クリスピー・クリーム・ドーナツの大量閉店は、前向きだったのですね

2016.12.01

(2016年12月1日メルマガより)



■みなさんは、クリスピー・クリーム・ドーナツって、覚えておられます?

っていうと同店には失礼な言い方ですね。すみませんm(_ _)m

一時期は流行りましたよねーー

行列ができるドーナツ店として、マスコミにも取り上げられました。実際に、店の前に長蛇の列ができているのを目の当たりにしたものです。

というか、私がその列に小一時間並びましたので。

子供も小さかったですしね。お土産に買って帰ったものでしたよ。

■そのクリスピー・クリーム・ドーナツが、大量閉店するというニュースが今年ありました。

あの行列状態は、ブーム以外の何物でもありません。ですから、ブームが過ぎれば、閉店もするでしょう。

一時的に儲けて、時期が過ぎれば店じまいするという予定通りの行動なんだろうなと思っておりました。

ところが、クリスピー・クリーム・ドーナツ側は、ビジネスを諦めたわけではなかったらしい。

行列ができるドーナツ店から、長く愛される店への転換を図ろうとしているそうです。

参考:クリスピー・クリーム、「大量閉店」の全真相 行列ドーナツから"愛され"ブランドへの転換
http://toyokeizai.net/articles/-/143621

■私はてっきり、オーナーが変わったんだろうなと思っておりましたが、そうではないらしい。

ちなみに、クリスピー・クリーム・ドーナツは、1930年代にアメリカで創業されたドーナツ店です。

2000年頃になって株式上場し隆盛を極めますが、急激な店舗拡大をしたために財務状況が苦しくなります。一時は経営危機に陥ったようです。

その後、海外展開に活路を見出した同チェーンは、日本に進出します。

それが2006年。ロッテとリヴァンプの共同出資で作ったクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンです。

設立後の5年間で、30~50店舗の展開を予定していた、というから、かなりゆるやかな計画ですね。(wikipediaを参考にしました)

噂では、経営危機に陥ったアメリカのクリスピー・クリーム・ドーナツ本社が、少しでも現金が欲しい状況下で海外に権利を売ったのだとも言われていましたが、どうなんでしょうかね。

二束三文で権利を買って、パーっと儲けて、サッとやめる。そういう山師的なビジネスなのかな、だとしたらうまいことやったな、と思っていたのですが、さすがにロッテとリヴァンプは、そんなことはしないらしい^^;

息の長いビジネスとして再展開を志向しているようです。

■2006年当初のブームの仕掛けは実に鮮やかでした。

一箱2千円だったかな。購入は箱単位。商品も選べません。ただ箱の中には、まるでハロウィンかと思えるような色とりどりの装飾を施したドーナツがバランスよく並んでいました。(視覚効果を狙うため、持ち運びによい立方体の箱ではなく、ピザのような平箱に12個が並んでいました)

お祭り感満載のドーナツ箱セットは子供のお土産に適していたと思います。

味はイマイチ。ただ甘いだけ。甘すぎる...あくまで個人の感想です。

が、マスコミ対応もうまく、行列のできる店として、しばらくブームは続きました。

上の記事では、現社長が「長時間並ぶ、顧客にとってそれが時代のニーズだった」と仰ってくれてますな。

一時間並んでドーナツのでかい平箱を購入した私は、はいそうです、確かに子供のために寒風吹きすさぶ中じっと耐えたいい父親だという自己満足感を得ましたので、言い得て妙ですわ。

■それはともかく、クリスピー・クリーム・ドーナツは、最盛期には64店舗。それを46店舗に減らして再出発を図るということです。

え?64店舗?と思いません。

そうなんですよね。業界1位のミスタードーナツが、1271店舗ですから、ほんとに小さなムーブメントだったわけですね。(世界トップのダンキンドーナツは約6000店舗by wikipedia)

でも、商品も日本人に合わせてリニューアルし、長く愛される店になるというのですから、いいことですよ。頑張ってください。

■ところで、業界1位のミスタードーナツの状況はどうなんでしょうか。

実を言うと、ダスキンのフード事業は赤字です。いまは不採算店舗の閉店と業態転換に費用がかかっていますが、そもそも、既存店の収益が悪いから赤字になるわけです。

上の記事によると、日本のドーナツ市場規模は約1200億円。それがゆるやかに縮小していっています。

コンビニがいっせいにドーナツの取り扱いを始めたにも関わらず市場は衰退しているのだから深刻です。

以前、このメルマガで、ドーナツ業界のことを書きましたね。

参考:セブンvsミスド 初戦の判定は
http://www.createvalue.biz/column2/post-310.html

しかし、実際には、セブンイレブンが入ってこようとこまいと、ドーナツ市場は縮小していたわけです。

■この状況は、ドーナツ業界1位のミスタードーナツにこそ、責任があると思いますね。

トップには、市場にイノベーションを誘発して、活性化させるという役割も必要です。

ところがミスドは、競争がないのをいいことに、ぬくぬくと過ごしてきたばかりか、売上を伸ばすために中華メニューを始めるなど信じがたい施策に出ます。

もっとドーナツに真剣に向き合え!

と言いたくなりますな。

中華をはじめたのはランチ需要を取り込むためなのでしょうが、それなら意地でも総菜ドーナツで対応すべきです。

甘くないドーナツをヒットさせていれば、ドーナツ市場はそれだけ拡大したことでしょうに。

あるいは今日の健康志向に対しても、太らないドーナツの開発を率先して進めるべきです。

トップ企業には、業界の課題解決に取り組む責任がありますからね。

■尻に火が付いたミスドは今になって、戦略の見直し、店舗リニューアルを進めています。

コンビニの低価格路線の台頭もあって、高級化、高付加価値化に拍車をかけるのでしょうが、いかにも遅い。

少子化に向かう上に、これだけ消費者の嗜好が多様化している現在、マスを狙う1980年代の戦略が立ちいかなくなるのは、はるか昔からわかっていたことのはず。

おそらく団塊世代をターゲットに、初期のアメリカンテイストの店(要するにコメダ珈琲のようなテーマ性があってゆったりした店)にしようというのでしょうが、店舗を改装するには相当時間がかかるはずです。

個人的には、ドトールのようなカフェタイプの店もいいかなと思うのですが、立地を都心に集めないとだめなので難しいでしょうね。現在の地方に多い店舗立地を考えると、やはり団塊世代を狙っていくのでしょう。

幸い、ダスキン本体は儲かっているので、致命的な遅れというほどでもないですから、よかったのですが。

一方のコンビニの方もドーナツに関してはうまくいっていないようです。

参考:失速したセブンのドーナツ、全面テコ入れは成功したか?
http://diamond.jp/articles/-/90472

セブンに関しては、最初に出した商品が不評だったので、リニューアルしましたが、それほど効果はなかったようです。

それもそのはず。ドーナツなんて鮮度が重要じゃないですか。工場で作った商品を店舗で提供しても美味しくないはずですよ。

鈴木敏文前会長なら意地でも事業育成していったかもしれませんが、他の方に格別の思い入れはないようです。

「われわれは元々、ドーナツを売りたかったわけではなく、セブンカフェを基軸として新しい食シーンを提案したかった」と発言しているぐらいですから、遠回しな撤退宣言なのではないかと勘繰ってしまいます。

確かに。わざわざドーナツでなくても、ベーグルでもワッフルでもチュロスでもいいわけです。

ドーナツをやるなら揚げたてを出すこと。そうじゃないなら、菓子パンで十分ではないでしょうかね。

■こうしてマス(大衆)を狙わざるを得ない上位企業が苦労しているわけですが、その点、身が軽いクリスピー・クリーム・ドーナツは気楽ですね。

取り返しがつかなくなるほど経営悪化する前に、戦略転換に踏み切ったことは評価に値します。

今回は、地方の小規模店舗を撤退させたということですが、おそらく当面は、ある程度の規模が見込める商圏で運営システムを整備していくことになるのでしょう。その上で、反攻の時期を待つということですね。

持前の華やかなイメージ、ファミリー層の支持、高めの価格設定を武器に、弱点だった味質を高めていけば、十分に成り立つはずです。

目標は100店舗だそうですが、それぐらいは達成するでしょう。

頑張ってくださいね。


(2016年12月1日メルマガより)



■みなさんは、クリスピー・クリーム・ドーナツって、覚えておられます?

っていうと同店には失礼な言い方ですね。すみませんm(_ _)m

一時期は流行りましたよねーー

行列ができるドーナツ店として、マスコミにも取り上げられました。実際に、店の前に長蛇の列ができているのを目の当たりにしたものです。

というか、私がその列に小一時間並びましたので。

子供も小さかったですしね。お土産に買って帰ったものでしたよ。

■そのクリスピー・クリーム・ドーナツが、大量閉店するというニュースが今年ありました。

あの行列状態は、ブーム以外の何物でもありません。ですから、ブームが過ぎれば、閉店もするでしょう。

一時的に儲けて、時期が過ぎれば店じまいするという予定通りの行動なんだろうなと思っておりました。

ところが、クリスピー・クリーム・ドーナツ側は、ビジネスを諦めたわけではなかったらしい。

行列ができるドーナツ店から、長く愛される店への転換を図ろうとしているそうです。

参考:クリスピー・クリーム、「大量閉店」の全真相 行列ドーナツから"愛され"ブランドへの転換
http://toyokeizai.net/articles/-/143621

■私はてっきり、オーナーが変わったんだろうなと思っておりましたが、そうではないらしい。

ちなみに、クリスピー・クリーム・ドーナツは、1930年代にアメリカで創業されたドーナツ店です。

2000年頃になって株式上場し隆盛を極めますが、急激な店舗拡大をしたために財務状況が苦しくなります。一時は経営危機に陥ったようです。

その後、海外展開に活路を見出した同チェーンは、日本に進出します。

それが2006年。ロッテとリヴァンプの共同出資で作ったクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンです。

設立後の5年間で、30~50店舗の展開を予定していた、というから、かなりゆるやかな計画ですね。(wikipediaを参考にしました)

噂では、経営危機に陥ったアメリカのクリスピー・クリーム・ドーナツ本社が、少しでも現金が欲しい状況下で海外に権利を売ったのだとも言われていましたが、どうなんでしょうかね。

二束三文で権利を買って、パーっと儲けて、サッとやめる。そういう山師的なビジネスなのかな、だとしたらうまいことやったな、と思っていたのですが、さすがにロッテとリヴァンプは、そんなことはしないらしい^^;

息の長いビジネスとして再展開を志向しているようです。

■2006年当初のブームの仕掛けは実に鮮やかでした。

一箱2千円だったかな。購入は箱単位。商品も選べません。ただ箱の中には、まるでハロウィンかと思えるような色とりどりの装飾を施したドーナツがバランスよく並んでいました。(視覚効果を狙うため、持ち運びによい立方体の箱ではなく、ピザのような平箱に12個が並んでいました)

お祭り感満載のドーナツ箱セットは子供のお土産に適していたと思います。

味はイマイチ。ただ甘いだけ。甘すぎる...あくまで個人の感想です。

が、マスコミ対応もうまく、行列のできる店として、しばらくブームは続きました。

上の記事では、現社長が「長時間並ぶ、顧客にとってそれが時代のニーズだった」と仰ってくれてますな。

一時間並んでドーナツのでかい平箱を購入した私は、はいそうです、確かに子供のために寒風吹きすさぶ中じっと耐えたいい父親だという自己満足感を得ましたので、言い得て妙ですわ。

■それはともかく、クリスピー・クリーム・ドーナツは、最盛期には64店舗。それを46店舗に減らして再出発を図るということです。

え?64店舗?と思いません。

そうなんですよね。業界1位のミスタードーナツが、1271店舗ですから、ほんとに小さなムーブメントだったわけですね。(世界トップのダンキンドーナツは約6000店舗by wikipedia)

でも、商品も日本人に合わせてリニューアルし、長く愛される店になるというのですから、いいことですよ。頑張ってください。

■ところで、業界1位のミスタードーナツの状況はどうなんでしょうか。

実を言うと、ダスキンのフード事業は赤字です。いまは不採算店舗の閉店と業態転換に費用がかかっていますが、そもそも、既存店の収益が悪いから赤字になるわけです。

上の記事によると、日本のドーナツ市場規模は約1200億円。それがゆるやかに縮小していっています。

コンビニがいっせいにドーナツの取り扱いを始めたにも関わらず市場は衰退しているのだから深刻です。

以前、このメルマガで、ドーナツ業界のことを書きましたね。

参考:セブンvsミスド 初戦の判定は
http://www.createvalue.biz/column2/post-310.html

しかし、実際には、セブンイレブンが入ってこようとこまいと、ドーナツ市場は縮小していたわけです。

■この状況は、ドーナツ業界1位のミスタードーナツにこそ、責任があると思いますね。

トップには、市場にイノベーションを誘発して、活性化させるという役割も必要です。

ところがミスドは、競争がないのをいいことに、ぬくぬくと過ごしてきたばかりか、売上を伸ばすために中華メニューを始めるなど信じがたい施策に出ます。

もっとドーナツに真剣に向き合え!

と言いたくなりますな。

中華をはじめたのはランチ需要を取り込むためなのでしょうが、それなら意地でも総菜ドーナツで対応すべきです。

甘くないドーナツをヒットさせていれば、ドーナツ市場はそれだけ拡大したことでしょうに。

あるいは今日の健康志向に対しても、太らないドーナツの開発を率先して進めるべきです。

トップ企業には、業界の課題解決に取り組む責任がありますからね。

■尻に火が付いたミスドは今になって、戦略の見直し、店舗リニューアルを進めています。

コンビニの低価格路線の台頭もあって、高級化、高付加価値化に拍車をかけるのでしょうが、いかにも遅い。

少子化に向かう上に、これだけ消費者の嗜好が多様化している現在、マスを狙う1980年代の戦略が立ちいかなくなるのは、はるか昔からわかっていたことのはず。

おそらく団塊世代をターゲットに、初期のアメリカンテイストの店(要するにコメダ珈琲のようなテーマ性があってゆったりした店)にしようというのでしょうが、店舗を改装するには相当時間がかかるはずです。

個人的には、ドトールのようなカフェタイプの店もいいかなと思うのですが、立地を都心に集めないとだめなので難しいでしょうね。現在の地方に多い店舗立地を考えると、やはり団塊世代を狙っていくのでしょう。

幸い、ダスキン本体は儲かっているので、致命的な遅れというほどでもないですから、よかったのですが。

一方のコンビニの方もドーナツに関してはうまくいっていないようです。

参考:失速したセブンのドーナツ、全面テコ入れは成功したか?
http://diamond.jp/articles/-/90472

セブンに関しては、最初に出した商品が不評だったので、リニューアルしましたが、それほど効果はなかったようです。

それもそのはず。ドーナツなんて鮮度が重要じゃないですか。工場で作った商品を店舗で提供しても美味しくないはずですよ。

鈴木敏文前会長なら意地でも事業育成していったかもしれませんが、他の方に格別の思い入れはないようです。

「われわれは元々、ドーナツを売りたかったわけではなく、セブンカフェを基軸として新しい食シーンを提案したかった」と発言しているぐらいですから、遠回しな撤退宣言なのではないかと勘繰ってしまいます。

確かに。わざわざドーナツでなくても、ベーグルでもワッフルでもチュロスでもいいわけです。

ドーナツをやるなら揚げたてを出すこと。そうじゃないなら、菓子パンで十分ではないでしょうかね。

■こうしてマス(大衆)を狙わざるを得ない上位企業が苦労しているわけですが、その点、身が軽いクリスピー・クリーム・ドーナツは気楽ですね。

取り返しがつかなくなるほど経営悪化する前に、戦略転換に踏み切ったことは評価に値します。

今回は、地方の小規模店舗を撤退させたということですが、おそらく当面は、ある程度の規模が見込める商圏で運営システムを整備していくことになるのでしょう。その上で、反攻の時期を待つということですね。

持前の華やかなイメージ、ファミリー層の支持、高めの価格設定を武器に、弱点だった味質を高めていけば、十分に成り立つはずです。

目標は100店舗だそうですが、それぐらいは達成するでしょう。

頑張ってくださいね。


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代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
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