レッドブルが世界で52億本も売れた「何か」

2013.11.14

(2013年11月14日メルマガより)


■「レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」
という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4822249840/lanchesterkan-22/ref=nosim

これが面白い。

著者はオーストリア在住のジャーナリストで、経営の専門家ではありません。

しかも、レッドブル社からの取材許可が下りない不自由の中で書かれた本です。

ジャーナリストらしい反骨精神のもと、突っ込みや広がりを見ることができます。

それにしても、レッドブルという飲料が、世界で52億本も売れているって知ってました?

私はこの本を読むまで知りませんでした。

コンビニで、レッドブルという飲料が売られていることは知っていましたが、海外の新奇な飲み物ぐらいにしか思っていませんでしたね...

おみそれしました。

■レッドブルというのは、栄養ドリンクの一種です。

本人はエナジードリンクなどと呼んでいますが、オロナインCやリポビタンDと同じカテゴリーに入るドリンクです

この本に書いてあることで最も面白いのは、この栄養ドリンクの歴史に関する部分でした。

いわく、栄養ドリンクの起源は、旧日本軍が飛行機乗りの視力強化のために使用していたタウリン飲料だということです。

戦後、その技術が民間に流れ、日本を中心にアジア全域に広がっていきました。

だから、我々、日本人にとってなじみ深いジャンルのドリンクですね。

■ここにディートリッヒ・マテシッツというビジネスマンが登場します。

彼は、ある消費財企業のマーケティングマネージャーでしたが、ビジネス誌で日本の大金持ちの記事を読んで強い印象を持ちます。

海外で有名なのは、トヨタ、日産のような自動車企業か、ソニーや松下などの電機メーカーですが、その雑誌によると長者番付一位は、リポビタンDを販売する大塚製薬の経営者でした。

栄養ドリンクを販売することで、日本一の大金持ちになった人物がいる!

その事実に魅せられた彼は、起業熱を煽られて、各国の栄養ドリンクを飲み歩くようになりました。

■そのうちに出会ったのが、タイの「赤い牡牛」という名前のドリンクでした。

彼は、タイの販売元とライセンス契約を交わすと、それに炭酸を入れて、ヨーロッパ人好みの味にして「レッドブル」として売り出します。

念願の起業とあいなったわけです。

■要するに、レッドブルという飲料は、アジアの栄養ドリンクをもとにしています。

マテシッツが理想の商品を求めて、成分を調合したものではありません。

いうなれば、商品の内容は、アジアでは、ごく一般的なもの。

それをヨーロッパで売るためのマーケティング会社が、レッドブル社だったのです。

■問題は、アジアでは一般的な栄養ドリンクが、ヨーロッパでは一般的ではなかったこと。

だから市場をゼロから立ち上げる必要があります。

まずは栄養ドリンクなるものの販売許可をとらなければなりません

許可がとれたとしても、次に顧客の認知と販売チャネルを作らなければなりません。

当然ながら一般に認知されていない飲み物をゼロから売るのは並大抵ではありません。十中八九は育つ前に消えてしまう運命です。

この本にははっきり書かれていませんが、アルコールの割り下として利用されたとか、貧乏人のコカインなどと呼ばれたなどと書かれているので、初期は怪しげな売り方をしなければならなかったのかもしれません

しかしそのおかげで、創世記を生き延びることができたのでしょう。

■おそらく、レッドブル社の初期のマーケティングは、弱者の一点突破そのものです。

アルコールの割り下であろうが、貧乏人のコカインであろうが、怪しい市場であっても、それが「勝てる市場」ならば、迷わず突っ込んでいったことでしょう。

いや、むしろ、そういう怪しげな売られ方を推奨していったのかもしれません。

ヨーロッパ各国がこの種のドリンクの販売許可に慎重になったのも滋養強壮や不眠などの興奮剤としての効用がうたわれているからです。

(実際にその効果があるかどうかは意見が分かれるところですが)

逆にいうと、そういうお役所が認めたくない商品だからこそ、水面下で愛好者が広がるほど人気を得たのだとみることができます

当初、販売許可のおりないヨーロッパの国では密輸品として人気があったということですから、「何」を期待して買われていたのか推して知るべしです。

■さらに、人気を後追ししたのが、友人に依頼して作ったCMです。
http://ch.nicovideo.jp/RedBull

ヘタウマのアニメを使って、「レッドブル、翼を授ける」というメッセージを伝えるCMが斬新だとして好評を博しました。

今となっては、正直いって、このCMのどこが斬新だったのかわかりません。

「雪国もやしはメチャメチャ高いから買うなーー」というCMぐらいインパクトがあったのでしょうか。

あるいは卑猥なメッセージが隠されていたのでしょうかね。

■要するに、当初からレッドブルは、商品の機能や効用以上の「何か」を期待されて購入される商品だったのです。

創業者のマテシッツは、この目に見えない「何か」を徹底して売る戦略に出ます。

レッドブルの売上の3分の1は販売促進に、3分の1はスポーツマーケティングに投入されているそうです。

(おそらく粗利は90%以上あるのではないでしょうか)

ということは、コンビニでの価格275円のうち、約183円は、広告宣伝費ですよ。

■売上の殆どが広告宣伝費だ、などというと、ろくでもない商品だと私が批判しているように思われるかもしれませんが、そうではありません。

むしろ、ビジネスにおいては、レッドブル社の姿勢こそまっとうだと思います。

我々がこの事例から学ばなければならないことは、販売には製造よりもお金がかかるという事実です。

「ものがよければ売れる」あるいは「営業は最初のきっかけを作るだけ。継続的な販売は商品力で決まる」などといった世迷言をいう製造業者が未だに多くいることを、私は営業コンサルタントとして指摘しておきます。

「ものがよければ売れる」のは、販売チャネルを制し、圧倒的な認知度を持つトップ企業だけにあてはまる事象です。

「ものがいい」だけで売れたら、こんなに楽なことはありませんよ。

だから、これから起業する人や、小さな事業者、あるいは1位ではないブランドを持つ企業は、十分な粗利をもってビジネスに臨まなければなりません。

もう一度言いますが、販売には、製造よりもお金をかけなければならないのです。

売上の66.7%を販売関連費用に投入する企業と、「ものがよければ売れる」と信じ込んでいる企業が競争したらどうなるか、よく考えなければなりません。

■しかも、ただお金をかければいいとうわけではありません。

創業時のレッドブル社は、マーケティング施策においても、弱者の戦略を貫きます。

レッドブルの持つ「何か」を強化するためにマテシッツがこだわったのが、スポーツマーケティングでした。

それも最初は、マイナーなスポーツの支援に乗り出します。

たとえば、マウンテンバイク、スノーボード、フリークライミングといった、良識派がみれば眉をひそめるような素行の若者たちが(当時)取り組んでいたスポーツです。

伝統を破壊せよ、良識派などくそ食らえ!というイメージの訴求です。

レッドブル社は、こうしたマイナースポーツのイベントを冠スポンサーとして主催していきます。

競技人口の多い伝統的なスポーツの協賛スポンサーになるよりも、マイナースポーツの冠スポンサーとなって、その範囲内での認知度を高める方が、ずっとインパクトがあります。

この手法は、ランチェスター戦略を知る者にとって、弱者の戦略の典型例として、おなじみのものですね。

しかも、レッドブル社は、イベントの開催をイベント会社に任せるのではなく、自社で執り行いノウハウを蓄積していきます。

これも、ランチェスター戦略のいう接近戦です。

こうした取り組みを続けたおかげで、レッドブルという商品は、ある特定の分野の人たちへの圧倒的な認知度と、反体制的で行動的なイメージを獲得していきます。

なんと、有名な暴走族であるヘルズ・エンジェルズも、創立50周年の乾杯をレッドブルで行ったということですから、商品が持つ「何か」は相当浸透しているというべきでしょう。

■その後、レッドブルは、サッカーやF1といったメジャースポーツチームの買収に乗り出しますが、それは同社が巨大企業となり、強者となってからのことです。

30年足らずの間に、これだけの巨大企業をつくり上げたディートリッヒ・マテシッツとはどのような人物なのか。

実をいうと殆ど分かっていません。

本人は人前に出ることを嫌いますし、インタビューもあまり受けません。

株式上場していないので、企業の内実も不明ですし、株式を誰かに売ることもないと否定しています。

実に謎めいた人物であるだけに興味をそそられます。

ただ、マテシッツの手腕が並はずれたものであったことは当然なのですが、企業戦略そのものは、普遍的なものです。

この著書の解説で楠木健氏が言っているように、嗜好飲料水の販売において、機能や効用ではなく、ブランドイメージを訴求していくのは、常套手段です。

違いがあるといえば、後発のレッドブル社は、弱者の戦略を徹底せざるを得なかった。したからこそ、ここまで突破できたのだということができます。

■日本においてはどうでしょうか。

参考:レッドブルが売れているワケ
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1109/06/news048.html

やはりマーケティングに強い会社ですね。最初は、あちらこちらで売るようなマネはせずに、コンビニに販売ルートを絞り込んで展開したようです。

コンビニは、相当の販促費はかかるでしょうが、値引き販売があまりなく、コントロールしやすい販売ルートです。

さらに、本来の競合相手であるリポビタンDやオロナインCとの正面衝突は避けて、清涼飲料水の棚に入りました。

そのことが、栄養ドリンクというカテゴリーでありながら、若者向けのイメージを損なわずに済んだ理由です。

ありていに言えば、栄養ドリンクは、私のようなくたびれたおやじが疲れた時に飲むものです。

が、レッドブルは、元気な若者が、さらに元気を出したい(スポーツしたい。徹夜したいなど)時に飲むものだというイメージを付加しようとしています。

その状態で、若者向けに人気を高めておいてから、満を持して、栄養ドリンクの棚に殴り込む局面に至っているようです。

その後、どうなんでしょうかね。

どうやら、老舗の栄養ドリンクを追い抜かすには至っていないようですが、根強い人気は持っているようです。

レッドブルの次の一手。さらには老舗栄養ドリンク側の迎え撃つ一手に興味あるところですね。

■今、レッドブルは、追われる立場になっています。

例えばアメリカでは、レッドブルより安いエナジードリンクがシェアを伸ばしています。

レッドブルが開拓した市場なのですが、既にある市場に参入するのは開拓するよりも容易い。販促費を切り詰める代わりに、売価を安くするというのも常套手段です。

あるいは、レッドブルより、さらに効果が高いという機能性飲料も出ています。

こうして価格、機能両面から差別化製品が現れるのは、成長市場の常です。

それに対して、レッドブルがどのような強者の戦略で戦うのか、見ものだとは思いますが、今のところ静観しているようです。

こちらも、どのような一手がみられるのか、興味がありますね。

■今回の話は、ヨーロッパの巨大企業の事例ですが、詳しく見ていけば、参考になることが多くありました。

やはり成功した企業は戦略的です。やってることが後追いではなく、理にかなっています。

小さい企業ほど戦略を考えて戦っていかなければならない。

さらには、営業は、機能や効能だけではない「何か」を常に意識して売らなければならない。

ということを肝に銘じておきます。

(2013年11月14日メルマガより)


■「レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」
という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4822249840/lanchesterkan-22/ref=nosim

これが面白い。

著者はオーストリア在住のジャーナリストで、経営の専門家ではありません。

しかも、レッドブル社からの取材許可が下りない不自由の中で書かれた本です。

ジャーナリストらしい反骨精神のもと、突っ込みや広がりを見ることができます。

それにしても、レッドブルという飲料が、世界で52億本も売れているって知ってました?

私はこの本を読むまで知りませんでした。

コンビニで、レッドブルという飲料が売られていることは知っていましたが、海外の新奇な飲み物ぐらいにしか思っていませんでしたね...

おみそれしました。

■レッドブルというのは、栄養ドリンクの一種です。

本人はエナジードリンクなどと呼んでいますが、オロナインCやリポビタンDと同じカテゴリーに入るドリンクです

この本に書いてあることで最も面白いのは、この栄養ドリンクの歴史に関する部分でした。

いわく、栄養ドリンクの起源は、旧日本軍が飛行機乗りの視力強化のために使用していたタウリン飲料だということです。

戦後、その技術が民間に流れ、日本を中心にアジア全域に広がっていきました。

だから、我々、日本人にとってなじみ深いジャンルのドリンクですね。

■ここにディートリッヒ・マテシッツというビジネスマンが登場します。

彼は、ある消費財企業のマーケティングマネージャーでしたが、ビジネス誌で日本の大金持ちの記事を読んで強い印象を持ちます。

海外で有名なのは、トヨタ、日産のような自動車企業か、ソニーや松下などの電機メーカーですが、その雑誌によると長者番付一位は、リポビタンDを販売する大塚製薬の経営者でした。

栄養ドリンクを販売することで、日本一の大金持ちになった人物がいる!

その事実に魅せられた彼は、起業熱を煽られて、各国の栄養ドリンクを飲み歩くようになりました。

■そのうちに出会ったのが、タイの「赤い牡牛」という名前のドリンクでした。

彼は、タイの販売元とライセンス契約を交わすと、それに炭酸を入れて、ヨーロッパ人好みの味にして「レッドブル」として売り出します。

念願の起業とあいなったわけです。

■要するに、レッドブルという飲料は、アジアの栄養ドリンクをもとにしています。

マテシッツが理想の商品を求めて、成分を調合したものではありません。

いうなれば、商品の内容は、アジアでは、ごく一般的なもの。

それをヨーロッパで売るためのマーケティング会社が、レッドブル社だったのです。

■問題は、アジアでは一般的な栄養ドリンクが、ヨーロッパでは一般的ではなかったこと。

だから市場をゼロから立ち上げる必要があります。

まずは栄養ドリンクなるものの販売許可をとらなければなりません

許可がとれたとしても、次に顧客の認知と販売チャネルを作らなければなりません。

当然ながら一般に認知されていない飲み物をゼロから売るのは並大抵ではありません。十中八九は育つ前に消えてしまう運命です。

この本にははっきり書かれていませんが、アルコールの割り下として利用されたとか、貧乏人のコカインなどと呼ばれたなどと書かれているので、初期は怪しげな売り方をしなければならなかったのかもしれません

しかしそのおかげで、創世記を生き延びることができたのでしょう。

■おそらく、レッドブル社の初期のマーケティングは、弱者の一点突破そのものです。

アルコールの割り下であろうが、貧乏人のコカインであろうが、怪しい市場であっても、それが「勝てる市場」ならば、迷わず突っ込んでいったことでしょう。

いや、むしろ、そういう怪しげな売られ方を推奨していったのかもしれません。

ヨーロッパ各国がこの種のドリンクの販売許可に慎重になったのも滋養強壮や不眠などの興奮剤としての効用がうたわれているからです。

(実際にその効果があるかどうかは意見が分かれるところですが)

逆にいうと、そういうお役所が認めたくない商品だからこそ、水面下で愛好者が広がるほど人気を得たのだとみることができます

当初、販売許可のおりないヨーロッパの国では密輸品として人気があったということですから、「何」を期待して買われていたのか推して知るべしです。

■さらに、人気を後追ししたのが、友人に依頼して作ったCMです。
http://ch.nicovideo.jp/RedBull

ヘタウマのアニメを使って、「レッドブル、翼を授ける」というメッセージを伝えるCMが斬新だとして好評を博しました。

今となっては、正直いって、このCMのどこが斬新だったのかわかりません。

「雪国もやしはメチャメチャ高いから買うなーー」というCMぐらいインパクトがあったのでしょうか。

あるいは卑猥なメッセージが隠されていたのでしょうかね。

■要するに、当初からレッドブルは、商品の機能や効用以上の「何か」を期待されて購入される商品だったのです。

創業者のマテシッツは、この目に見えない「何か」を徹底して売る戦略に出ます。

レッドブルの売上の3分の1は販売促進に、3分の1はスポーツマーケティングに投入されているそうです。

(おそらく粗利は90%以上あるのではないでしょうか)

ということは、コンビニでの価格275円のうち、約183円は、広告宣伝費ですよ。

■売上の殆どが広告宣伝費だ、などというと、ろくでもない商品だと私が批判しているように思われるかもしれませんが、そうではありません。

むしろ、ビジネスにおいては、レッドブル社の姿勢こそまっとうだと思います。

我々がこの事例から学ばなければならないことは、販売には製造よりもお金がかかるという事実です。

「ものがよければ売れる」あるいは「営業は最初のきっかけを作るだけ。継続的な販売は商品力で決まる」などといった世迷言をいう製造業者が未だに多くいることを、私は営業コンサルタントとして指摘しておきます。

「ものがよければ売れる」のは、販売チャネルを制し、圧倒的な認知度を持つトップ企業だけにあてはまる事象です。

「ものがいい」だけで売れたら、こんなに楽なことはありませんよ。

だから、これから起業する人や、小さな事業者、あるいは1位ではないブランドを持つ企業は、十分な粗利をもってビジネスに臨まなければなりません。

もう一度言いますが、販売には、製造よりもお金をかけなければならないのです。

売上の66.7%を販売関連費用に投入する企業と、「ものがよければ売れる」と信じ込んでいる企業が競争したらどうなるか、よく考えなければなりません。

■しかも、ただお金をかければいいとうわけではありません。

創業時のレッドブル社は、マーケティング施策においても、弱者の戦略を貫きます。

レッドブルの持つ「何か」を強化するためにマテシッツがこだわったのが、スポーツマーケティングでした。

それも最初は、マイナーなスポーツの支援に乗り出します。

たとえば、マウンテンバイク、スノーボード、フリークライミングといった、良識派がみれば眉をひそめるような素行の若者たちが(当時)取り組んでいたスポーツです。

伝統を破壊せよ、良識派などくそ食らえ!というイメージの訴求です。

レッドブル社は、こうしたマイナースポーツのイベントを冠スポンサーとして主催していきます。

競技人口の多い伝統的なスポーツの協賛スポンサーになるよりも、マイナースポーツの冠スポンサーとなって、その範囲内での認知度を高める方が、ずっとインパクトがあります。

この手法は、ランチェスター戦略を知る者にとって、弱者の戦略の典型例として、おなじみのものですね。

しかも、レッドブル社は、イベントの開催をイベント会社に任せるのではなく、自社で執り行いノウハウを蓄積していきます。

これも、ランチェスター戦略のいう接近戦です。

こうした取り組みを続けたおかげで、レッドブルという商品は、ある特定の分野の人たちへの圧倒的な認知度と、反体制的で行動的なイメージを獲得していきます。

なんと、有名な暴走族であるヘルズ・エンジェルズも、創立50周年の乾杯をレッドブルで行ったということですから、商品が持つ「何か」は相当浸透しているというべきでしょう。

■その後、レッドブルは、サッカーやF1といったメジャースポーツチームの買収に乗り出しますが、それは同社が巨大企業となり、強者となってからのことです。

30年足らずの間に、これだけの巨大企業をつくり上げたディートリッヒ・マテシッツとはどのような人物なのか。

実をいうと殆ど分かっていません。

本人は人前に出ることを嫌いますし、インタビューもあまり受けません。

株式上場していないので、企業の内実も不明ですし、株式を誰かに売ることもないと否定しています。

実に謎めいた人物であるだけに興味をそそられます。

ただ、マテシッツの手腕が並はずれたものであったことは当然なのですが、企業戦略そのものは、普遍的なものです。

この著書の解説で楠木健氏が言っているように、嗜好飲料水の販売において、機能や効用ではなく、ブランドイメージを訴求していくのは、常套手段です。

違いがあるといえば、後発のレッドブル社は、弱者の戦略を徹底せざるを得なかった。したからこそ、ここまで突破できたのだということができます。

■日本においてはどうでしょうか。

参考:レッドブルが売れているワケ
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1109/06/news048.html

やはりマーケティングに強い会社ですね。最初は、あちらこちらで売るようなマネはせずに、コンビニに販売ルートを絞り込んで展開したようです。

コンビニは、相当の販促費はかかるでしょうが、値引き販売があまりなく、コントロールしやすい販売ルートです。

さらに、本来の競合相手であるリポビタンDやオロナインCとの正面衝突は避けて、清涼飲料水の棚に入りました。

そのことが、栄養ドリンクというカテゴリーでありながら、若者向けのイメージを損なわずに済んだ理由です。

ありていに言えば、栄養ドリンクは、私のようなくたびれたおやじが疲れた時に飲むものです。

が、レッドブルは、元気な若者が、さらに元気を出したい(スポーツしたい。徹夜したいなど)時に飲むものだというイメージを付加しようとしています。

その状態で、若者向けに人気を高めておいてから、満を持して、栄養ドリンクの棚に殴り込む局面に至っているようです。

その後、どうなんでしょうかね。

どうやら、老舗の栄養ドリンクを追い抜かすには至っていないようですが、根強い人気は持っているようです。

レッドブルの次の一手。さらには老舗栄養ドリンク側の迎え撃つ一手に興味あるところですね。

■今、レッドブルは、追われる立場になっています。

例えばアメリカでは、レッドブルより安いエナジードリンクがシェアを伸ばしています。

レッドブルが開拓した市場なのですが、既にある市場に参入するのは開拓するよりも容易い。販促費を切り詰める代わりに、売価を安くするというのも常套手段です。

あるいは、レッドブルより、さらに効果が高いという機能性飲料も出ています。

こうして価格、機能両面から差別化製品が現れるのは、成長市場の常です。

それに対して、レッドブルがどのような強者の戦略で戦うのか、見ものだとは思いますが、今のところ静観しているようです。

こちらも、どのような一手がみられるのか、興味がありますね。

■今回の話は、ヨーロッパの巨大企業の事例ですが、詳しく見ていけば、参考になることが多くありました。

やはり成功した企業は戦略的です。やってることが後追いではなく、理にかなっています。

小さい企業ほど戦略を考えて戦っていかなければならない。

さらには、営業は、機能や効能だけではない「何か」を常に意識して売らなければならない。

ということを肝に銘じておきます。

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