ぺんてるとコクヨ またかよ!?と言いたくなるお家騒動がらみの揉め事

2019.06.27

(2019年6月27日メルマガより)


文具大手のコクヨが、筆記具メーカーのぺんてるの筆頭株主になったというニュースが流れたのは、1カ月ほど前のことでした。

文具、筆記具ともに、将来性に疑問が残る業界です。

特に総合文具メーカーのコクヨは、国内市場が少子高齢化により先細りですから、危機感は大きい。

比較的海外展開が進んでいる筆記具メーカーの販路と営業ノウハウが欲しいはずです。

一方、ぺんてるとすれば、さらに海外展開していくための資金がほしいところ。

両社の思惑が一致した両想いの提携話だと思っておりました。


ところが、その後のニュースを見ると、雲行きが怪しいですね。

コクヨ側は、ぺんてるのことを「素晴らしい会社」と持ち上げていますが、ぺんてる側は(コクヨのやり方は)「一方的だ」と警戒感を隠そうとしていません。

いったい何があったというのでしょうか。


ぺんてるの「お家騒動」


ぺんてる側が、コクヨを警戒する裏側には、過去の「お家騒動」が絡んでいるようです。

ぺんてるは、筆や硯の卸問屋を祖にした会社です。戦後の1946年に、株式会社化され、筆記具メーカーとして成長していきました。

代々創業家の人が社長を務めてきましたが、2012年に3代目の社長が解任されてしまいます。

どうやら海外で豪遊したり、遅刻や欠勤を繰り返すなどよろしくない行状があったらしい。会社も業績不振で、放漫経営の責任をとらされた形です。

辞めさせられた創業家の前社長は、返り咲きを画策するものの、親族の支持も得られずに頓挫。

諦めた彼は、自分の持ち株を日系ファンドを運営するマーキュリアインベストメントに売却します。

もともと創業家直系の筆頭株主が売却したのだから、マーキュリアが筆頭株主になりました。

さて後を継いだのは、工場長などを歴任した生え抜きの人物です。この方の手腕があったのか、ヒット商品も出るようになり、業績は回復しました。

2018年3月期の連結売上高は409億円。

ここ数年の売上高は、どちらかというと横ばいですが、利益は出るようになっています。前社長が解任された当初、赤字続きだったことを思うと、順調にきたと言ってもいいのではないでしょうか。


だまし討ちのような売却


ぺんてるといえば、サインペンや筆ペン、ボールペン、シャープペンシル、消しゴムなどを扱う会社です。

最近では、絶対に芯が折れないという触れ込みの3000円もするシャープペンシルをヒットさせています。

ぺんてるに限らず、日本の筆記具専用メーカーは、ユーザーの期待の上をいく面白い商品を開発し、ヒットさせている印象があります。

その努力には、頭が下がります。


しかし、いま、順調だからといって、将来的に明るいわけではありません。

ペーパーレスの時代に、筆記具が今まで通り売れ続けるのか?と言われれば、危機感を抱かざるを得ないでしょう。

そこでぺんてるの現経営陣が、生き残りのために選んだ施策が、文具大手プラスとの提携だったようです。

ちなみにプラスは、連結売上高1772億円。コクヨに次ぐ日本2位の総合文具メーカーです。

1990年代には、文具通信販売のアスクルで一大ブームを巻き起こし、世間をあっと言わせたこともありました。(現在は、ソフトバンクグループに売却)


そのプラスとどのような提携をしようとしたのか、外部のわれわれに詳細はわかりません。

分かっているのは、筆頭株主であるマーキュリアが提携に反対したことです。

マーキュリアの言い分は「その提携でぺんてるの価値が上がるとは思えない」

ところが、ぺんてるの経営陣は提携を強行しようとします。

経営陣と筆頭株主の対立というのも異様ですが、この場合、両者の歴史が絡んでいるように思えるので複雑です。

すなわち、マーキュリアの背後にはやはり創業家である前社長の影がちらついているのでしょう。現経営陣としては、なるべく距離を置きたいわけです。

ぺんてるにとって不利だと言われる提携話でも強行しようとした理由の一端がここに見えます。

最終的にはプラスに資本を入れてもらって、筆頭株主を交替させるところまで考えていたのかも知れませんね。


慌てたのはマーキュリアです。せっかく筆頭株主になったのに、現経営陣は言うことを聞かない。

株を売ってしまおうにも、ぺんてるの株は、譲渡には取締役会の承認が必要だという制約があるので、簡単には売ることができません。

そこでマーキュリアが考え出したウルトラCが、投資ファンドそのものを他社に売却することでした。

ここで登場するのが、文具最大手のコクヨです。コクヨが、101億円を投じて、ファンドを取得しました。これで、間接的にですが、ぺんてるの筆頭株主に躍り出たのです。

ぺんてる側とすれば、プラスとの提携を画策していたところ、突然、筆頭株主にコクヨが登場したのですから、青天の霹靂です。だまし討ちみたいな売却劇ですから、納得できるはずもありません。


なぜコクヨはぺんてるを欲しがったのか


コクヨは、売上高3151億円、文具、オフィス家具を手掛ける日本最大手の総合文具メーカーです。

強者企業らしく、文具店、量販店などに鉄壁の販売・営業網を作り上げており、高度成長期には、文具業界の松下電器といった風格のある会社でした。

依然、営業利益率は5%以上を保っており、収益力が衰えたわけではありません。

が、少子高齢化の日本市場に根を張り過ぎたというのは、マイナス要素になってしまいます。

コクヨが今後、じり貧に陥らないためには、

(1)文具だけに頼るのではなく、オフィス内ソリューションにサービスを広げる

(2)オフィス商品に止まらず、飲食、ホテル、小売店などにサービスの幅を広げる

(3)強い商品を開発して海外展開する

といった方向性が考えられます。

いずれの方向にも先行企業が存在しており、文具の王者コクヨといえども簡単な道ではありません。

しかし、泣き言を言っていたら、生き残れるはずもありませんので、やっていかなければなりません。

その一環として、海外販路を持つ筆記具メーカーとの提携は、コクヨとしても是が非でも推し進めたい施策でした。


海外展開に弱いのは、プラスも同じです。日本市場で充分儲けられた時代が長かった総合文具メーカーの今の課題ですな。

これに対して筆記具メーカーは、商品の幅が狭いので、日本市場でいくら売っても限度があります。勢い、海外展開に活路を見出そうとします。

パイロット、三菱鉛筆、ぺんてる、ゼブラともに、海外販売比率が高くなっています。

株式市場も、海外展開姿勢を評価する傾向にあり、筆記具専用メーカーの株式時価総額は総じて高くなっています。

パイロットなど、売上高はコクヨの3分の1程度なのに、株式時価総額はコクヨを凌いでいるほどです。

株価は、企業の将来価値を表す側面もあるので、コクヨよりも、筆記具専用メーカーの方が将来性があると目されていると言ってもいいでしょう。


お家騒動をしている場合ではない


もっとも、筆記具専用メーカーの将来性がバラ色なのかと言えば、そうではない。

先に書きましたが、ペーパーレスが進む時代に、筆記具の需要が右肩上がりになるとは思えません。

筆記具専用メーカーは、今後、ペーパーレス時代の筆記具を開発するか、あるいは他の分野のビジネスを作っていかなければならないでしょう。

いわば、総合文具メーカーも筆記具専用メーカーも、これから二枚も三枚も殻を破らなければいけない立場にあり、崖っぷちの企業同士の苦肉の提携策です。

くっついたからと言って、化学変化が起きて、素晴らしいビジネスが立ち上がるなんて能天気なことは考えられません。

そんな状況なのに、お家騒動を引きずって、あの企業と組むのはいやだとか、あの人の影が見えるからダメだとか言っているのはいかがなものか。

そんな場合じゃないでしょうと言いたくなりますな。


記事を読む限り、ぺんてる側の拒否感はそうとうのものがあるようで、このままコクヨとすんなり提携するとは思えない状況です。

かといってプラスとの提携が格別の価値を生むとは、関係者も感じていないようです。

結局、戦略方向性を前提とした話ではなく、組織の維持や関係者個人の思惑が前面に出た騒動だということですな。

まったくもって残念なことです。


参考:




(2019年6月27日メルマガより)


文具大手のコクヨが、筆記具メーカーのぺんてるの筆頭株主になったというニュースが流れたのは、1カ月ほど前のことでした。

文具、筆記具ともに、将来性に疑問が残る業界です。

特に総合文具メーカーのコクヨは、国内市場が少子高齢化により先細りですから、危機感は大きい。

比較的海外展開が進んでいる筆記具メーカーの販路と営業ノウハウが欲しいはずです。

一方、ぺんてるとすれば、さらに海外展開していくための資金がほしいところ。

両社の思惑が一致した両想いの提携話だと思っておりました。


ところが、その後のニュースを見ると、雲行きが怪しいですね。

コクヨ側は、ぺんてるのことを「素晴らしい会社」と持ち上げていますが、ぺんてる側は(コクヨのやり方は)「一方的だ」と警戒感を隠そうとしていません。

いったい何があったというのでしょうか。


ぺんてるの「お家騒動」


ぺんてる側が、コクヨを警戒する裏側には、過去の「お家騒動」が絡んでいるようです。

ぺんてるは、筆や硯の卸問屋を祖にした会社です。戦後の1946年に、株式会社化され、筆記具メーカーとして成長していきました。

代々創業家の人が社長を務めてきましたが、2012年に3代目の社長が解任されてしまいます。

どうやら海外で豪遊したり、遅刻や欠勤を繰り返すなどよろしくない行状があったらしい。会社も業績不振で、放漫経営の責任をとらされた形です。

辞めさせられた創業家の前社長は、返り咲きを画策するものの、親族の支持も得られずに頓挫。

諦めた彼は、自分の持ち株を日系ファンドを運営するマーキュリアインベストメントに売却します。

もともと創業家直系の筆頭株主が売却したのだから、マーキュリアが筆頭株主になりました。

さて後を継いだのは、工場長などを歴任した生え抜きの人物です。この方の手腕があったのか、ヒット商品も出るようになり、業績は回復しました。

2018年3月期の連結売上高は409億円。

ここ数年の売上高は、どちらかというと横ばいですが、利益は出るようになっています。前社長が解任された当初、赤字続きだったことを思うと、順調にきたと言ってもいいのではないでしょうか。


だまし討ちのような売却


ぺんてるといえば、サインペンや筆ペン、ボールペン、シャープペンシル、消しゴムなどを扱う会社です。

最近では、絶対に芯が折れないという触れ込みの3000円もするシャープペンシルをヒットさせています。

ぺんてるに限らず、日本の筆記具専用メーカーは、ユーザーの期待の上をいく面白い商品を開発し、ヒットさせている印象があります。

その努力には、頭が下がります。


しかし、いま、順調だからといって、将来的に明るいわけではありません。

ペーパーレスの時代に、筆記具が今まで通り売れ続けるのか?と言われれば、危機感を抱かざるを得ないでしょう。

そこでぺんてるの現経営陣が、生き残りのために選んだ施策が、文具大手プラスとの提携だったようです。

ちなみにプラスは、連結売上高1772億円。コクヨに次ぐ日本2位の総合文具メーカーです。

1990年代には、文具通信販売のアスクルで一大ブームを巻き起こし、世間をあっと言わせたこともありました。(現在は、ソフトバンクグループに売却)


そのプラスとどのような提携をしようとしたのか、外部のわれわれに詳細はわかりません。

分かっているのは、筆頭株主であるマーキュリアが提携に反対したことです。

マーキュリアの言い分は「その提携でぺんてるの価値が上がるとは思えない」

ところが、ぺんてるの経営陣は提携を強行しようとします。

経営陣と筆頭株主の対立というのも異様ですが、この場合、両者の歴史が絡んでいるように思えるので複雑です。

すなわち、マーキュリアの背後にはやはり創業家である前社長の影がちらついているのでしょう。現経営陣としては、なるべく距離を置きたいわけです。

ぺんてるにとって不利だと言われる提携話でも強行しようとした理由の一端がここに見えます。

最終的にはプラスに資本を入れてもらって、筆頭株主を交替させるところまで考えていたのかも知れませんね。


慌てたのはマーキュリアです。せっかく筆頭株主になったのに、現経営陣は言うことを聞かない。

株を売ってしまおうにも、ぺんてるの株は、譲渡には取締役会の承認が必要だという制約があるので、簡単には売ることができません。

そこでマーキュリアが考え出したウルトラCが、投資ファンドそのものを他社に売却することでした。

ここで登場するのが、文具最大手のコクヨです。コクヨが、101億円を投じて、ファンドを取得しました。これで、間接的にですが、ぺんてるの筆頭株主に躍り出たのです。

ぺんてる側とすれば、プラスとの提携を画策していたところ、突然、筆頭株主にコクヨが登場したのですから、青天の霹靂です。だまし討ちみたいな売却劇ですから、納得できるはずもありません。


なぜコクヨはぺんてるを欲しがったのか


コクヨは、売上高3151億円、文具、オフィス家具を手掛ける日本最大手の総合文具メーカーです。

強者企業らしく、文具店、量販店などに鉄壁の販売・営業網を作り上げており、高度成長期には、文具業界の松下電器といった風格のある会社でした。

依然、営業利益率は5%以上を保っており、収益力が衰えたわけではありません。

が、少子高齢化の日本市場に根を張り過ぎたというのは、マイナス要素になってしまいます。

コクヨが今後、じり貧に陥らないためには、

(1)文具だけに頼るのではなく、オフィス内ソリューションにサービスを広げる

(2)オフィス商品に止まらず、飲食、ホテル、小売店などにサービスの幅を広げる

(3)強い商品を開発して海外展開する

といった方向性が考えられます。

いずれの方向にも先行企業が存在しており、文具の王者コクヨといえども簡単な道ではありません。

しかし、泣き言を言っていたら、生き残れるはずもありませんので、やっていかなければなりません。

その一環として、海外販路を持つ筆記具メーカーとの提携は、コクヨとしても是が非でも推し進めたい施策でした。


海外展開に弱いのは、プラスも同じです。日本市場で充分儲けられた時代が長かった総合文具メーカーの今の課題ですな。

これに対して筆記具メーカーは、商品の幅が狭いので、日本市場でいくら売っても限度があります。勢い、海外展開に活路を見出そうとします。

パイロット、三菱鉛筆、ぺんてる、ゼブラともに、海外販売比率が高くなっています。

株式市場も、海外展開姿勢を評価する傾向にあり、筆記具専用メーカーの株式時価総額は総じて高くなっています。

パイロットなど、売上高はコクヨの3分の1程度なのに、株式時価総額はコクヨを凌いでいるほどです。

株価は、企業の将来価値を表す側面もあるので、コクヨよりも、筆記具専用メーカーの方が将来性があると目されていると言ってもいいでしょう。


お家騒動をしている場合ではない


もっとも、筆記具専用メーカーの将来性がバラ色なのかと言えば、そうではない。

先に書きましたが、ペーパーレスが進む時代に、筆記具の需要が右肩上がりになるとは思えません。

筆記具専用メーカーは、今後、ペーパーレス時代の筆記具を開発するか、あるいは他の分野のビジネスを作っていかなければならないでしょう。

いわば、総合文具メーカーも筆記具専用メーカーも、これから二枚も三枚も殻を破らなければいけない立場にあり、崖っぷちの企業同士の苦肉の提携策です。

くっついたからと言って、化学変化が起きて、素晴らしいビジネスが立ち上がるなんて能天気なことは考えられません。

そんな状況なのに、お家騒動を引きずって、あの企業と組むのはいやだとか、あの人の影が見えるからダメだとか言っているのはいかがなものか。

そんな場合じゃないでしょうと言いたくなりますな。


記事を読む限り、ぺんてる側の拒否感はそうとうのものがあるようで、このままコクヨとすんなり提携するとは思えない状況です。

かといってプラスとの提携が格別の価値を生むとは、関係者も感じていないようです。

結局、戦略方向性を前提とした話ではなく、組織の維持や関係者個人の思惑が前面に出た騒動だということですな。

まったくもって残念なことです。


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