マクドナルドは、マイルドヤンキーを狙え!

2014.04.17

(2014年4月17日メルマガより)



■マクドナルドの原田前社長兼CEOが、
ベネッセの会長兼社長に就任するというニュースは記憶に新しいところでしょうね。

原田泳幸氏が、アップルコンピュータジャパンの社長から日本マクドナルドの社長に就任した時には「マックからマックへ」と騒がれたものでしたが、今回はさしづめ「ドナルドからしまじろうへ」ということですか^^

それにしてもこういう人のことをプロ経営者というのでしょうね。

世間はどうも現場叩き上げの経営者を尊ぶ風潮があるようですが、現場で求められる能力とマネージャーに求められる能力は異なります。

だからマネージャーとしての能力を持つ人が、このように様々な会社を渡り歩くことは、異常なことでもなんでもありません。

むしろ、こうしたプロ経営者群が、様々な会社を移動することが常態になれば、日本も、現場のトップがそのままマネージャーに格上げされて組織を混乱させることが少なくなるのにと思いますね。

■それはそうと、原田氏のマクドナルドでの最後の数年は、寂しいものでした。

原田氏が社長に就任したのが2004年です。

当初は、打つ施策が全て当たるような勢いで、現代最高の経営者の一人であると持て囃されていたものですが、2008年ぐらいをピークに売上は陰りはじめ、昨年実績を超えることもままならなくなりました。

ピークの栄光から、あまりにも落ち込みが急激で、何が起こったのか、傍目ではわけが分かりません。

一体、マクドナルドはどうなってしまったのでしょうか?

■原田氏が受け継ぐ前は、初代社長藤田田氏の長い時代が続いていました。

藤田氏も、歴史に名を残すような名経営者であることは間違いないでしょうが、その晩年は寂しげでした。

日本にハンバーガー文化を定着させた功績は確かなものですが、晩年は売上重視の店舗数拡大路線と行き過ぎた価格競争で、店舗も利益も疲弊させてしまいました。

そこに登場した原田社長は、偉大な創業者である藤田氏を一見否定するような姿勢をとることで、社内外の支持を集めます。

まずは藤田シンパともいえる古参社員を一掃し、実力のある若手に大胆に権限移譲を行います。彼らが、原田シンパとなり、ワンマン体制を作っていきました。

その上で、最初の1年は、既存店舗のQSC対策(品質、サービス、清潔さの向上対策)に集中しました。

店舗改革の目玉となったのが「メイド・フォー・ユー」といわれる厨房の改革でした。

これまでのようなハンバーガーの作り置きをやめて、注文してから作り始めるという販売方式への変更です。

出来たての美味しいハンバーガーを待たせずに提供することで、顧客価値を上げようとしたわけです。

それを含めて、既存店舗の魅力を取り戻すことにじっくりと時間をかけました。

■さらに藤田時代に拡大した店舗数の縮小を図ります。

収益性の低い店舗を整理し、大型店舗に集約していこうとしました。

その際、施策の自由度が効きにくいFC店を減らして、直営店を増やそうとしたという話もありました。

(これが後々、固定費の増大という形で、原田氏を苦しめることになるのですが)

そして、次に行ったのが、原田氏の特徴であった「100円マック」の拡大と「高額メニューの増加」という二大施策です。

原田氏のマーケティング施策の優れているところは、とにかくシンプルなことです。

売上=客数×客単価だとすると、

客数対策=100円マック、クーポン券配布、無料コーヒーなど。

客単価対策=メガマック、クォーターパウンダーなどの新製品。セットメニューの開発など。

この単純な数式を忠実に追及しようとしたところが、潔い。そもそも営業戦略は、余計なことを考えずに、追求すべきところをシンプルに絞った方が成功しやすいものです。

店舗のQSCという基盤を整備した後は、ひたすら客数と客単価をゲームのように追求しているように見受けられました。(ゲーム的すぎて、バイトを使って行列を作るというやらせのような演出もしてしまったという噂がありますが^^;)

こうした施策が見事に当たって、2008年までは、最高売上を更新し続けていったわけです。

このあたりのことは以前のメルマガでも書きましたので参照ください。

参考「マクドナルド 一人勝ちの理由」
http://www.createvalue.biz/column2/post-56.html

参考「失速したマクドナルドの次の一手は?」
http://www.createvalue.biz/column2/post-239.html

■さて、盤石のように思えたマクドナルドの好調さが、なぜ脆くも崩れ去ったのでしょうか。

マクドナルドの売上推移をみていると、2008年をピークにずっと下がり続けています。

つまり、リーマンショックをきっかけにで売上が低迷し、そのまま浮上できていないということです。

業界トップ企業が、そうした市場の特殊要因の影響を最も大きく受けることは、仕方のないことでしょう。

しかし問題は、そこから浮上するためのシナリオが描けていないということです。

これについては、いろいろな人が様々な説を唱えていますが、私自身は、以下の3つが複合的に絡んでいるのだと考えています。

すなわち(1)市場の急激な変化(2)マーケティング施策の失敗(3)人材育成の遅れ、です。

■原田氏自身は、東日本大震災における消費者心理の変化(外食は控えたい)を原因に挙げていますが、これには疑問があります。

なぜなら、モスバーガーのように、震災以降もじわじわと業績を伸ばしているチェーンもあるからです

マクドとモスでは規模が違うと言われるかも知れませんが、少なくともどこかに「儲かるセグメント」を見つけていなければなりません。

(1)市場の変化については、大前研一氏の指摘があります。

参考:マクドナルド新社長は日本の外食市場を読み抜けるか
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130909/364523/

すなわち、コンビニや牛丼やうどんや、日本独特の中食市場の発達や、ファストフード店の異常な競争環境が、ハンバーガー業界の覇者を脅かしているという事態です。

確かにマクドナルドは、ハンバーガーチェーンのナンバーワン企業であり、他の追随を許していません。が、市場が縮小している状況では、他業界との異種競争にならざるを得ません。

コンビニによる中食市場の発達や、牛丼、さぬきうどんといったファストフード市場の異常な競争環境に、マクドナルドは対応できているのだろうか、という大前氏の指摘です。

■そういえば、私の身近でも、マクドナルドに行く人が減ったという印象があります。

昔、休みの昼などには、マクドでセットを買ってきて、家族で食べるということがたまにあったような気がしますが、最近はなくなりました。

なんでかな、と家族に聞いてみると「マクドは高いし、食べたいものがない」という回答です。

他の人も「マクドにはお得感がない」と言っていました。

ファストフードの店が「高い」「お得感がない」と言われたら、これは致命的です。

逆にモスバーガーやロッテリアには、どういうわけか「高いけど美味しい」「たまに食べたい」と評価する声があります。

私の周りという参考にならないサンプルかも知れませんが、どうやら、ここ数年のマクドナルドの施策は、世間の感性とずれてきてしまったのではないか。と私は感じています。

■自分の身近ではマクドに行く人が減ったという話をしましたが、実は、私自身は時々立ち寄ります。

といっても食事するのではなく、日中、ちょっとした時間潰しのために行くのです。

いつからか、マックカフェとかいって、マクドは昼間の時間に、サラリーマンらを呼び込もうとしてきました。

我々からすれば、コーヒー100円で、しばらく居ることができるのですから、居場所として有難いことです。

ただし、そうした昼間の会社員に対して、ハンバーガーのリピート顧客にするような仕掛けが、今のところ、見受けられません。少なくとも私は、コーヒー以外を注文しようとは思いません。

昼間の暇な時間に、マクドに馴染みのない顧客層を集客しようとした意図は分かるのですが、その後の売上・利益につながるような仕掛けがなければ、仕組みとして機能しません。

むしろ、広間にサラリーマンが居座っていたら、子供連れの主婦たちが入りにくい雰囲気ができるのではないか?

集客と刈取りの機能がバラバラでは、むしろ逆効果になっているのではないかと思ってしまうわけです。

■要するに(2)マーケティング施策が失敗(特にターゲット設定のブレ)しているのではないか?

あるいは、集客対策でビッグマックやフィレオフィッシュといったレギュラーメニューを安売りするという施策もありました。

原田氏自身は「利益商品であるレギュラーメニューを値引きするのは失敗だった」と認めていたはずですが、その後もビッグマックは期間限定の値引きを続けているようです。

一度、価格を下げた商品を元に戻すのは簡単ではありません。そんなことはわかっていたはず。なんともチグハグな施策だと感じられます。

なぜこのように初歩的なミスが起きたのでしょうか。

これは(3)人材育成の遅れにも通じるのですが、原田氏が権限移譲した若い社員が、集客対策係、単価向上係、それぞれ別個に動いているからではないか?

客数増、単価向上は、ある場面では矛盾する施策ですから、それぞれがバラバラに動けば、お互いの効果を消してしまうことになりかねません。

だから、矛盾する施策を最適解になるように調整する人間が必要だったはずです。そのトップに近いマネージャーが、もしかしたら育っていないのかも知れません。

そういえばマクドナルドは、藤田社長の時代から、偉大なカリスマの指導に従うという姿勢が、企業風土のようになっていたと聞きます。

カリスマ性を持った指導者の後を引き継ぐのは難しいと言われます。確かにそうでしょう。長くカリスマ指導者が君臨した組織は、その指導者に対する崇拝と不満が同時に溜まっていることが多いですから。

そんな場合、最も安易でうまくいくのは、前の指導者の一部をガス抜き的に否定しながら、自分がそっくりカリスマの位置に収まってしまうことです。

原田氏は、カリスマ経営者を否定するような発言を繰り返していたはずですが、実際には、新たなカリスマ経営者の位置にそのまま入ったわけで、実は企業体質は変化していないというのが私の見方です。

それを知ってか、原田氏はここ数年、後継者となる人材を育てることを意識し、自らは口を出さない方針でいたと言います。

その結果としてチグハグな施策が作られたのだとしたら、原田氏の組織改革はうまくいっていなかった(あるいは時間が足りなかった)ということではないでしょうか。

■というわけで、原田氏はベネッセに転職していきましたが、残されたカサノバ社長は、どうすればいいのかですね。

報道によれば、カサノバ社長は、原点回帰ともいえるファミリー層への訴求を行うということです。

それは今、マクドナルドが弱い部分ですから、方向性としては正しいことだと思えます。

■藤田田氏の時代には、マクドナルドは、何か変なことをやりそうな、もっとワクワクした企業でした。

例えば、いろんな他業種と提携して、キャンペーン企画なども頻繁に行っていました。

クイズに正解すると商品がもらえるというスクラッチカードなんかもあって楽しかったですね。

ただしその頃のマクドナルドがブレていなかったのは、ターゲットをキッズからファミリー層に絞るということだったはず

だから、原点回帰を目指すカサノバ氏は、照準のピントをもう一度、絞らなければなりません。

かつてのワクワクしたマクドナルドの施策や異業種との提携は、そこに絞って行うべきです。

ちなみに私なら、イオン、しまむら、ドン・キホーテと真っ先に提携します。

そしてできるなら、びっくりドンキーを買収します。びっくりドンキーバーガーとか発売したいですね。

なぜなら、マクドナルドがターゲットとすべきは、地元に根付いたファミリー層だからです。

■もうおわかりですかね。今流行りの「マイルドヤンキー層」にリーチしようという考えです。

「ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体」という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/434498336X/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本が提唱するマイルドヤンキーとは、上京思考がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤をつくっている人々のことを指します。

この本が話題になっているのは、これまでの一般的なマーケティング企画者が、まるで見逃してきたこうした層が、実は大きな消費の担い手であると指摘しているからです。

イオンやしまむらなど、都会にいるマーケティング担当者からすれば魅力的とは思えない企業が大きな利益を上げている理由を、この本は、マイルドヤンキー層の存在に求めています。

同時に、こうした地方のファミリー層は、実はマクドナルドのメインユーザー層でもあります。

こうしたはっきりしたコアユーザーに飽きられたら、本当に未来がなくなってしまいます。

だから、マクドナルドは、マックカフェなどやめてしまって、かつてのミニ遊園地のような店づくりに回帰すべきです。

箸にも棒にもかからないようなハッピーセットの玩具は即刻見直さなければなりません。

私が思うに、地方のファミリー層に非常にうまく訴求している企業が、ドン・キホーテであり、びっくりドンキーです。

ドン・キホーテの品揃え。びっくりドンキーの店づくり。彼らが持つ非日常感とバッドセンスをマクドナルドはとり入れるべきですよ。

カサノバ氏におすすめしておきます。

■それにしても。

原田泳幸氏ほどの経営者でも、一歩間違えれば、業績低迷に陥ってしまうのですね。

経営は複合的であるだけに難しいものです。

この事例からわかるのは、成果を出すにはなるべく単純化して考えること。

ただし矛盾したことを同時に行うのが経営であることを忘れず、最適解を求め続けることが大切だということ。

そして、組織変革には時間がかかるので、相当腰を落ち着けて取り組まなけばならないということです。

スケールの小さな事業に関わる私ですが、肝に銘じたいと思います。

(2014年4月17日メルマガより)



■マクドナルドの原田前社長兼CEOが、
ベネッセの会長兼社長に就任するというニュースは記憶に新しいところでしょうね。

原田泳幸氏が、アップルコンピュータジャパンの社長から日本マクドナルドの社長に就任した時には「マックからマックへ」と騒がれたものでしたが、今回はさしづめ「ドナルドからしまじろうへ」ということですか^^

それにしてもこういう人のことをプロ経営者というのでしょうね。

世間はどうも現場叩き上げの経営者を尊ぶ風潮があるようですが、現場で求められる能力とマネージャーに求められる能力は異なります。

だからマネージャーとしての能力を持つ人が、このように様々な会社を渡り歩くことは、異常なことでもなんでもありません。

むしろ、こうしたプロ経営者群が、様々な会社を移動することが常態になれば、日本も、現場のトップがそのままマネージャーに格上げされて組織を混乱させることが少なくなるのにと思いますね。

■それはそうと、原田氏のマクドナルドでの最後の数年は、寂しいものでした。

原田氏が社長に就任したのが2004年です。

当初は、打つ施策が全て当たるような勢いで、現代最高の経営者の一人であると持て囃されていたものですが、2008年ぐらいをピークに売上は陰りはじめ、昨年実績を超えることもままならなくなりました。

ピークの栄光から、あまりにも落ち込みが急激で、何が起こったのか、傍目ではわけが分かりません。

一体、マクドナルドはどうなってしまったのでしょうか?

■原田氏が受け継ぐ前は、初代社長藤田田氏の長い時代が続いていました。

藤田氏も、歴史に名を残すような名経営者であることは間違いないでしょうが、その晩年は寂しげでした。

日本にハンバーガー文化を定着させた功績は確かなものですが、晩年は売上重視の店舗数拡大路線と行き過ぎた価格競争で、店舗も利益も疲弊させてしまいました。

そこに登場した原田社長は、偉大な創業者である藤田氏を一見否定するような姿勢をとることで、社内外の支持を集めます。

まずは藤田シンパともいえる古参社員を一掃し、実力のある若手に大胆に権限移譲を行います。彼らが、原田シンパとなり、ワンマン体制を作っていきました。

その上で、最初の1年は、既存店舗のQSC対策(品質、サービス、清潔さの向上対策)に集中しました。

店舗改革の目玉となったのが「メイド・フォー・ユー」といわれる厨房の改革でした。

これまでのようなハンバーガーの作り置きをやめて、注文してから作り始めるという販売方式への変更です。

出来たての美味しいハンバーガーを待たせずに提供することで、顧客価値を上げようとしたわけです。

それを含めて、既存店舗の魅力を取り戻すことにじっくりと時間をかけました。

■さらに藤田時代に拡大した店舗数の縮小を図ります。

収益性の低い店舗を整理し、大型店舗に集約していこうとしました。

その際、施策の自由度が効きにくいFC店を減らして、直営店を増やそうとしたという話もありました。

(これが後々、固定費の増大という形で、原田氏を苦しめることになるのですが)

そして、次に行ったのが、原田氏の特徴であった「100円マック」の拡大と「高額メニューの増加」という二大施策です。

原田氏のマーケティング施策の優れているところは、とにかくシンプルなことです。

売上=客数×客単価だとすると、

客数対策=100円マック、クーポン券配布、無料コーヒーなど。

客単価対策=メガマック、クォーターパウンダーなどの新製品。セットメニューの開発など。

この単純な数式を忠実に追及しようとしたところが、潔い。そもそも営業戦略は、余計なことを考えずに、追求すべきところをシンプルに絞った方が成功しやすいものです。

店舗のQSCという基盤を整備した後は、ひたすら客数と客単価をゲームのように追求しているように見受けられました。(ゲーム的すぎて、バイトを使って行列を作るというやらせのような演出もしてしまったという噂がありますが^^;)

こうした施策が見事に当たって、2008年までは、最高売上を更新し続けていったわけです。

このあたりのことは以前のメルマガでも書きましたので参照ください。

参考「マクドナルド 一人勝ちの理由」
http://www.createvalue.biz/column2/post-56.html

参考「失速したマクドナルドの次の一手は?」
http://www.createvalue.biz/column2/post-239.html

■さて、盤石のように思えたマクドナルドの好調さが、なぜ脆くも崩れ去ったのでしょうか。

マクドナルドの売上推移をみていると、2008年をピークにずっと下がり続けています。

つまり、リーマンショックをきっかけにで売上が低迷し、そのまま浮上できていないということです。

業界トップ企業が、そうした市場の特殊要因の影響を最も大きく受けることは、仕方のないことでしょう。

しかし問題は、そこから浮上するためのシナリオが描けていないということです。

これについては、いろいろな人が様々な説を唱えていますが、私自身は、以下の3つが複合的に絡んでいるのだと考えています。

すなわち(1)市場の急激な変化(2)マーケティング施策の失敗(3)人材育成の遅れ、です。

■原田氏自身は、東日本大震災における消費者心理の変化(外食は控えたい)を原因に挙げていますが、これには疑問があります。

なぜなら、モスバーガーのように、震災以降もじわじわと業績を伸ばしているチェーンもあるからです

マクドとモスでは規模が違うと言われるかも知れませんが、少なくともどこかに「儲かるセグメント」を見つけていなければなりません。

(1)市場の変化については、大前研一氏の指摘があります。

参考:マクドナルド新社長は日本の外食市場を読み抜けるか
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130909/364523/

すなわち、コンビニや牛丼やうどんや、日本独特の中食市場の発達や、ファストフード店の異常な競争環境が、ハンバーガー業界の覇者を脅かしているという事態です。

確かにマクドナルドは、ハンバーガーチェーンのナンバーワン企業であり、他の追随を許していません。が、市場が縮小している状況では、他業界との異種競争にならざるを得ません。

コンビニによる中食市場の発達や、牛丼、さぬきうどんといったファストフード市場の異常な競争環境に、マクドナルドは対応できているのだろうか、という大前氏の指摘です。

■そういえば、私の身近でも、マクドナルドに行く人が減ったという印象があります。

昔、休みの昼などには、マクドでセットを買ってきて、家族で食べるということがたまにあったような気がしますが、最近はなくなりました。

なんでかな、と家族に聞いてみると「マクドは高いし、食べたいものがない」という回答です。

他の人も「マクドにはお得感がない」と言っていました。

ファストフードの店が「高い」「お得感がない」と言われたら、これは致命的です。

逆にモスバーガーやロッテリアには、どういうわけか「高いけど美味しい」「たまに食べたい」と評価する声があります。

私の周りという参考にならないサンプルかも知れませんが、どうやら、ここ数年のマクドナルドの施策は、世間の感性とずれてきてしまったのではないか。と私は感じています。

■自分の身近ではマクドに行く人が減ったという話をしましたが、実は、私自身は時々立ち寄ります。

といっても食事するのではなく、日中、ちょっとした時間潰しのために行くのです。

いつからか、マックカフェとかいって、マクドは昼間の時間に、サラリーマンらを呼び込もうとしてきました。

我々からすれば、コーヒー100円で、しばらく居ることができるのですから、居場所として有難いことです。

ただし、そうした昼間の会社員に対して、ハンバーガーのリピート顧客にするような仕掛けが、今のところ、見受けられません。少なくとも私は、コーヒー以外を注文しようとは思いません。

昼間の暇な時間に、マクドに馴染みのない顧客層を集客しようとした意図は分かるのですが、その後の売上・利益につながるような仕掛けがなければ、仕組みとして機能しません。

むしろ、広間にサラリーマンが居座っていたら、子供連れの主婦たちが入りにくい雰囲気ができるのではないか?

集客と刈取りの機能がバラバラでは、むしろ逆効果になっているのではないかと思ってしまうわけです。

■要するに(2)マーケティング施策が失敗(特にターゲット設定のブレ)しているのではないか?

あるいは、集客対策でビッグマックやフィレオフィッシュといったレギュラーメニューを安売りするという施策もありました。

原田氏自身は「利益商品であるレギュラーメニューを値引きするのは失敗だった」と認めていたはずですが、その後もビッグマックは期間限定の値引きを続けているようです。

一度、価格を下げた商品を元に戻すのは簡単ではありません。そんなことはわかっていたはず。なんともチグハグな施策だと感じられます。

なぜこのように初歩的なミスが起きたのでしょうか。

これは(3)人材育成の遅れにも通じるのですが、原田氏が権限移譲した若い社員が、集客対策係、単価向上係、それぞれ別個に動いているからではないか?

客数増、単価向上は、ある場面では矛盾する施策ですから、それぞれがバラバラに動けば、お互いの効果を消してしまうことになりかねません。

だから、矛盾する施策を最適解になるように調整する人間が必要だったはずです。そのトップに近いマネージャーが、もしかしたら育っていないのかも知れません。

そういえばマクドナルドは、藤田社長の時代から、偉大なカリスマの指導に従うという姿勢が、企業風土のようになっていたと聞きます。

カリスマ性を持った指導者の後を引き継ぐのは難しいと言われます。確かにそうでしょう。長くカリスマ指導者が君臨した組織は、その指導者に対する崇拝と不満が同時に溜まっていることが多いですから。

そんな場合、最も安易でうまくいくのは、前の指導者の一部をガス抜き的に否定しながら、自分がそっくりカリスマの位置に収まってしまうことです。

原田氏は、カリスマ経営者を否定するような発言を繰り返していたはずですが、実際には、新たなカリスマ経営者の位置にそのまま入ったわけで、実は企業体質は変化していないというのが私の見方です。

それを知ってか、原田氏はここ数年、後継者となる人材を育てることを意識し、自らは口を出さない方針でいたと言います。

その結果としてチグハグな施策が作られたのだとしたら、原田氏の組織改革はうまくいっていなかった(あるいは時間が足りなかった)ということではないでしょうか。

■というわけで、原田氏はベネッセに転職していきましたが、残されたカサノバ社長は、どうすればいいのかですね。

報道によれば、カサノバ社長は、原点回帰ともいえるファミリー層への訴求を行うということです。

それは今、マクドナルドが弱い部分ですから、方向性としては正しいことだと思えます。

■藤田田氏の時代には、マクドナルドは、何か変なことをやりそうな、もっとワクワクした企業でした。

例えば、いろんな他業種と提携して、キャンペーン企画なども頻繁に行っていました。

クイズに正解すると商品がもらえるというスクラッチカードなんかもあって楽しかったですね。

ただしその頃のマクドナルドがブレていなかったのは、ターゲットをキッズからファミリー層に絞るということだったはず

だから、原点回帰を目指すカサノバ氏は、照準のピントをもう一度、絞らなければなりません。

かつてのワクワクしたマクドナルドの施策や異業種との提携は、そこに絞って行うべきです。

ちなみに私なら、イオン、しまむら、ドン・キホーテと真っ先に提携します。

そしてできるなら、びっくりドンキーを買収します。びっくりドンキーバーガーとか発売したいですね。

なぜなら、マクドナルドがターゲットとすべきは、地元に根付いたファミリー層だからです。

■もうおわかりですかね。今流行りの「マイルドヤンキー層」にリーチしようという考えです。

「ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体」という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/434498336X/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本が提唱するマイルドヤンキーとは、上京思考がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤をつくっている人々のことを指します。

この本が話題になっているのは、これまでの一般的なマーケティング企画者が、まるで見逃してきたこうした層が、実は大きな消費の担い手であると指摘しているからです。

イオンやしまむらなど、都会にいるマーケティング担当者からすれば魅力的とは思えない企業が大きな利益を上げている理由を、この本は、マイルドヤンキー層の存在に求めています。

同時に、こうした地方のファミリー層は、実はマクドナルドのメインユーザー層でもあります。

こうしたはっきりしたコアユーザーに飽きられたら、本当に未来がなくなってしまいます。

だから、マクドナルドは、マックカフェなどやめてしまって、かつてのミニ遊園地のような店づくりに回帰すべきです。

箸にも棒にもかからないようなハッピーセットの玩具は即刻見直さなければなりません。

私が思うに、地方のファミリー層に非常にうまく訴求している企業が、ドン・キホーテであり、びっくりドンキーです。

ドン・キホーテの品揃え。びっくりドンキーの店づくり。彼らが持つ非日常感とバッドセンスをマクドナルドはとり入れるべきですよ。

カサノバ氏におすすめしておきます。

■それにしても。

原田泳幸氏ほどの経営者でも、一歩間違えれば、業績低迷に陥ってしまうのですね。

経営は複合的であるだけに難しいものです。

この事例からわかるのは、成果を出すにはなるべく単純化して考えること。

ただし矛盾したことを同時に行うのが経営であることを忘れず、最適解を求め続けることが大切だということ。

そして、組織変革には時間がかかるので、相当腰を落ち着けて取り組まなけばならないということです。

スケールの小さな事業に関わる私ですが、肝に銘じたいと思います。

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