店舗系ビジネスの弱者の戦略

2013.09.05

(2013年9月5日メルマガより)


■「弱者の戦い方」という本があります。

http://amazon.co.jp/o/ASIN/4897978041/lanchesterkan-22/ref=nosim

2008年出版ですから少々古いですが、店舗経営に携わる方には役に立つ本です。おすすめいたします。

「ヤマダ電機に負けない」という副題がついていますが、この本で取り上げられているのは、セブンプラザ(鹿児島)、でんかのヤマグチ(東京)、アトム(大阪)といった中小家電専門店・チェーンの事例です。

いずれも、大型量販チェーン全盛の時代に、しっかりと地域に根を張って生きている中小店です。

「弱者の戦い方」というといかにもランチェスター戦略っぽいですが、案の定、その中身はランチェスター戦略事例です。

いずれの店の事例をみても、ランチェスター基本戦略や地域戦略をアレンジしたものだと思われます。

■私は、というと、あまり店舗系ビジネスのコンサルティングは手掛けていません。

私が得意とするのは、営業が顧客先に訪問するタイプの営業組織のコンサルティングです

だからといって、ランチェスター戦略が、店舗系ビジネスに応用できないかといえば、そうではありません。

今回は、この本を参考に、店舗系ビジネスの生き残り方法について書きたいと思います。

■店舗系であるにしろ、ないにしろ、営業戦略を立てる上で最初にしなければならないのが、顧客ターゲットを明確にすることです。

実際、今まで何年も、あるいは何十年も運営してきた店は、顧客に支持されたからこそ生き残ってきたはずです。

ところが、時代とともに市場は変化します。

店舗にとって立地は非常に大きな要素ですが、その立地の意味合いさえも、時代とともに変化していきます。

最初はファミリー層を相手に商売してきたのに、ここ何年かは高齢の単身者相手の商売になっている場合もあるでしょう。

商店街の中心に立地していたと思っていたのに、いつのまにか、シャッター街の中に取り残されたという場合もあるでしょう。

それでも生き残ってきたというのは、やはり、市場の変化に合わせて、その販売形態を変えてきたからにほかなりません。

■ところが、今になって改めて、自店がどういう立地にあるのかを聞いてみても、無頓着な人が多いことに驚きます。

知らず知らずのうちに、並べる商品を変えて、対応してきたということでしょうか。

要するに、流れの中で、変わってきたに過ぎませんから、自店の立ち位置を客観的に把握することができていません。

自分の位置を意識するのとしないのとは大違いです。

自然と対応してきたといえば聞こえはいいですが、言葉を変えれば、戦略がなくターゲットがブレた状態だということです。

店舗にとって立地が重要なことは理解していただけると思います。

広域商業集積にある店は、広い範囲から来る多くの顧客を相手にした商売になるでしょう。

町の住宅地の中にある店は、その地域の住民を相手にした商売でしょう。

(辺鄙な場所にありながら、わざと広域客を呼び込む商売をしている店もありますが、ここでは省略します)

だからまずは、現在の自店の立地がどのような意味を持つのかを理解することが、戦略づくりの第一歩となります。

■立地の意味を理解し、自店の顧客ターゲットを定めることが出来れば、地域の住宅街にある店が特殊な品揃えに凝ったり、広域商業施設にある店が日用品を並べたりといったチグハグ感がなくなるはずです。

ところが、私の見たところ、実に多くの店が、たまに来る顧客につられて品揃えの幅を広げた結果、わけのわからない店になってしまっています。

シンプルに考えてください。

地域密着を戦略とするならば、その地域にとってなくては困る店にならなければなりません。

広域顧客を相手にするならば、時折でも無性に行きたくなる店にならなければなりません。

地域密着の店が、妙なインパクトをみせる必要はありませんし、広域顧客の店が、日常的すぎては駄目です。

■私がコンサルティングをする場合は、まず、現在の顧客が誰なのかを徹底して調べてもらいます。

地域密着の立地なのに、遠方顧客が多い場合もあるでしょうし、予想通り10分圏内の顧客で成り立っている場合もあるはずです。

現状を冷静に見極めて、自店が、誰に向けて店づくりをするのかを決めていただきます。

■「弱者の戦い方」という本は、すべて地域密着戦略を実行している店の事例です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4897978041/lanchesterkan-22/ref=nosim

例えば、鹿児島県鹿屋市に本部を置く、セブンプラザ。

こちらは、赤字続きのパパママストアでもフランチャイジーに迎え入れ、経営を立て直すという魔法のようなFCチェーンです。

セブンプラザの手法は、地域密着販売への徹底です。

まずは入口を広めにとり、店内の照明を通常より明るくして、床は鏡のように清潔に磨き上げ、入店しやすい雰囲気を作ります。

什器は統一しているようです。シンプルで、陳列しやすい機能的なもので、店内の見通しをよくします。

入口近くには、利益の出る大物商品ではなく、単価の低い日用品を多く並べます。

これは、うちの店には日用品を買うだけに来てくださいという宣言です。

小物を並べすぎて大物商品を並べるスペースがなくなっても良しとしています。カタログ対応すればいいということです。

まずは、地域の顧客に来店しやすい状況を作り、ちょっとした時に繰り返し立ち寄ってもらえる店づくりを行うのが、セブンプラザの勝ちパターンです。

来店客にはお茶出しのサービスを行い、従業員と何かしらの会話ができるようになっています。このちょっとした会話が、顧客との信頼関係構築と情報収集につながっているようです。

■営業は、(1)顧客設定・集客、(2)営業活動、(3)アフターフォローの3段階で成り立っているというのが私の持論です。

このプロセスでいうと、地域密着営業の場合、(1)集客の段階で「マグネット商品で引き寄せる」などと悠長なことを言っていては駄目です。

狭い地域の顧客を待つだけでみすみす逃すような甘い営業はせず、こちらから迎えに行って連れてくるという行動が必要になります。

東京都町田市のでんかのヤマグチは、大手量販店よりもはるかに高い価格で販売することで有名ですが、それができるのは、営業が顧客と相当深い関係を築いているからです。

営業マンは顧客が来るのを待ってなどいません。自分から顧客のところに出向いて、サービス活動を行っています。(もちろん注文も得ます)

その際、全ての顧客を訪問することは不可能ですから、でんかのヤマグチでは、顧客を細かく分けて、優先順位をつけた上で、訪問する顧客を選んでいます。

その顧客分類の手法は、ランチェスター戦略の顧客把握マトリクスそのものです。詳しくは、この本を読んでください。

外商的な手法が無理だという場合でも、少なくともポスティングを行うなりして、顧客のもとへ訪問するということは必要です。

■(2)の営業活動は、必要性、利便性の徹底訴求です。

大阪に拠点を置くアトム電器チェーンは、弱者の戦略を徹底することで高収益を維持していますが、同チェーンは大手量販店が苦手とする部分に力を集中することで、生き残りを賭けています。

例えば主力商品には、対面販売や設備設置が必要なエアコン、エコキュート、IHクッキングヒーターなどを選び、接近戦を仕掛けています。

セブンプラザは、日用品、小物商品を繰り返し提供することで、かかりつけ電器店の地位を目指しています。

でんかのやまぐちは、深い顧客フォローを行い利便性を訴求しています。

いずれも、顧客にとってかゆいところに手が届く、必要性、利便性が訴求できる商売を強みにしています。

■(3)のアフターフォローについては、大手量販チェーンが不得意としている分野だけに重要です。

これは(1)の集客にも通じることですが、地域店は顧客のところへ行くことが必要です。

だから配達、取り付け、メンテナンスなどのサービスをビジネスに取り入れています。

面白い例では、でんかのヤマグチなどは、毎月大掛かりなイベントを開いて、顧客サービスに努めています。

イベントの内容は「野菜詰め放題」などといった家電に関係のないノリで考えたようなものですが、それでも既存顧客へのサービスになると同時に、地域の新規顧客を誘致することにも有効に働いているようです。

地域密着店の場合、アフターフォローがそのまま口コミになり、集客につながることが多いですから、でんかのヤマグチなどは、「新規顧客には力を入れなくても、既存顧客のフォローだけで十分だ」と言っていますね。

■もう一つ、忘れてはならないのは、いずれの会社も「経理システム」には細心の注意を払っていることです。

私の専門は売上を上げることですから、このメルマガでは詳しく話しませんが、経費感覚が狂っていたら、せっかく稼いだお金が、ザルからこぼれてしまいます。

中小小売店は、損益分岐点ぎりぎりで勝負しているところが殆どですから、数値の計算を一つ間違えれば、それですぐ赤字になってしまいます。

前提として、経理システムがしっかりしていることをあげておきます。

■なお、広域からの顧客をターゲットとする小売店の場合、もちろん、地域密着戦略とは全く違った施策が求められます。

しかし今回は書くことができませんでした。

またの機会に譲りたいと思います。

■でんかのヤマグチにしろ、アトム電器チェーンにしろ、おそらくランチェスター戦略をどこかで学んで自分なりにアレンジしたのだと見受けられます。

この戦略は、その気になれば、飲食店にでも建築業にでも応用できるはずです。

応用の方法が分からないという人が一人でもいなくなるように、これからも私なりに力を尽くしていきたいと考えています。

(2013年9月5日メルマガより)


■「弱者の戦い方」という本があります。

http://amazon.co.jp/o/ASIN/4897978041/lanchesterkan-22/ref=nosim

2008年出版ですから少々古いですが、店舗経営に携わる方には役に立つ本です。おすすめいたします。

「ヤマダ電機に負けない」という副題がついていますが、この本で取り上げられているのは、セブンプラザ(鹿児島)、でんかのヤマグチ(東京)、アトム(大阪)といった中小家電専門店・チェーンの事例です。

いずれも、大型量販チェーン全盛の時代に、しっかりと地域に根を張って生きている中小店です。

「弱者の戦い方」というといかにもランチェスター戦略っぽいですが、案の定、その中身はランチェスター戦略事例です。

いずれの店の事例をみても、ランチェスター基本戦略や地域戦略をアレンジしたものだと思われます。

■私は、というと、あまり店舗系ビジネスのコンサルティングは手掛けていません。

私が得意とするのは、営業が顧客先に訪問するタイプの営業組織のコンサルティングです

だからといって、ランチェスター戦略が、店舗系ビジネスに応用できないかといえば、そうではありません。

今回は、この本を参考に、店舗系ビジネスの生き残り方法について書きたいと思います。

■店舗系であるにしろ、ないにしろ、営業戦略を立てる上で最初にしなければならないのが、顧客ターゲットを明確にすることです。

実際、今まで何年も、あるいは何十年も運営してきた店は、顧客に支持されたからこそ生き残ってきたはずです。

ところが、時代とともに市場は変化します。

店舗にとって立地は非常に大きな要素ですが、その立地の意味合いさえも、時代とともに変化していきます。

最初はファミリー層を相手に商売してきたのに、ここ何年かは高齢の単身者相手の商売になっている場合もあるでしょう。

商店街の中心に立地していたと思っていたのに、いつのまにか、シャッター街の中に取り残されたという場合もあるでしょう。

それでも生き残ってきたというのは、やはり、市場の変化に合わせて、その販売形態を変えてきたからにほかなりません。

■ところが、今になって改めて、自店がどういう立地にあるのかを聞いてみても、無頓着な人が多いことに驚きます。

知らず知らずのうちに、並べる商品を変えて、対応してきたということでしょうか。

要するに、流れの中で、変わってきたに過ぎませんから、自店の立ち位置を客観的に把握することができていません。

自分の位置を意識するのとしないのとは大違いです。

自然と対応してきたといえば聞こえはいいですが、言葉を変えれば、戦略がなくターゲットがブレた状態だということです。

店舗にとって立地が重要なことは理解していただけると思います。

広域商業集積にある店は、広い範囲から来る多くの顧客を相手にした商売になるでしょう。

町の住宅地の中にある店は、その地域の住民を相手にした商売でしょう。

(辺鄙な場所にありながら、わざと広域客を呼び込む商売をしている店もありますが、ここでは省略します)

だからまずは、現在の自店の立地がどのような意味を持つのかを理解することが、戦略づくりの第一歩となります。

■立地の意味を理解し、自店の顧客ターゲットを定めることが出来れば、地域の住宅街にある店が特殊な品揃えに凝ったり、広域商業施設にある店が日用品を並べたりといったチグハグ感がなくなるはずです。

ところが、私の見たところ、実に多くの店が、たまに来る顧客につられて品揃えの幅を広げた結果、わけのわからない店になってしまっています。

シンプルに考えてください。

地域密着を戦略とするならば、その地域にとってなくては困る店にならなければなりません。

広域顧客を相手にするならば、時折でも無性に行きたくなる店にならなければなりません。

地域密着の店が、妙なインパクトをみせる必要はありませんし、広域顧客の店が、日常的すぎては駄目です。

■私がコンサルティングをする場合は、まず、現在の顧客が誰なのかを徹底して調べてもらいます。

地域密着の立地なのに、遠方顧客が多い場合もあるでしょうし、予想通り10分圏内の顧客で成り立っている場合もあるはずです。

現状を冷静に見極めて、自店が、誰に向けて店づくりをするのかを決めていただきます。

■「弱者の戦い方」という本は、すべて地域密着戦略を実行している店の事例です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4897978041/lanchesterkan-22/ref=nosim

例えば、鹿児島県鹿屋市に本部を置く、セブンプラザ。

こちらは、赤字続きのパパママストアでもフランチャイジーに迎え入れ、経営を立て直すという魔法のようなFCチェーンです。

セブンプラザの手法は、地域密着販売への徹底です。

まずは入口を広めにとり、店内の照明を通常より明るくして、床は鏡のように清潔に磨き上げ、入店しやすい雰囲気を作ります。

什器は統一しているようです。シンプルで、陳列しやすい機能的なもので、店内の見通しをよくします。

入口近くには、利益の出る大物商品ではなく、単価の低い日用品を多く並べます。

これは、うちの店には日用品を買うだけに来てくださいという宣言です。

小物を並べすぎて大物商品を並べるスペースがなくなっても良しとしています。カタログ対応すればいいということです。

まずは、地域の顧客に来店しやすい状況を作り、ちょっとした時に繰り返し立ち寄ってもらえる店づくりを行うのが、セブンプラザの勝ちパターンです。

来店客にはお茶出しのサービスを行い、従業員と何かしらの会話ができるようになっています。このちょっとした会話が、顧客との信頼関係構築と情報収集につながっているようです。

■営業は、(1)顧客設定・集客、(2)営業活動、(3)アフターフォローの3段階で成り立っているというのが私の持論です。

このプロセスでいうと、地域密着営業の場合、(1)集客の段階で「マグネット商品で引き寄せる」などと悠長なことを言っていては駄目です。

狭い地域の顧客を待つだけでみすみす逃すような甘い営業はせず、こちらから迎えに行って連れてくるという行動が必要になります。

東京都町田市のでんかのヤマグチは、大手量販店よりもはるかに高い価格で販売することで有名ですが、それができるのは、営業が顧客と相当深い関係を築いているからです。

営業マンは顧客が来るのを待ってなどいません。自分から顧客のところに出向いて、サービス活動を行っています。(もちろん注文も得ます)

その際、全ての顧客を訪問することは不可能ですから、でんかのヤマグチでは、顧客を細かく分けて、優先順位をつけた上で、訪問する顧客を選んでいます。

その顧客分類の手法は、ランチェスター戦略の顧客把握マトリクスそのものです。詳しくは、この本を読んでください。

外商的な手法が無理だという場合でも、少なくともポスティングを行うなりして、顧客のもとへ訪問するということは必要です。

■(2)の営業活動は、必要性、利便性の徹底訴求です。

大阪に拠点を置くアトム電器チェーンは、弱者の戦略を徹底することで高収益を維持していますが、同チェーンは大手量販店が苦手とする部分に力を集中することで、生き残りを賭けています。

例えば主力商品には、対面販売や設備設置が必要なエアコン、エコキュート、IHクッキングヒーターなどを選び、接近戦を仕掛けています。

セブンプラザは、日用品、小物商品を繰り返し提供することで、かかりつけ電器店の地位を目指しています。

でんかのやまぐちは、深い顧客フォローを行い利便性を訴求しています。

いずれも、顧客にとってかゆいところに手が届く、必要性、利便性が訴求できる商売を強みにしています。

■(3)のアフターフォローについては、大手量販チェーンが不得意としている分野だけに重要です。

これは(1)の集客にも通じることですが、地域店は顧客のところへ行くことが必要です。

だから配達、取り付け、メンテナンスなどのサービスをビジネスに取り入れています。

面白い例では、でんかのヤマグチなどは、毎月大掛かりなイベントを開いて、顧客サービスに努めています。

イベントの内容は「野菜詰め放題」などといった家電に関係のないノリで考えたようなものですが、それでも既存顧客へのサービスになると同時に、地域の新規顧客を誘致することにも有効に働いているようです。

地域密着店の場合、アフターフォローがそのまま口コミになり、集客につながることが多いですから、でんかのヤマグチなどは、「新規顧客には力を入れなくても、既存顧客のフォローだけで十分だ」と言っていますね。

■もう一つ、忘れてはならないのは、いずれの会社も「経理システム」には細心の注意を払っていることです。

私の専門は売上を上げることですから、このメルマガでは詳しく話しませんが、経費感覚が狂っていたら、せっかく稼いだお金が、ザルからこぼれてしまいます。

中小小売店は、損益分岐点ぎりぎりで勝負しているところが殆どですから、数値の計算を一つ間違えれば、それですぐ赤字になってしまいます。

前提として、経理システムがしっかりしていることをあげておきます。

■なお、広域からの顧客をターゲットとする小売店の場合、もちろん、地域密着戦略とは全く違った施策が求められます。

しかし今回は書くことができませんでした。

またの機会に譲りたいと思います。

■でんかのヤマグチにしろ、アトム電器チェーンにしろ、おそらくランチェスター戦略をどこかで学んで自分なりにアレンジしたのだと見受けられます。

この戦略は、その気になれば、飲食店にでも建築業にでも応用できるはずです。

応用の方法が分からないという人が一人でもいなくなるように、これからも私なりに力を尽くしていきたいと考えています。

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代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
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