直したのが、ソフトバンクです。

当然、日本市場をよく知る者に任せなければ、的確な経営などできません。日本市場をなめるな。という話ですよ。

だから米国本社が、日本マクドナルドの再建を日本の誰かに任せようというのは理にかなった施策だと思います。

■ところが、その後のニュースをみると、売却先が決まらないらしい。

それもむべなるかな。今回、売り出したのは、本社が保有する約50%の株式のうちの33%です。

米国本社は、これで1000億円を調達しようという腹積もりのようです。

が、この中途半端な割合では、米国本社の影響力は引き続き残るでしょうし、いろいろ制約がありそうです。

はっきりいって、今の日本マクドナルドの業績を上向かせるためには、抜本的な対策が必要です。相当の資金が必要となるはずです。

金はかかる、経営は自由にできないでは、やってられんということでしょう。

■日本は見込みがないから切り捨ててしまおう。という米国本社の決断は評価すべきものです。

ただ、それなら中途半端なことをせずに、全部任せてしまうべきです。

なにしろ、日本のファストフード市場は、米国よりもはるかに複雑で厳しいといわれています。

牛丼はある、讃岐うどんはある、ファミレスはある、コンビニはある。

そんな選択肢が多い市場において、単一ブランドの店舗チェーンがとりこめる需要に限界があるのはわかりきっています。

要するに、今の日本マクドナルドは大きすぎるのです。

■トップ企業がやるべきは、自分が所属している市場の規模を維持・拡大することであり、相対的に自分の地位を高めていくことです。

ハンバーガー市場トップのマクドナルドとしては、牛丼や讃岐うどんに市場を切り崩される事態を避けなければなりません。

そのためには、ハンバーガーを提供する魅力的な店舗を増やさなければなりません

モスバーガーやバーガーキング、その他バラエティに富んだハンバーガーが存在することは、ハンバーガー市場の魅力を高めることにつながっています。

さらに魅力を高めるには、マクドナルド自身が、資金を出して、別ブランド店舗を運営することです。

ランチェスター戦略でいうと、自ら確率戦の市場を作るという施策です。

つまり、今の時点で、マクドナルドの店舗を増やす必要はありません。別ブランドの店舗を作りなさいということです。

■どこが日本マクドナルドの株式を買うにせよ、再建のためにはブランドを増やしていかなければならないでしょう

しかし、中途半端な株式を買っても、米国本社からいちいち難癖をつけてこられるようなら、うるさくて仕方ありません。

そんなうるさいヒモがついているなら、買わん方がマシや。というわけですな。

■マクドナルドの件もそうですが、もう一つ、懸念するのは、コーヒーチェーン日本トップとなったスターバックスコーヒーです

同社は、日本進出から20年足らずで、1000店舗を達成しました。

当初は、洗練されたおしゃれな空間を提供する店として、カフェブームを引き起こしましたが、いまとなっては、どこにでもあるありふれた店です。

1000店舗というのは、日本進出にあたっての約束事項だったといわれていますから、無理やり全国展開したきらいがあります。

全世界同一ブランドでの展開には、もちろん意味はあるのですが、ちょっと日本市場の多様性というものをなめているのではないかと思うのです。

こちらも、成長が止まった時、下手な効率化で対応しようとして、一気にガタがくるのではないかと懸念します。

一方の雄、ドトールコーヒーは、いち早く多ブランド化を進めています。

それと対照的なスタバの今後はどうなっていくのでしょうか。

興味がわくところです。

■マクドにしろ、スタバにしろ、成長期のビジネスモデルをそのまま引きずっているように思えて仕方ありません。

新興国を開拓するには、それでいいのでしょうが、先進国ではそうはいかないはずです。

いち早く高齢化し、多様性をもつ日本市場で成り立つモデルを作った者が、今後のビジネスの成否を握るのではないか。

そんなことを思うわけです。

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