スタジオアリスに見る市場特化の行方

2008.04.10

(2008年4月10日メルマガより)

■ビジネスを成功させるには、まず戦略を確かなものにしなければなりません。

戦略部分を置き去りにして、やみくもに営業ばかりしても効果は限定的にな
ります。

空元気が目立つ創業希望者を見ていると、それを実感します。

ああ、私の言っていることは正しいんだなーーーって^^;

■戦略性とは何か。

私は、全体的、長期的、合目的的、過程的なものだと考えています。

まあでも、難しくなるのでやめときましょう^^;

要するに、行動する前に、一度立ち止まって、よく考えてみましょうという
ことです。

異業種交流会に出まくって、たまたま知り合った人の縁が仕事につながった
としても、あまり建設的な話とは言えませんな。

■私は戦略的思考の第1歩を「小さな市場に絞る」ことだと説いています。

簡単なことなのに多くの方々がこの第1歩を守ることができません。

市場を絞ることは、その他の市場で販売する可能性を捨て去ることですから、
経営者の決断が試されます。

それができるか、できないかが、戦略をビジネスに活かす最初の関門となり
ます。

■市場を小さく絞って成功した企業事例として、よく取り上げさせていただ
くのが、写真館の「スタジオアリス」です。

数多の写真スタジオが斜陽産業の運命から逃れられない横で、顧客を子供に
絞ることで、驚くべき急成長を遂げた企業です。

同社が子供専門写真館の第1号を開店したのが、1992年のこと。それか
ら16年で店舗数359店、売上高約290億円、東証1部上場企業に育っ
ています。

皆さん、よくご存知ですよね。

■もともとこの会社は、DPE(写真現像店)チェーンを展開していました。

今となってはDPEチェーンこそ苦しい業態です。

かつて需要が大きかった市場が縮小する時、供給過多となるため、すさまじ
い競争状態になります。

いわゆるレッドオーシャンです。

血で血を洗う競争状況は、体力勝負の消耗戦となります。

日経ベンチャー2008年3月号に、本村昌次社長の談話が載っていますが
「早朝から深夜まで必死に働いても儲からず、社員も育たない」
ということだったそうです。
これは、過当競争を戦う企業の状況をよく表しています。

■その後、スタジオアリスは、子供専用写真館を立ち上げます。

普通なら「この少子化の時代に何を血迷ったんだ!」と言われるところです
が、同社は「写真撮影が家庭で簡単にできるようになった時代に、わざわざ
スタジオ撮影したくなることは何か」を考え抜いたようです。

そこで、子供のお宮参り、入園入学、七五三という場面の撮影ニーズに着目
しました。

子供に関するイベントなら、多少の費用をかけても本格的な写真を撮影する
だろう。

そこで、ターゲットを0~7歳の子供を持つファミリーに絞ったわけです。

■単なるアイデアだけなら、思いつく方もおられたでしょうが、スタジオア
リスはそれを現実のものとしました。

実は、既存業界の慣習にどっぷり浸かっていた社長は「自分ではこのアイデ
アをものにできない」と考えたようで「全くの素人」である2人の社員に事
業を任せます。

「自分は今まで品質を重視してきたが、これは作り手の自己満足にすぎなか
ったのではないか」「自分が今までやってきたことを否定しなければ新しい
ものは生まれない」という危機感が、この決断を促したようです。

同社が提供する斬新なサービスは、顧客の目線に立った素人社員だから生み
出すことができたアイデアだったわけです。

■市場を絞ることの最大の効用は、特定の顧客に深くサービスを提供できる
ことです。

富裕層に特化した通販カタログを展開するロイヤルステージ。

研究系獣医師に特化した旅行会社の日洋航空。

郊外の農家に特化したホームセンターのコメリ。

和歌山という地域に特化したチェーンストアのオークワ。

メイド服のインターネット販売に特化したキャンディフルーツ。

いずれも自分たちにしかできない小さな市場に絞り込むことで、他社からは
見えにくいサービスのノウハウを積み上げて、ニッチ市場のミニリーダーと
なりました。

しかも市場が小さいのでミートされにくく、ニッチかつ安定したビジネス展
開を行っています。

■スタジオアリスは、顧客を子供に絞ることで、至れり尽くせりのサービス
提供を可能にしました。

写真館らしからぬ開放的な店内。貸し衣装屋かと間違うほどの衣装の品揃え。
ディズニーキャラクターの提供。好きな写真を画面で選択するシステム。女
性スタッフによる子供の笑顔を引き出すノウハウなど、ターゲットを子供に
絞ったからこそ可能となったサービスです。

第1号店を成功させた同社は、多店舗展開に進んでいきます。

子供が一定数(年間1500人)以上生まれる地域をエリアとして、イオン
やイトーヨーカ堂、トイザラスと提携することで、急速な店舗展開を行って、
市場リーダーとしての地位を磐石のものにしていきました。

■まだ途中ですがまとめてしまいます^^

事業の成功は、まず戦略から。戦略の第1歩は、市場を絞ることです。

市場を絞ることで、顧客に最適のサービス提供が可能となります。

コツはもちろん、顧客の目線でビジネスを捉えること。

間違っても「売れるものではなく、いいものを提供したい」などと考えては
いけません。それはジコチュービジネスに陥る最短距離となります。

また小さな市場を選ぶと、ライバルが入ってきにくいので、安定したビジネ
ス展開が可能となります。

大きな市場には、ライバルがどっと入ってくるので、後から大変になります。

それがスタジオアリスの現状です。。。

■スタジオアリスが、最初に素人に店舗運営を任せた意図は、多店舗展開す
るための布石だったともとれます。

もっとも、多店舗展開を可能にした徹底したマニュアル化は、他社の参入を
容易にするという危険も孕んでいたようです。

みごとブルーオーシャンをものにしたスタジオアリスですが、このような儲
かるビジネスを他社が放っておくはずがありません。

今では類似サービスを提供する企業が増えてきており、成長は鈍化しています。

■子供専門写真館のトップ企業として、同社は戦略の再構築を求められてい
ます。

現在、力を入れているのは、オペレーションをさらに効率化し、収益率を高
めることのようです。

同社は、マネジメントメッセージの中で、地域一番店宣言をしていますが、
これは、同業他社に対する「強者の戦略」を志向していると読めました。

強者の戦略とは、さらに顧客の利益になるサービスを提供し、他社のサービ
スがいいと思うなら真似をしてでも顧客に報いようとする戦略です。

同社のホームページを見ると、ネットでの予約や、需要の時期的集中を回避する
ためのイベントキャンペーンなどがなされています。

これらは顧客の利便性を高めるための方策の一環だととれます。

■もっとも次の成長戦略はまだ見えません。

もともと少子化の時代に創業しており、市場縮小は織り込み済みのはず。

同社が今後どのような展開を考えているのかが気になります。

同社のホームページを見て、気になるのは「家族写真」や「長寿写真」など
に進出しようとしていることです。

ターゲットを拡散させることと、顧客に提供するサービスの質を上げようと
することは、矛盾する方策です。

スタジオアリスは、あえてその矛盾する戦略を行おうというのか。

それとも、子供に特化することが売りだったスタジオアリスの戦略が、ここ
にきて揺らいでいるだけなのか。

■市場が飽和した時、ターゲットをぼやけさせて、収益率を下げてしまうの
は、世界第2位の市場を持つ日本企業の宿命なんでしょうか。

かつて、韓国のある企業は、日本の家電メーカーを見て「いくら強い日本企
業でも、あれだけ総花的な事業展開をしていては、世界で戦っていけないだ
ろう」と評していました。

その評価の通り、日本の家電メーカーの多くは世界で通用せず、サムソンや
LC電子が世界市場を席巻することとなりました。

スタジオアリスも、韓国や台湾に数店舗展開しているようですが、まだトラ
イアウトの段階のようです。

上場企業として成長戦略を志向する以上は、尖った企業のままで、世界市場
に切り込んでいってもらいたいものです。


(2008年4月10日メルマガより)

■ビジネスを成功させるには、まず戦略を確かなものにしなければなりません。

戦略部分を置き去りにして、やみくもに営業ばかりしても効果は限定的にな
ります。

空元気が目立つ創業希望者を見ていると、それを実感します。

ああ、私の言っていることは正しいんだなーーーって^^;

■戦略性とは何か。

私は、全体的、長期的、合目的的、過程的なものだと考えています。

まあでも、難しくなるのでやめときましょう^^;

要するに、行動する前に、一度立ち止まって、よく考えてみましょうという
ことです。

異業種交流会に出まくって、たまたま知り合った人の縁が仕事につながった
としても、あまり建設的な話とは言えませんな。

■私は戦略的思考の第1歩を「小さな市場に絞る」ことだと説いています。

簡単なことなのに多くの方々がこの第1歩を守ることができません。

市場を絞ることは、その他の市場で販売する可能性を捨て去ることですから、
経営者の決断が試されます。

それができるか、できないかが、戦略をビジネスに活かす最初の関門となり
ます。

■市場を小さく絞って成功した企業事例として、よく取り上げさせていただ
くのが、写真館の「スタジオアリス」です。

数多の写真スタジオが斜陽産業の運命から逃れられない横で、顧客を子供に
絞ることで、驚くべき急成長を遂げた企業です。

同社が子供専門写真館の第1号を開店したのが、1992年のこと。それか
ら16年で店舗数359店、売上高約290億円、東証1部上場企業に育っ
ています。

皆さん、よくご存知ですよね。

■もともとこの会社は、DPE(写真現像店)チェーンを展開していました。

今となってはDPEチェーンこそ苦しい業態です。

かつて需要が大きかった市場が縮小する時、供給過多となるため、すさまじ
い競争状態になります。

いわゆるレッドオーシャンです。

血で血を洗う競争状況は、体力勝負の消耗戦となります。

日経ベンチャー2008年3月号に、本村昌次社長の談話が載っていますが
「早朝から深夜まで必死に働いても儲からず、社員も育たない」
ということだったそうです。
これは、過当競争を戦う企業の状況をよく表しています。

■その後、スタジオアリスは、子供専用写真館を立ち上げます。

普通なら「この少子化の時代に何を血迷ったんだ!」と言われるところです
が、同社は「写真撮影が家庭で簡単にできるようになった時代に、わざわざ
スタジオ撮影したくなることは何か」を考え抜いたようです。

そこで、子供のお宮参り、入園入学、七五三という場面の撮影ニーズに着目
しました。

子供に関するイベントなら、多少の費用をかけても本格的な写真を撮影する
だろう。

そこで、ターゲットを0~7歳の子供を持つファミリーに絞ったわけです。

■単なるアイデアだけなら、思いつく方もおられたでしょうが、スタジオア
リスはそれを現実のものとしました。

実は、既存業界の慣習にどっぷり浸かっていた社長は「自分ではこのアイデ
アをものにできない」と考えたようで「全くの素人」である2人の社員に事
業を任せます。

「自分は今まで品質を重視してきたが、これは作り手の自己満足にすぎなか
ったのではないか」「自分が今までやってきたことを否定しなければ新しい
ものは生まれない」という危機感が、この決断を促したようです。

同社が提供する斬新なサービスは、顧客の目線に立った素人社員だから生み
出すことができたアイデアだったわけです。

■市場を絞ることの最大の効用は、特定の顧客に深くサービスを提供できる
ことです。

富裕層に特化した通販カタログを展開するロイヤルステージ。

研究系獣医師に特化した旅行会社の日洋航空。

郊外の農家に特化したホームセンターのコメリ。

和歌山という地域に特化したチェーンストアのオークワ。

メイド服のインターネット販売に特化したキャンディフルーツ。

いずれも自分たちにしかできない小さな市場に絞り込むことで、他社からは
見えにくいサービスのノウハウを積み上げて、ニッチ市場のミニリーダーと
なりました。

しかも市場が小さいのでミートされにくく、ニッチかつ安定したビジネス展
開を行っています。

■スタジオアリスは、顧客を子供に絞ることで、至れり尽くせりのサービス
提供を可能にしました。

写真館らしからぬ開放的な店内。貸し衣装屋かと間違うほどの衣装の品揃え。
ディズニーキャラクターの提供。好きな写真を画面で選択するシステム。女
性スタッフによる子供の笑顔を引き出すノウハウなど、ターゲットを子供に
絞ったからこそ可能となったサービスです。

第1号店を成功させた同社は、多店舗展開に進んでいきます。

子供が一定数(年間1500人)以上生まれる地域をエリアとして、イオン
やイトーヨーカ堂、トイザラスと提携することで、急速な店舗展開を行って、
市場リーダーとしての地位を磐石のものにしていきました。

■まだ途中ですがまとめてしまいます^^

事業の成功は、まず戦略から。戦略の第1歩は、市場を絞ることです。

市場を絞ることで、顧客に最適のサービス提供が可能となります。

コツはもちろん、顧客の目線でビジネスを捉えること。

間違っても「売れるものではなく、いいものを提供したい」などと考えては
いけません。それはジコチュービジネスに陥る最短距離となります。

また小さな市場を選ぶと、ライバルが入ってきにくいので、安定したビジネ
ス展開が可能となります。

大きな市場には、ライバルがどっと入ってくるので、後から大変になります。

それがスタジオアリスの現状です。。。

■スタジオアリスが、最初に素人に店舗運営を任せた意図は、多店舗展開す
るための布石だったともとれます。

もっとも、多店舗展開を可能にした徹底したマニュアル化は、他社の参入を
容易にするという危険も孕んでいたようです。

みごとブルーオーシャンをものにしたスタジオアリスですが、このような儲
かるビジネスを他社が放っておくはずがありません。

今では類似サービスを提供する企業が増えてきており、成長は鈍化しています。

■子供専門写真館のトップ企業として、同社は戦略の再構築を求められてい
ます。

現在、力を入れているのは、オペレーションをさらに効率化し、収益率を高
めることのようです。

同社は、マネジメントメッセージの中で、地域一番店宣言をしていますが、
これは、同業他社に対する「強者の戦略」を志向していると読めました。

強者の戦略とは、さらに顧客の利益になるサービスを提供し、他社のサービ
スがいいと思うなら真似をしてでも顧客に報いようとする戦略です。

同社のホームページを見ると、ネットでの予約や、需要の時期的集中を回避する
ためのイベントキャンペーンなどがなされています。

これらは顧客の利便性を高めるための方策の一環だととれます。

■もっとも次の成長戦略はまだ見えません。

もともと少子化の時代に創業しており、市場縮小は織り込み済みのはず。

同社が今後どのような展開を考えているのかが気になります。

同社のホームページを見て、気になるのは「家族写真」や「長寿写真」など
に進出しようとしていることです。

ターゲットを拡散させることと、顧客に提供するサービスの質を上げようと
することは、矛盾する方策です。

スタジオアリスは、あえてその矛盾する戦略を行おうというのか。

それとも、子供に特化することが売りだったスタジオアリスの戦略が、ここ
にきて揺らいでいるだけなのか。

■市場が飽和した時、ターゲットをぼやけさせて、収益率を下げてしまうの
は、世界第2位の市場を持つ日本企業の宿命なんでしょうか。

かつて、韓国のある企業は、日本の家電メーカーを見て「いくら強い日本企
業でも、あれだけ総花的な事業展開をしていては、世界で戦っていけないだ
ろう」と評していました。

その評価の通り、日本の家電メーカーの多くは世界で通用せず、サムソンや
LC電子が世界市場を席巻することとなりました。

スタジオアリスも、韓国や台湾に数店舗展開しているようですが、まだトラ
イアウトの段階のようです。

上場企業として成長戦略を志向する以上は、尖った企業のままで、世界市場
に切り込んでいってもらいたいものです。


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