WOWOWをV字回復させたサブスクビジネスの本質

2019.05.16


(2019年5月16日メルマガより)


以前、メルマガで「サブスクリプション・ビジネス」のことをとりあげました。


今年の2月ですね。あれからそれほど時間も経っていませんが、今や「サブスクリプション・ビジネス」はすっかりバズワードとなってしまった感があります。

いや2月の時点で、既にバズっていました。「サブスクといえば、とりあえず客が集まる」なんて意見があったぐらいですから。

このようにバズってしまえば終焉も近いというのが世の常です。既に撤退したサブスク・ビジネスも見え始めており、淘汰の時期に入ったのかも知れません。

それにしても、どういうサブスクは生き残り、どういうサブスクは続かないのでしょうか。

なにしろ新しい概念のビジネスなので、生き残りの法則を見つけ出すのは難しいですが、ヒントはあります。

今日は、その「サブスク・ビジネス 生き残りのヒント」について書きたいと思います。


サブスク・ビジネスの本質的価値


そもそもサブスクリプションとは、新聞や雑誌の「定期購読」を示す言葉です。だから定額で長期間の契約をするビジネスのことをサブスクリプション・ビジネスというんだよ。。。と短絡的に考えたら、その本質を見誤ってしまいます。

いまや「サブスク・ビジネス」は、元の意味を超えて、新しいマーケティングの概念を伝えるものとなっています。


近代のマーケティングは「顧客志向」の名のもとに発展してきました。作ったものを売る、という企業の都合を前面に押し出していたら売れないからです。だからマーケティングとは、顧客中心、顧客の都合を起点に発想せられなければなりません。

近年、その流れが加速してきました。人口は減るのに、企業数は減らない状況があるので、競争が激しくなるばかり。ビジネスの力関係は、ますますユーザー寄りになってきています。

モノが溢れかえっているので、我々はそれを欲しいとも思いません。物資が足りない時は所有することそのものがステイタスだったはずです。が、今は、所有していても何の自慢にもなりません。むしろ要らないものまで後生大事に抱えているなんてかっこ悪い。必要な時にだけ利用すればそれでいいのです。

こんな時勢ですから企業側も無理に売ることはできません。使いたい時に使ってもらう形態を整えれることが必要です。

そんな時ですから、定額費用で好きな時に好きなだけ使ってもらうサブスク・ビジネスが必然性を持つわけです。


たとえばCDやDVDが売れないと言われていますが当たり前です。借りて聴いたり観たりすればいいのですし、いまは配信技術が進んでいますから、ネット上で聴いたり、観たりすれば事足ります。

1枚3000円のCDがツタヤで借りれば数百円です。これがネット配信ならさらに安くなります。こんなの商売にならんよ!と業者の悲鳴が聞こえてきそうですが、そういうわけでもありません。

ネットで聴いたり観たりしたデータは蓄積されていきます。企業側は、そのデータをもとに、個人の嗜好や好きなアーティスト情報を手に入れます。そうなれば、個人ごとにぴったりのおすすめ情報を提供することができて、無駄な提案がなくなります。さらには真に必要とされるアーティストや作品を集めることができます。

つまりサブスク・ビジネスの本質的メリットとは、個人との長期的なつながりを前提としたビジネスの高度化、最適化です。

ビジネスに関わる総費用が少なくなりますから、個人もお得ですし、企業も儲かりますし、社会的にも無駄がなくなります。

一時的に売上や利益は減るかも知れませんが、はやくこの変化に対応した方が、生き残れます。


WOWOWのV字回復事例


サブスク・ビジネスは、ネットビジネスのデジタルデータとの相性がいいといえます。が、ネットビジネス以外でも、データをうまく掴んで、ビジネス展開している企業もあります。

その一つが、有料衛星放送のWOWOWです。

WOWOWは、一方的に映像を提供する衛星放送ですから、ネットのデジタル配信のように自動的に顧客情報が集まってくるわけではありません。

そんなWOWOWでも、個客との関係性を強化するリテンション(関係維持)マーケティングに取り組み成果を上げています。

という本に、WOWOWの取り組みが詳しく書かれているので紹介させていただきます。


WOWOWは、1990年に開局した日本で初めての有料衛星放送です。毎月数千円(現在は2300円税別)を支払うことで、映画や音楽ライブやスポーツの試合など全ての番組が見放題になるサブスク・ビジネスです。いまでは280万人以上の加入者数を集め、売上高816億円、経常利益107億円をあげる成功企業の一つといっていいでしょう。

が、そんなWOWOWも、顧客数の減少に苦しみ、存亡の危機に立たされていた頃がありました。

開局当初は、日本初の放送局なので、特長を知ってもらう必要があります。WOWOWのキラーコンテンツといえば、最新映画のいち早い放送、テニスやサッカーなどの有名試合のライブ放送、有名ミュージシャンのライブ放送などですか。ファンには垂涎の番組コンテンツが揃っているのですが、知られないと加入してもらえません。そこで、開局当初の施策は、ひたすら広告宣伝に努めて、新規顧客を獲得することでした。

家電店などに販促費を大量投入して「いま入ると数カ月無料!」なんてキャンペーンを頻発していました。その思い切りのいい施策が功を奏して、加入数を集めることに成功し、早期の黒字化を達成しました。

ところが、徐々に加入者数が減っていき、2005年頃にはじり貧状態に陥っていました。

WOWOW側は、さらなる販促費を投入するものの減少は止まりません。新規加入は一定数いるもののそれ以上の解約者がいたからです。

そんな時「解約抑止専門部署」の責任者に任ぜられたのが、上の本の著者である大坂祐希枝氏でした。

大坂氏は、コールセンターを通じて解約を申し入れる個人を解析し、解約したい理由で62のグループに分類します。そのグループごとに、営業トークのパターンなどを作り込んで、とりあえず解約阻止率の向上に成功します。

が、辞めたいという顧客を営業トークで一時的に引き留めたとしても、これは根本的な解決にはなっていません。

そもそも顧客に「契約解除したい」と思わせた時点で負けです。そう思わないような番組構成や顧客構成にしていかなければなりません。

いかに優良顧客を増やしていくか、がサブスク・ビジネスの本質であり、この本の醍醐味でありました。


優良顧客をいかにして増やすか


解約したいという顧客に特徴があるとすれば、継続する顧客にも特徴があるはずです。

ところが、解約客と違って、契約を続ける顧客は意見をいいません。沈黙しています。

仕方ないので、解約客を分類した62のグループを詳しく見ていくことにしました。

すると、解約客の中でも、比較的解約しやすいグループとしにくいグループがあることを知りました。それをさらに分析すると「クロス視聴」している顧客は解約しにくいことを発見しました。

ここでいうクロス視聴とは、複数のジャンルの番組を見ることです。テニスの試合を観たくて加入したのに、映画も頻繁に観ることをクロス視聴といいます。

WOWOWの場合、テレビごとに契約します。子供がテニスを観たくて契約したら、親が映画を観ている、ということが起こります。その場合、比較的継続しやすいようです。

あるいはこういう場合もあります。スターウォーズシリーズが観たくて加入したが、時代劇を観てみると結構面白かった。この場合も契約を維持しやすくなります。


そこでWOWOWの番組を「感情」で分類しデータベース化することになりました。一つの番組を「冒険」「サスペンス」「ロマンス」というジャンルだけではなく、それを観た時に沸き起こる「楽しい」「ほっこり」「スカッとする」といった感情で分類したのです。

すると、SFを観てスカッとした人に、スカッとするアニメや時代劇をすすめることができます。

WOWOWの強みは、アナログです。直接、加入者に電話して、番組をおすすめするなどの施策をまめに行い徐々に、加入者の行動や考えを理解していきました。


WOWOWにとっての優良顧客とは長期契約客です。沈黙しているので確かに見えにくい長期契約客ですが、アプローチを繰り返すことで徐々に見えてくるものがありました。

WOWOWの場合、「複数の家族が番組を視聴していること」および「加入時に観たかった番組以外の番組を視聴していること」が優良顧客になるための重要なポイントでした。

さらに細かく「何人家族か」「どんな番組を観たかったのか」「いまどんな番組を観ているのか」「どんな感情になる番組を観ているのか」を分析していると、優良顧客モデルが見えてきます。

そうなると打ち手がいろいろ出てきます。

テニスを観たくて加入した人に、サスペンス映画を勧める。

SF映画を観たくて加入した人に、ワクワクする番組を勧める。

あるいは、元来優良顧客になりそうな家族構成の顧客を新規ターゲットにする。

特定のwebサイトに訪れる人を新規ターゲットにする。

など、WOWOWの内部データから得た独自の「勝ちパターン」をマーケティング施策として実行していきました。

こうした地道な取り組みの積み重ねが今の「有料放送はWOWOWの一人勝ち」といわれるような状況を作っていったのです。


完全デジタル企業に対抗できるか?


こうしたWOWOWの取り組みは非常に立派ですし、成功事例だと思います。

ただし、将来を見渡した場合、この会社の存続には疑問符がつきます。

なぜなら、映像配信という分野では、強力なライバルが次々と現れてきているからです。

映画という分野でいえばネットフリックスやアマゾンプライム。

スポーツ中継ではダゾーンがあります。

しかも、彼らは完全デジタル放送なので、個客の嗜好や行動の傾向を自動的に収集・蓄積しています。彼らの持つレコメンドエンジン(個客の好みを分析しおすすめ商品を提案する機能)は強力です。

ネットフリックスなどレコメンドエンジンで世界を制すると意気込んでいるだけに、日本の個客にイギリスのドキュメンタリー番組を勧めたり、トルコの個客に日本のアニメを勧めたり、ワールドワイドなクロス視聴を実現しています。しかもそれが面白いと話題になったりしています。

グローバルに番組を掘り起し、世界各国の個客にクロス視聴を自動で推奨するネットフリックスの機能にWOWOWのアナログな取り組みは対抗できるのでしょうか。

WOWOW側は「デジタルとアナログの融合こそが日本人に合う」と言っているようですが、私には"デジタルなレコメンド機能ではとてもネトフリやアマゾンに太刀打ちできませんわ!"という意味に聞こえます。

このように技術機能的にも市場規模的にもWOWOWが単独で生き残る未来は考えにくいと思います。それこそネトフリに負けた動画配信サービスと合併するなどして、日本国内の映像配信市場を死守していく、という方策しか思い浮かびません。

ビジネスモデルそのものを変えていかなければ生き残れないでしょう。



(2019年5月16日メルマガより)


以前、メルマガで「サブスクリプション・ビジネス」のことをとりあげました。


今年の2月ですね。あれからそれほど時間も経っていませんが、今や「サブスクリプション・ビジネス」はすっかりバズワードとなってしまった感があります。

いや2月の時点で、既にバズっていました。「サブスクといえば、とりあえず客が集まる」なんて意見があったぐらいですから。

このようにバズってしまえば終焉も近いというのが世の常です。既に撤退したサブスク・ビジネスも見え始めており、淘汰の時期に入ったのかも知れません。

それにしても、どういうサブスクは生き残り、どういうサブスクは続かないのでしょうか。

なにしろ新しい概念のビジネスなので、生き残りの法則を見つけ出すのは難しいですが、ヒントはあります。

今日は、その「サブスク・ビジネス 生き残りのヒント」について書きたいと思います。


サブスク・ビジネスの本質的価値


そもそもサブスクリプションとは、新聞や雑誌の「定期購読」を示す言葉です。だから定額で長期間の契約をするビジネスのことをサブスクリプション・ビジネスというんだよ。。。と短絡的に考えたら、その本質を見誤ってしまいます。

いまや「サブスク・ビジネス」は、元の意味を超えて、新しいマーケティングの概念を伝えるものとなっています。


近代のマーケティングは「顧客志向」の名のもとに発展してきました。作ったものを売る、という企業の都合を前面に押し出していたら売れないからです。だからマーケティングとは、顧客中心、顧客の都合を起点に発想せられなければなりません。

近年、その流れが加速してきました。人口は減るのに、企業数は減らない状況があるので、競争が激しくなるばかり。ビジネスの力関係は、ますますユーザー寄りになってきています。

モノが溢れかえっているので、我々はそれを欲しいとも思いません。物資が足りない時は所有することそのものがステイタスだったはずです。が、今は、所有していても何の自慢にもなりません。むしろ要らないものまで後生大事に抱えているなんてかっこ悪い。必要な時にだけ利用すればそれでいいのです。

こんな時勢ですから企業側も無理に売ることはできません。使いたい時に使ってもらう形態を整えれることが必要です。

そんな時ですから、定額費用で好きな時に好きなだけ使ってもらうサブスク・ビジネスが必然性を持つわけです。


たとえばCDやDVDが売れないと言われていますが当たり前です。借りて聴いたり観たりすればいいのですし、いまは配信技術が進んでいますから、ネット上で聴いたり、観たりすれば事足ります。

1枚3000円のCDがツタヤで借りれば数百円です。これがネット配信ならさらに安くなります。こんなの商売にならんよ!と業者の悲鳴が聞こえてきそうですが、そういうわけでもありません。

ネットで聴いたり観たりしたデータは蓄積されていきます。企業側は、そのデータをもとに、個人の嗜好や好きなアーティスト情報を手に入れます。そうなれば、個人ごとにぴったりのおすすめ情報を提供することができて、無駄な提案がなくなります。さらには真に必要とされるアーティストや作品を集めることができます。

つまりサブスク・ビジネスの本質的メリットとは、個人との長期的なつながりを前提としたビジネスの高度化、最適化です。

ビジネスに関わる総費用が少なくなりますから、個人もお得ですし、企業も儲かりますし、社会的にも無駄がなくなります。

一時的に売上や利益は減るかも知れませんが、はやくこの変化に対応した方が、生き残れます。


WOWOWのV字回復事例


サブスク・ビジネスは、ネットビジネスのデジタルデータとの相性がいいといえます。が、ネットビジネス以外でも、データをうまく掴んで、ビジネス展開している企業もあります。

その一つが、有料衛星放送のWOWOWです。

WOWOWは、一方的に映像を提供する衛星放送ですから、ネットのデジタル配信のように自動的に顧客情報が集まってくるわけではありません。

そんなWOWOWでも、個客との関係性を強化するリテンション(関係維持)マーケティングに取り組み成果を上げています。

という本に、WOWOWの取り組みが詳しく書かれているので紹介させていただきます。


WOWOWは、1990年に開局した日本で初めての有料衛星放送です。毎月数千円(現在は2300円税別)を支払うことで、映画や音楽ライブやスポーツの試合など全ての番組が見放題になるサブスク・ビジネスです。いまでは280万人以上の加入者数を集め、売上高816億円、経常利益107億円をあげる成功企業の一つといっていいでしょう。

が、そんなWOWOWも、顧客数の減少に苦しみ、存亡の危機に立たされていた頃がありました。

開局当初は、日本初の放送局なので、特長を知ってもらう必要があります。WOWOWのキラーコンテンツといえば、最新映画のいち早い放送、テニスやサッカーなどの有名試合のライブ放送、有名ミュージシャンのライブ放送などですか。ファンには垂涎の番組コンテンツが揃っているのですが、知られないと加入してもらえません。そこで、開局当初の施策は、ひたすら広告宣伝に努めて、新規顧客を獲得することでした。

家電店などに販促費を大量投入して「いま入ると数カ月無料!」なんてキャンペーンを頻発していました。その思い切りのいい施策が功を奏して、加入数を集めることに成功し、早期の黒字化を達成しました。

ところが、徐々に加入者数が減っていき、2005年頃にはじり貧状態に陥っていました。

WOWOW側は、さらなる販促費を投入するものの減少は止まりません。新規加入は一定数いるもののそれ以上の解約者がいたからです。

そんな時「解約抑止専門部署」の責任者に任ぜられたのが、上の本の著者である大坂祐希枝氏でした。

大坂氏は、コールセンターを通じて解約を申し入れる個人を解析し、解約したい理由で62のグループに分類します。そのグループごとに、営業トークのパターンなどを作り込んで、とりあえず解約阻止率の向上に成功します。

が、辞めたいという顧客を営業トークで一時的に引き留めたとしても、これは根本的な解決にはなっていません。

そもそも顧客に「契約解除したい」と思わせた時点で負けです。そう思わないような番組構成や顧客構成にしていかなければなりません。

いかに優良顧客を増やしていくか、がサブスク・ビジネスの本質であり、この本の醍醐味でありました。


優良顧客をいかにして増やすか


解約したいという顧客に特徴があるとすれば、継続する顧客にも特徴があるはずです。

ところが、解約客と違って、契約を続ける顧客は意見をいいません。沈黙しています。

仕方ないので、解約客を分類した62のグループを詳しく見ていくことにしました。

すると、解約客の中でも、比較的解約しやすいグループとしにくいグループがあることを知りました。それをさらに分析すると「クロス視聴」している顧客は解約しにくいことを発見しました。

ここでいうクロス視聴とは、複数のジャンルの番組を見ることです。テニスの試合を観たくて加入したのに、映画も頻繁に観ることをクロス視聴といいます。

WOWOWの場合、テレビごとに契約します。子供がテニスを観たくて契約したら、親が映画を観ている、ということが起こります。その場合、比較的継続しやすいようです。

あるいはこういう場合もあります。スターウォーズシリーズが観たくて加入したが、時代劇を観てみると結構面白かった。この場合も契約を維持しやすくなります。


そこでWOWOWの番組を「感情」で分類しデータベース化することになりました。一つの番組を「冒険」「サスペンス」「ロマンス」というジャンルだけではなく、それを観た時に沸き起こる「楽しい」「ほっこり」「スカッとする」といった感情で分類したのです。

すると、SFを観てスカッとした人に、スカッとするアニメや時代劇をすすめることができます。

WOWOWの強みは、アナログです。直接、加入者に電話して、番組をおすすめするなどの施策をまめに行い徐々に、加入者の行動や考えを理解していきました。


WOWOWにとっての優良顧客とは長期契約客です。沈黙しているので確かに見えにくい長期契約客ですが、アプローチを繰り返すことで徐々に見えてくるものがありました。

WOWOWの場合、「複数の家族が番組を視聴していること」および「加入時に観たかった番組以外の番組を視聴していること」が優良顧客になるための重要なポイントでした。

さらに細かく「何人家族か」「どんな番組を観たかったのか」「いまどんな番組を観ているのか」「どんな感情になる番組を観ているのか」を分析していると、優良顧客モデルが見えてきます。

そうなると打ち手がいろいろ出てきます。

テニスを観たくて加入した人に、サスペンス映画を勧める。

SF映画を観たくて加入した人に、ワクワクする番組を勧める。

あるいは、元来優良顧客になりそうな家族構成の顧客を新規ターゲットにする。

特定のwebサイトに訪れる人を新規ターゲットにする。

など、WOWOWの内部データから得た独自の「勝ちパターン」をマーケティング施策として実行していきました。

こうした地道な取り組みの積み重ねが今の「有料放送はWOWOWの一人勝ち」といわれるような状況を作っていったのです。


完全デジタル企業に対抗できるか?


こうしたWOWOWの取り組みは非常に立派ですし、成功事例だと思います。

ただし、将来を見渡した場合、この会社の存続には疑問符がつきます。

なぜなら、映像配信という分野では、強力なライバルが次々と現れてきているからです。

映画という分野でいえばネットフリックスやアマゾンプライム。

スポーツ中継ではダゾーンがあります。

しかも、彼らは完全デジタル放送なので、個客の嗜好や行動の傾向を自動的に収集・蓄積しています。彼らの持つレコメンドエンジン(個客の好みを分析しおすすめ商品を提案する機能)は強力です。

ネットフリックスなどレコメンドエンジンで世界を制すると意気込んでいるだけに、日本の個客にイギリスのドキュメンタリー番組を勧めたり、トルコの個客に日本のアニメを勧めたり、ワールドワイドなクロス視聴を実現しています。しかもそれが面白いと話題になったりしています。

グローバルに番組を掘り起し、世界各国の個客にクロス視聴を自動で推奨するネットフリックスの機能にWOWOWのアナログな取り組みは対抗できるのでしょうか。

WOWOW側は「デジタルとアナログの融合こそが日本人に合う」と言っているようですが、私には"デジタルなレコメンド機能ではとてもネトフリやアマゾンに太刀打ちできませんわ!"という意味に聞こえます。

このように技術機能的にも市場規模的にもWOWOWが単独で生き残る未来は考えにくいと思います。それこそネトフリに負けた動画配信サービスと合併するなどして、日本国内の映像配信市場を死守していく、という方策しか思い浮かびません。

ビジネスモデルそのものを変えていかなければ生き残れないでしょう。


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