巨人軍の凋落は止められるか?

2007.10.25


(2007年10月25日メルマガより)

■ランチェスター関西では、月に1回、戦略勉強会を開催しています。

いつも少人数で、和気あいあいとやっており、その後の懇親会(飲み会)も
楽しみなアットホームな集まりです。

このメルマガを読んで来られる方がほとんどですが、皆さん一様に「こんな
気楽な集まりだったんですね」と驚かれます。

どうも、このメルマガの印象では、小難しい理屈を滔々と述べ合う連中が集
まっているんじゃないかと思われているようですね^^;

そんなことはありませんよ。

■前回の勉強会では、軽いネタとして「巨人軍の凋落は止められるか」とい
うテーマを採り上げました。私としては、30分程度で終わらすネタのつもり
だったのですが、これが思いのほか盛り上がり、2時間びっしりと話し合う
こととなってしまいました。

■そこで、今回のメルマガでは、その時の話し合いに基づき、巨人軍再生案
について書いてみたいと思います。

もっとも私としては、巨人軍がどうなろうと知ったこっちゃないんですがね。


★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★

「巨人軍の凋落は止められるか?」

まあ、無理でしょう。

と言ってしまえば、話が進みませんな。

■私は、プロ野球は12球団全部阪神タイガースにすべきだと思っています。

それなら、毎日、勝利。毎年、優勝。こんなに喜ばしいことはありません。

あまり理解されない意見ですが。

■週刊ダイヤモンド2007/10/20の二宮清純氏のコラムに「日本テレビが巨人
の優勝が決まる試合を放送しなかった」ことが書かれていました。

これは巨人軍の凋落を示す象徴的な出来事です。なにしろ、巨人といえば、
どんな試合でも全国どこでも観ることができるというのが一昔前までの状況
でした。その中心となるテレビ局が日本テレビです。そこが、視聴率低迷を
理由に最も重要な試合を放映しないという選択をしたのですから。(ちなみ
に、その時は「踊るさんま御殿」が放送されていたそうです)

■なぜ、巨人軍はここまで凋落してしまったのでしょうか?

端的に言うと、弱く、かつ、つまらないチームになってしまい、ファンの支
持を失ってしまったからです。

その背景には、ドラフト会議に表される"戦力の均衡を図り、各球団の投資
額を減らす"という流れに反する"巨人軍が強くなければ、プロ野球が盛り
上がらない"と考える人々のちぐはぐなチーム運営とのギャップがあります。

もっともこのあたりのチーム運営のミスについては、野村克也の「巨人軍論
などに詳しいのでここには書きません。

■私がむしろ疑問に思うのは「テレビのスポンサー収入に頼った球団運営」
は正しいのだろうか?ということです。確かに、高度成長期、巨人が強かっ
た時期には、テレビも絶頂期でした。潤沢な資金と優良なコンテンツという
WIN-WINの関係が築けていたはずです。もっとも、ここで、テレビか
らの収入に頼るビジネスを組み立ててしまったことは、実は大きなリスクで
す。

1社からの下請け仕事に頼る町工場の状況に置き換えてみてください。その
工場が作る製品がオンリーワンである間はいいでしょうが、少しでも製品の
魅力が落ちると、力関係のバランスが崩れます。

プロ野球人気が絶頂期の頃は、テレビからの収入も莫大ですから、他球団は
巨人戦の放映権収入をあてにしていればなんとかなりました。これはいわば
孫請けみたいなもんですな。下請けよりもさらに立場の弱い人々です。

もっとも、これら孫請けの人々は、いち早く収益構造の転換の必要性に気づ
き、テレビよりも、観客動員やグッズなど関連商品からの収益に目を向けて
います。

ソフトバンクホークス、千葉ロッテマリン、北海道日本ハムファイターズが
その好例です。彼らパリーグの球団は、巨人軍からのおこぼれがないもので
すから、独自の収益源を探して「地域密着」という道を選びました。福岡、
千葉、札幌。楽天は仙台。パリーグは地域密着戦略に突き進んでいます。

思えば、セリーグでも、調子のいい球団は、地方色が豊かです。関西は阪神、
名古屋は中日。(広島は例外ですが...)

これらは、まさにランチェスター戦略にいう地域戦略の典型です。地域を絞
り込むことが、狭い地域で様々なイベントやファンサービスを行うことを可
能にし、コアなファンを育みます。戦略が明確な球団は、業績も上向いてい
るようです。

そもそも、テレビという媒体自体が、広告としての価値を下げ続けています。
いつまでもおんぶに抱っこでは共倒れになることは目に見えていますから、
収益構造の転換は、どの球団もしなければならないことだったのです。いわ
ば、巨人は事業の再構築に遅れをとったということでしょうか。

■では、巨人も同じように関東ローカル球団を目指すべきなのか。二宮氏は
目指すべきだと言っています。

ただ私もここでは懐疑的です。関東は人も多いが、他の娯楽も多い。現在の
巨人のコストを支えるような収益モデルが作れるかどうか分かりません。

私はむしろ、巨人はこのまま「全国球団」としての方針を貫くべきではない
かと思います。

つまり、日本にはまだ他のプロ野球球団のエリアに入らない地域がたくさん
あります。新潟、四国、九州、東北の一部、沖縄。それらの地域は、やはり
とりあえず巨人ファンが多いようです。

巨人としては、これらの地域での開催を増加し、あるいはファンサービスを
まめに行い、唯一の全国フランチャイズ球団としての方針を強化すべきであ
ると。それが結果的にローカルテレビからの収入も関連商品販売も増やすこ
とになるのではないか。

もっとも、この方針でぶつかるのは阪神タイガースです。いまや全国区にな
った阪神です。関西での人気は不動ですから、これから地方を狙いにいくの
は当然です。むしろ、関西でのコアなファンをベースに持つ阪神の方が有利
な戦いかも知れません。まあ、球団運営でも、阪神-巨人で争ってもらいま
しょうか。

■しかし、そんなことよりもプロ野球全体として、やらなければならないこ
とがあるはずです。

プロ野球のライバルは、メジャーリーグやサッカーや他のスポーツイベント、
あるいはエンターテイメントすべてです。

とりあえずメジャーリーグの問題をどうするのか。

巨人の4番とエースがメジャーリーグに挑戦するという事態が、巨人の地位
を如実に物語っています。今の巨人はメジャーリーグの2軍だと言われても
仕方ありません。ということは、プロ野球全体がそうであるということです。

メジャーリーグは、開幕戦を日本で行うなど、明らかにアジアマーケットを
狙った動きをしています。アジア全体から人材を集め、そのままアジアで販
売しようという考えです。これが機能すると、プロ野球は、本当にメジャー
の2軍になるか、オフシーズンに行う独立リーグのような立場に追いやられ
るかも知れません。プロ野球が、国内の問題だけに関わっているわけにはい
かないのは明らかです。

世界戦略を行おうというメジャーリーグにどう対抗するのか。

ランチェスター戦略に馴染んだ方なら、分かりますね。ここは、弱者の戦略
です。広域戦に対しては、局地戦。

日本が主導になってアジアリーグ構想を早急に実現すべきです。韓国、中国、
台湾。アジアには野球が盛んな国が少なくありません。むしろメジャーリー
グよりも恵まれた地理的環境にあると言えます。

まずは、アジア地域からの選手獲得を強化。中国や台湾でのプロ野球公式戦
の開催。地元のチームへの指導者の派遣。選手の交流。

人材の交流を積極的に行うことで、地域のレベルを上げていき、日本のチー
ムと各国のチームが優勝決定戦を行えるようにします。アジアチャンピオン
リーグの本格化です。日本のチームが他国のチームと互角に戦うような状況
になって初めて、メジャーの世界構想に対抗しうる壮大なリーグが出来上が
るでしょう。アジアチャンピオンとメジャーチャンピオンがワールドシリー
ズを争うなんてワクワクしませんか。

巨人もプロ野球を代表すると自認するならば、自分だけが強くならなければ
いかんと強引な引き抜きを繰り返すよりも、中国のチームにエース級を派遣
して、アジアリーグ全体の底上げを図るような動きをしていただきたいもん
です。

それが、プロ野球全体をひいては巨人軍の地位を高めることにつながるので
すから。

■もっとも、これは星野仙一氏がプロ野球コミッショナーになった折にする
大仕事なのかも知れません。今の巨人にはその任は重すぎるでしょうな。


★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★

■なお、プロ野球がサッカーに対抗するには、競技人口を増やすようなシス
テムを整備しなければなりません。

サッカーは、アマチュアからプロに至る流れがスムーズで一貫しています。
野球も整備を急がないと、大変なことになりそうですね。

■戦略勉強会では、マイナースポーツをどのように盛り上げていくかという
議論もありました。

今のところ、人気選手とテレビを結びつけて、一点突破する方法が主流です
が、それだけでは人気は持続しません。やはり、競技人口を拡大させる施策
を本腰で行ったところが、残っていくはずです。

こうした(厳密なデータを背景にしない)マーケティング施策を考えてみる
のも楽しいもんです。勉強会ならではですね。B


(2007年10月25日メルマガより)

■ランチェスター関西では、月に1回、戦略勉強会を開催しています。

いつも少人数で、和気あいあいとやっており、その後の懇親会(飲み会)も
楽しみなアットホームな集まりです。

このメルマガを読んで来られる方がほとんどですが、皆さん一様に「こんな
気楽な集まりだったんですね」と驚かれます。

どうも、このメルマガの印象では、小難しい理屈を滔々と述べ合う連中が集
まっているんじゃないかと思われているようですね^^;

そんなことはありませんよ。

■前回の勉強会では、軽いネタとして「巨人軍の凋落は止められるか」とい
うテーマを採り上げました。私としては、30分程度で終わらすネタのつもり
だったのですが、これが思いのほか盛り上がり、2時間びっしりと話し合う
こととなってしまいました。

■そこで、今回のメルマガでは、その時の話し合いに基づき、巨人軍再生案
について書いてみたいと思います。

もっとも私としては、巨人軍がどうなろうと知ったこっちゃないんですがね。


★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★

「巨人軍の凋落は止められるか?」

まあ、無理でしょう。

と言ってしまえば、話が進みませんな。

■私は、プロ野球は12球団全部阪神タイガースにすべきだと思っています。

それなら、毎日、勝利。毎年、優勝。こんなに喜ばしいことはありません。

あまり理解されない意見ですが。

■週刊ダイヤモンド2007/10/20の二宮清純氏のコラムに「日本テレビが巨人
の優勝が決まる試合を放送しなかった」ことが書かれていました。

これは巨人軍の凋落を示す象徴的な出来事です。なにしろ、巨人といえば、
どんな試合でも全国どこでも観ることができるというのが一昔前までの状況
でした。その中心となるテレビ局が日本テレビです。そこが、視聴率低迷を
理由に最も重要な試合を放映しないという選択をしたのですから。(ちなみ
に、その時は「踊るさんま御殿」が放送されていたそうです)

■なぜ、巨人軍はここまで凋落してしまったのでしょうか?

端的に言うと、弱く、かつ、つまらないチームになってしまい、ファンの支
持を失ってしまったからです。

その背景には、ドラフト会議に表される"戦力の均衡を図り、各球団の投資
額を減らす"という流れに反する"巨人軍が強くなければ、プロ野球が盛り
上がらない"と考える人々のちぐはぐなチーム運営とのギャップがあります。

もっともこのあたりのチーム運営のミスについては、野村克也の「巨人軍論
などに詳しいのでここには書きません。

■私がむしろ疑問に思うのは「テレビのスポンサー収入に頼った球団運営」
は正しいのだろうか?ということです。確かに、高度成長期、巨人が強かっ
た時期には、テレビも絶頂期でした。潤沢な資金と優良なコンテンツという
WIN-WINの関係が築けていたはずです。もっとも、ここで、テレビか
らの収入に頼るビジネスを組み立ててしまったことは、実は大きなリスクで
す。

1社からの下請け仕事に頼る町工場の状況に置き換えてみてください。その
工場が作る製品がオンリーワンである間はいいでしょうが、少しでも製品の
魅力が落ちると、力関係のバランスが崩れます。

プロ野球人気が絶頂期の頃は、テレビからの収入も莫大ですから、他球団は
巨人戦の放映権収入をあてにしていればなんとかなりました。これはいわば
孫請けみたいなもんですな。下請けよりもさらに立場の弱い人々です。

もっとも、これら孫請けの人々は、いち早く収益構造の転換の必要性に気づ
き、テレビよりも、観客動員やグッズなど関連商品からの収益に目を向けて
います。

ソフトバンクホークス、千葉ロッテマリン、北海道日本ハムファイターズが
その好例です。彼らパリーグの球団は、巨人軍からのおこぼれがないもので
すから、独自の収益源を探して「地域密着」という道を選びました。福岡、
千葉、札幌。楽天は仙台。パリーグは地域密着戦略に突き進んでいます。

思えば、セリーグでも、調子のいい球団は、地方色が豊かです。関西は阪神、
名古屋は中日。(広島は例外ですが...)

これらは、まさにランチェスター戦略にいう地域戦略の典型です。地域を絞
り込むことが、狭い地域で様々なイベントやファンサービスを行うことを可
能にし、コアなファンを育みます。戦略が明確な球団は、業績も上向いてい
るようです。

そもそも、テレビという媒体自体が、広告としての価値を下げ続けています。
いつまでもおんぶに抱っこでは共倒れになることは目に見えていますから、
収益構造の転換は、どの球団もしなければならないことだったのです。いわ
ば、巨人は事業の再構築に遅れをとったということでしょうか。

■では、巨人も同じように関東ローカル球団を目指すべきなのか。二宮氏は
目指すべきだと言っています。

ただ私もここでは懐疑的です。関東は人も多いが、他の娯楽も多い。現在の
巨人のコストを支えるような収益モデルが作れるかどうか分かりません。

私はむしろ、巨人はこのまま「全国球団」としての方針を貫くべきではない
かと思います。

つまり、日本にはまだ他のプロ野球球団のエリアに入らない地域がたくさん
あります。新潟、四国、九州、東北の一部、沖縄。それらの地域は、やはり
とりあえず巨人ファンが多いようです。

巨人としては、これらの地域での開催を増加し、あるいはファンサービスを
まめに行い、唯一の全国フランチャイズ球団としての方針を強化すべきであ
ると。それが結果的にローカルテレビからの収入も関連商品販売も増やすこ
とになるのではないか。

もっとも、この方針でぶつかるのは阪神タイガースです。いまや全国区にな
った阪神です。関西での人気は不動ですから、これから地方を狙いにいくの
は当然です。むしろ、関西でのコアなファンをベースに持つ阪神の方が有利
な戦いかも知れません。まあ、球団運営でも、阪神-巨人で争ってもらいま
しょうか。

■しかし、そんなことよりもプロ野球全体として、やらなければならないこ
とがあるはずです。

プロ野球のライバルは、メジャーリーグやサッカーや他のスポーツイベント、
あるいはエンターテイメントすべてです。

とりあえずメジャーリーグの問題をどうするのか。

巨人の4番とエースがメジャーリーグに挑戦するという事態が、巨人の地位
を如実に物語っています。今の巨人はメジャーリーグの2軍だと言われても
仕方ありません。ということは、プロ野球全体がそうであるということです。

メジャーリーグは、開幕戦を日本で行うなど、明らかにアジアマーケットを
狙った動きをしています。アジア全体から人材を集め、そのままアジアで販
売しようという考えです。これが機能すると、プロ野球は、本当にメジャー
の2軍になるか、オフシーズンに行う独立リーグのような立場に追いやられ
るかも知れません。プロ野球が、国内の問題だけに関わっているわけにはい
かないのは明らかです。

世界戦略を行おうというメジャーリーグにどう対抗するのか。

ランチェスター戦略に馴染んだ方なら、分かりますね。ここは、弱者の戦略
です。広域戦に対しては、局地戦。

日本が主導になってアジアリーグ構想を早急に実現すべきです。韓国、中国、
台湾。アジアには野球が盛んな国が少なくありません。むしろメジャーリー
グよりも恵まれた地理的環境にあると言えます。

まずは、アジア地域からの選手獲得を強化。中国や台湾でのプロ野球公式戦
の開催。地元のチームへの指導者の派遣。選手の交流。

人材の交流を積極的に行うことで、地域のレベルを上げていき、日本のチー
ムと各国のチームが優勝決定戦を行えるようにします。アジアチャンピオン
リーグの本格化です。日本のチームが他国のチームと互角に戦うような状況
になって初めて、メジャーの世界構想に対抗しうる壮大なリーグが出来上が
るでしょう。アジアチャンピオンとメジャーチャンピオンがワールドシリー
ズを争うなんてワクワクしませんか。

巨人もプロ野球を代表すると自認するならば、自分だけが強くならなければ
いかんと強引な引き抜きを繰り返すよりも、中国のチームにエース級を派遣
して、アジアリーグ全体の底上げを図るような動きをしていただきたいもん
です。

それが、プロ野球全体をひいては巨人軍の地位を高めることにつながるので
すから。

■もっとも、これは星野仙一氏がプロ野球コミッショナーになった折にする
大仕事なのかも知れません。今の巨人にはその任は重すぎるでしょうな。


★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★★☆★☆★

■なお、プロ野球がサッカーに対抗するには、競技人口を増やすようなシス
テムを整備しなければなりません。

サッカーは、アマチュアからプロに至る流れがスムーズで一貫しています。
野球も整備を急がないと、大変なことになりそうですね。

■戦略勉強会では、マイナースポーツをどのように盛り上げていくかという
議論もありました。

今のところ、人気選手とテレビを結びつけて、一点突破する方法が主流です
が、それだけでは人気は持続しません。やはり、競技人口を拡大させる施策
を本腰で行ったところが、残っていくはずです。

こうした(厳密なデータを背景にしない)マーケティング施策を考えてみる
のも楽しいもんです。勉強会ならではですね。B

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