たまにはビジネス小説でも読みましょうか

2011.08.11

(2011年8月11日メルマガより)



■第145回直木賞を受賞した「下町ロケット」という小説を読みました。

まさに一気読みです^^

事務所の帰りに買って、電車内で読んで、そのまま家で読みきってしまいま
した。

面白い小説でしたねーー

■この小説、その題名の通り、下町の小さな工場が、ロケット関連ビジネス
に挑戦していくというものです。

夢に向かって全員一丸となり、成功していく内容は、読後爽やかであり、広
く受け入れられるものだと思います。

やはり、暗い話題が多い時勢には、こういう明るい爽やかな読み物がいいで
すよね。

興奮すること間違いなし。お盆休みの読書にいかがでしょうか^^

■ただ、直木賞を受賞した本作は、ファンタジックな一直線の成功物語では
ありません。

物語の前半は、相当シリアスな展開です。

主役となるのは、ある中小企業の社長です。従業員200人というから零細企
業ではないようです。

この企業が、突如、大手企業から下請け契約を打ち切られるところから物語
が始まります。

なんだかお決まりのパターンですが^^;

しかも、間の悪いことに、この企業の持っている技術が特許侵害とかで、別
の大手企業から訴えられてしまいます。

実は、技術を真似したのは、大手企業の方なのですが、特許内容の不備をつ
いて、提訴してきたのです。

道義的には、とんでもない話ですが、法律は法律です。中小企業は窮地に追
い込まれてしまいます。

■小説では、大手企業のことを一貫して悪者と描いています。

その方が分りやすいし、日本人の情緒に訴えやすいですからね。

昔、松下電器が「マネシタ電器」と揶揄されたような感覚ですかね。

ただし、大手企業は、中小企業のいい商品や技術を真似するということはよ
くあります。

それがまさに「強者の戦略」であり、理に適っていることだからです。

■市場シェアが高い方は、販売チャネルでも顧客の信頼度も優位に立ってい
ます。

そんな時に、顧客のためになるような商品を他の企業が作ったならば、真似
するのは当然です。

ビジネスは常に顧客第一です。顧客のためになるならば、他社の真似だろう
と何だろうと、迷わずにしなければなりません。

トップ企業は、それだけ多くの顧客に支持されているわけですから、多くの
顧客に報いるような施策をするのは、義務なのです。

(弱者が同じことをしたらダメですよ。弱者は、すべての顧客を満足させよ
うなどと思ってはいけません。大手企業が面倒みきれない一部の顧客にとこ
とん報いるのが、弱者の戦略です。今回は詳しく言いませんが...)

■強者と弱者が同じ方法で戦えば、常に強者は有利です。

そんな出来レースでは市場が活性化しないし、弱者はやる気を失うではない
かーーという理屈ももっともなので、知的財産制度というものがあります。

独創的な技術には特許権が与えられ、開発意欲を失わないような仕組みとな
っています。

今回の小説では、その特許内容の不備をついたという話となっています。

大手企業があくどい。とも言えますし、隙だらけの特許申請をした中小企業
が間抜けだったということでもありますね。

■そういえば、同じような話が、最近もありましたね。

日本の新幹線に関する技術内容について、中国が特許申請をしたという話です。

日本人の感覚からすれば、道義的に、とんでもない話です。

ところが、それが中国の人たちには通じないらしい。(一部の人かも知れま
せんが)

それどころか、とんでもないと言っているのは日本人だけで、国際社会では、
日本人って隙だらけだなーー甘いなーーと思って見られているのかも知れま
せんよ。

■話はそれますが、こうした中国人のビジネス感覚について、解説している
のが、「兵法が分れば中国人がわかる」という書籍です。

この本によると、長い内乱の歴史を過ごしてきた中国人にとって、敵の弱み
を突き、混乱させ、弱体化させて、自分に利益をもたらそうとするのは、悪
いことでもなんでもない常識です。

これに対して、自分の身内・味方だと認識した者にはとことん優遇し、守ろ
うとします。

華僑が、世界中で勢力を持っているのは、仲間内での互助精神が強いからだ
という説があります。

身内には儒教。敵には兵法。それが、5000年もの間、シリアスな歴史に晒さ
れてきた中国人の考え方なのだ。というのが、この本の主張です。

だから、中国人とのビジネスで成功するためには、敵だと認識されてはいけ
ない。まずは仲間意識を持ってもらうことが先決だと説いています。

日本でも、営業の第一段階では、顧客との信頼関係を作ることから始めます
が、中国ではその意味がもっと強いわけです。

■日本は島国の中で過ごしてきたからか、共存共栄こそが、お互いの発展の
道であることを学習してきました。

不義理をすれば、回りまわって、自分に不利益をもたらす。それは、世間は
狭いという状況の中で成り立つ理屈です。

集団のルールを守らない者には村八分という制裁が待っているほどです。

要するに、日本は、全員が仲間であるという意識が一般的であるわけで、中
国人における敵という概念がない国なのです。

だから、集団のルール(道義)を守らない者には、激しく怒りを覚えますし、
それ以前に、他人に対して無防備になる可能性が高いのではないか。

■聞くところによると、最近では、中国の一部の人たちも、国際社会の中で、
契約や道義的なルールを守ることが、お互いの利益につながるということを
認識しはじめていると言います。

それはそれでいいことですね。

ただ、だからといって日本人の感覚が元から正しいのだということではあり
ません。

やはり「戦略」や「競争」や「交渉」という概念を理解し、適切に対応する
ことを憶えていかなければなりません。

どうも最近、日本人が国際競争の中で身に着けてきた戦略の感覚を忘れて、
安易に「協調」や「助け合い」といった耳障りのいい言葉に回帰してしまっ
ている傾向があるような気がしてなりません。。。

それは単に思考停止の状態であると言いたいです。

■残念ながら、この小説も、この部分では日本人の心性に迎合する内容であ
ったと読みました。

策略を弄する者は悪。だから、最後には滅びる。

仲間を信じる者は善。だから、最後には幸せになる。

そんな予定調和の世界観で、現実を語れるのか?

単純な価値観を提示することはエンターテイメントとして有効なことなので
すが、だからといって直木賞をとる作品が、そこを単純化していいものか?

なんて、言っても始まりませんが、この世界観の提示は不満の残る内容であ
ると、元文学青年が意見を述べておきます。

■小説では、中小企業は、スーパー弁護士の活躍で、特許紛争を勝ち抜きます。

ここまでが前半です。

後半は、もう一つの大企業が、ロケットを打ち上げるために、中小企業の技
術を狙ってやってきます。

やはりここでも大企業は悪者です。中小企業を小馬鹿にして横柄な態度で迫
り、技術を我が物にしようと、様々な策略を弄します。

そこで、中小企業の皆さんは、意地とプライドに賭けて、実際に打ち上げる
ロケット部品の開発に挑むというふうに話は展開します。

■この小説、珍しく、色恋沙汰や大掛かりなミステリーや暴力は登場しません。

それでもここに描かれているのは、人間の意地やプライド、挑戦心といった
普遍的なものです。

だから共感をもって読むことができるんでしょうね。

もちろん、人間のマイナス面である目先の損得勘定や利己主義、保身主義な
ども対比して描かれており、分りやすいです。

ビジネス小説も、面白いものがあるんだなーーと思った次第です。

■私は結構、小説が好きで、よく読んできました。

どちらかというとエンターテイメントよりも純文学寄りでしたが。

もちろんビジネス小説にも面白いものがあると知っていますし、いくつかは
読んできました。

ただ、ビジネス小説の難しいところは、読者が物語の面白さに加えて、
「斬新な情報」を求める傾向があるところでしょうね。

その業界の内幕を知りたい。そのビジネスのコツを知りたい。あの企業家の
実像を知りたい。

そういう興味を持って読まれますから、どうしてもルポルタージュのような
内容になっていきます。

相対的に人間の描き方が薄っぺらくなりますし、年月が経てば、情報の鮮度
が落ちて、面白さも半減してしまいます。

古典にはなりにくいジャンルなんでしょうね。

■今回、ビジネス小説が直木賞をとったのは、珍しいことなのではないでし
ょうか。

この小説が売れることで、優秀な作家先生が続々と、このジャンルに挑戦す
る気になることを期待します。

■ちなみに私は、ビジネス小説にモチベーションアップを求めています。

その意味では、お勧めは「V字回復の経営」ですね。

こちらはコンサルティングをする上で、私自身も、クライアントも同じく希
望を持つことができる素晴らしい小説です。

小説とはいいながら、ノウハウや理論解説が満載のビジネス書です。変に文
学を目指していないので、人間が描ききれていない、とか文句をつけたくは
なりません。

これぐら割り切って書いてくれればいいですね^^

起業家にお勧めは「あのバカにやらせてみよう」です。

こちらはノンフィクション小説です。かなり内容は古いですが、これを読め
ば、起業したくなること請け合いです。

私も独立当初、折れそうになる心をこの本によって支えてもらった記憶があ
ります。

あ、そういう意味では、危険な本かも知れませんね^^;

既に絶版ですが、古本でどうぞ。



(2011年8月11日メルマガより)



■第145回直木賞を受賞した「下町ロケット」という小説を読みました。

まさに一気読みです^^

事務所の帰りに買って、電車内で読んで、そのまま家で読みきってしまいま
した。

面白い小説でしたねーー

■この小説、その題名の通り、下町の小さな工場が、ロケット関連ビジネス
に挑戦していくというものです。

夢に向かって全員一丸となり、成功していく内容は、読後爽やかであり、広
く受け入れられるものだと思います。

やはり、暗い話題が多い時勢には、こういう明るい爽やかな読み物がいいで
すよね。

興奮すること間違いなし。お盆休みの読書にいかがでしょうか^^

■ただ、直木賞を受賞した本作は、ファンタジックな一直線の成功物語では
ありません。

物語の前半は、相当シリアスな展開です。

主役となるのは、ある中小企業の社長です。従業員200人というから零細企
業ではないようです。

この企業が、突如、大手企業から下請け契約を打ち切られるところから物語
が始まります。

なんだかお決まりのパターンですが^^;

しかも、間の悪いことに、この企業の持っている技術が特許侵害とかで、別
の大手企業から訴えられてしまいます。

実は、技術を真似したのは、大手企業の方なのですが、特許内容の不備をつ
いて、提訴してきたのです。

道義的には、とんでもない話ですが、法律は法律です。中小企業は窮地に追
い込まれてしまいます。

■小説では、大手企業のことを一貫して悪者と描いています。

その方が分りやすいし、日本人の情緒に訴えやすいですからね。

昔、松下電器が「マネシタ電器」と揶揄されたような感覚ですかね。

ただし、大手企業は、中小企業のいい商品や技術を真似するということはよ
くあります。

それがまさに「強者の戦略」であり、理に適っていることだからです。

■市場シェアが高い方は、販売チャネルでも顧客の信頼度も優位に立ってい
ます。

そんな時に、顧客のためになるような商品を他の企業が作ったならば、真似
するのは当然です。

ビジネスは常に顧客第一です。顧客のためになるならば、他社の真似だろう
と何だろうと、迷わずにしなければなりません。

トップ企業は、それだけ多くの顧客に支持されているわけですから、多くの
顧客に報いるような施策をするのは、義務なのです。

(弱者が同じことをしたらダメですよ。弱者は、すべての顧客を満足させよ
うなどと思ってはいけません。大手企業が面倒みきれない一部の顧客にとこ
とん報いるのが、弱者の戦略です。今回は詳しく言いませんが...)

■強者と弱者が同じ方法で戦えば、常に強者は有利です。

そんな出来レースでは市場が活性化しないし、弱者はやる気を失うではない
かーーという理屈ももっともなので、知的財産制度というものがあります。

独創的な技術には特許権が与えられ、開発意欲を失わないような仕組みとな
っています。

今回の小説では、その特許内容の不備をついたという話となっています。

大手企業があくどい。とも言えますし、隙だらけの特許申請をした中小企業
が間抜けだったということでもありますね。

■そういえば、同じような話が、最近もありましたね。

日本の新幹線に関する技術内容について、中国が特許申請をしたという話です。

日本人の感覚からすれば、道義的に、とんでもない話です。

ところが、それが中国の人たちには通じないらしい。(一部の人かも知れま
せんが)

それどころか、とんでもないと言っているのは日本人だけで、国際社会では、
日本人って隙だらけだなーー甘いなーーと思って見られているのかも知れま
せんよ。

■話はそれますが、こうした中国人のビジネス感覚について、解説している
のが、「兵法が分れば中国人がわかる」という書籍です。

この本によると、長い内乱の歴史を過ごしてきた中国人にとって、敵の弱み
を突き、混乱させ、弱体化させて、自分に利益をもたらそうとするのは、悪
いことでもなんでもない常識です。

これに対して、自分の身内・味方だと認識した者にはとことん優遇し、守ろ
うとします。

華僑が、世界中で勢力を持っているのは、仲間内での互助精神が強いからだ
という説があります。

身内には儒教。敵には兵法。それが、5000年もの間、シリアスな歴史に晒さ
れてきた中国人の考え方なのだ。というのが、この本の主張です。

だから、中国人とのビジネスで成功するためには、敵だと認識されてはいけ
ない。まずは仲間意識を持ってもらうことが先決だと説いています。

日本でも、営業の第一段階では、顧客との信頼関係を作ることから始めます
が、中国ではその意味がもっと強いわけです。

■日本は島国の中で過ごしてきたからか、共存共栄こそが、お互いの発展の
道であることを学習してきました。

不義理をすれば、回りまわって、自分に不利益をもたらす。それは、世間は
狭いという状況の中で成り立つ理屈です。

集団のルールを守らない者には村八分という制裁が待っているほどです。

要するに、日本は、全員が仲間であるという意識が一般的であるわけで、中
国人における敵という概念がない国なのです。

だから、集団のルール(道義)を守らない者には、激しく怒りを覚えますし、
それ以前に、他人に対して無防備になる可能性が高いのではないか。

■聞くところによると、最近では、中国の一部の人たちも、国際社会の中で、
契約や道義的なルールを守ることが、お互いの利益につながるということを
認識しはじめていると言います。

それはそれでいいことですね。

ただ、だからといって日本人の感覚が元から正しいのだということではあり
ません。

やはり「戦略」や「競争」や「交渉」という概念を理解し、適切に対応する
ことを憶えていかなければなりません。

どうも最近、日本人が国際競争の中で身に着けてきた戦略の感覚を忘れて、
安易に「協調」や「助け合い」といった耳障りのいい言葉に回帰してしまっ
ている傾向があるような気がしてなりません。。。

それは単に思考停止の状態であると言いたいです。

■残念ながら、この小説も、この部分では日本人の心性に迎合する内容であ
ったと読みました。

策略を弄する者は悪。だから、最後には滅びる。

仲間を信じる者は善。だから、最後には幸せになる。

そんな予定調和の世界観で、現実を語れるのか?

単純な価値観を提示することはエンターテイメントとして有効なことなので
すが、だからといって直木賞をとる作品が、そこを単純化していいものか?

なんて、言っても始まりませんが、この世界観の提示は不満の残る内容であ
ると、元文学青年が意見を述べておきます。

■小説では、中小企業は、スーパー弁護士の活躍で、特許紛争を勝ち抜きます。

ここまでが前半です。

後半は、もう一つの大企業が、ロケットを打ち上げるために、中小企業の技
術を狙ってやってきます。

やはりここでも大企業は悪者です。中小企業を小馬鹿にして横柄な態度で迫
り、技術を我が物にしようと、様々な策略を弄します。

そこで、中小企業の皆さんは、意地とプライドに賭けて、実際に打ち上げる
ロケット部品の開発に挑むというふうに話は展開します。

■この小説、珍しく、色恋沙汰や大掛かりなミステリーや暴力は登場しません。

それでもここに描かれているのは、人間の意地やプライド、挑戦心といった
普遍的なものです。

だから共感をもって読むことができるんでしょうね。

もちろん、人間のマイナス面である目先の損得勘定や利己主義、保身主義な
ども対比して描かれており、分りやすいです。

ビジネス小説も、面白いものがあるんだなーーと思った次第です。

■私は結構、小説が好きで、よく読んできました。

どちらかというとエンターテイメントよりも純文学寄りでしたが。

もちろんビジネス小説にも面白いものがあると知っていますし、いくつかは
読んできました。

ただ、ビジネス小説の難しいところは、読者が物語の面白さに加えて、
「斬新な情報」を求める傾向があるところでしょうね。

その業界の内幕を知りたい。そのビジネスのコツを知りたい。あの企業家の
実像を知りたい。

そういう興味を持って読まれますから、どうしてもルポルタージュのような
内容になっていきます。

相対的に人間の描き方が薄っぺらくなりますし、年月が経てば、情報の鮮度
が落ちて、面白さも半減してしまいます。

古典にはなりにくいジャンルなんでしょうね。

■今回、ビジネス小説が直木賞をとったのは、珍しいことなのではないでし
ょうか。

この小説が売れることで、優秀な作家先生が続々と、このジャンルに挑戦す
る気になることを期待します。

■ちなみに私は、ビジネス小説にモチベーションアップを求めています。

その意味では、お勧めは「V字回復の経営」ですね。

こちらはコンサルティングをする上で、私自身も、クライアントも同じく希
望を持つことができる素晴らしい小説です。

小説とはいいながら、ノウハウや理論解説が満載のビジネス書です。変に文
学を目指していないので、人間が描ききれていない、とか文句をつけたくは
なりません。

これぐら割り切って書いてくれればいいですね^^

起業家にお勧めは「あのバカにやらせてみよう」です。

こちらはノンフィクション小説です。かなり内容は古いですが、これを読め
ば、起業したくなること請け合いです。

私も独立当初、折れそうになる心をこの本によって支えてもらった記憶があ
ります。

あ、そういう意味では、危険な本かも知れませんね^^;

既に絶版ですが、古本でどうぞ。



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