「孫子の兵法」を学ぶ

2014.12.31

孫子とは何か?

今からおよそ2500年前、中国の春秋戦国時代に書かれた書物です。当時、中国は複数の国が覇権を争っており、戦火が絶えませんでした。その中の一つ、呉という国に仕えた孫武という人物が「孫子」の作者であると言われています。

孫武は、それまでの勝敗は天運であるという考え方に異を唱え、国が生き残るための方法を合理的に考え実践した武将であり、思想家でした。彼の活躍により呉は勢力を大いに拡大しました。

後世に残された「孫子」という書物にも、極めて現実的で合理的な考え方が記されています。後に武経七書の一つに数えられ、今では、古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つです。

「孫子」が、多くの兵法書の中でも長く生きながらえた理由は、その現実性、合理性に加えて、高度に抽象化された簡潔な記述に拠る所が大きいと考えます。具体的なノウハウの羅列ではなく、本質を簡潔に記述した内容が、兵法に止まらず、政治、経済、スポーツなどにも応用できるものとして、広く東西の指導者たちに読まれています。


今、なぜ孫子なのか?

成長市場においては、先を行くお手本となる企業や人物を真似してひたすら努力すれば、2番手3番手の者でも、ある程度の成果を得ることができました。しかし、今日のように限られたパイを奪い合うような成熟市場においては、努力する前にその方向性を見定めなければ、努力は徒労に終わってしまいます。

「孫子」は、多国間で凌ぎを削る状況下で、いかに生き残るかを記述した書物ですから、成熟市場における企業のあり方にそのまま通じるものです。

成熟市場の日本でビジネスする者、あるいは、グローバル競争に打って出ようとする企業にとって、「孫子」の内容は、生き残るための指針となるはずです。


孫子の特徴

兵法書として知られる孫子ですが、軍事的なノウハウだけを羅列したものではありませんし、必ずしも、戦争で勝つことを目的としたものでもありません。
私の考えるところ「孫子」には、下記の3つの特徴があります。

(1)非戦的姿勢

百戦百勝は善の善なるに非ざる者なり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。(謀攻篇)
孫子には「百回戦って百回勝ったとしてもそれはベストではない。戦わずに、敵を屈服させるのがベストだ」と書かれています。これが、「孫子」全体を貫く一貫した姿勢です。

亡国は復た存すべからず、死者は復た生くべからず。
(火攻篇)
「滅んだ国は再興できない。死んだ者は生き返らない」

(2)合理主義

怒りに任せて軽々しく戦うと、結局は、損失につながります。この合理的な考えは、徹底しています。戦争で勝利したという名よりも、利益という実をとるべきだと主張します。

利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。
(火攻篇)
「国家の利益に合うならば軍事行動を起こし、利益に合わないなら起してはならない」
また孫子は、軍事的手段に訴えたとしても、それを美化せずに、合理的、現実的なものとして捉えます。

兵とは詭道なり。
(計篇)
「戦争とは相手を騙す行為である」

善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。
(形篇)
「戦巧者は、勝てる機会を逃さずに勝つ者である」

(3)情報の重視

もう一つ、孫子の特徴は、情報を重視することです。そもそも、孫子は、戦う前に勝ちを計算できない場合は戦うなと言っており、その計算のために情報の収集は絶対に必要です。

彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず。
(謀攻篇)
「相手の状況を理解し、自分の状況も理解すれば、百回戦っても、危ない事態には陥らない」

そして、情報を得るためのスパイ(用間)を非常に重視し、一篇を割いて記述しています。

動きて人に勝ち、成功の衆に出る所以の者は、先知なり。
(用間篇)
「軍事行動を起して勝ち、成功を収める理由は、先に情報を知っていることである」


戦う前に勝敗を知るための分析基準

 
算多きは勝ち、算少なきは勝たず。(計篇)
「勝つ計算が立てば勝ち、立たなければ勝てない」

孫子は、運を天に任せる、といった行動ありきの姿勢を避けています。戦う前には、勝つための計算をしておかなければならない。そのための情報の整理方法を五事七計とまとめています。

五事とは

(1)道
君主による国内政治です。内政がうまくいっているならば、非常時においても、国内の統治は乱れない。ビジネスにおいては、経営者によるビジョンや経営理念の浸透と考えます。

(2)天
天候や陰陽など外的な要因です。ビジネスにおいては、マクロ要因と考えます。

(3)地
地形や地勢など実際に戦場となる場所の状況です。ビジネスにおいてはミクロ要因と考えます。

(4)将
軍隊を率いる将軍の能力です。ビジネスにおいては中間管理職クラスのリーダーシップと考えます。

(5)法
軍法や権限の状況などです。ビジネスにおいては、マネジメント体制と考えます。

七計とは

1:君主はどちらが民心を掌握できる賢明さを備えているか 

2:将軍の能力はどちらが優れているか 

3:天地がもたらす利点はどちらにあるか 

4:軍法や命令はどちらが徹底しているか 

5:兵力数はどちらが強大か 

6:兵士はどちらが軍事訓練に習熟しているか

7:賞罰はどちらが明確に実行されているか

であり、上の五事を補完し、具体的に比較する内容となっています。
極めて実践的で、今日のビジネスにおいても適用できる内容であることが分ります。


孫子全体の体系

 
「孫子」は十三篇から成り立つ書物ですが、必ずしも篇ごとに内容が整理されているわけでもありませんし、そもそも当初の順番通りに並べられているかどうかも分っていません。

十三篇をどのように整理するのかは、これを読む者ごとの課題であるとは思いますが、あえて私なりの整理をしてみました。

私が注目したのは、謀攻篇にある「勝ちを知るに五あり。」という部分で、いわば「勝利を予知するための5つの要点」です。事前の情報収集や準備は孫子が最も重視する部分であり、この要点で、全体をまとめられると考えます。

(1)戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ。
戦うべき場合と、戦うべきでない場合を知っている者は勝つ。

(2)衆寡の用を識る者は勝つ。
大兵力と小兵力の運用法に通じている者は勝つ。

(3)上下の欲を同じうする者は勝つ。
組織の上下の意思が統一できている者は勝つ。

(4)虞を以て不虞を待つ者は勝つ。
計略をもって、無防備な者を待ち構える者は勝つ。

(5)将の能にして君の御せざる者は勝つ。
将軍が有能で、君主が干渉しない者は勝つ。

孫子の兵法を学ぶ2.jpg

十三篇の内容

 
不十分ではありますが、それぞれの内容を簡単に書いておきます。

計篇
無謀な戦争はしてはならない。
事前に五事七計を測定して勝敗を予想せよ。
戦場においては騙し合いになるので臨機応変に戦う。

作戦篇
戦争には莫大なコストがかかるので早く切り上げよ。
兵站が重要であるから、敵の食糧を奪え。

謀攻篇
戦わずに敵を屈服させることが最善である。
策謀で敵を攻略する原則。将軍が心がける3つのこと。
彼を知り、己を知れば、百戦しても危険に陥らない。

形篇
まずは守備を固めることが重要である。
勝利を確実なものとしてから、当たり前のように勝つのが兵法家である。
勝つためには綿密な計算が必要である。

勢篇
部隊の編制や指揮の方法。
戦いは、正攻法と奇策を組み合わせて使う。
部隊は、個人の力量に頼るのではなく、全体の勢いを重視する。

虚実篇
先手をとった者は有利な戦いを展開できる。
敵の手の内を読んで裏をかくことで敵を操ることができる。
こちらの手の内を晒さずに、相手を操れば、勝利することができる。

軍争篇
軍を動かすことは大きな危険を伴う。
臨機応変な戦法をとることで敵を欺く。
敵の軍隊の気力を奪うことで勝利する。

九変篇
戦争の様々な局面で臨機応変な対処法。
常に利と害の両面から考える。
指揮官には5つの危険がある。

行軍篇
様々な場面での敵情を察知する方法。

地形篇
様々な地形での対応方法。
理想の指導者像とは。

九地篇
様々な土地での戦術。
自軍の兵隊を追い詰めて戦いに向かわせる方法。

用間篇
用間(スパイ)の重要性。
用間の種類と活用方法。

火攻篇
五種類の火攻めの方法。
死んだ者は帰ってこないのだから、軽はずみに戦争をしてはならない。







孫子とは何か?

今からおよそ2500年前、中国の春秋戦国時代に書かれた書物です。当時、中国は複数の国が覇権を争っており、戦火が絶えませんでした。その中の一つ、呉という国に仕えた孫武という人物が「孫子」の作者であると言われています。

孫武は、それまでの勝敗は天運であるという考え方に異を唱え、国が生き残るための方法を合理的に考え実践した武将であり、思想家でした。彼の活躍により呉は勢力を大いに拡大しました。

後世に残された「孫子」という書物にも、極めて現実的で合理的な考え方が記されています。後に武経七書の一つに数えられ、今では、古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つです。

「孫子」が、多くの兵法書の中でも長く生きながらえた理由は、その現実性、合理性に加えて、高度に抽象化された簡潔な記述に拠る所が大きいと考えます。具体的なノウハウの羅列ではなく、本質を簡潔に記述した内容が、兵法に止まらず、政治、経済、スポーツなどにも応用できるものとして、広く東西の指導者たちに読まれています。


今、なぜ孫子なのか?

成長市場においては、先を行くお手本となる企業や人物を真似してひたすら努力すれば、2番手3番手の者でも、ある程度の成果を得ることができました。しかし、今日のように限られたパイを奪い合うような成熟市場においては、努力する前にその方向性を見定めなければ、努力は徒労に終わってしまいます。

「孫子」は、多国間で凌ぎを削る状況下で、いかに生き残るかを記述した書物ですから、成熟市場における企業のあり方にそのまま通じるものです。

成熟市場の日本でビジネスする者、あるいは、グローバル競争に打って出ようとする企業にとって、「孫子」の内容は、生き残るための指針となるはずです。


孫子の特徴

兵法書として知られる孫子ですが、軍事的なノウハウだけを羅列したものではありませんし、必ずしも、戦争で勝つことを目的としたものでもありません。
私の考えるところ「孫子」には、下記の3つの特徴があります。

(1)非戦的姿勢

百戦百勝は善の善なるに非ざる者なり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。(謀攻篇)
孫子には「百回戦って百回勝ったとしてもそれはベストではない。戦わずに、敵を屈服させるのがベストだ」と書かれています。これが、「孫子」全体を貫く一貫した姿勢です。

亡国は復た存すべからず、死者は復た生くべからず。
(火攻篇)
「滅んだ国は再興できない。死んだ者は生き返らない」

(2)合理主義

怒りに任せて軽々しく戦うと、結局は、損失につながります。この合理的な考えは、徹底しています。戦争で勝利したという名よりも、利益という実をとるべきだと主張します。

利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。
(火攻篇)
「国家の利益に合うならば軍事行動を起こし、利益に合わないなら起してはならない」
また孫子は、軍事的手段に訴えたとしても、それを美化せずに、合理的、現実的なものとして捉えます。

兵とは詭道なり。
(計篇)
「戦争とは相手を騙す行為である」

善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。
(形篇)
「戦巧者は、勝てる機会を逃さずに勝つ者である」

(3)情報の重視

もう一つ、孫子の特徴は、情報を重視することです。そもそも、孫子は、戦う前に勝ちを計算できない場合は戦うなと言っており、その計算のために情報の収集は絶対に必要です。

彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず。
(謀攻篇)
「相手の状況を理解し、自分の状況も理解すれば、百回戦っても、危ない事態には陥らない」

そして、情報を得るためのスパイ(用間)を非常に重視し、一篇を割いて記述しています。

動きて人に勝ち、成功の衆に出る所以の者は、先知なり。
(用間篇)
「軍事行動を起して勝ち、成功を収める理由は、先に情報を知っていることである」


戦う前に勝敗を知るための分析基準

 
算多きは勝ち、算少なきは勝たず。(計篇)
「勝つ計算が立てば勝ち、立たなければ勝てない」

孫子は、運を天に任せる、といった行動ありきの姿勢を避けています。戦う前には、勝つための計算をしておかなければならない。そのための情報の整理方法を五事七計とまとめています。

五事とは

(1)道
君主による国内政治です。内政がうまくいっているならば、非常時においても、国内の統治は乱れない。ビジネスにおいては、経営者によるビジョンや経営理念の浸透と考えます。

(2)天
天候や陰陽など外的な要因です。ビジネスにおいては、マクロ要因と考えます。

(3)地
地形や地勢など実際に戦場となる場所の状況です。ビジネスにおいてはミクロ要因と考えます。

(4)将
軍隊を率いる将軍の能力です。ビジネスにおいては中間管理職クラスのリーダーシップと考えます。

(5)法
軍法や権限の状況などです。ビジネスにおいては、マネジメント体制と考えます。

七計とは

1:君主はどちらが民心を掌握できる賢明さを備えているか 

2:将軍の能力はどちらが優れているか 

3:天地がもたらす利点はどちらにあるか 

4:軍法や命令はどちらが徹底しているか 

5:兵力数はどちらが強大か 

6:兵士はどちらが軍事訓練に習熟しているか

7:賞罰はどちらが明確に実行されているか

であり、上の五事を補完し、具体的に比較する内容となっています。
極めて実践的で、今日のビジネスにおいても適用できる内容であることが分ります。


孫子全体の体系

 
「孫子」は十三篇から成り立つ書物ですが、必ずしも篇ごとに内容が整理されているわけでもありませんし、そもそも当初の順番通りに並べられているかどうかも分っていません。

十三篇をどのように整理するのかは、これを読む者ごとの課題であるとは思いますが、あえて私なりの整理をしてみました。

私が注目したのは、謀攻篇にある「勝ちを知るに五あり。」という部分で、いわば「勝利を予知するための5つの要点」です。事前の情報収集や準備は孫子が最も重視する部分であり、この要点で、全体をまとめられると考えます。

(1)戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ。
戦うべき場合と、戦うべきでない場合を知っている者は勝つ。

(2)衆寡の用を識る者は勝つ。
大兵力と小兵力の運用法に通じている者は勝つ。

(3)上下の欲を同じうする者は勝つ。
組織の上下の意思が統一できている者は勝つ。

(4)虞を以て不虞を待つ者は勝つ。
計略をもって、無防備な者を待ち構える者は勝つ。

(5)将の能にして君の御せざる者は勝つ。
将軍が有能で、君主が干渉しない者は勝つ。

孫子の兵法を学ぶ2.jpg

十三篇の内容

 
不十分ではありますが、それぞれの内容を簡単に書いておきます。

計篇
無謀な戦争はしてはならない。
事前に五事七計を測定して勝敗を予想せよ。
戦場においては騙し合いになるので臨機応変に戦う。

作戦篇
戦争には莫大なコストがかかるので早く切り上げよ。
兵站が重要であるから、敵の食糧を奪え。

謀攻篇
戦わずに敵を屈服させることが最善である。
策謀で敵を攻略する原則。将軍が心がける3つのこと。
彼を知り、己を知れば、百戦しても危険に陥らない。

形篇
まずは守備を固めることが重要である。
勝利を確実なものとしてから、当たり前のように勝つのが兵法家である。
勝つためには綿密な計算が必要である。

勢篇
部隊の編制や指揮の方法。
戦いは、正攻法と奇策を組み合わせて使う。
部隊は、個人の力量に頼るのではなく、全体の勢いを重視する。

虚実篇
先手をとった者は有利な戦いを展開できる。
敵の手の内を読んで裏をかくことで敵を操ることができる。
こちらの手の内を晒さずに、相手を操れば、勝利することができる。

軍争篇
軍を動かすことは大きな危険を伴う。
臨機応変な戦法をとることで敵を欺く。
敵の軍隊の気力を奪うことで勝利する。

九変篇
戦争の様々な局面で臨機応変な対処法。
常に利と害の両面から考える。
指揮官には5つの危険がある。

行軍篇
様々な場面での敵情を察知する方法。

地形篇
様々な地形での対応方法。
理想の指導者像とは。

九地篇
様々な土地での戦術。
自軍の兵隊を追い詰めて戦いに向かわせる方法。

用間篇
用間(スパイ)の重要性。
用間の種類と活用方法。

火攻篇
五種類の火攻めの方法。
死んだ者は帰ってこないのだから、軽はずみに戦争をしてはならない。







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