2010年は日本企業のアジア進出元年になる

2010.01.14

(2010年1月14日メルマガより)

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■昨年、最大のニュースの1つは、政権交代による民主党政権の誕生でした。

もっとも、経済において、思うような効果がすぐに現われるはずはありませ
ん。

それどころか、行政の機能の一部がストップしてしまったためか、一時的な
不況を招いています。

一部では「鳩ぽっぽ不況」と言うそうですね^^;

笑い事ではありません。建築業の方など大変でしょうから。

■どうも民主党は、無駄を省くことにばかり熱心で、経済のパイを拡げるこ
とには関心はないのではないか?

そんな声もチラホラ出始めていたところ、昨年末、政府は「新成長戦略(基
本方針)
」を発表しました。

とりあえずは、方針が出ましたね。

■この方針では、「名目GDP成長率3%、2020年にGDP650兆円、
失業率3%台」という目標を掲げ、(2008年度は成長率-4.2%、G
DP494兆円、失業率5%台)

それを実現する方法として、

1.強みの発揮(環境・エネルギー分野、健康・介護・医療分野)

2.フロンティアの開拓(アジア市場、観光・地域活性化)

3.成長を支えるプラットフォーム(科学・技術、雇用・人材)

を示しています。

■日本のGDPが長い間停滞したままであることは事実です。

この件については、経営コンサルタントの大前研一氏が強く警告しているの
で、参照ください。
http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/1415.php

大前氏は「日本は20年前に世界地図から自然と消えた」などと独特の言い
回しで警鐘を鳴らしています。

自民党政権末期の弊害だったと言ってもいいこの事態を、民主党の閣僚の方
々も重く受け止めて、成長戦略に前向きになっているのだと考えたいと思い
ます。

■ところで政府は、日本の強みの1つを「環境・エネルギー」分野に設定し
ましたね。

私は地球温暖化問題には懐疑的な思いを捨てていないのですが、環境・エネ
ルギー分野に強みがあることには異論はありません。

日本は1970年代のオイルショック以来、省エネルギー技術に大きなアド
バンテージを持っており、環境問題がクローズアップされる今、この強みを
活かさない手はありません。

おそらく太陽光発電やエコ住宅などに税制優遇措置をとって、ドイツのよう
に大胆な産業成長を誘導するものと思われます。

思い切ってやっていただきたい。

最終的には地熱発電などの技術発展につなげられるなら、日本の優位性はさ
らに際立つものと考えます。

■環境分野で象徴的なのが、トヨタのハイブリッドカーの爆発的な人気です。

2009年度、新旧プリウスは約21万台を売り上げて、国内年間ランキン
グ1位を確実なものとしています。

この車、環境に優しいだけではなく、政府の優遇措置もあり、最初の価格も
維持費も低く抑えることができます。

多分、私のようにあまり乗らなくても、バッテリーが上がったりしないんで
しょうな^^;

今でも大量の受注残を抱えているということですから、まさに車業界の「ス
ーパードライ」です。(適切な例えとは言えないか...)

この勢いを駆って、トヨタは今期の大幅な赤字予測を覆すかも知れないと言
われており、もしかすると「トヨタ・サプライズ」が、日経平均株価上昇の
起爆剤になる可能性も期待されています。

まさに世界一の自動車メーカーの面目躍如ですね。

■ところが、そのトヨタも、決して安泰とは言えません。

ゼネラル・モーターズ(GM)の敵失により、世界一の座についたのが昨年
ですが、今年はもう前途を危ぶむ声が聞かれます。

つい先頃までは「トヨタの敵はトヨタしかいない」「トヨタが唯一脅威に思
っているのはデンソーではないか」と言われていたものですが、トップに立
った途端に、衰退が始まるのも歴史が示す事実です。

実は、ふと後ろを見ると、フォルクスワーゲン(VW)が迫ってきていまし
た。

VWは、相当の強敵です。

どころか、数年後にはトヨタを凌ぐことを確実視する声もあるほどです。

■VWの強さの根拠は、標的市場の差別化が進んでいることです。

ご存知のように、トヨタは、北米市場において、GMとの熾烈な競争を繰り
拡げてきました。

なんせ北米は世界一の自動車需要市場ですから、北米を制する者は世界を制
すということに間違いはありません。

ところが、2009年、あっさりと中国市場の規模(1360万台)が、北
米(1040万台)を上回ってしまいました。

世界金融恐慌による先進国経済の縮小が、市場の"政権交代"を早めてしま
った結果です。

■その中国市場でトップシェアを誇るのがVW(140万台)です。

これに対して、トヨタの2009年度の販売台数は約71万台。日産が約7
6万台。ホンダが約58万台。

トヨタは、VWの半分程度で、日産にも負けています。

VWは、ドイツ、中国、ブラジルでトップシェアを誇り、この他にも、新興
国に広く足場を築いています。

ほぼ北米一辺倒だったトヨタに比べて、VWが地道に市場開拓してきたこと
が伺えます。

中国をはじめとする新興国市場が今後ますます拡大するのは確実ですから、
このシェアの差は大きい。

新興国の地場メーカーも育ってきているので、確率戦の市場となり、簡単に
シェアを逆転することは難しいといえます。

VWが有望であるという所以です。

■このように世界の市場は思わぬ速さで変化しています。

世界のトヨタといえども、標的とする市場の規模が逆転する事態には、すぐ
に対応することは難しいでしょう。

多くの業界で、同じようなことが起きてくるはずです。

高度成長期、必死の思いで北米市場を開拓し、有数の経済大国を作り上げて
きた日本企業に、かつてのバイタリティは残っているでしょうか。

いや。新興国市場を開拓できない企業は、縮小して生き残りを図るしか道は
なくなります。

バイタリティがあるとかないとか言っている場合ではないですね。

■前回のメルマガにも書いたかと思いますが、中国の人口を13億人として、
その5%が富裕層だとしても、実数は6千5百万人です。

途方もない人数のお金持ちがいるのです。

しかも、新興国市場はこの経済危機を経ても年5~8%の成長率で拡大し続
けると思われます。

経済成長とともに、富裕層の10倍近い中間所得層が育ってくることを思え
ば、標的顧客としての魅力は無限大ではないでしょうか。

■以前、私はこのメルマガで「儲け話がほしければ、中国かロシアに行け」
と冗談まじりに書きましたが、今や冗談ではなくなったようです。

BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だけではありません。

VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)や

NEXT11(イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジ
ェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ)

MENA(サウジアラビア、アラブ首長国連邦 (UAE) 、クウェート、カタ
ール、オマーン、バーレーン、トルコ、イスラエル、ヨルダン、エジプト、
モロッコ)

など世界は、新興国グループに様々な名前をつけて、注意を向け
ようとしています。

新興国進出でリードしているのはEU諸国です。

一説には、EU諸国には植民地運営のノウハウがあるので、文化の違う国で
もうまくやっていけるのだと言われています。が、この際、言っても仕方が
ない。

日本もアメリカも新興国を市場としなければ、生き残っていけないのですか
ら。

■私は今年2010年は、日本企業の"アジア進出元年"になるのだと見て
います。

これまでは世界第2位の経済大国である内需に支えられて、ドメスティック
な企業でも生きてこられたのですが、経済が縮小していく現状において、サ
イズダウンしなければ生き残れない。

サイズダウン(人を減らしたり、給料を下げたり)するのがイヤなら、新た
な市場を探して、事業の組み立てをやり直さなければならない。

誰もがその理屈は理解しているのでしょうが、行動を起こす勇気を持つ企業
は少なかったわけです。

ところが、昨今の金融危機という状況もあって、新市場を目指す機運は高ま
っているはずです。

特に中小企業は、今まで通りではダメだと身に沁みているでしょうから、新
たな挑戦を始める時期に来ています。

恐らく先行している何社かの事例を聞いて、アジアと日本が"地続き"にな
っていることに気づくと、早いでしょう。雪崩をうつようにアジア進出が始
まるはずだと思います。

したがって、今年は中小企業も含めて、日本企業の"アジア進出元年"です。

■政府の「新成長戦略」は、"強みに特化して、アジアを標的市場にする"
という至極もっともなものになっています。

この方針を出した以上は、それに沿った施策を打ってくるのでしょうから、
期待しましょう。

私も中小企業診断士として、中小企業施策の動きを注視していきたいと思い
ます。

■さて、戦略としてアジア進出する際には、いくつかの注意点があります。

これは戦略のメルマガなので、3つだけ触れておきます。

1つは「標的顧客」を明確にすることです。

「中国には13億人もいるのだから何やっても儲かるぞ」という考えの人は
まさかいないでしょうね^^;

当然のことながら、中国市場も細分化できるはずです。

例えば、富裕層を狙うのか、それとも中間層を狙うのか、それだけでもビジ
ネスの仕組みを変えなければなりません。

確実なのは日本企業が得意とする中国の富裕層に向けたビジネスでしょう。

ガラパゴス諸島で鍛えられた高品質は、そのままで訴求力を持っています。
この層へのビジネスは、既に実績を持つ企業も多く、市場を創りやすいと言
えます。

ただ、日本企業の多くはとりあえず富裕層を狙うでしょうから競争は激しい
と思われます。

もともと富裕層ビジネスは規模が小さいため大企業が手がける分野ではあり
ませんが、中国の場合、6千5百万人~1億人いるということですから、大
企業でも狙ってくるでしょう。

どこに行っても競争を避けることはできませんね。

これに対して、中間層はその10倍はいると言われていますから魅力的です。

ユニクロなどは中間層(敢えて言えばアッパーミドル)を狙っているので、
成功すれば、途方もないビッグビジネスになります。売上5兆円の目標の根
拠となっています。

私は、中小企業でも、中間層を狙うべきだと思っています。そのことについ
ては、おいおいこのメルマガで書いていきたいと思います。

■2つ目は、市場に適正な「商品」を選ぶこと。

当たり前ですね。

売りたいものを売るのではなく、顧客のためになるものを売ること。

当たり前すぎるので、説明は省略します^^;

■3つ目は、流通を重視すること。

いいものであっても売れるとは限らないのは、流通戦略を重視していないこ
とがその大きな原因です。

ここに費用と労力を掛けなければ成功するはずがありません。

最も簡単で早いのは、現地の流通業者を買収(あるいは資本参加)して、
「売る場所」を確保することです。

大企業は皆これをやっていますね。

では資金に余裕がない中小企業はどうするのか。

やはりいい現地パートナーを見つけて合弁会社を作ることが近道でしょう。

■東京の町田に睦特殊金属工業という会社があります。

こちらは、粉末冶金(焼結)製法による金属部品の開発・製造・販売をして
いるそうです。

従業員が64名(2005年10月)ということですから、ごく普通の中小
製造業ですかね。

ところが、この会社が中国に作った現地法人は、従業員2000人を擁し、
上海証券取引所に上場しており、日本の大手製造業に匹敵する時価総額を持
っています。

途方もない成功事例です。

この事例から分かるのは、日本の中小製造業の技術力と中国現地企業のネッ
トワークを結べば、1+1=1000ほどの価値が生じることがあるという
ことです。

もちろんパートナー選びを失敗すれば、合弁企業の運営はハチャメチャにな
ってしまうという恐ろしさもありますが、萎縮していては何も始まりません。

これも1つの方法です。

■いずれにしろ、日本が成長戦略を遂行するためには、日本企業の海外進出
は避けて通れません。

今年はその元年になるだろうという私の予測を今年最初のメルマガに書かせ
ていただきました。

皆さん、この不況にあっても、挑戦する気持ちを失わないで、時代を切り開
いていきましょう。


(2010年1月14日メルマガより)

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■昨年、最大のニュースの1つは、政権交代による民主党政権の誕生でした。

もっとも、経済において、思うような効果がすぐに現われるはずはありませ
ん。

それどころか、行政の機能の一部がストップしてしまったためか、一時的な
不況を招いています。

一部では「鳩ぽっぽ不況」と言うそうですね^^;

笑い事ではありません。建築業の方など大変でしょうから。

■どうも民主党は、無駄を省くことにばかり熱心で、経済のパイを拡げるこ
とには関心はないのではないか?

そんな声もチラホラ出始めていたところ、昨年末、政府は「新成長戦略(基
本方針)
」を発表しました。

とりあえずは、方針が出ましたね。

■この方針では、「名目GDP成長率3%、2020年にGDP650兆円、
失業率3%台」という目標を掲げ、(2008年度は成長率-4.2%、G
DP494兆円、失業率5%台)

それを実現する方法として、

1.強みの発揮(環境・エネルギー分野、健康・介護・医療分野)

2.フロンティアの開拓(アジア市場、観光・地域活性化)

3.成長を支えるプラットフォーム(科学・技術、雇用・人材)

を示しています。

■日本のGDPが長い間停滞したままであることは事実です。

この件については、経営コンサルタントの大前研一氏が強く警告しているの
で、参照ください。
http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/1415.php

大前氏は「日本は20年前に世界地図から自然と消えた」などと独特の言い
回しで警鐘を鳴らしています。

自民党政権末期の弊害だったと言ってもいいこの事態を、民主党の閣僚の方
々も重く受け止めて、成長戦略に前向きになっているのだと考えたいと思い
ます。

■ところで政府は、日本の強みの1つを「環境・エネルギー」分野に設定し
ましたね。

私は地球温暖化問題には懐疑的な思いを捨てていないのですが、環境・エネ
ルギー分野に強みがあることには異論はありません。

日本は1970年代のオイルショック以来、省エネルギー技術に大きなアド
バンテージを持っており、環境問題がクローズアップされる今、この強みを
活かさない手はありません。

おそらく太陽光発電やエコ住宅などに税制優遇措置をとって、ドイツのよう
に大胆な産業成長を誘導するものと思われます。

思い切ってやっていただきたい。

最終的には地熱発電などの技術発展につなげられるなら、日本の優位性はさ
らに際立つものと考えます。

■環境分野で象徴的なのが、トヨタのハイブリッドカーの爆発的な人気です。

2009年度、新旧プリウスは約21万台を売り上げて、国内年間ランキン
グ1位を確実なものとしています。

この車、環境に優しいだけではなく、政府の優遇措置もあり、最初の価格も
維持費も低く抑えることができます。

多分、私のようにあまり乗らなくても、バッテリーが上がったりしないんで
しょうな^^;

今でも大量の受注残を抱えているということですから、まさに車業界の「ス
ーパードライ」です。(適切な例えとは言えないか...)

この勢いを駆って、トヨタは今期の大幅な赤字予測を覆すかも知れないと言
われており、もしかすると「トヨタ・サプライズ」が、日経平均株価上昇の
起爆剤になる可能性も期待されています。

まさに世界一の自動車メーカーの面目躍如ですね。

■ところが、そのトヨタも、決して安泰とは言えません。

ゼネラル・モーターズ(GM)の敵失により、世界一の座についたのが昨年
ですが、今年はもう前途を危ぶむ声が聞かれます。

つい先頃までは「トヨタの敵はトヨタしかいない」「トヨタが唯一脅威に思
っているのはデンソーではないか」と言われていたものですが、トップに立
った途端に、衰退が始まるのも歴史が示す事実です。

実は、ふと後ろを見ると、フォルクスワーゲン(VW)が迫ってきていまし
た。

VWは、相当の強敵です。

どころか、数年後にはトヨタを凌ぐことを確実視する声もあるほどです。

■VWの強さの根拠は、標的市場の差別化が進んでいることです。

ご存知のように、トヨタは、北米市場において、GMとの熾烈な競争を繰り
拡げてきました。

なんせ北米は世界一の自動車需要市場ですから、北米を制する者は世界を制
すということに間違いはありません。

ところが、2009年、あっさりと中国市場の規模(1360万台)が、北
米(1040万台)を上回ってしまいました。

世界金融恐慌による先進国経済の縮小が、市場の"政権交代"を早めてしま
った結果です。

■その中国市場でトップシェアを誇るのがVW(140万台)です。

これに対して、トヨタの2009年度の販売台数は約71万台。日産が約7
6万台。ホンダが約58万台。

トヨタは、VWの半分程度で、日産にも負けています。

VWは、ドイツ、中国、ブラジルでトップシェアを誇り、この他にも、新興
国に広く足場を築いています。

ほぼ北米一辺倒だったトヨタに比べて、VWが地道に市場開拓してきたこと
が伺えます。

中国をはじめとする新興国市場が今後ますます拡大するのは確実ですから、
このシェアの差は大きい。

新興国の地場メーカーも育ってきているので、確率戦の市場となり、簡単に
シェアを逆転することは難しいといえます。

VWが有望であるという所以です。

■このように世界の市場は思わぬ速さで変化しています。

世界のトヨタといえども、標的とする市場の規模が逆転する事態には、すぐ
に対応することは難しいでしょう。

多くの業界で、同じようなことが起きてくるはずです。

高度成長期、必死の思いで北米市場を開拓し、有数の経済大国を作り上げて
きた日本企業に、かつてのバイタリティは残っているでしょうか。

いや。新興国市場を開拓できない企業は、縮小して生き残りを図るしか道は
なくなります。

バイタリティがあるとかないとか言っている場合ではないですね。

■前回のメルマガにも書いたかと思いますが、中国の人口を13億人として、
その5%が富裕層だとしても、実数は6千5百万人です。

途方もない人数のお金持ちがいるのです。

しかも、新興国市場はこの経済危機を経ても年5~8%の成長率で拡大し続
けると思われます。

経済成長とともに、富裕層の10倍近い中間所得層が育ってくることを思え
ば、標的顧客としての魅力は無限大ではないでしょうか。

■以前、私はこのメルマガで「儲け話がほしければ、中国かロシアに行け」
と冗談まじりに書きましたが、今や冗談ではなくなったようです。

BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だけではありません。

VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)や

NEXT11(イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジ
ェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ)

MENA(サウジアラビア、アラブ首長国連邦 (UAE) 、クウェート、カタ
ール、オマーン、バーレーン、トルコ、イスラエル、ヨルダン、エジプト、
モロッコ)

など世界は、新興国グループに様々な名前をつけて、注意を向け
ようとしています。

新興国進出でリードしているのはEU諸国です。

一説には、EU諸国には植民地運営のノウハウがあるので、文化の違う国で
もうまくやっていけるのだと言われています。が、この際、言っても仕方が
ない。

日本もアメリカも新興国を市場としなければ、生き残っていけないのですか
ら。

■私は今年2010年は、日本企業の"アジア進出元年"になるのだと見て
います。

これまでは世界第2位の経済大国である内需に支えられて、ドメスティック
な企業でも生きてこられたのですが、経済が縮小していく現状において、サ
イズダウンしなければ生き残れない。

サイズダウン(人を減らしたり、給料を下げたり)するのがイヤなら、新た
な市場を探して、事業の組み立てをやり直さなければならない。

誰もがその理屈は理解しているのでしょうが、行動を起こす勇気を持つ企業
は少なかったわけです。

ところが、昨今の金融危機という状況もあって、新市場を目指す機運は高ま
っているはずです。

特に中小企業は、今まで通りではダメだと身に沁みているでしょうから、新
たな挑戦を始める時期に来ています。

恐らく先行している何社かの事例を聞いて、アジアと日本が"地続き"にな
っていることに気づくと、早いでしょう。雪崩をうつようにアジア進出が始
まるはずだと思います。

したがって、今年は中小企業も含めて、日本企業の"アジア進出元年"です。

■政府の「新成長戦略」は、"強みに特化して、アジアを標的市場にする"
という至極もっともなものになっています。

この方針を出した以上は、それに沿った施策を打ってくるのでしょうから、
期待しましょう。

私も中小企業診断士として、中小企業施策の動きを注視していきたいと思い
ます。

■さて、戦略としてアジア進出する際には、いくつかの注意点があります。

これは戦略のメルマガなので、3つだけ触れておきます。

1つは「標的顧客」を明確にすることです。

「中国には13億人もいるのだから何やっても儲かるぞ」という考えの人は
まさかいないでしょうね^^;

当然のことながら、中国市場も細分化できるはずです。

例えば、富裕層を狙うのか、それとも中間層を狙うのか、それだけでもビジ
ネスの仕組みを変えなければなりません。

確実なのは日本企業が得意とする中国の富裕層に向けたビジネスでしょう。

ガラパゴス諸島で鍛えられた高品質は、そのままで訴求力を持っています。
この層へのビジネスは、既に実績を持つ企業も多く、市場を創りやすいと言
えます。

ただ、日本企業の多くはとりあえず富裕層を狙うでしょうから競争は激しい
と思われます。

もともと富裕層ビジネスは規模が小さいため大企業が手がける分野ではあり
ませんが、中国の場合、6千5百万人~1億人いるということですから、大
企業でも狙ってくるでしょう。

どこに行っても競争を避けることはできませんね。

これに対して、中間層はその10倍はいると言われていますから魅力的です。

ユニクロなどは中間層(敢えて言えばアッパーミドル)を狙っているので、
成功すれば、途方もないビッグビジネスになります。売上5兆円の目標の根
拠となっています。

私は、中小企業でも、中間層を狙うべきだと思っています。そのことについ
ては、おいおいこのメルマガで書いていきたいと思います。

■2つ目は、市場に適正な「商品」を選ぶこと。

当たり前ですね。

売りたいものを売るのではなく、顧客のためになるものを売ること。

当たり前すぎるので、説明は省略します^^;

■3つ目は、流通を重視すること。

いいものであっても売れるとは限らないのは、流通戦略を重視していないこ
とがその大きな原因です。

ここに費用と労力を掛けなければ成功するはずがありません。

最も簡単で早いのは、現地の流通業者を買収(あるいは資本参加)して、
「売る場所」を確保することです。

大企業は皆これをやっていますね。

では資金に余裕がない中小企業はどうするのか。

やはりいい現地パートナーを見つけて合弁会社を作ることが近道でしょう。

■東京の町田に睦特殊金属工業という会社があります。

こちらは、粉末冶金(焼結)製法による金属部品の開発・製造・販売をして
いるそうです。

従業員が64名(2005年10月)ということですから、ごく普通の中小
製造業ですかね。

ところが、この会社が中国に作った現地法人は、従業員2000人を擁し、
上海証券取引所に上場しており、日本の大手製造業に匹敵する時価総額を持
っています。

途方もない成功事例です。

この事例から分かるのは、日本の中小製造業の技術力と中国現地企業のネッ
トワークを結べば、1+1=1000ほどの価値が生じることがあるという
ことです。

もちろんパートナー選びを失敗すれば、合弁企業の運営はハチャメチャにな
ってしまうという恐ろしさもありますが、萎縮していては何も始まりません。

これも1つの方法です。

■いずれにしろ、日本が成長戦略を遂行するためには、日本企業の海外進出
は避けて通れません。

今年はその元年になるだろうという私の予測を今年最初のメルマガに書かせ
ていただきました。

皆さん、この不況にあっても、挑戦する気持ちを失わないで、時代を切り開
いていきましょう。


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