大阪・堺の超優良企業シマノは、これからも盤石なのか?

2017.05.18

(2017年5月18日メルマガより)


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■売上高3300億円。営業利益660億円(営業利益率20%!
)。無借金経営の超優良メーカーが、大阪・堺にあることをご存知ですか?

高級自転車の部品分野で世界トップのシェアを誇り、「自転車界のインテル」の異名をとる株式会社シマノのことです。

参考:自転車界のインテル、「シマノ」高収益の秘密(東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/162292

株式時価総額は、なんと1兆6200億円(3月10日時点)三菱重工業やイオンよりも高くなっています。

■シマノの強さはなんといっても、自転車部品における存在感です。

記事によると、スポーツ自転車向け部品で85%のシェア。

世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」2016年でも参加22チーム中17チームがシマノの部品を採用したといいます。

レース用だけではありません。欧米では、変速機付き自転車のほとんどにシマノの部品が使われているといわれています。

「自転車界のインテル」とはよくいったものです。

ちなみに、インテルとは、パソコンのCPU:中央処理装置の主要メーカーです。インテル製のCPUが入っていることが売れるパソコンの条件となっていた時期がありました。

もっともスマホ時代になって、インテルの存在感が薄れている今日、インテルの方が「パソコン界のシマノ」と言われるようになるかも知れませんな。

■シマノは、1921年、大阪堺で創業した島野鉄工所を基にしています。その頃は普通の町工場です。

創業当初から自転車部品の製造に注力し、その分野での存在感を高めていきました。

シマノの自転車部品が重宝されたのは、安いのに品質が高かったからです。

安くていいもの。というヒット商品の永遠の条件を実現することができたのは、同社が得意とする精密冷間鍛造という技術があったからでした。

普通、鍛造といえば金属を熱してから加工するものです。が、冷間鍛造は、常温のまま圧力をかけて加工します。その分、工程や切り屑が少なくて済むので正確で低コストです。

他の自転車部品メーカーより優れていたのはこの点でした。

■もっとも私は冷間鍛造というものに詳しくありません。

製造業の方に聞いてみたら「むちゃくちゃすごい技術ではないが、習得しようと思えば10年はかかる」と評価していました。

要するに、経験則が生きるローテクの分野で経験を積み上げているのがシマノの強みであるということです。

ちなみにその製造業の方は「今さらシマノの技術に追い付こうとするよりも、自分の技術で戦った方がいいと、皆が考えているのではないか」と仰っていました。

そりゃそうですね。今さら自転車部品の分野に切り込んでいってシマノ勝てるイメージがある会社は少ないでしょう。

シマノが競合もなく、ダントツのトップ企業でいられる理由の一つがここにあります。

つまり、シマノが優位性は、まさに自転車部品という分野に一点集中したという「戦略」にあったわけです。

■当時から冷間鍛造の技術を持つ工場は、ほかにもあったはずです。

いってもローテクですからね。

ただし、その技術を便利な下請け会社として使われるか、あるいは尖った特殊技術として選ばれるのかは、その会社の「戦略」によるものです。

当時のシマノの経営陣が優れていたのは、自転車部品分野という範囲に限ると、冷間鍛造の技術は、選ばれる要因になると判断したことでしょう。

様々な産業の下請けとして過ごしていく道もあったでしょうが、そうしなかった戦略をとったことが、今日のシマノを作ったということです。

日本の自転車部品製造で力を蓄えたシマノは1965年にはアメリカに販売会社を設立しています。

早くも日本の自転車需要の減退を予測したからです。

ここからのシマノの行動は、実にランチェスター戦略的です。

すなわち、キャラバン隊を組んで、3年に渡って、アメリカの自転車販売店を調査して回ったのです。

この全数訪問調査というのは、ランチェスター戦略の特徴の一つであり、この戦略が非常に高い確率で成果を上げることができる根拠となっています。

シマノの米国での成功は、このローラー調査にあったと私は考えます。

果たして、シマノの調査部隊は、ここから「マウンテンバイクのブームが来る」という結論を出して、その部品の量産体制をいち早く整えます。

ライバル会社が、そのブームを予見できずに出遅れたのと対照的に、シマノが飛躍するきっかけとなりました。

■その後の展開も見事です。

1972年には欧州に販売会社を設立。

部品を「コンポーネント」としてセットした上で商品化する手法を開発、これが安くて性能が高いので、ヨーロッパの自転車メーカーに軒並み採用されます。

それどころか「シマノの部品を使っていないと自転車が売れない」というまさにインテル状態になっていきます。

これも自転車好きな人に聞きますと「ヨーロッパの部品メーカーもあるにはあるが、やたら高い」そうです。

特殊なこだわりがない限り、安くて性能のいいシマノ製を採用した自転車の方を買う方が合理的ですよね。

シマノが圧倒的な市場シェアを持つに至った所以です。

ちなみにシマノの売上の約9割が海外からのものです。

■まさに盤石ともいえるシマノなのですが、今後も成長していけるのでしょうか。

株価が好調なのは喜ばしい限りですね。

ただこれは、今年のヨーロッパの需要回復を見込んでのことであり、中長期的な展望ではないと思われます。

常識的に考えれば、ヨーロッパ市場の需要が劇的に伸びることは難しいでしょう。

では成長する中国やアジアでの販売はどうなのか。

ところが、こちらは地場メーカーの乱暴な販売方法(どかーんと作って安売りする)に苦戦しているようですな。

が、そんなことは想定内のはず。

かつてアメリカ市場を開拓したバイタリティはどこへ行ったのでしょうか?

中国市場で成功しているこういう会社もあるのですから↓

参考:中国巨大市場でシェア4割! "自転車"産業で成功した日系企業、その驚くべき「先行戦略」(現代ビジネス)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49077

そう思うと、シマノの予定調和的は動きは、少々寂しく感じます。

そういう意味でも、私の感想としては、シマノの将来は決して華々しいものではないと思えます。

■なおシマノの売上高の80%が自転車分野。20%が釣り具他となっています。

そうなんですね。シマノのもう一つの課題が、自転車分野以外で柱となる事業を育て切れていないところです。

ゴルフ用品を手掛けたり、スノーボードをやったりしましたが、いずれも撤退しています。

自転車が成熟していく中、次の柱を育てることは急務のはずです。

こちらもいい傾向が見えないグズグズした動きに思えますね。

日本電産とか富士フィルムのように、とまではいいませんが、このあたりで潤沢な内部留保を使う方向性を示してほしいものです

■いずれにしろ、シマノは、私にとって地元大阪・堺の超優良企業ですから、これからも頑張っていただきたいと考えています。

私が押しかけてシマノの戦略方向性を考えたいぐらいですよ。

もう一段ギアを上げて、超々優良なグローバル企業になっていってもらいたいと思っております。


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■売上高3300億円。営業利益660億円(営業利益率20%!
)。無借金経営の超優良メーカーが、大阪・堺にあることをご存知ですか?

高級自転車の部品分野で世界トップのシェアを誇り、「自転車界のインテル」の異名をとる株式会社シマノのことです。

参考:自転車界のインテル、「シマノ」高収益の秘密(東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/162292

株式時価総額は、なんと1兆6200億円(3月10日時点)三菱重工業やイオンよりも高くなっています。

■シマノの強さはなんといっても、自転車部品における存在感です。

記事によると、スポーツ自転車向け部品で85%のシェア。

世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」2016年でも参加22チーム中17チームがシマノの部品を採用したといいます。

レース用だけではありません。欧米では、変速機付き自転車のほとんどにシマノの部品が使われているといわれています。

「自転車界のインテル」とはよくいったものです。

ちなみに、インテルとは、パソコンのCPU:中央処理装置の主要メーカーです。インテル製のCPUが入っていることが売れるパソコンの条件となっていた時期がありました。

もっともスマホ時代になって、インテルの存在感が薄れている今日、インテルの方が「パソコン界のシマノ」と言われるようになるかも知れませんな。

■シマノは、1921年、大阪堺で創業した島野鉄工所を基にしています。その頃は普通の町工場です。

創業当初から自転車部品の製造に注力し、その分野での存在感を高めていきました。

シマノの自転車部品が重宝されたのは、安いのに品質が高かったからです。

安くていいもの。というヒット商品の永遠の条件を実現することができたのは、同社が得意とする精密冷間鍛造という技術があったからでした。

普通、鍛造といえば金属を熱してから加工するものです。が、冷間鍛造は、常温のまま圧力をかけて加工します。その分、工程や切り屑が少なくて済むので正確で低コストです。

他の自転車部品メーカーより優れていたのはこの点でした。

■もっとも私は冷間鍛造というものに詳しくありません。

製造業の方に聞いてみたら「むちゃくちゃすごい技術ではないが、習得しようと思えば10年はかかる」と評価していました。

要するに、経験則が生きるローテクの分野で経験を積み上げているのがシマノの強みであるということです。

ちなみにその製造業の方は「今さらシマノの技術に追い付こうとするよりも、自分の技術で戦った方がいいと、皆が考えているのではないか」と仰っていました。

そりゃそうですね。今さら自転車部品の分野に切り込んでいってシマノ勝てるイメージがある会社は少ないでしょう。

シマノが競合もなく、ダントツのトップ企業でいられる理由の一つがここにあります。

つまり、シマノが優位性は、まさに自転車部品という分野に一点集中したという「戦略」にあったわけです。

■当時から冷間鍛造の技術を持つ工場は、ほかにもあったはずです。

いってもローテクですからね。

ただし、その技術を便利な下請け会社として使われるか、あるいは尖った特殊技術として選ばれるのかは、その会社の「戦略」によるものです。

当時のシマノの経営陣が優れていたのは、自転車部品分野という範囲に限ると、冷間鍛造の技術は、選ばれる要因になると判断したことでしょう。

様々な産業の下請けとして過ごしていく道もあったでしょうが、そうしなかった戦略をとったことが、今日のシマノを作ったということです。

日本の自転車部品製造で力を蓄えたシマノは1965年にはアメリカに販売会社を設立しています。

早くも日本の自転車需要の減退を予測したからです。

ここからのシマノの行動は、実にランチェスター戦略的です。

すなわち、キャラバン隊を組んで、3年に渡って、アメリカの自転車販売店を調査して回ったのです。

この全数訪問調査というのは、ランチェスター戦略の特徴の一つであり、この戦略が非常に高い確率で成果を上げることができる根拠となっています。

シマノの米国での成功は、このローラー調査にあったと私は考えます。

果たして、シマノの調査部隊は、ここから「マウンテンバイクのブームが来る」という結論を出して、その部品の量産体制をいち早く整えます。

ライバル会社が、そのブームを予見できずに出遅れたのと対照的に、シマノが飛躍するきっかけとなりました。

■その後の展開も見事です。

1972年には欧州に販売会社を設立。

部品を「コンポーネント」としてセットした上で商品化する手法を開発、これが安くて性能が高いので、ヨーロッパの自転車メーカーに軒並み採用されます。

それどころか「シマノの部品を使っていないと自転車が売れない」というまさにインテル状態になっていきます。

これも自転車好きな人に聞きますと「ヨーロッパの部品メーカーもあるにはあるが、やたら高い」そうです。

特殊なこだわりがない限り、安くて性能のいいシマノ製を採用した自転車の方を買う方が合理的ですよね。

シマノが圧倒的な市場シェアを持つに至った所以です。

ちなみにシマノの売上の約9割が海外からのものです。

■まさに盤石ともいえるシマノなのですが、今後も成長していけるのでしょうか。

株価が好調なのは喜ばしい限りですね。

ただこれは、今年のヨーロッパの需要回復を見込んでのことであり、中長期的な展望ではないと思われます。

常識的に考えれば、ヨーロッパ市場の需要が劇的に伸びることは難しいでしょう。

では成長する中国やアジアでの販売はどうなのか。

ところが、こちらは地場メーカーの乱暴な販売方法(どかーんと作って安売りする)に苦戦しているようですな。

が、そんなことは想定内のはず。

かつてアメリカ市場を開拓したバイタリティはどこへ行ったのでしょうか?

中国市場で成功しているこういう会社もあるのですから↓

参考:中国巨大市場でシェア4割! "自転車"産業で成功した日系企業、その驚くべき「先行戦略」(現代ビジネス)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49077

そう思うと、シマノの予定調和的は動きは、少々寂しく感じます。

そういう意味でも、私の感想としては、シマノの将来は決して華々しいものではないと思えます。

■なおシマノの売上高の80%が自転車分野。20%が釣り具他となっています。

そうなんですね。シマノのもう一つの課題が、自転車分野以外で柱となる事業を育て切れていないところです。

ゴルフ用品を手掛けたり、スノーボードをやったりしましたが、いずれも撤退しています。

自転車が成熟していく中、次の柱を育てることは急務のはずです。

こちらもいい傾向が見えないグズグズした動きに思えますね。

日本電産とか富士フィルムのように、とまではいいませんが、このあたりで潤沢な内部留保を使う方向性を示してほしいものです

■いずれにしろ、シマノは、私にとって地元大阪・堺の超優良企業ですから、これからも頑張っていただきたいと考えています。

私が押しかけてシマノの戦略方向性を考えたいぐらいですよ。

もう一段ギアを上げて、超々優良なグローバル企業になっていってもらいたいと思っております。


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