カリスマ営業を有難がっても意味ないでしょう

2011.06.30

(2011年6月30日メルマガより)


■「大前研一と考える『営業学』」という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4478007268/lanchesterkan-22/ref=nosim

大前研一氏のファンであり、かつ営業関連のコンサルティングに携わる私が
読まないわけにはいきません。

早速、購入して、読ませていただきました。

果たして、さすが、大前先生です。

ここに書いてあることは100%納得できることばかりです。というか、私
の考え方は、きっと、大前研一氏の思想に相当影響を受けているということ
なんでしょうね。

これまで営業についてはあまり語ることのなかった大前氏の営業論も、その
まま受け入れられることばかりでした。

■ちなみにこの本は、大前研一氏が学長を勤めるビジネスブレークスルー大
学院大学のPRも兼ねているようです。

近々、営業学なるものを同大学でカリキュラムとして提供するのでしょうね。

そのための布石として、大前研一学長をはじめ、同大学の看板講師陣が、そ
れぞれの得意分野から執筆しています。

目次を見ると、概念から始まって、問題解決型営業、マーケティングマイン
ド、セルフマネジメント、チーム力の向上となっています。

一応、一通りの内容を章として並べています。

だから、深く掘り下げた内容ではありませんが、必要とする理論的な構造と
いうか、骨組みの部分はしっかりと書かれています。

「実践ノウハウ」が好きな人には物足りないかも知れませんが、こういう教
科書的な著作は、いくらでも肉付けが可能なので、実際には実用的です。

というか、実践ノウハウを求める人は、大前研一氏の著作を読むことはない
でしょうけど...

■そんな折です。先日、NHKのテレビで、トップ営業マンの特集をやって
いたので見てみました。

正直にいって、私は、トップ営業の華々しい活躍を取り上げる企画には批判
的です。

成功者の活躍を表面的に捉えて、何の意味があるのか。

トップ営業マンの迫力や粘り、努力を見ることで、おれも頑張らなあかんな
ーと気持ちを盛り上げる効果はあるかもしれませんが、そんなもの一瞬で冷
めてしまいます。

トップ営業マンの活躍を自分のものとして応用するためには、その背景にあ
る思想、哲学、戦略、仕組み、行動様式などを知らなければなりません。

しかし、こうしたテレビ番組でそこまで掘り下げることはありません。

それどころか、今回のテレビを見ていると、当のトップ営業自身が、自分の
行動の背景や根拠について、それほど意識的ではない様子でした。

ただひたすら頑張っていたら成功した。。。という人の話を聞いて、何か自
分に役立てることは可能なんでしょうか。

■ただ、まあ、さすがに工夫して作っているテレビ番組なので、それなりに
楽しく見ることができました。

今回の番組の特徴は、それぞれ異なる業界から、全く毛色の違うトップ営業
を3人集めていたことです。

ひたすら熱い営業、理知的な営業、物静かな営業、といった具合です。

でも、それぞれが、自分のフィールドで高い実績を上げ続けている人たちの
ようですね。

■彼らに共通しているのは「プロフェッショナル」としての意識の高さです。

大前研一氏は、プロフェッショナルとは、顧客から報酬を貰っているという
ことを認識して仕事をしている人だと言っています。

例えば、多くの医者はプロフェッショナルです。たとえ勤務医であったとし
ても、患者に向き合えば、その病気を治すために全力を尽くすはずです。

コンサルタントも同じ。雇われているからといって、17時になればサービ
スを停止しますという人はいません。クライアントのために尽くす人が殆ど
でしょう。

ところが、営業はどうか。顧客が払う代金が自分の報酬になっていることを
忘れて、給料は会社から貰うものだという意識の者が多いのではないか。

だから、顧客にメリットは乏しいと思っても、会社のいう商品やサービスを
販売して疑いがありません。

「理想はそうでも、会社がいうものを売らなしゃあないやん」と言う人はま
だマシです。殆どの人は、そういう疑問を持ったこともないのではないでし
ょうか。

大前研一氏の定義では、殆どの営業はプロフェッショナルではありません。

■ところが今回テレビで観たトップ営業マンは、顧客のために尽くすという
意識を徹底していました。

1人は、準備段階で、顧客企業のことを調べ上げて、どうすれば顧客のため
になるのかを考えた末に初商談に臨んでいました。これは、営業というより
も、コンサルタントに近い仕事ぶりです。

1人は、顧客の様子をひたすら観察して、言葉にしていない潜在ニーズや悩
みを読み取ることに全力を傾けていました。これは営業というよりもカウン
セラーです。

1人は、サービス提供の段階で、他の人がやらないような過剰なサービスを
やりすぎるぐらいやっていました。これは営業というよりも芸人です。

彼らは、会社が提供する商品やサービスには限界があることを知った上で、
顧客に満足をしてもらい、感動させるためには、自分が何をすればいいのか
を考え抜いて、それを実行しています。

うちの会社の商品はこの程度のもんや、給料分働いてたらええわなどと言う
いい加減な人はいません。

顧客主義を貫いているということで、彼らはタイプは違えど、一様にプロフ
ェッショナルであることは間違いありません。

■顧客主義は、現代の営業の基本中の基本であるはず。それなのに、それを
貫く人が少ないのは残念です。

日本で「顧客主義」の必要性が唱えられたのは、1970年代半ばです。日
本が戦後初めて深刻な不況を経験し、売り込み主体の営業が通用しないこと
に気づいてからです。

「これからの営業は売り込んではならない」「顧客の立場で考えよ」「営業
は顧客のエージェントたれ」といったことが言われるようになりました。

これは多くの営業にとってパラドクスでした。「売り込まなくて、どうやっ
て売上を上げるんや」「顧客の立場で考えたら、売られへんようになる」
「営業は宮仕えちゃうんか」と心の中では思っていました。

要するに、会社側も営業側も「顧客主義」の何たるかを十分に咀嚼せずに、
スローガンだけで顧客主義を唱えていたわけです。

その弊害は今でも根強い。私は営業コンサルティングの現場で実感していま
すが、営業のベテランほど、顧客主義の建前と、自社主義の本音を併せ持っ
ているように思えます。

■その中でも成績を上げている人はやはり顧客主義です。

私は経営コンサルタントの立場から、成績優秀者を見てきましたが、彼らの
多くは、上司の指示を無視してでも、顧客のために尽くす人たちでした。

彼らはそれを「気持ち」や「想い」と称していました。

営業は数字や効率などではない。お客様に気持ちを伝えることこそが、営業
の真髄だ。

売上を上げようなどとは思ってはいけない。お客様が満足して感動して、喜
んでいただければそれでいい。

売上などは後からついてくるものなのだ。

■私もその意見に異論はありません。

顧客に対する真摯な気持ちなくしては、営業は成り立ちません。

高度成長期のように、購買意欲旺盛な顧客がどんどん増えている状況なら、
1人の顧客にかける時間を減らして、効率よく多くの顧客と接触しなければ、
ライバル会社に負けてしまいます。

そんな時は、全員が同じ営業トークでひたすら数をこなすことが、鉄壁の成
功法則でした。多少、1人の顧客に対するサービスが低下しても、量が質を
凌駕してしまうでしょうから、粗い対応も傷になりません。

ところが、今は、リピーター重視の成熟市場です。1人の顧客にとことん満
足してもらいファンになってもらわなければ、ビジネスが維持できません。

このパラダイムシフトに気づいて、スタイルを変えた者が、現在のトップ営
業諸氏です。すなわち、顧客主義の徹底です。

商品を売り込むのではなく、顧客が何を必要としているのかを感じ取る。

売り手側の論理を押し付けず、買い手の立場に立って考える。

会社の売り子ではなく、顧客のエージェント(代理人)であることに徹する。

言うは易し。でも、なかなか出来ないことだからこそ価値があります。松井
証券の社長など「会社が損になることをどんどんやれ!」と指示を出してい
るぐらいです。

■世の中の流れが変わっても、我々はすぐに対応できません。感性の鋭い一
部の人たちだけが、それに気づいて対応していきます。

だからカリスマ営業は一部なんですね。

彼らにすれば、動きの鈍い組織に合わせることなど無駄以外の何ものでもあ
りませんから、組織とのつきあいはなるべくスルーして、自分の顧客に報い
ようとします。

「営業はそれぞれが自分の考えでやればいいじゃないですか」と主張する人
はまだ柔らかい方で、極端な人は「おれの邪魔をするな!放っておいてくれ
れば売上を達成してやる」と言い放ちます。

こうなれば、どちらが正しいのか分らなくなってきます^^;

要するに、顧客主義は正しいものの、個人主義に陥ってしまい、チームの営
業力向上に何ら貢献しない存在になってしまうわけです。

■私のコンサルティングのテーマも多くはここにあります。

各企業におけるトップ営業のスキルをチームの営業力向上に活かすこと。

厄介なことに、トップ営業全てが論理的であるわけではありません。という
か、多くの人が、感性的に営業しているので、それを言葉にできず、他の人
に応用することができません。

だから私の仕事は、トップ営業の仕事の中身を理解して「クレイジーなほど
時間をかける部分」と「シンプルで効率性を追求できる部分」に分解して、
組織の生産性向上を図ることです。

■さらにいうと、困ったことに、トップ営業の中からも、既にスキルが時代
遅れになって通用しなくなっている人が出てきます。

一つは、年齢的なものがあるかも知れません。顧客が低年齢化していく中で、
顧客主義のポイントがズレていってしうのです。

しかし、根本的な原因は、顧客企業のビジネスが複雑化しているために、単
品売りからソリューション売りの営業スタイルに変えざるを得ないこと。

つまり、今の営業は、チームで行わなければ顧客対応ができないほど複雑化、
高度化していっているのです。

そんな時「戦略」や「マーケティング」という共通言語を持たない者は、チ
ーム営業に参加することさえできなくなってしまうでしょう。

そうなれば、立派な「昔の栄光にすがる元カリスマ営業氏」の出来上がりです。

私が昔いた会社にもこういう人はいましたね^^;それでも10年前はまだ
空元気があって、若手営業の壁のような厄介な存在でしたが、今ではすっか
り、飲み屋で説教をするだけのマンガチックな人物になっているようです。

本来、鋭い営業センスを持っている人なのに残念な限りです。彼が、他の営
業と同じ共通言語を話せるならば、その経験や営業勘は、その会社の財産に
なっていたはずです。。。

■私が、安易にカリスマ営業を礼賛する企画に懐疑的なのは、上記の通りです。

当のカリスマ営業から学べるものはないというのではありません。念のため。

我々が学ぶべきは、彼らの現場力、応用力、迫力だけではなく、彼らの持つ
思想であり、戦略であり、仕組みであり、行動様式だと申し上げているのです。

繰り返しますが、営業には、シンプルな戦略と、クレイジーな実行が必要です。

「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」と言ったのは、
本田宗一郎ですが、

私は「戦略なき行動は無意味であり、行動なき戦略は無価値である」と言い
換えたいと思います。

そのためにも、今後も営業職を全うし、成長したいと願う方は、どうか、体
系的な「経営戦略の知識」とそれを使いこなすための「論理的思考」を身に
着けていただきたいと思います。




(2011年6月30日メルマガより)


■「大前研一と考える『営業学』」という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4478007268/lanchesterkan-22/ref=nosim

大前研一氏のファンであり、かつ営業関連のコンサルティングに携わる私が
読まないわけにはいきません。

早速、購入して、読ませていただきました。

果たして、さすが、大前先生です。

ここに書いてあることは100%納得できることばかりです。というか、私
の考え方は、きっと、大前研一氏の思想に相当影響を受けているということ
なんでしょうね。

これまで営業についてはあまり語ることのなかった大前氏の営業論も、その
まま受け入れられることばかりでした。

■ちなみにこの本は、大前研一氏が学長を勤めるビジネスブレークスルー大
学院大学のPRも兼ねているようです。

近々、営業学なるものを同大学でカリキュラムとして提供するのでしょうね。

そのための布石として、大前研一学長をはじめ、同大学の看板講師陣が、そ
れぞれの得意分野から執筆しています。

目次を見ると、概念から始まって、問題解決型営業、マーケティングマイン
ド、セルフマネジメント、チーム力の向上となっています。

一応、一通りの内容を章として並べています。

だから、深く掘り下げた内容ではありませんが、必要とする理論的な構造と
いうか、骨組みの部分はしっかりと書かれています。

「実践ノウハウ」が好きな人には物足りないかも知れませんが、こういう教
科書的な著作は、いくらでも肉付けが可能なので、実際には実用的です。

というか、実践ノウハウを求める人は、大前研一氏の著作を読むことはない
でしょうけど...

■そんな折です。先日、NHKのテレビで、トップ営業マンの特集をやって
いたので見てみました。

正直にいって、私は、トップ営業の華々しい活躍を取り上げる企画には批判
的です。

成功者の活躍を表面的に捉えて、何の意味があるのか。

トップ営業マンの迫力や粘り、努力を見ることで、おれも頑張らなあかんな
ーと気持ちを盛り上げる効果はあるかもしれませんが、そんなもの一瞬で冷
めてしまいます。

トップ営業マンの活躍を自分のものとして応用するためには、その背景にあ
る思想、哲学、戦略、仕組み、行動様式などを知らなければなりません。

しかし、こうしたテレビ番組でそこまで掘り下げることはありません。

それどころか、今回のテレビを見ていると、当のトップ営業自身が、自分の
行動の背景や根拠について、それほど意識的ではない様子でした。

ただひたすら頑張っていたら成功した。。。という人の話を聞いて、何か自
分に役立てることは可能なんでしょうか。

■ただ、まあ、さすがに工夫して作っているテレビ番組なので、それなりに
楽しく見ることができました。

今回の番組の特徴は、それぞれ異なる業界から、全く毛色の違うトップ営業
を3人集めていたことです。

ひたすら熱い営業、理知的な営業、物静かな営業、といった具合です。

でも、それぞれが、自分のフィールドで高い実績を上げ続けている人たちの
ようですね。

■彼らに共通しているのは「プロフェッショナル」としての意識の高さです。

大前研一氏は、プロフェッショナルとは、顧客から報酬を貰っているという
ことを認識して仕事をしている人だと言っています。

例えば、多くの医者はプロフェッショナルです。たとえ勤務医であったとし
ても、患者に向き合えば、その病気を治すために全力を尽くすはずです。

コンサルタントも同じ。雇われているからといって、17時になればサービ
スを停止しますという人はいません。クライアントのために尽くす人が殆ど
でしょう。

ところが、営業はどうか。顧客が払う代金が自分の報酬になっていることを
忘れて、給料は会社から貰うものだという意識の者が多いのではないか。

だから、顧客にメリットは乏しいと思っても、会社のいう商品やサービスを
販売して疑いがありません。

「理想はそうでも、会社がいうものを売らなしゃあないやん」と言う人はま
だマシです。殆どの人は、そういう疑問を持ったこともないのではないでし
ょうか。

大前研一氏の定義では、殆どの営業はプロフェッショナルではありません。

■ところが今回テレビで観たトップ営業マンは、顧客のために尽くすという
意識を徹底していました。

1人は、準備段階で、顧客企業のことを調べ上げて、どうすれば顧客のため
になるのかを考えた末に初商談に臨んでいました。これは、営業というより
も、コンサルタントに近い仕事ぶりです。

1人は、顧客の様子をひたすら観察して、言葉にしていない潜在ニーズや悩
みを読み取ることに全力を傾けていました。これは営業というよりもカウン
セラーです。

1人は、サービス提供の段階で、他の人がやらないような過剰なサービスを
やりすぎるぐらいやっていました。これは営業というよりも芸人です。

彼らは、会社が提供する商品やサービスには限界があることを知った上で、
顧客に満足をしてもらい、感動させるためには、自分が何をすればいいのか
を考え抜いて、それを実行しています。

うちの会社の商品はこの程度のもんや、給料分働いてたらええわなどと言う
いい加減な人はいません。

顧客主義を貫いているということで、彼らはタイプは違えど、一様にプロフ
ェッショナルであることは間違いありません。

■顧客主義は、現代の営業の基本中の基本であるはず。それなのに、それを
貫く人が少ないのは残念です。

日本で「顧客主義」の必要性が唱えられたのは、1970年代半ばです。日
本が戦後初めて深刻な不況を経験し、売り込み主体の営業が通用しないこと
に気づいてからです。

「これからの営業は売り込んではならない」「顧客の立場で考えよ」「営業
は顧客のエージェントたれ」といったことが言われるようになりました。

これは多くの営業にとってパラドクスでした。「売り込まなくて、どうやっ
て売上を上げるんや」「顧客の立場で考えたら、売られへんようになる」
「営業は宮仕えちゃうんか」と心の中では思っていました。

要するに、会社側も営業側も「顧客主義」の何たるかを十分に咀嚼せずに、
スローガンだけで顧客主義を唱えていたわけです。

その弊害は今でも根強い。私は営業コンサルティングの現場で実感していま
すが、営業のベテランほど、顧客主義の建前と、自社主義の本音を併せ持っ
ているように思えます。

■その中でも成績を上げている人はやはり顧客主義です。

私は経営コンサルタントの立場から、成績優秀者を見てきましたが、彼らの
多くは、上司の指示を無視してでも、顧客のために尽くす人たちでした。

彼らはそれを「気持ち」や「想い」と称していました。

営業は数字や効率などではない。お客様に気持ちを伝えることこそが、営業
の真髄だ。

売上を上げようなどとは思ってはいけない。お客様が満足して感動して、喜
んでいただければそれでいい。

売上などは後からついてくるものなのだ。

■私もその意見に異論はありません。

顧客に対する真摯な気持ちなくしては、営業は成り立ちません。

高度成長期のように、購買意欲旺盛な顧客がどんどん増えている状況なら、
1人の顧客にかける時間を減らして、効率よく多くの顧客と接触しなければ、
ライバル会社に負けてしまいます。

そんな時は、全員が同じ営業トークでひたすら数をこなすことが、鉄壁の成
功法則でした。多少、1人の顧客に対するサービスが低下しても、量が質を
凌駕してしまうでしょうから、粗い対応も傷になりません。

ところが、今は、リピーター重視の成熟市場です。1人の顧客にとことん満
足してもらいファンになってもらわなければ、ビジネスが維持できません。

このパラダイムシフトに気づいて、スタイルを変えた者が、現在のトップ営
業諸氏です。すなわち、顧客主義の徹底です。

商品を売り込むのではなく、顧客が何を必要としているのかを感じ取る。

売り手側の論理を押し付けず、買い手の立場に立って考える。

会社の売り子ではなく、顧客のエージェント(代理人)であることに徹する。

言うは易し。でも、なかなか出来ないことだからこそ価値があります。松井
証券の社長など「会社が損になることをどんどんやれ!」と指示を出してい
るぐらいです。

■世の中の流れが変わっても、我々はすぐに対応できません。感性の鋭い一
部の人たちだけが、それに気づいて対応していきます。

だからカリスマ営業は一部なんですね。

彼らにすれば、動きの鈍い組織に合わせることなど無駄以外の何ものでもあ
りませんから、組織とのつきあいはなるべくスルーして、自分の顧客に報い
ようとします。

「営業はそれぞれが自分の考えでやればいいじゃないですか」と主張する人
はまだ柔らかい方で、極端な人は「おれの邪魔をするな!放っておいてくれ
れば売上を達成してやる」と言い放ちます。

こうなれば、どちらが正しいのか分らなくなってきます^^;

要するに、顧客主義は正しいものの、個人主義に陥ってしまい、チームの営
業力向上に何ら貢献しない存在になってしまうわけです。

■私のコンサルティングのテーマも多くはここにあります。

各企業におけるトップ営業のスキルをチームの営業力向上に活かすこと。

厄介なことに、トップ営業全てが論理的であるわけではありません。という
か、多くの人が、感性的に営業しているので、それを言葉にできず、他の人
に応用することができません。

だから私の仕事は、トップ営業の仕事の中身を理解して「クレイジーなほど
時間をかける部分」と「シンプルで効率性を追求できる部分」に分解して、
組織の生産性向上を図ることです。

■さらにいうと、困ったことに、トップ営業の中からも、既にスキルが時代
遅れになって通用しなくなっている人が出てきます。

一つは、年齢的なものがあるかも知れません。顧客が低年齢化していく中で、
顧客主義のポイントがズレていってしうのです。

しかし、根本的な原因は、顧客企業のビジネスが複雑化しているために、単
品売りからソリューション売りの営業スタイルに変えざるを得ないこと。

つまり、今の営業は、チームで行わなければ顧客対応ができないほど複雑化、
高度化していっているのです。

そんな時「戦略」や「マーケティング」という共通言語を持たない者は、チ
ーム営業に参加することさえできなくなってしまうでしょう。

そうなれば、立派な「昔の栄光にすがる元カリスマ営業氏」の出来上がりです。

私が昔いた会社にもこういう人はいましたね^^;それでも10年前はまだ
空元気があって、若手営業の壁のような厄介な存在でしたが、今ではすっか
り、飲み屋で説教をするだけのマンガチックな人物になっているようです。

本来、鋭い営業センスを持っている人なのに残念な限りです。彼が、他の営
業と同じ共通言語を話せるならば、その経験や営業勘は、その会社の財産に
なっていたはずです。。。

■私が、安易にカリスマ営業を礼賛する企画に懐疑的なのは、上記の通りです。

当のカリスマ営業から学べるものはないというのではありません。念のため。

我々が学ぶべきは、彼らの現場力、応用力、迫力だけではなく、彼らの持つ
思想であり、戦略であり、仕組みであり、行動様式だと申し上げているのです。

繰り返しますが、営業には、シンプルな戦略と、クレイジーな実行が必要です。

「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」と言ったのは、
本田宗一郎ですが、

私は「戦略なき行動は無意味であり、行動なき戦略は無価値である」と言い
換えたいと思います。

そのためにも、今後も営業職を全うし、成長したいと願う方は、どうか、体
系的な「経営戦略の知識」とそれを使いこなすための「論理的思考」を身に
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代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
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