ドラッグストアが、コンビニを食い物にしている

2017.09.07

(2017年8月24日メルマガより)


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■もう9月。

そろそろおでんの美味しい季節ですね(ニコ)

なんて言えば、まだ夏じゃねえか、ふざけてんのか!!!

って怒られそうですが。

しかし、ふざけているわけではありません。

本当に、9月はおでんの売れ時らしいですよ。

ただし、コンビニおでんの話です。

参考:「コンビニおでん」を毎年真夏に売り出すワケ じわり縮小するおでん市場、各社の工夫とは
http://toyokeizai.net/articles/-/185097

記事によると、コンビニのおでんが最も売れるのは、9月~11月。

少し肌寒くなったかな。と思える季節の変わり目に売れるのだそうです。

■私は、コンビニおでんを食べる習慣がなかったので、なんぼなんでも9月に売れんだろーと思っていたのですが、先日の勉強会に参加していた皆さんは、口々に「買う」と仰っていました。

びっくりです@_@

コンビニ各社は「夏の暑さに慣れて温かいものがほしくなる」「冷房で冷えた身体を温めたくなる」と分析しています。

参考:夏におでんが売れるのはなぜ? コンビニ大手3社に聞いてみると...
https://www.j-cast.com/2017/08/28306704.html

コンビニおでんはついで買いが起きやすくレイアウトされています

気温の変化とか、体調の変化に応じて、ふと買いたくなる時があるのでしょうね。

これが真冬になると、もっと本格的なおでんを食べられる店がいっぱいありますから、珍しくもなんともない。ついで買い衝動も起こりにくいということでしょうかね。

だとすれば、アイスクリームも冬に売れるのかな?

と思ってグーグルに聞いてみると、どうやら「売上のピークは夏だが、最近は冬も売れてきている。特に高級アイスは冬に売れる」とのことです。

冬は部屋が暖かいですからね。アイスクリームを食べたくなる気持ちもわかります。

■それはともかく、コンビニおでんの売れ行きが最近は陰ってきているようです。

上の記事によると「2016年のコンビニおでんの市場は413億円と前年比で66億円減少」とのこと。

約14%減とは穏やかではありません。

そこでコンビニ各社は、新製品投入や割引販促など行って売上挽回を目指す。というのが上の記事です。

各位、ご苦労なことです。

■コンビニ各社の企業努力は素晴らしいと思いますし、否定するものではありません。

が、私はこの記事を読んで、全く別の感慨を覚えました。

こういう販促セールをやらざるを得ないこと自体、コンビニ時代が終焉に向かっていることを表しているのではないか

前年売上を稼ぐことに必死になるっていうのは、量販店が斜陽になっていった頃にしきりに行われたことではなかったか。

そもそもコンビニとは、その名の通り「便利な店」です。

コンビニが出始めた時は、歩いていける場所にあって、24時間営業で、しかも日用的に欲しいものがたいてい揃っているという実に有難い店だと思えました。

販売価格は基本定価なので、安いわけではない。しかし、いつでもすぐに買えるという便利さにはあがなえません。

いまでは、ATMもチケット販売機もあるし、公共料金の支払いも、宅配便の受付もやってくれる。

ライフラインを握っているといっても過言ではない。

そんなコンビニが、割引販売や販促セールに躍起にならざるを得ない。というのは、飽和市場におけるコンビニ同士のつぶし合いが始まっているってことですよ。

確かに、いまやコンビニはどこにでもあり、都心だと歩いて行ける距離に何軒もあるような状態です。

我々も、選びますから。店も必死になるというものです。

■それに比べて業績絶好調なのが、ドラッグストアです。

参考:ドラッグストアが「日本最強」である理由 百貨店を上回りコンビニを猛追
http://president.jp/articles/-/22967

記事にもありますが「2016年度の市場規模は前年度比5.9%増の6兆4916億円。百貨店の市場規模を上回り、コンビニを猛追している。」状況です。

(コンビニの2016年の市場規模は10兆5722 億円・前年比3.6%増、百貨店は5兆9780億円・前年比2.9%減)

ドラッグストアの成長率が、最も高く勢いがあります。

■なぜドラッグストアはこんなにも強いのか?

最大の理由は、高齢化社会において最大の成長市場の一つである医薬品を扱っていることです。

医薬品は規制のある商品ですから、参入業者が少ない。その上、規制があるので価格競争になりにくい。販売する側にとっては実にオイシイ商品です。

それなのに、最近のドラッグストアはコンビニみたいに日用品や食品を扱っているぞ。

しかもむちゃくちゃ安い値段で売っているじゃないか!

と思われるでしょうね。

なぜ医薬品のような儲かる商品を持ちながら、わざわざ日用品の安売りをするのか?

というと、コンビニから客を奪うためです。

要するに、コンビニで売っているような日用品や食品を赤字覚悟で値付けして集客しておいて、利益の出る医薬品で稼ぐビジネスモデルです。

なんとえげつないやり口なんでしょうか。

コンビニにとっては迷惑この上ないビジネスですよ。

だからコンビニがにわかに慌てて値引き販売をはじめたり、調理食品の拡販に躍起になったり、プライベートブランド商品を拡充させたりといった動きは、ドラッグストア対策である側面も多分にあるということです。

■ただドラッグストアのビジネスはわりと単純です。

規制された商品を扱い、その拡販のために、日用品を安売りする。

したたかなやり口ではありますが、格段に難しいものではありません。

コンビニのように、本部の運営ノウハウによって、一日の売上に大きな差がつくというものではない。

運営のための人員配置や業務プロセスなどパッケージが出来上がれば、横展開はたやすいはず。

そこでドラッグストア各社は、規模こそ勝利の条件だ!とばかりに、店舗数拡大に精力を傾けています。これは、成長市場に特有の状況でもあります。

イオン系列のウエルシアは資本力を活かしたM&A(買収、合併)を積極的に行い業界トップに躍り出ました。

2位のツルハも同じです。

割りを食ったのは、3位に落ちたマツモトキヨシです。都心型店舗が得意な同社は、店舗数を拡大する中、郊外型店舗の運営に手間取りました。

それに、他業態に進出しては失敗することを繰り返してきた経緯もあります

マツモトキヨシが単純な店舗拡大競争に背を向けるかのように新業態開発に挑む同社は、ドラッグストア市場が成熟した後のことを見据えているのかも知れません。

参考:絶対王者"マツキヨ"が3位に転落したワケ ドラッグ業界の仁義なき買収合戦
http://president.jp/articles/-/22775

■しかし今のところ、ドラッグストアの勢いが弱まる気配はありません。

ドラッグストアの強みは、価格競争が起きにくい医薬品を中心に扱っていることだと言いましたが、いまは、様々なバリエーションが出てきています。

医薬品には一般医薬品と(処方箋が必要な)調剤医薬品があります。

このうちドラッグストアが得意とするのは一般医薬品です。

胃薬や風邪薬などは一般的すぎてコンビニでも扱っていますが、ドラッグストアには、怪しげな医薬品が多々あります。

ダイエット薬とか、育毛剤とか、視力回復薬とか、筋肉増強薬とか、精力剤とか...

いわゆるコンプレックス解消や、精力増強に関するものは、高値でも売れる傾向があります。

だから一般医薬品は金儲けする者にとっては宝の山みたいなもんですよ。

この分野を深掘りすれば、まだまだ稼げるビジネスになるはずです。

■いっぽうの調剤医薬品でも拡大余地は大きそうです。

調剤医薬品の市場規模は年8兆円ほどの規模があり、成長率も9%以上です。

ドラッグストアでは、調剤医薬品の扱いはまだ7~8%です。

ということは、地域の調剤薬局を取り込むことで、さらに大きな成長が見込めることが予想できます。

■あるいは、医薬品以外でも、バリエーションは増えてきています。

例えば、一部の地域ドラッグストアが、生鮮食品まで本格的に扱いだして、量販店や食品スーパーの顧客まで奪おうとしてきています。

これは、量販店や食品スーパー側が、成長産業であるドラッグストアをM&Aや業務提携という形で取り込み、運営している場合もありますし、逆に勢いのあるドラッグストア側が、食品スーパーのノウハウを取り込んで、運営している場合もあります。

いずれにしろ、量販店、食品スーパー、コンビニと、ドラッグストアの垣根はなくなりつつあるというのが現状です。

■いまは成長期にあるドラッグストアですから、このまま店舗数拡大競争と、チェーン同士のM&A合戦はまだ続くでしょう。

他業種との連携やM&Aもまだ進みそうです。

同時に、ドラッグストアも徐々に、成熟化した後を見据えて、個性化、差別化を志向していくはずです。

比較的単純なビジネスであり、成長スピードも速いので、成熟期が見えてくるのも早いかも知れませんね。

その時はまた別の競争が始まります。

■そんなわけで、成熟期に入りビジネスの変容を迫られているコンビニと、勢いに乗りなんでもありの状況を加速させているドラッグストア。

コンビニが他業種に食い物にされる日がやってくるとは感慨深いですなあ。

量販店や食品スーパーも含めて、資本提携、業務提携、競合関係が複雑で一筋縄ではいかない世界ですが、それだけに面白い状況です。

これからも注目してまいりましょう。



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■もう9月。

そろそろおでんの美味しい季節ですね(ニコ)

なんて言えば、まだ夏じゃねえか、ふざけてんのか!!!

って怒られそうですが。

しかし、ふざけているわけではありません。

本当に、9月はおでんの売れ時らしいですよ。

ただし、コンビニおでんの話です。

参考:「コンビニおでん」を毎年真夏に売り出すワケ じわり縮小するおでん市場、各社の工夫とは
http://toyokeizai.net/articles/-/185097

記事によると、コンビニのおでんが最も売れるのは、9月~11月。

少し肌寒くなったかな。と思える季節の変わり目に売れるのだそうです。

■私は、コンビニおでんを食べる習慣がなかったので、なんぼなんでも9月に売れんだろーと思っていたのですが、先日の勉強会に参加していた皆さんは、口々に「買う」と仰っていました。

びっくりです@_@

コンビニ各社は「夏の暑さに慣れて温かいものがほしくなる」「冷房で冷えた身体を温めたくなる」と分析しています。

参考:夏におでんが売れるのはなぜ? コンビニ大手3社に聞いてみると...
https://www.j-cast.com/2017/08/28306704.html

コンビニおでんはついで買いが起きやすくレイアウトされています

気温の変化とか、体調の変化に応じて、ふと買いたくなる時があるのでしょうね。

これが真冬になると、もっと本格的なおでんを食べられる店がいっぱいありますから、珍しくもなんともない。ついで買い衝動も起こりにくいということでしょうかね。

だとすれば、アイスクリームも冬に売れるのかな?

と思ってグーグルに聞いてみると、どうやら「売上のピークは夏だが、最近は冬も売れてきている。特に高級アイスは冬に売れる」とのことです。

冬は部屋が暖かいですからね。アイスクリームを食べたくなる気持ちもわかります。

■それはともかく、コンビニおでんの売れ行きが最近は陰ってきているようです。

上の記事によると「2016年のコンビニおでんの市場は413億円と前年比で66億円減少」とのこと。

約14%減とは穏やかではありません。

そこでコンビニ各社は、新製品投入や割引販促など行って売上挽回を目指す。というのが上の記事です。

各位、ご苦労なことです。

■コンビニ各社の企業努力は素晴らしいと思いますし、否定するものではありません。

が、私はこの記事を読んで、全く別の感慨を覚えました。

こういう販促セールをやらざるを得ないこと自体、コンビニ時代が終焉に向かっていることを表しているのではないか

前年売上を稼ぐことに必死になるっていうのは、量販店が斜陽になっていった頃にしきりに行われたことではなかったか。

そもそもコンビニとは、その名の通り「便利な店」です。

コンビニが出始めた時は、歩いていける場所にあって、24時間営業で、しかも日用的に欲しいものがたいてい揃っているという実に有難い店だと思えました。

販売価格は基本定価なので、安いわけではない。しかし、いつでもすぐに買えるという便利さにはあがなえません。

いまでは、ATMもチケット販売機もあるし、公共料金の支払いも、宅配便の受付もやってくれる。

ライフラインを握っているといっても過言ではない。

そんなコンビニが、割引販売や販促セールに躍起にならざるを得ない。というのは、飽和市場におけるコンビニ同士のつぶし合いが始まっているってことですよ。

確かに、いまやコンビニはどこにでもあり、都心だと歩いて行ける距離に何軒もあるような状態です。

我々も、選びますから。店も必死になるというものです。

■それに比べて業績絶好調なのが、ドラッグストアです。

参考:ドラッグストアが「日本最強」である理由 百貨店を上回りコンビニを猛追
http://president.jp/articles/-/22967

記事にもありますが「2016年度の市場規模は前年度比5.9%増の6兆4916億円。百貨店の市場規模を上回り、コンビニを猛追している。」状況です。

(コンビニの2016年の市場規模は10兆5722 億円・前年比3.6%増、百貨店は5兆9780億円・前年比2.9%減)

ドラッグストアの成長率が、最も高く勢いがあります。

■なぜドラッグストアはこんなにも強いのか?

最大の理由は、高齢化社会において最大の成長市場の一つである医薬品を扱っていることです。

医薬品は規制のある商品ですから、参入業者が少ない。その上、規制があるので価格競争になりにくい。販売する側にとっては実にオイシイ商品です。

それなのに、最近のドラッグストアはコンビニみたいに日用品や食品を扱っているぞ。

しかもむちゃくちゃ安い値段で売っているじゃないか!

と思われるでしょうね。

なぜ医薬品のような儲かる商品を持ちながら、わざわざ日用品の安売りをするのか?

というと、コンビニから客を奪うためです。

要するに、コンビニで売っているような日用品や食品を赤字覚悟で値付けして集客しておいて、利益の出る医薬品で稼ぐビジネスモデルです。

なんとえげつないやり口なんでしょうか。

コンビニにとっては迷惑この上ないビジネスですよ。

だからコンビニがにわかに慌てて値引き販売をはじめたり、調理食品の拡販に躍起になったり、プライベートブランド商品を拡充させたりといった動きは、ドラッグストア対策である側面も多分にあるということです。

■ただドラッグストアのビジネスはわりと単純です。

規制された商品を扱い、その拡販のために、日用品を安売りする。

したたかなやり口ではありますが、格段に難しいものではありません。

コンビニのように、本部の運営ノウハウによって、一日の売上に大きな差がつくというものではない。

運営のための人員配置や業務プロセスなどパッケージが出来上がれば、横展開はたやすいはず。

そこでドラッグストア各社は、規模こそ勝利の条件だ!とばかりに、店舗数拡大に精力を傾けています。これは、成長市場に特有の状況でもあります。

イオン系列のウエルシアは資本力を活かしたM&A(買収、合併)を積極的に行い業界トップに躍り出ました。

2位のツルハも同じです。

割りを食ったのは、3位に落ちたマツモトキヨシです。都心型店舗が得意な同社は、店舗数を拡大する中、郊外型店舗の運営に手間取りました。

それに、他業態に進出しては失敗することを繰り返してきた経緯もあります

マツモトキヨシが単純な店舗拡大競争に背を向けるかのように新業態開発に挑む同社は、ドラッグストア市場が成熟した後のことを見据えているのかも知れません。

参考:絶対王者"マツキヨ"が3位に転落したワケ ドラッグ業界の仁義なき買収合戦
http://president.jp/articles/-/22775

■しかし今のところ、ドラッグストアの勢いが弱まる気配はありません。

ドラッグストアの強みは、価格競争が起きにくい医薬品を中心に扱っていることだと言いましたが、いまは、様々なバリエーションが出てきています。

医薬品には一般医薬品と(処方箋が必要な)調剤医薬品があります。

このうちドラッグストアが得意とするのは一般医薬品です。

胃薬や風邪薬などは一般的すぎてコンビニでも扱っていますが、ドラッグストアには、怪しげな医薬品が多々あります。

ダイエット薬とか、育毛剤とか、視力回復薬とか、筋肉増強薬とか、精力剤とか...

いわゆるコンプレックス解消や、精力増強に関するものは、高値でも売れる傾向があります。

だから一般医薬品は金儲けする者にとっては宝の山みたいなもんですよ。

この分野を深掘りすれば、まだまだ稼げるビジネスになるはずです。

■いっぽうの調剤医薬品でも拡大余地は大きそうです。

調剤医薬品の市場規模は年8兆円ほどの規模があり、成長率も9%以上です。

ドラッグストアでは、調剤医薬品の扱いはまだ7~8%です。

ということは、地域の調剤薬局を取り込むことで、さらに大きな成長が見込めることが予想できます。

■あるいは、医薬品以外でも、バリエーションは増えてきています。

例えば、一部の地域ドラッグストアが、生鮮食品まで本格的に扱いだして、量販店や食品スーパーの顧客まで奪おうとしてきています。

これは、量販店や食品スーパー側が、成長産業であるドラッグストアをM&Aや業務提携という形で取り込み、運営している場合もありますし、逆に勢いのあるドラッグストア側が、食品スーパーのノウハウを取り込んで、運営している場合もあります。

いずれにしろ、量販店、食品スーパー、コンビニと、ドラッグストアの垣根はなくなりつつあるというのが現状です。

■いまは成長期にあるドラッグストアですから、このまま店舗数拡大競争と、チェーン同士のM&A合戦はまだ続くでしょう。

他業種との連携やM&Aもまだ進みそうです。

同時に、ドラッグストアも徐々に、成熟化した後を見据えて、個性化、差別化を志向していくはずです。

比較的単純なビジネスであり、成長スピードも速いので、成熟期が見えてくるのも早いかも知れませんね。

その時はまた別の競争が始まります。

■そんなわけで、成熟期に入りビジネスの変容を迫られているコンビニと、勢いに乗りなんでもありの状況を加速させているドラッグストア。

コンビニが他業種に食い物にされる日がやってくるとは感慨深いですなあ。

量販店や食品スーパーも含めて、資本提携、業務提携、競合関係が複雑で一筋縄ではいかない世界ですが、それだけに面白い状況です。

これからも注目してまいりましょう。



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