機能と情緒--2つの差別化の方法

2009.02.12

(2009年2月12日メルマガより)

☆メルマガ登録はこちら

■「ビジネス三國志」という本が発売されています。

三国志ブームに乗っかったいかがわしい便乗本かと思ったら、そうではあり
ませんでした^^;

編著は関西マーケティング学会の雄石井淳蔵先生です。同じ関西人として頑
張ってくださいね!

■その名の通り、3者以上の競争状況を分かりやすく分析した本です。

事例として、プレミアムビール、ハンバーガー、モバイルPC、健康緑茶な
どが採り上げられています。

馴染みのある商品ばかりなので、読み物としても面白いものとなっています。

■この本で繰り返しテーマとなっているのは、市場というもののダイナミズ
ムです。

我々はつい「○○市場」という枠の中で企業が競争していると考えがちです
が、実際にはそんなに単純ではありません。

各企業が自らの強みや歴史、競争状況から選択した行動が、消費者の支持と
共鳴することで、否応無しに出来上がるのが市場です。

だから、市場は常に変化しています。一瞬たりとも停止していません。

■市場が出来上がるメカニズムをこの著作は明らかにしようとしています。

その1つは、メーカーの仕掛けです。メーカーは消費者ニーズの変化を読み
取りながら、新商品開発という形で市場に問いかけます。

それを受けた流通業者や先進的消費者の反応、さらにマスコミの取り上げ方
などによって、何らかの仮想市場が出来上がります。

最終的に市場そのものを形作るのは、多くの消費者がそこにお金を出すかど
うかです。

メーカーだけではなく、流通業者が仕掛ける場合もあります。最近は消費者
側からのアピールも多くなってきています。

メーカーの思惑、流通業者の思惑、消費者の反応、それぞれが複雑にからみ
あって、市場が出来ていくわけです。

一事業者の仕掛けでコントロールできるような代物ではないわけですな。

■ではどうすればいいんだと言われますね。

ランチェスター戦略では、市場を小さなセグメントで捉えようとします。

大きな市場には意味がないと言っていますが、それは多様性や変化が激しい
ため管理しても意味はないということです。

だから、把握が可能な小さな市場において、市場シェアという指標で管理し
ようとしています。

セグメントとは、地域による分類だけではありません。顧客層、販売ルート、
時間帯など切り口は無数にあるはずです。どのような切り口でセグメント分
けするかが、それぞれの企業戦略のオリジナリティとなるわけです。

ランチェスター戦略の最大の特徴は、市場をどこに定め、どのように戦略に
落とし込んでいくかにあります。

まずは市場を選ぶこと。

次に、その中で差別化していくこと。(今回のテーマです)

■この著作は、市場のダイナミズムを意識し、実感させるものとして、示唆
に富んでいます。

市場はどのように立ち上がっていくのか。立ち上がりつつある市場に対応す
るためにはどのようにすればいいのか。消えていく市場にはどう対処するの
か。

ランチェスター戦略をさらに発展させるものとして、非常に参考になります。

有難うございました。

■ちなみにこの本を読んで私は「妖怪人間ベム」の冒頭を思い浮かべました。

どろどろの液体の中から現われる気泡。

次々に出来上がっては、すぐに壊れたり、形を変えていく。。。

その1つ1つが市場だというわけです^^;

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■前回(2月9日)のランチェスター戦略勉強会は「引き算のヒット術」をネ
タに討議いたしました。

このテーマは日経ビジネス2009年2月9日号の特集からいただきました。

「引き算」とは、不要と思える機能を削ることを指しています。機能削減に
より、コストを下げ、低価格を実現することで、需要喚起しようという考え
です。

このご時勢ですから、タイムリーな特集ですね。

■事例に挙がっているのは、ソフトバンクのシンプル携帯電話、30分フィ
ットネスのカーブス、メモ専用の電子機器ポメラ、全メニュー280円の焼
き鳥屋鳥貴族などです。

そもそも前提として、不要な機能を持った商品が多すぎるということが言え
ます。

だから、引き算をするだけで、ヒットになるわけです。

■なぜ企業はいらない機能をつけたがるのか^^;

これは、市場価格を上げるために他なりません。

縦軸に価格、横軸に機能としたグラフを作ると、右上がりの直線が出来るわ
けではないようです。

これは、_/←を右上がりにしたようなグラフが出来上がります。

どういうことかと言うと、ある一定の機能以上になると、市場価格のアップ
度が大幅に上がります。

薄型テレビが42型までは1型5千円で計算できたのに、それ以上になると
急に1型1万円になるようなものです。

言い換えるとプレミアム価格となる。

ここを狙うと効率的に儲けることができるからです。

■中小企業はプレミアム需要を狙え、というのは1つの方法です。

ターゲットは、プレミアム価格を払ってもいいと考える人たちです。

コストに比べて、売価が高くなるわけですから、少量販売が可能となります。

巨大な固定費を抱える大企業は、大量販売が前提になるので、そんなに突拍
子もないプレミアム価格を狙うわけにはいきませんが、中小企業なら大丈夫
です。

5000円のプリンとか、3000円のパンとか。

最寄品を買回り品にシフトする方法は、つまりは、プレミアム需要狙いです。

参考「常識を少しずらすとチャンスが生まれる

しかし、このご時勢ではそうもいかないようです。

日経ビジネスは、電通総研の方の言葉として、ここ数ヶ月の消費の落ち込み
を「今まで必要のないものまで買わされていたことに消費者が気づいてしま
ったためではないか」と記述しています。

えらい言われ方ですな^^;

■消費者は、商品やサービスの価値を効用÷価格で判断しています。

効用が価格よりも大きいと感じるならば、価値があります。

だから、価格が高くでも、効用を大きくすれば、納得できる。

逆に効用が小さくても、価格が低ければ、それも納得です。

この大不況の時代、消費者は効用の中身を吟味し始めたというわけです。

いらないものはいらない。だとすれば、プレミアム価格に頼っていた企業に
とっては厳しい状況です。

プレミアム価格を払ってもいいという人たちが少なくなってしまったわけで
すから。

(これに対して、プレミアム需要をあまり狙わない企業もあります。ホンダ
などは、当初から無駄な機能を省いて「グローバル市場で売れる車」を志向
しています。プレミアム狙いの企業が、世界で通用しなくなってしまったの
とは対照的です。)

■引き算という手段は、うまいやり方です。

機能を省くだけですから、技術的には難しいものではない。

しかも、5万円PCの例に見るように、既存企業は真似しにくい事情があり
ます。

参考:「真似したくてもできない事情がある

ただし、新規参入業者にとってはこれほど真似しやすいものはありませんか
ら、安穏としているわけにはいきません。

30分間フィットネスなどは、類似業者が乱立しており、スピード勝負だっ
たことが分かります。

結局、参入障壁の小さい業種などは、安易に引き算してもうまい話ではなか
ったということですな。

■ここで学ぶべきは、単純な引き算をすることではなく「いらない機能を省
く」ということでしょう。

例えば「ビジネス三國志」にある事例ですが、パナソニックのノートPCレ
ッツノートは、ビジネスマンを対象にしたため、デザイン性やスリムさは犠
牲にされました。

その代わり、充電池の稼動時間や軽さ、壊れにくさを強化しており、価格は
維持したままながら、強固な人気を誇っています。

ユニクロは、ファッション性を犠牲にして機能性を高めたために、流行など
にそれほどこだわらない顧客に支持されています。

いずれも、注力すべき機能をシフトすることで効用を高めて、小さな市場を
捉えたわけです。

■この方法は「ブルーオーシャン戦略」に似ています。

あの戦略では、既存事業者が提供している機能を大胆に省いていって、その
代わり、競合他社が気づいていない機能を付加することで、自社のポジショ
ンを独自のものにしようとします。

そうすることで、本当に手付かずのブルーオーシャンが見つかるかどうかは
ともかく、顧客ニーズに寄り添う方向で、差別化しようという戦略です。

要するに、差別化の1つの典型は、機能をシフトすることを意味するわけで
す。

■日経ビジネスに掲載されている例でいうと、ローソンストア100は、最
初は、全く振るわなかったそうです。

当初は、単価が高いと言われているコンビニのアンチテーゼとして企画され
たので、100円で販売できるものばかりを集めて品揃えしたところ、顧客
の支持を得られなかった。

それはそうですね。価格で差別化したつもりでも、100円ショップと何が
違うんだと思いますよね。

そこでローソンはお客様に寄り添おうと商品の見直しやPB商品開発に取り
組み、いわば「100円という制限の中でのコンビニらしさ」を追求しまし
た。

価格ではコンビニと差別化し、品揃えでは100円ショップと差別化するこ
とで業績を向上させたということです。

思えば、100円ショップのダイソーも「これが100円とは思えない!」
と感じる商品を大量に品揃えすることでブームを起こしたわけですから、単
なる安売りではなく、機能を顧客の新しい価値にシフトすることで、市場を
作った企業です。

■ところで、私は、効用には「機能的要素」と「情緒的要素」があると考え
ています。

機能的要素とは「何の役に立つのか」ということです。いわゆる機能、品質、
デザイン、安心・安全、アフターサービスなど。合理的な説明が可能な要素
です。

これに対して、情緒的要素とは「とにかく好き」「とにかく欲しい」という
もの。合理的な説明の範疇外です。いわゆるイメージや物語、ブランドです。

機能的要素を付加しようとすれば、それなりにコストがかかります。その代
わり、コストさえかければ、すぐに対応することが可能です。(技術的に困
難なものは時間がかかりますが)

逆に情緒的要素は長期的に醸成されることが多いですから、目に見えるコス
トは小さくなりますが、短期的に付加することは困難です。

だから、企業が商品やサービスを開発する際には、コントロールが可能な機
能的要素で考えることになります。

■しかし本当に強い会社になるためには、情緒的要素を高めることが必要で
す。

企業が長い時間をかけてブランド力を高めるのは、効用を大きくするためで
す。

情緒的要素による差別化は強力ですから、機能開発に多大なコストをかける
ことができない中小企業は、長いスパンで情緒的要素を付加するべきです。

もちろん、情緒的要素の付加にもやり方があります。

例えば「いいちこ」や「二階堂」のようにノスタルジックなCMを流したり
しても、いい企業と悪い企業があります。

「いいちこ」の三和酒類も、二階堂酒造も、麦焼酎メーカーのトップ企業で
すから、多くのチャネルを押さえています。

イメージCMを流すことで、焼酎を飲みたくなった人がお店にいけば、必ず
置いていあるという前提があるわけです。

要するに、あのノスタルジックなCMは強者の戦略です。

■これに対して、弱者は、情緒的要素と機能的要素を結び付けなければなり
ません。

例えば、一澤帆布工業や一澤信三郎帆布。ヨットの布で作ったカバンを製造
している会社です。(なにやら御家騒動があったようなので、二社あげます)

ヨットの布で作ったという「物語」が強固なため、丈夫、実用的、本物志向
という情緒的イメージが出来上がっています。

丈夫であるところが受け入れられて、登山など過酷な条件で使用されること
が多いという「物語」が、ブランドを強化しています。

そのため、デザインをソフトにすることで、機能を重視する一般の消費者に
も広く受け入れられました。

これは、機能と情緒が結びついた好例です。

これに反して、機能的裏づけのないイメージはすぐに見透かされてしまいま
す。

安易なキャラクターを作ってPRしても、ブランド力を高めることは困難な
所以です。

■あるいはチョコレートのキットカットは情緒的要素で市場を作った有名な
事例です。

あまりに有名すぎるので、詳しい話は差し控えます。

参考書籍「チーム・キットカットのきっと勝つマーケティング」

チョコレート業界は過去に「バレンタインデー」というイベントを作り、非
常に強力な情緒的要素による市場づくりをした実績があります。

しかしそれも過去のこと。近年は、味や食感や健康や、機能的要素による差
別化競争が行われていました。

これに対して、キットカットのマーケティングチームは、情緒的差別化によ
り「受験生応援市場」を創出し、ナンバーワンブランドの地位を不動のもの
としました。

ポイントは、ぶどう糖補給のために受験生がチョコレートを必需品としてい
る「機能的要素」と、その受験生を応援するという「情緒的要素」を独創的
なプロモーション戦略で結びつけたというところです。

まさに弱者の戦略の最適な事例です。

■まとめましょう。

我々は商品やサービスの価値=効用÷価格で判断しています。

だから顧客価値を高めるためには、効用を大きくするか、価格を小さくする
か、2つの方法があるわけです。

最近は消費が低迷しているので、価格を小さくすることの方が、消費者の支
持を得ることができるようです。

価格を小さくするために各企業は機能を「引き算」することで、実現しよう
としているのが最近のトレンドの一つです。ただし、引き算はミートされや
すい施策なので、注意が必要です。

一方、効用を高めるには、機能的要素を高める方法と情緒的要素を高める方
法があります。

機能的要素を高めることはコスト増を招きます。だから、いらない機能を削
って、必要な機能を高めるという機能のシフトが志向されます。短期的に顧
客価値を高めるには、機能のシフトが最適でしょう。

ただし長期的に顧客価値を高めるためには情緒的要素を高めることが不可欠
です。情緒的要素とは、イメージ、物語、ブランドなど合理的な説明ができ
ない価値であり、時間をかけて醸成されます。

ただし、機能的裏づけのない情緒的差別化は、見透かされてしまうので注意
してください。

特に弱者は、時間をかけて、機能的要素の上に、情緒(物語、イメージ、ブ
ランド)をコツコツ積み上げることを目指してください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■情緒的差別化の事例としてあげた「いいちこ」や「二階堂」に機能的裏づ
けがないわけではありません。

2社の名誉のために言っておきます^^

2社はイオンろ過交換法という技術を使って飲みやすい麦焼酎を開発したパ
イオニア企業として、大分麦焼酎(地域ブランド)の代表的企業です。

この2社の情緒的差別化も、それぞれ特徴があります。

この2社については、今月末の金沢のあるセミナーでお話するつもりです。
ここでは、言わないでおきます。金沢の皆さん、お楽しみに^^

■それにしても、この2社のCMはいいですねーー

いいちこhttp://www.iichiko.co.jp/design/CM/index.html

二階堂http://www.youtube.com/watch?v=QZa5NKq7l6g&feature=related

恐らく団塊の世代の郷愁を誘うように作られているんでしょうね。

すっかりはまってしまいました。

■最近、いいちこのCMを何回も見たものだから、ビリーバンバンのファン
になってしまいました。

今度、カラオケで披露させていただきます。

また行きましょうね^^


(2009年2月12日メルマガより)

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■「ビジネス三國志」という本が発売されています。

三国志ブームに乗っかったいかがわしい便乗本かと思ったら、そうではあり
ませんでした^^;

編著は関西マーケティング学会の雄石井淳蔵先生です。同じ関西人として頑
張ってくださいね!

■その名の通り、3者以上の競争状況を分かりやすく分析した本です。

事例として、プレミアムビール、ハンバーガー、モバイルPC、健康緑茶な
どが採り上げられています。

馴染みのある商品ばかりなので、読み物としても面白いものとなっています。

■この本で繰り返しテーマとなっているのは、市場というもののダイナミズ
ムです。

我々はつい「○○市場」という枠の中で企業が競争していると考えがちです
が、実際にはそんなに単純ではありません。

各企業が自らの強みや歴史、競争状況から選択した行動が、消費者の支持と
共鳴することで、否応無しに出来上がるのが市場です。

だから、市場は常に変化しています。一瞬たりとも停止していません。

■市場が出来上がるメカニズムをこの著作は明らかにしようとしています。

その1つは、メーカーの仕掛けです。メーカーは消費者ニーズの変化を読み
取りながら、新商品開発という形で市場に問いかけます。

それを受けた流通業者や先進的消費者の反応、さらにマスコミの取り上げ方
などによって、何らかの仮想市場が出来上がります。

最終的に市場そのものを形作るのは、多くの消費者がそこにお金を出すかど
うかです。

メーカーだけではなく、流通業者が仕掛ける場合もあります。最近は消費者
側からのアピールも多くなってきています。

メーカーの思惑、流通業者の思惑、消費者の反応、それぞれが複雑にからみ
あって、市場が出来ていくわけです。

一事業者の仕掛けでコントロールできるような代物ではないわけですな。

■ではどうすればいいんだと言われますね。

ランチェスター戦略では、市場を小さなセグメントで捉えようとします。

大きな市場には意味がないと言っていますが、それは多様性や変化が激しい
ため管理しても意味はないということです。

だから、把握が可能な小さな市場において、市場シェアという指標で管理し
ようとしています。

セグメントとは、地域による分類だけではありません。顧客層、販売ルート、
時間帯など切り口は無数にあるはずです。どのような切り口でセグメント分
けするかが、それぞれの企業戦略のオリジナリティとなるわけです。

ランチェスター戦略の最大の特徴は、市場をどこに定め、どのように戦略に
落とし込んでいくかにあります。

まずは市場を選ぶこと。

次に、その中で差別化していくこと。(今回のテーマです)

■この著作は、市場のダイナミズムを意識し、実感させるものとして、示唆
に富んでいます。

市場はどのように立ち上がっていくのか。立ち上がりつつある市場に対応す
るためにはどのようにすればいいのか。消えていく市場にはどう対処するの
か。

ランチェスター戦略をさらに発展させるものとして、非常に参考になります。

有難うございました。

■ちなみにこの本を読んで私は「妖怪人間ベム」の冒頭を思い浮かべました。

どろどろの液体の中から現われる気泡。

次々に出来上がっては、すぐに壊れたり、形を変えていく。。。

その1つ1つが市場だというわけです^^;

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■前回(2月9日)のランチェスター戦略勉強会は「引き算のヒット術」をネ
タに討議いたしました。

このテーマは日経ビジネス2009年2月9日号の特集からいただきました。

「引き算」とは、不要と思える機能を削ることを指しています。機能削減に
より、コストを下げ、低価格を実現することで、需要喚起しようという考え
です。

このご時勢ですから、タイムリーな特集ですね。

■事例に挙がっているのは、ソフトバンクのシンプル携帯電話、30分フィ
ットネスのカーブス、メモ専用の電子機器ポメラ、全メニュー280円の焼
き鳥屋鳥貴族などです。

そもそも前提として、不要な機能を持った商品が多すぎるということが言え
ます。

だから、引き算をするだけで、ヒットになるわけです。

■なぜ企業はいらない機能をつけたがるのか^^;

これは、市場価格を上げるために他なりません。

縦軸に価格、横軸に機能としたグラフを作ると、右上がりの直線が出来るわ
けではないようです。

これは、_/←を右上がりにしたようなグラフが出来上がります。

どういうことかと言うと、ある一定の機能以上になると、市場価格のアップ
度が大幅に上がります。

薄型テレビが42型までは1型5千円で計算できたのに、それ以上になると
急に1型1万円になるようなものです。

言い換えるとプレミアム価格となる。

ここを狙うと効率的に儲けることができるからです。

■中小企業はプレミアム需要を狙え、というのは1つの方法です。

ターゲットは、プレミアム価格を払ってもいいと考える人たちです。

コストに比べて、売価が高くなるわけですから、少量販売が可能となります。

巨大な固定費を抱える大企業は、大量販売が前提になるので、そんなに突拍
子もないプレミアム価格を狙うわけにはいきませんが、中小企業なら大丈夫
です。

5000円のプリンとか、3000円のパンとか。

最寄品を買回り品にシフトする方法は、つまりは、プレミアム需要狙いです。

参考「常識を少しずらすとチャンスが生まれる

しかし、このご時勢ではそうもいかないようです。

日経ビジネスは、電通総研の方の言葉として、ここ数ヶ月の消費の落ち込み
を「今まで必要のないものまで買わされていたことに消費者が気づいてしま
ったためではないか」と記述しています。

えらい言われ方ですな^^;

■消費者は、商品やサービスの価値を効用÷価格で判断しています。

効用が価格よりも大きいと感じるならば、価値があります。

だから、価格が高くでも、効用を大きくすれば、納得できる。

逆に効用が小さくても、価格が低ければ、それも納得です。

この大不況の時代、消費者は効用の中身を吟味し始めたというわけです。

いらないものはいらない。だとすれば、プレミアム価格に頼っていた企業に
とっては厳しい状況です。

プレミアム価格を払ってもいいという人たちが少なくなってしまったわけで
すから。

(これに対して、プレミアム需要をあまり狙わない企業もあります。ホンダ
などは、当初から無駄な機能を省いて「グローバル市場で売れる車」を志向
しています。プレミアム狙いの企業が、世界で通用しなくなってしまったの
とは対照的です。)

■引き算という手段は、うまいやり方です。

機能を省くだけですから、技術的には難しいものではない。

しかも、5万円PCの例に見るように、既存企業は真似しにくい事情があり
ます。

参考:「真似したくてもできない事情がある

ただし、新規参入業者にとってはこれほど真似しやすいものはありませんか
ら、安穏としているわけにはいきません。

30分間フィットネスなどは、類似業者が乱立しており、スピード勝負だっ
たことが分かります。

結局、参入障壁の小さい業種などは、安易に引き算してもうまい話ではなか
ったということですな。

■ここで学ぶべきは、単純な引き算をすることではなく「いらない機能を省
く」ということでしょう。

例えば「ビジネス三國志」にある事例ですが、パナソニックのノートPCレ
ッツノートは、ビジネスマンを対象にしたため、デザイン性やスリムさは犠
牲にされました。

その代わり、充電池の稼動時間や軽さ、壊れにくさを強化しており、価格は
維持したままながら、強固な人気を誇っています。

ユニクロは、ファッション性を犠牲にして機能性を高めたために、流行など
にそれほどこだわらない顧客に支持されています。

いずれも、注力すべき機能をシフトすることで効用を高めて、小さな市場を
捉えたわけです。

■この方法は「ブルーオーシャン戦略」に似ています。

あの戦略では、既存事業者が提供している機能を大胆に省いていって、その
代わり、競合他社が気づいていない機能を付加することで、自社のポジショ
ンを独自のものにしようとします。

そうすることで、本当に手付かずのブルーオーシャンが見つかるかどうかは
ともかく、顧客ニーズに寄り添う方向で、差別化しようという戦略です。

要するに、差別化の1つの典型は、機能をシフトすることを意味するわけで
す。

■日経ビジネスに掲載されている例でいうと、ローソンストア100は、最
初は、全く振るわなかったそうです。

当初は、単価が高いと言われているコンビニのアンチテーゼとして企画され
たので、100円で販売できるものばかりを集めて品揃えしたところ、顧客
の支持を得られなかった。

それはそうですね。価格で差別化したつもりでも、100円ショップと何が
違うんだと思いますよね。

そこでローソンはお客様に寄り添おうと商品の見直しやPB商品開発に取り
組み、いわば「100円という制限の中でのコンビニらしさ」を追求しまし
た。

価格ではコンビニと差別化し、品揃えでは100円ショップと差別化するこ
とで業績を向上させたということです。

思えば、100円ショップのダイソーも「これが100円とは思えない!」
と感じる商品を大量に品揃えすることでブームを起こしたわけですから、単
なる安売りではなく、機能を顧客の新しい価値にシフトすることで、市場を
作った企業です。

■ところで、私は、効用には「機能的要素」と「情緒的要素」があると考え
ています。

機能的要素とは「何の役に立つのか」ということです。いわゆる機能、品質、
デザイン、安心・安全、アフターサービスなど。合理的な説明が可能な要素
です。

これに対して、情緒的要素とは「とにかく好き」「とにかく欲しい」という
もの。合理的な説明の範疇外です。いわゆるイメージや物語、ブランドです。

機能的要素を付加しようとすれば、それなりにコストがかかります。その代
わり、コストさえかければ、すぐに対応することが可能です。(技術的に困
難なものは時間がかかりますが)

逆に情緒的要素は長期的に醸成されることが多いですから、目に見えるコス
トは小さくなりますが、短期的に付加することは困難です。

だから、企業が商品やサービスを開発する際には、コントロールが可能な機
能的要素で考えることになります。

■しかし本当に強い会社になるためには、情緒的要素を高めることが必要で
す。

企業が長い時間をかけてブランド力を高めるのは、効用を大きくするためで
す。

情緒的要素による差別化は強力ですから、機能開発に多大なコストをかける
ことができない中小企業は、長いスパンで情緒的要素を付加するべきです。

もちろん、情緒的要素の付加にもやり方があります。

例えば「いいちこ」や「二階堂」のようにノスタルジックなCMを流したり
しても、いい企業と悪い企業があります。

「いいちこ」の三和酒類も、二階堂酒造も、麦焼酎メーカーのトップ企業で
すから、多くのチャネルを押さえています。

イメージCMを流すことで、焼酎を飲みたくなった人がお店にいけば、必ず
置いていあるという前提があるわけです。

要するに、あのノスタルジックなCMは強者の戦略です。

■これに対して、弱者は、情緒的要素と機能的要素を結び付けなければなり
ません。

例えば、一澤帆布工業や一澤信三郎帆布。ヨットの布で作ったカバンを製造
している会社です。(なにやら御家騒動があったようなので、二社あげます)

ヨットの布で作ったという「物語」が強固なため、丈夫、実用的、本物志向
という情緒的イメージが出来上がっています。

丈夫であるところが受け入れられて、登山など過酷な条件で使用されること
が多いという「物語」が、ブランドを強化しています。

そのため、デザインをソフトにすることで、機能を重視する一般の消費者に
も広く受け入れられました。

これは、機能と情緒が結びついた好例です。

これに反して、機能的裏づけのないイメージはすぐに見透かされてしまいま
す。

安易なキャラクターを作ってPRしても、ブランド力を高めることは困難な
所以です。

■あるいはチョコレートのキットカットは情緒的要素で市場を作った有名な
事例です。

あまりに有名すぎるので、詳しい話は差し控えます。

参考書籍「チーム・キットカットのきっと勝つマーケティング」

チョコレート業界は過去に「バレンタインデー」というイベントを作り、非
常に強力な情緒的要素による市場づくりをした実績があります。

しかしそれも過去のこと。近年は、味や食感や健康や、機能的要素による差
別化競争が行われていました。

これに対して、キットカットのマーケティングチームは、情緒的差別化によ
り「受験生応援市場」を創出し、ナンバーワンブランドの地位を不動のもの
としました。

ポイントは、ぶどう糖補給のために受験生がチョコレートを必需品としてい
る「機能的要素」と、その受験生を応援するという「情緒的要素」を独創的
なプロモーション戦略で結びつけたというところです。

まさに弱者の戦略の最適な事例です。

■まとめましょう。

我々は商品やサービスの価値=効用÷価格で判断しています。

だから顧客価値を高めるためには、効用を大きくするか、価格を小さくする
か、2つの方法があるわけです。

最近は消費が低迷しているので、価格を小さくすることの方が、消費者の支
持を得ることができるようです。

価格を小さくするために各企業は機能を「引き算」することで、実現しよう
としているのが最近のトレンドの一つです。ただし、引き算はミートされや
すい施策なので、注意が必要です。

一方、効用を高めるには、機能的要素を高める方法と情緒的要素を高める方
法があります。

機能的要素を高めることはコスト増を招きます。だから、いらない機能を削
って、必要な機能を高めるという機能のシフトが志向されます。短期的に顧
客価値を高めるには、機能のシフトが最適でしょう。

ただし長期的に顧客価値を高めるためには情緒的要素を高めることが不可欠
です。情緒的要素とは、イメージ、物語、ブランドなど合理的な説明ができ
ない価値であり、時間をかけて醸成されます。

ただし、機能的裏づけのない情緒的差別化は、見透かされてしまうので注意
してください。

特に弱者は、時間をかけて、機能的要素の上に、情緒(物語、イメージ、ブ
ランド)をコツコツ積み上げることを目指してください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■情緒的差別化の事例としてあげた「いいちこ」や「二階堂」に機能的裏づ
けがないわけではありません。

2社の名誉のために言っておきます^^

2社はイオンろ過交換法という技術を使って飲みやすい麦焼酎を開発したパ
イオニア企業として、大分麦焼酎(地域ブランド)の代表的企業です。

この2社の情緒的差別化も、それぞれ特徴があります。

この2社については、今月末の金沢のあるセミナーでお話するつもりです。
ここでは、言わないでおきます。金沢の皆さん、お楽しみに^^

■それにしても、この2社のCMはいいですねーー

いいちこhttp://www.iichiko.co.jp/design/CM/index.html

二階堂http://www.youtube.com/watch?v=QZa5NKq7l6g&feature=related

恐らく団塊の世代の郷愁を誘うように作られているんでしょうね。

すっかりはまってしまいました。

■最近、いいちこのCMを何回も見たものだから、ビリーバンバンのファン
になってしまいました。

今度、カラオケで披露させていただきます。

また行きましょうね^^


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