ユニクロ会長が怒る「失われた30年」から抜け出すことはできるのか?

2019.10.31


(2019年10月31日メルマガより)

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先日、経営コンサルタントの大前研一氏が「この30年、世界で最も大きな変化とは何か?」と問われて、こう答えていました。

「スマホの普及と、政治のトップにバカが増えたことだ」

大前氏らしい独特の発言ですね。


スマホが世界を近づけた


スマホの普及はわかります。いまや世界中の人々がスマホを手にしています。何はなくともまずスマホ。です。

スマホがあるから世界中の情報を手に入れることができます。情報統制している国もありますが、それは置いておいて。言葉の壁がなければ基本的に世界の情報に触れることができます。その言葉の壁も翻訳機能の向上によりもうすぐなくなるでしょう。

だから情報の格差というのは、怠慢に帰するものとなってしまいました。知らなかったは言い訳になりません。「12年勤務して手取り14万円、日本終わってますよね」と嘆く人に、ホリエモンが「お前が終わってんだよ」と言い放つ所以です。(いくらでも稼ぐ手段があるのに、知らないお前が怠慢なだけという意味らしい)

↑この人とホリエモンの格差が映画「ジョーカー」が共感を呼ぶ理由となっているのですが、それも置いときましょう。

さらにスマホというのは規格が世界共通です。だから、スマホを基盤に作成したアプリは世界どこでも使用することができます。

これまで商品にしろサービスにしろ、国ごとに仕様を合わせなければならず、それがグローバル化を困難にしてきたものですが、スマホアプリを前提としたビジネスは、はるかに容易く世界の壁を越えてしまいます。

いうなれば、世界中の誰にもグローバルビジネスを作り上げるチャンスが開かれているということです。

情報は世界を超える。同時にビジネスも世界を超えるのです。


グローバル化の反動としての狭量さ


ただ世界のフラット化が進むと、それについていけない人たちも多く現れます。チャンスは誰にも公平に開かれているとはいいながら、それに乗れない人たちです。

それまで地域という物理的な枠内に止まりながら社会を形成してきた人たちが、いきなりグローバル化なんて言われても戸惑います。

なまじ情報が入ってくるので厄介です。世界にはもっと悲惨な人たちもいれば、想像もつかないような恵まれた人たちもいることに気づきます。

それが遠い国の知らない人たちの話ならまだしも、自分の国に後からやってきた移民のために多額の税金が投入されたり治安が悪化したり、逆に移民の人たちがグローバル化のシステムにうまく順応してエリートになっていたりすると、複雑な気持ちになろうというものです。

アメリカは特にそうです。何世代前かの祖先が死ぬような思いで開拓して我が物とした土地に、あとから来た英語も話せないような移民たちが大きな顔で権利を主張しているわけです。ITやフィンテックといった新しいビジネスで稼ぐ人たちにはそんな移民層が多いと言われています。やりきれない思いがあるでしょう。

トランプ大統領の人気は、そんなやりきれない思いを抱くプアホワイト(貧しい白人層)たちに支えられていると言われます。その他の国も、グローバル化の反動で沸き起こったナショナリズムが、国粋主義の指導者を生む要因になっています。

かつて国家元首といえばその国の中でも最高の知性と教養を身に着けた人がなるはずでした。しかし今は、むしろパフォーマンスが派手で、国民を煽る才能がある人が選ばれているかのようです。

だからグローバル化の時代なのに、世界の利益を損なっても自国に利益誘導することが当たり前になっています。国益を守りながらも世界が良くなるように配慮できる良識派がマイナーになったらしい。これが大前氏の言うバカの政治リーダーが増えたということです。


「失われた30年」に怒りをにじませる柳井氏


30年で変わったのが、スマホと政治家だとすれば、逆に変わらないのが日本の経済状況です。

日本のGDPは30年間、見事に横ばいです。アメリカや中国がエンジンがかかったように経済規模を拡大させてきたことと対照的です。

アメリカや中国だけではありません。東南アジアやインドなども成長を続けています。世界が進んだ分だけ日本は遅れているわけで、このままでは先進国どころか中位の国に堕ちてしまうかも知れません。

そんな日本の状況に怒りを隠さないのが、ファーストリテイリングの柳井正会長です。日経ビジネスに応じたインタビュー記事が話題となっています。


有料会員限定です。すみません。でも、とても興味深い記事です。ぜひ読んでいただきたいものです。

柳井氏は、停滞する日本の状況に怒りをこめて警鐘を鳴らしています。柳井氏の指摘は全くその通りです。このまま人口が減れば、先進国レベルではなくなるでしょう。

人口減少に向かう日本においては、生産性の向上が喫緊の課題であることは、このメルマガでも何度か描かせていただいた通りです。

生産性を上げる最も手っ取り早い方法は、成長分野で事業を行うことです。IoT、AI、ロボティクス。誰もが知っている分野ですが、日本企業はなぜか及び腰です。海外の便利なサービスが出来上がるのを待っているのでしょうか。

柳井氏は「サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない」と断じています。

かといって創業者が頑張っているかというと、日本の開業率は低いままです。創業したとしても、上場するとそれで満足してしまう。「日本の起業家は引退興行」なんだとか。

世界の状況を知らないので、既に日本の技術が2周遅れであることに気づいていません。

それなのに、テレビでは「実は日本はスゴイ」なんて企画の番組が溢れているし、スポーツ競技でも3位、4位の日本選手を賞賛している。

これをゆでガエル現象と言わずに何と言うのか。

柳井氏はこの状況を鑑み、国の歳出を半分にする、公務員を半数に減らす、議会を一院制にする、日米地位協定を改定する、年功序列と終身雇用を見直す、と提言しています。詳しいことは省きますが、要するに、人口減時代に適した社会システムに変えていかなければならないと言っているわけです。


感情的な反応は国益を損なう


このインタビュー記事、けっこう勇気のいるものだったと思います。

この30年が無駄だったというのは、現政権の批判にもなるからです。

実際、柳井氏は記事の中で「みんなが安倍政権の経済政策「アベノミクス」は成功したと思っていますが、成功したというのは株価だけでしょう。株価というのは、国の金を費やせばどうにでもなるんですよ」と言っています。

実際、その通りだと私も思います。

また韓国や中国に対する反応についても、もっと冷静になるべきだと言います。「今から成長するのは東南アジアやインドなんですよ。ここは中国抜きでは絶対に成長できない。何でできないかといったら、東南アジアの経済では華僑が不可欠だからです」

だから韓国や中国の反日的姿勢にそのまま反応しては国益を見失うのだと。

このあたり炎上を招く発言かも知れません。特にユニクロは、中国や韓国に多くの店舗を持っており、ことに韓国では不買運動も受けているので、この発言は、自社利益のことを考えているだけではないかと受け取られかねません。

それを押して、日本の政治が間違っていると断ずるのですから、思い切ったものです。

いま、経済界で政治批判を行う人があまり見かけないので、余計に目立ちます。


グローバルブランドとしてのユニクロ


柳井氏がここまで真摯に提言するのは、世界を知っている経営者の一人だからでしょう。

ファーストリテイリングの売上高は、2兆2905億円(2019年8月期)アパレル企業としては桁外れです。

国内では成長が止まっているものの世界進出に意欲的です。

ユニクロのコンセプトである「ライフウェア」(アパレルをファッションと捉えるのではなく、機能性の高いカジュアルウェアと捉える)が世界に受け入れられているようです。

海外からの収益が急増しており、2019年8月期の決算では、国内の利益を抜く見込みだといいます。



自動車や精密機械など海外比率が高い業種に比べて、日本のアパレルはドメスティックな業界です。そんな業界においてグローバル化を成し遂げつつある企業のリーダーであるからこそ日本のゆでガエル状況が歯がゆくて仕方ないのでしょう。

もちろんユニクロがこのまま順風満帆に進む保証などどこにもありません。

国内ではワークマンプラスのようにさらに高機能低価格のアパレルを売りにする企業が台頭してきています。

海外では何でも飲み込んでしまうアマゾンという怪物が待ち構えています。アマゾンが急成長分野を放置しておくはずはありませんから、必ず狙い撃ちしてきますよ。

ぐっすり眠る気にはなれないでしょう。

狭い範囲でぼちぼち儲けるならそんな苦労はありません。が、柳井氏は強い意欲で世界一のアパレル企業を作ろうとしています。各方面から狙われる道を選びました。

そういう得難いポジションにいる人の話は、心して聞きましょう。

急激なグローバル化には反動がつきものだとはいえ、グローバル化の可能性や恩恵を捨ててまでも狭量になるのは得策ではありません。

柳井氏の言う通り、冷静に情勢を捉えなければなりません。


小さな会社こそグローバル化の恩恵を受けよう


国内の状況が悪い時、国外に敵を作り、ナショナリズムを煽るのは、ダメ政治家の常套手段です。

日本の近隣にそういうことを平気でする政治リーダーがいますよね。

ただそれに腹を立てて表層的感情的に反応するのは、自らを同じレベルに貶める行為です。かつて日本はそんな社会ではなかった。だからこそ尊敬を集めてきたのでしょう。

貧すれば鈍す。日本経済が停滞し、社会問題の解決策が見えなくなっていることが、狭量な挑発に反応してしまっているのだとすれば、矛先を変えた方が建設的です。

すなわち、我々は、グローバル化の恩恵を得て、成長していく道を選ぶべきだと思います。


いや、何も全員が、ユニクロのようなグローバル企業を目指せと言っているわけではありませんよ。

ローカルな環境でしたたかに生き残っていくのも立派な戦略です。むしろ私は、そんなローカル企業を支援する立場です。

ただローカルだからといって、今まで通りのやり方しか知らん、新しいことはわからん、と言っていては、変化していく世界の中で生き残れません。

スマホにしろ、IoTにしろ、AIにしろ、新しいテクノロジーを活用せずに恩恵も受けられずに過ごすのは勿体ない。実際、それを活用するのはそれほど難しいものではありません。それこそ、やり方を知らないだけです。

小さな事業は小さいなりに、新しいものを取り入れることで、生きる道が広がります。

小さな会社でも、ちょっと学べば、最新テクノロジーをとりいれて生産性を高めることはできます。


零細企業でも生産性向上に取り組むことはできる


先般、中小零細企業は生産性が低いので、中小零細企業そのものをなくしてしまおう。と主張する内容の本を紹介しました。


決して暴論ではなく、納得できる論旨だったことも紹介した通りです。

が、中小零細企業の支援を生業にしている者からすればあまりにも身も蓋もない提言ですから、どうにかできる道はないのかと考えざるを得ませんでした。

道はあります。

小さな会社ひとつひとつが生産性を上げていけば生き残ることができます。

が、知識もない、学ばない、設備資金もない、意欲もない中小零細企業が、自ら変革して生産性を上げることなどできるわけないだろーというのが、上の本の主張です。

そう言われると返す言葉がありません。その通りだからです。中小零細企業の中でも危機感を持って頑張っている企業じしんが「中小企業仲間の8割は残らんよ」と言っているぐらいです。

この問題を考えると、さすがに暗たんとなります。

俺だけ儲けるし、後は知らん、と言ってしまえば楽でしょうね。私もそのうちそう言って、別の仕事をしているかも知れませんw

しかしまだ手はあると思っています。

少し学べば理解できるはずです。生産性を上げるための設備資金がないっていいますが、資金をかけなくてもできる生産性向上策はあります。

いまのテクノロジーの進化はそれほどすさまじいものです。電気街で部品を買ってきて、無料のアプリと組み合わせるだけで、相当の効率化設備ができあがります。

皆、知らないだけなんですよ。

いや、すみません。私だって、最近、知ったばかりだから偉そうに言う謂れはありませんね。が、世界中の事業家がテクノロジーの普遍化に取り組んでいて、私たちの身近にも、IoTやAIなど無料や安価で取り組める方法が揃ってきていることは確かです。アイデア次第では、いろいろ面白いことができそうです。

具体的に何ができるのか、どのように活用すれば効果的なのか、自分なりに考えて今後のメルマガで書いていきたいと思います。



(2019年10月31日メルマガより)

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先日、経営コンサルタントの大前研一氏が「この30年、世界で最も大きな変化とは何か?」と問われて、こう答えていました。

「スマホの普及と、政治のトップにバカが増えたことだ」

大前氏らしい独特の発言ですね。


スマホが世界を近づけた


スマホの普及はわかります。いまや世界中の人々がスマホを手にしています。何はなくともまずスマホ。です。

スマホがあるから世界中の情報を手に入れることができます。情報統制している国もありますが、それは置いておいて。言葉の壁がなければ基本的に世界の情報に触れることができます。その言葉の壁も翻訳機能の向上によりもうすぐなくなるでしょう。

だから情報の格差というのは、怠慢に帰するものとなってしまいました。知らなかったは言い訳になりません。「12年勤務して手取り14万円、日本終わってますよね」と嘆く人に、ホリエモンが「お前が終わってんだよ」と言い放つ所以です。(いくらでも稼ぐ手段があるのに、知らないお前が怠慢なだけという意味らしい)

↑この人とホリエモンの格差が映画「ジョーカー」が共感を呼ぶ理由となっているのですが、それも置いときましょう。

さらにスマホというのは規格が世界共通です。だから、スマホを基盤に作成したアプリは世界どこでも使用することができます。

これまで商品にしろサービスにしろ、国ごとに仕様を合わせなければならず、それがグローバル化を困難にしてきたものですが、スマホアプリを前提としたビジネスは、はるかに容易く世界の壁を越えてしまいます。

いうなれば、世界中の誰にもグローバルビジネスを作り上げるチャンスが開かれているということです。

情報は世界を超える。同時にビジネスも世界を超えるのです。


グローバル化の反動としての狭量さ


ただ世界のフラット化が進むと、それについていけない人たちも多く現れます。チャンスは誰にも公平に開かれているとはいいながら、それに乗れない人たちです。

それまで地域という物理的な枠内に止まりながら社会を形成してきた人たちが、いきなりグローバル化なんて言われても戸惑います。

なまじ情報が入ってくるので厄介です。世界にはもっと悲惨な人たちもいれば、想像もつかないような恵まれた人たちもいることに気づきます。

それが遠い国の知らない人たちの話ならまだしも、自分の国に後からやってきた移民のために多額の税金が投入されたり治安が悪化したり、逆に移民の人たちがグローバル化のシステムにうまく順応してエリートになっていたりすると、複雑な気持ちになろうというものです。

アメリカは特にそうです。何世代前かの祖先が死ぬような思いで開拓して我が物とした土地に、あとから来た英語も話せないような移民たちが大きな顔で権利を主張しているわけです。ITやフィンテックといった新しいビジネスで稼ぐ人たちにはそんな移民層が多いと言われています。やりきれない思いがあるでしょう。

トランプ大統領の人気は、そんなやりきれない思いを抱くプアホワイト(貧しい白人層)たちに支えられていると言われます。その他の国も、グローバル化の反動で沸き起こったナショナリズムが、国粋主義の指導者を生む要因になっています。

かつて国家元首といえばその国の中でも最高の知性と教養を身に着けた人がなるはずでした。しかし今は、むしろパフォーマンスが派手で、国民を煽る才能がある人が選ばれているかのようです。

だからグローバル化の時代なのに、世界の利益を損なっても自国に利益誘導することが当たり前になっています。国益を守りながらも世界が良くなるように配慮できる良識派がマイナーになったらしい。これが大前氏の言うバカの政治リーダーが増えたということです。


「失われた30年」に怒りをにじませる柳井氏


30年で変わったのが、スマホと政治家だとすれば、逆に変わらないのが日本の経済状況です。

日本のGDPは30年間、見事に横ばいです。アメリカや中国がエンジンがかかったように経済規模を拡大させてきたことと対照的です。

アメリカや中国だけではありません。東南アジアやインドなども成長を続けています。世界が進んだ分だけ日本は遅れているわけで、このままでは先進国どころか中位の国に堕ちてしまうかも知れません。

そんな日本の状況に怒りを隠さないのが、ファーストリテイリングの柳井正会長です。日経ビジネスに応じたインタビュー記事が話題となっています。


有料会員限定です。すみません。でも、とても興味深い記事です。ぜひ読んでいただきたいものです。

柳井氏は、停滞する日本の状況に怒りをこめて警鐘を鳴らしています。柳井氏の指摘は全くその通りです。このまま人口が減れば、先進国レベルではなくなるでしょう。

人口減少に向かう日本においては、生産性の向上が喫緊の課題であることは、このメルマガでも何度か描かせていただいた通りです。

生産性を上げる最も手っ取り早い方法は、成長分野で事業を行うことです。IoT、AI、ロボティクス。誰もが知っている分野ですが、日本企業はなぜか及び腰です。海外の便利なサービスが出来上がるのを待っているのでしょうか。

柳井氏は「サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない」と断じています。

かといって創業者が頑張っているかというと、日本の開業率は低いままです。創業したとしても、上場するとそれで満足してしまう。「日本の起業家は引退興行」なんだとか。

世界の状況を知らないので、既に日本の技術が2周遅れであることに気づいていません。

それなのに、テレビでは「実は日本はスゴイ」なんて企画の番組が溢れているし、スポーツ競技でも3位、4位の日本選手を賞賛している。

これをゆでガエル現象と言わずに何と言うのか。

柳井氏はこの状況を鑑み、国の歳出を半分にする、公務員を半数に減らす、議会を一院制にする、日米地位協定を改定する、年功序列と終身雇用を見直す、と提言しています。詳しいことは省きますが、要するに、人口減時代に適した社会システムに変えていかなければならないと言っているわけです。


感情的な反応は国益を損なう


このインタビュー記事、けっこう勇気のいるものだったと思います。

この30年が無駄だったというのは、現政権の批判にもなるからです。

実際、柳井氏は記事の中で「みんなが安倍政権の経済政策「アベノミクス」は成功したと思っていますが、成功したというのは株価だけでしょう。株価というのは、国の金を費やせばどうにでもなるんですよ」と言っています。

実際、その通りだと私も思います。

また韓国や中国に対する反応についても、もっと冷静になるべきだと言います。「今から成長するのは東南アジアやインドなんですよ。ここは中国抜きでは絶対に成長できない。何でできないかといったら、東南アジアの経済では華僑が不可欠だからです」

だから韓国や中国の反日的姿勢にそのまま反応しては国益を見失うのだと。

このあたり炎上を招く発言かも知れません。特にユニクロは、中国や韓国に多くの店舗を持っており、ことに韓国では不買運動も受けているので、この発言は、自社利益のことを考えているだけではないかと受け取られかねません。

それを押して、日本の政治が間違っていると断ずるのですから、思い切ったものです。

いま、経済界で政治批判を行う人があまり見かけないので、余計に目立ちます。


グローバルブランドとしてのユニクロ


柳井氏がここまで真摯に提言するのは、世界を知っている経営者の一人だからでしょう。

ファーストリテイリングの売上高は、2兆2905億円(2019年8月期)アパレル企業としては桁外れです。

国内では成長が止まっているものの世界進出に意欲的です。

ユニクロのコンセプトである「ライフウェア」(アパレルをファッションと捉えるのではなく、機能性の高いカジュアルウェアと捉える)が世界に受け入れられているようです。

海外からの収益が急増しており、2019年8月期の決算では、国内の利益を抜く見込みだといいます。



自動車や精密機械など海外比率が高い業種に比べて、日本のアパレルはドメスティックな業界です。そんな業界においてグローバル化を成し遂げつつある企業のリーダーであるからこそ日本のゆでガエル状況が歯がゆくて仕方ないのでしょう。

もちろんユニクロがこのまま順風満帆に進む保証などどこにもありません。

国内ではワークマンプラスのようにさらに高機能低価格のアパレルを売りにする企業が台頭してきています。

海外では何でも飲み込んでしまうアマゾンという怪物が待ち構えています。アマゾンが急成長分野を放置しておくはずはありませんから、必ず狙い撃ちしてきますよ。

ぐっすり眠る気にはなれないでしょう。

狭い範囲でぼちぼち儲けるならそんな苦労はありません。が、柳井氏は強い意欲で世界一のアパレル企業を作ろうとしています。各方面から狙われる道を選びました。

そういう得難いポジションにいる人の話は、心して聞きましょう。

急激なグローバル化には反動がつきものだとはいえ、グローバル化の可能性や恩恵を捨ててまでも狭量になるのは得策ではありません。

柳井氏の言う通り、冷静に情勢を捉えなければなりません。


小さな会社こそグローバル化の恩恵を受けよう


国内の状況が悪い時、国外に敵を作り、ナショナリズムを煽るのは、ダメ政治家の常套手段です。

日本の近隣にそういうことを平気でする政治リーダーがいますよね。

ただそれに腹を立てて表層的感情的に反応するのは、自らを同じレベルに貶める行為です。かつて日本はそんな社会ではなかった。だからこそ尊敬を集めてきたのでしょう。

貧すれば鈍す。日本経済が停滞し、社会問題の解決策が見えなくなっていることが、狭量な挑発に反応してしまっているのだとすれば、矛先を変えた方が建設的です。

すなわち、我々は、グローバル化の恩恵を得て、成長していく道を選ぶべきだと思います。


いや、何も全員が、ユニクロのようなグローバル企業を目指せと言っているわけではありませんよ。

ローカルな環境でしたたかに生き残っていくのも立派な戦略です。むしろ私は、そんなローカル企業を支援する立場です。

ただローカルだからといって、今まで通りのやり方しか知らん、新しいことはわからん、と言っていては、変化していく世界の中で生き残れません。

スマホにしろ、IoTにしろ、AIにしろ、新しいテクノロジーを活用せずに恩恵も受けられずに過ごすのは勿体ない。実際、それを活用するのはそれほど難しいものではありません。それこそ、やり方を知らないだけです。

小さな事業は小さいなりに、新しいものを取り入れることで、生きる道が広がります。

小さな会社でも、ちょっと学べば、最新テクノロジーをとりいれて生産性を高めることはできます。


零細企業でも生産性向上に取り組むことはできる


先般、中小零細企業は生産性が低いので、中小零細企業そのものをなくしてしまおう。と主張する内容の本を紹介しました。


決して暴論ではなく、納得できる論旨だったことも紹介した通りです。

が、中小零細企業の支援を生業にしている者からすればあまりにも身も蓋もない提言ですから、どうにかできる道はないのかと考えざるを得ませんでした。

道はあります。

小さな会社ひとつひとつが生産性を上げていけば生き残ることができます。

が、知識もない、学ばない、設備資金もない、意欲もない中小零細企業が、自ら変革して生産性を上げることなどできるわけないだろーというのが、上の本の主張です。

そう言われると返す言葉がありません。その通りだからです。中小零細企業の中でも危機感を持って頑張っている企業じしんが「中小企業仲間の8割は残らんよ」と言っているぐらいです。

この問題を考えると、さすがに暗たんとなります。

俺だけ儲けるし、後は知らん、と言ってしまえば楽でしょうね。私もそのうちそう言って、別の仕事をしているかも知れませんw

しかしまだ手はあると思っています。

少し学べば理解できるはずです。生産性を上げるための設備資金がないっていいますが、資金をかけなくてもできる生産性向上策はあります。

いまのテクノロジーの進化はそれほどすさまじいものです。電気街で部品を買ってきて、無料のアプリと組み合わせるだけで、相当の効率化設備ができあがります。

皆、知らないだけなんですよ。

いや、すみません。私だって、最近、知ったばかりだから偉そうに言う謂れはありませんね。が、世界中の事業家がテクノロジーの普遍化に取り組んでいて、私たちの身近にも、IoTやAIなど無料や安価で取り組める方法が揃ってきていることは確かです。アイデア次第では、いろいろ面白いことができそうです。

具体的に何ができるのか、どのように活用すれば効果的なのか、自分なりに考えて今後のメルマガで書いていきたいと思います。


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