小さな市場で戦え

2006.08.31


(2006年8月31日メルマガより)

■ランチェスター戦略に対する誤解の1つに「成長市場でしか役立たない戦
略だ」というものがあります。

私は何回か、そのように指摘されました。

古いタイプのいわゆる「おじいさんコンサル」から言われることが多いです
ね^^

名刺を交換した途端に「いまどき、ランチェスターなんてやってんの?」と
言われて、発言の意図を聞くと、冒頭のような発言をされるわけです。

■はっきり言いますが、その意見は理解不足から来るものです。そもそも、
ランチェスター戦略が支持されたのは、石油ショック後の低成長経済になっ
てからです。

少し知識のある方ならエイドリアン・スライウォツキーの「プロフィットゾ
ーン経営戦略」を引き合いに出して、ランチェス
ター戦略の"市場シェア理論"に疑問を呈するんでしょうけど、こちらは主
に「ランチェスター戦略勉強会」で出される意見です。つまり仲間内での議
論としてです。「おじいさんコンサル」から言われたことは未だかつてあり
ませんね^^

■確かに、成長市場と成熟市場とではビジネスのやり方が違います。

成長市場であれば、市場シェアを早いうちに獲得することで、その後の大き
な利益が見込めます。少々赤字を出したとしても、後々、リターンがありま
すから、シェア拡大を至上命題にする企業が多い。

ところが、成熟市場の場合、赤字でシェアを獲得しても、後で黒字に転換で
きる可能性は薄い。市場はそれ以上大きくならないのですから、規模の経済
性を効かせることが難しいわけです。

だから、やみくもに市場シェアをとるという行動は適切とはいえません。

昔、大きな業績を上げた経営者や営業マンが、今、苦しんでいる理由の一端
は、成熟市場の現在に、成長市場時代のやり方が通用しなくなったからだと
私は考えています。

■今、日本全体が成熟市場です。伸びない市場で稼ぐにはどうすればいいの
かが求められているわけです。

スライウォツキーの著作の数々は、成熟市場におけるビジネスのあり方を探
求するもので示唆に富んでいます。私も参考にさせていただいております。

もちろん、ランチェスター戦略と何ら矛盾するものではありません。

もともと、ランチェスター戦略は「ランチェスターの法則」という統計の法
則から導き出されたものですから、時代に合わせた解釈の変遷があって当然
です。創設者の田岡信夫自身が認めていることです。

ただ、今回の「成長市場でしか通用しない」というのは、解釈云々以前に単
なる理解不足ですが。

■日経ビジネス8月7日・14日号の特集「なぜ売れない」は、そんな成熟市場
におけるマーケティング行動の難しさを示しています。

セイコーエプソンのインクジェットプリンタ、東芝の液晶テレビ、日清の高
級カップラーメン、カシオのデジカメ、キリンの缶コーヒー。。。高いコス
トをかけてホームランを狙った商品が三振に終わった事例が満載です。

消費者がネットで情報を検索できるようになった現在、差別化されたちょっ
といい商品が大ヒットにつながる事例も多く見られます。
「あ、これは他にないよさだ」「初めてみる商品だ」というものが、一気に
知れ渡るのです。

ただ、それが飽きられるのも早い。

メーカーが苦労して築き上げたブランドでも、ネットで検索すると、その内
容を丸裸にするぐらいの情報が溢れています。

ちょっとした差別化やヒットの要因は、競合会社によってすぐに真似されて
しまいます。

また消費者も自分にとってよりよい特徴を探して選ぼうとします。二匹目の
どじょうは勢いに乗りにくいわけです。

ネットによって熱狂が起こり、ネットによって解剖され晒される。。。それ
が現代のマーケティングの宿命です。

■さて、成熟市場でどう稼ぐのか?

やみくもに市場シェアを拡大しようとすれば、価格競争に陥り、共倒れにな
ることは必至です。

ということは、何らかの視点の変更が必要になります。

私は、マクロな視点への変更、ミクロな視点への変更という2つの方向を提
案いたします。

■まずマクロな視点への変更。

市場を今だけで見ているから発想が生まれないのです。

見えないものこそ重要。

もっと、大きく視野を広げることで見えてくるものがあります。

つまり、今、その商品のユーザーでない人に着目します。

「なぜ、その商品を使わないのか?」に焦点を当てるわけです。

例えば「オンラインショッピングを利用しない理由」というアンケートを見
てみると「商品を確認してから買いたい」「トラブルに巻き込まれそう」
「セキュリティが不安」「送料が高い」「購入までの手順が面倒」などが上
位に並んでいます。

ということは、その理由を解消することができれば、未ユーザーを取り込む
ことが可能になるかも知れません。

現状の顧客でない顧客の市場を「ホワイトスペース」と言うそうです。

BCGのコンサルタントである本島康史氏が書いた「金融業の収益「力」を
鍛える」という本には、使わない理由(や用途)
に着目して新たなヒット商品の開発に成功した事例が掲載されています。

また話題になった「ブルー・オーシャン戦略」http://tinyurl.com/onryo
「ちまちました差別化競争をするのではなく、広大な未開拓の土地で大ヒッ
トを狙おう」ということですから、基本的には、ホワイトスペースを狙うと
いう考え方ですね。

■つぎに、ミクロな視点への変更。

これは逆に市場を細かく分けることで、これまで見えなかったものを見てい
こうという考え方です。いわゆる市場細分化ですね。

消費市場であれば、自分の顧客がどんな人であるかぐらいは知っておかなけ
ればなりません。

例えば、男か女か、若年か高齢者か、富裕層かローワーミドルか(デモグラ
フィクス)

大阪か東京か名古屋か、田舎か都会か(ジオグラフィクス)

短気な人かそうでないか、上昇志向が強い人か、環境に配慮しているか(サ
イコグラフィクス)

すぐにでも買いたいと思っている人か、商品のことを好きな人か、頻繁に使
う人か(ビヘイビア)

細かなところに着目していると、異常値が発見できます。最近どういうわけ
か高齢者のユーザーが増えているぞとか、田舎で売れているぞとか。異常値
には何らかの理由があるはずですから、理由をつきとめることで、マーケテ
ィング手段をそこに向けることができます。

ニッチな需要かも知れませんが、そこを深堀し井戸を掘り当てることが出来
れば、それなりの収益を得ることができます。

日本全体が成熟している現在、消費者は「余計なものには手を出さない」
「これを買う代わりに他は買わない」という行動をとります。だからこそ、
前のやつよりちょっと珍しい、ちょっと新しいという程度の商品やサービス
ではアピールできません。「絶対ほしい」「他を我慢しても買いたい」と思
われるためには、小さな市場をめがけて、企業の力を集中するという方法が
実践的であると考えます。

こちらのアプローチは、リサーチやマーケティング手段に大きな投資が必要
ありません。異常点に絞って、用途調査や非使用調査を行うことになります
から。

ちなみに産業財であれば、

地理:地方性、国籍

購買様式:コンペティション、担当者の裁量など

垂直:バリューチェーンの段階

水平:アプリケーションの展開

規模:どの程度の生産量の企業かなど。

に細分化して、着目することになります。

■前出の日経ビジネスの記事では「ヒントは"スモールベースボール"に」
というよくわからない喩えをしていました^^が、要するに明確にターゲッ
トを絞って、販路を分けて、小ヒットを重ねるべきだという考え方です。

ホームランは一気に点を稼ぐことができるのですが、そこに投じるコストを
考えると、実は儲かっていないのかも知れません。しかも、現代はホームラ
ンがでにくい時代です。ホームランか、空振りかでは、リスクが高すぎます
ね。

しかし、大企業でもヒット狙いに変えてくるとすれば、小さな会社はさらに
心して戦略を練らないと太刀打ちできませんね。

(2006年8月31日メルマガより)

■私は以前、ランチェスター戦略の5つの重要方針として下記のように述べ
ました。

1.小さな市場を選ぶこと

2.差別化すること

3.一点集中すること

4.勝ちやすきに勝つこと

5.ナンバーワンを獲得すること

今回は、その第1である「小さな市場を選ぶこと」に焦点を当てました。




(2006年8月31日メルマガより)

■ランチェスター戦略に対する誤解の1つに「成長市場でしか役立たない戦
略だ」というものがあります。

私は何回か、そのように指摘されました。

古いタイプのいわゆる「おじいさんコンサル」から言われることが多いです
ね^^

名刺を交換した途端に「いまどき、ランチェスターなんてやってんの?」と
言われて、発言の意図を聞くと、冒頭のような発言をされるわけです。

■はっきり言いますが、その意見は理解不足から来るものです。そもそも、
ランチェスター戦略が支持されたのは、石油ショック後の低成長経済になっ
てからです。

少し知識のある方ならエイドリアン・スライウォツキーの「プロフィットゾ
ーン経営戦略」を引き合いに出して、ランチェス
ター戦略の"市場シェア理論"に疑問を呈するんでしょうけど、こちらは主
に「ランチェスター戦略勉強会」で出される意見です。つまり仲間内での議
論としてです。「おじいさんコンサル」から言われたことは未だかつてあり
ませんね^^

■確かに、成長市場と成熟市場とではビジネスのやり方が違います。

成長市場であれば、市場シェアを早いうちに獲得することで、その後の大き
な利益が見込めます。少々赤字を出したとしても、後々、リターンがありま
すから、シェア拡大を至上命題にする企業が多い。

ところが、成熟市場の場合、赤字でシェアを獲得しても、後で黒字に転換で
きる可能性は薄い。市場はそれ以上大きくならないのですから、規模の経済
性を効かせることが難しいわけです。

だから、やみくもに市場シェアをとるという行動は適切とはいえません。

昔、大きな業績を上げた経営者や営業マンが、今、苦しんでいる理由の一端
は、成熟市場の現在に、成長市場時代のやり方が通用しなくなったからだと
私は考えています。

■今、日本全体が成熟市場です。伸びない市場で稼ぐにはどうすればいいの
かが求められているわけです。

スライウォツキーの著作の数々は、成熟市場におけるビジネスのあり方を探
求するもので示唆に富んでいます。私も参考にさせていただいております。

もちろん、ランチェスター戦略と何ら矛盾するものではありません。

もともと、ランチェスター戦略は「ランチェスターの法則」という統計の法
則から導き出されたものですから、時代に合わせた解釈の変遷があって当然
です。創設者の田岡信夫自身が認めていることです。

ただ、今回の「成長市場でしか通用しない」というのは、解釈云々以前に単
なる理解不足ですが。

■日経ビジネス8月7日・14日号の特集「なぜ売れない」は、そんな成熟市場
におけるマーケティング行動の難しさを示しています。

セイコーエプソンのインクジェットプリンタ、東芝の液晶テレビ、日清の高
級カップラーメン、カシオのデジカメ、キリンの缶コーヒー。。。高いコス
トをかけてホームランを狙った商品が三振に終わった事例が満載です。

消費者がネットで情報を検索できるようになった現在、差別化されたちょっ
といい商品が大ヒットにつながる事例も多く見られます。
「あ、これは他にないよさだ」「初めてみる商品だ」というものが、一気に
知れ渡るのです。

ただ、それが飽きられるのも早い。

メーカーが苦労して築き上げたブランドでも、ネットで検索すると、その内
容を丸裸にするぐらいの情報が溢れています。

ちょっとした差別化やヒットの要因は、競合会社によってすぐに真似されて
しまいます。

また消費者も自分にとってよりよい特徴を探して選ぼうとします。二匹目の
どじょうは勢いに乗りにくいわけです。

ネットによって熱狂が起こり、ネットによって解剖され晒される。。。それ
が現代のマーケティングの宿命です。

■さて、成熟市場でどう稼ぐのか?

やみくもに市場シェアを拡大しようとすれば、価格競争に陥り、共倒れにな
ることは必至です。

ということは、何らかの視点の変更が必要になります。

私は、マクロな視点への変更、ミクロな視点への変更という2つの方向を提
案いたします。

■まずマクロな視点への変更。

市場を今だけで見ているから発想が生まれないのです。

見えないものこそ重要。

もっと、大きく視野を広げることで見えてくるものがあります。

つまり、今、その商品のユーザーでない人に着目します。

「なぜ、その商品を使わないのか?」に焦点を当てるわけです。

例えば「オンラインショッピングを利用しない理由」というアンケートを見
てみると「商品を確認してから買いたい」「トラブルに巻き込まれそう」
「セキュリティが不安」「送料が高い」「購入までの手順が面倒」などが上
位に並んでいます。

ということは、その理由を解消することができれば、未ユーザーを取り込む
ことが可能になるかも知れません。

現状の顧客でない顧客の市場を「ホワイトスペース」と言うそうです。

BCGのコンサルタントである本島康史氏が書いた「金融業の収益「力」を
鍛える」という本には、使わない理由(や用途)
に着目して新たなヒット商品の開発に成功した事例が掲載されています。

また話題になった「ブルー・オーシャン戦略」http://tinyurl.com/onryo
「ちまちました差別化競争をするのではなく、広大な未開拓の土地で大ヒッ
トを狙おう」ということですから、基本的には、ホワイトスペースを狙うと
いう考え方ですね。

■つぎに、ミクロな視点への変更。

これは逆に市場を細かく分けることで、これまで見えなかったものを見てい
こうという考え方です。いわゆる市場細分化ですね。

消費市場であれば、自分の顧客がどんな人であるかぐらいは知っておかなけ
ればなりません。

例えば、男か女か、若年か高齢者か、富裕層かローワーミドルか(デモグラ
フィクス)

大阪か東京か名古屋か、田舎か都会か(ジオグラフィクス)

短気な人かそうでないか、上昇志向が強い人か、環境に配慮しているか(サ
イコグラフィクス)

すぐにでも買いたいと思っている人か、商品のことを好きな人か、頻繁に使
う人か(ビヘイビア)

細かなところに着目していると、異常値が発見できます。最近どういうわけ
か高齢者のユーザーが増えているぞとか、田舎で売れているぞとか。異常値
には何らかの理由があるはずですから、理由をつきとめることで、マーケテ
ィング手段をそこに向けることができます。

ニッチな需要かも知れませんが、そこを深堀し井戸を掘り当てることが出来
れば、それなりの収益を得ることができます。

日本全体が成熟している現在、消費者は「余計なものには手を出さない」
「これを買う代わりに他は買わない」という行動をとります。だからこそ、
前のやつよりちょっと珍しい、ちょっと新しいという程度の商品やサービス
ではアピールできません。「絶対ほしい」「他を我慢しても買いたい」と思
われるためには、小さな市場をめがけて、企業の力を集中するという方法が
実践的であると考えます。

こちらのアプローチは、リサーチやマーケティング手段に大きな投資が必要
ありません。異常点に絞って、用途調査や非使用調査を行うことになります
から。

ちなみに産業財であれば、

地理:地方性、国籍

購買様式:コンペティション、担当者の裁量など

垂直:バリューチェーンの段階

水平:アプリケーションの展開

規模:どの程度の生産量の企業かなど。

に細分化して、着目することになります。

■前出の日経ビジネスの記事では「ヒントは"スモールベースボール"に」
というよくわからない喩えをしていました^^が、要するに明確にターゲッ
トを絞って、販路を分けて、小ヒットを重ねるべきだという考え方です。

ホームランは一気に点を稼ぐことができるのですが、そこに投じるコストを
考えると、実は儲かっていないのかも知れません。しかも、現代はホームラ
ンがでにくい時代です。ホームランか、空振りかでは、リスクが高すぎます
ね。

しかし、大企業でもヒット狙いに変えてくるとすれば、小さな会社はさらに
心して戦略を練らないと太刀打ちできませんね。

(2006年8月31日メルマガより)

■私は以前、ランチェスター戦略の5つの重要方針として下記のように述べ
ました。

1.小さな市場を選ぶこと

2.差別化すること

3.一点集中すること

4.勝ちやすきに勝つこと

5.ナンバーワンを獲得すること

今回は、その第1である「小さな市場を選ぶこと」に焦点を当てました。



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